1000年を超える発酵の知恵は、保存技術や味わいだけでなく、地球資源の使い方や食の循環を見直すヒントです。
今、麹づくりの現場を公開しながら発酵を学べる場として注目されているのが、京都・梅小路にある梅小路醗酵所。
発酵による保存は、日常の食や地域経済にも好影響を与える可能性を秘めています。今回は梅小路醗酵所で、発酵とサステナブルの関係を探ります。
発酵文化がひらくサステナブルな未来
食品の保存性を高めることで食品ロスを減らすことのできる発酵。地元の原料を活用する事例も多く、地域のものを地域で消費する循環を生み、輸送負荷を下げることに繋がるほか、職人や小規模事業者の仕事を支えることができるとして注目が集まっています。
さらに、発酵のプロセスによって生まれる副産物や菌群は農業や食品加工の新しい価値が生まれることも重要です。
伝統的な技術を現代の消費・生産の仕組みに組み込むことで、環境・経済・文化の三つの分野において持続性が高まると、今国内外から光が当たっているのが日本の発酵文化です。
学ぶ・作る・買う・味わうを体験。和酒専門店による「梅小路醗酵所」

梅小路醗酵所は梅小路エリアに立地し、物販・飲食・製造・体験を一体で提供する複合施設。大阪の和酒専門店「酒 高蔵」が、お酒に欠かせない「発酵」に特化した施設を作ろうと2020年にオープンしました。
施設は「学ぶ」「作る」「買う」「味わう」を体験可能。発酵の魅力を味わうことができます。
発酵のサステナビリティを感じる多彩なエリア
麹室で出会う、発酵の神秘と温度管理

麹室はガラス越しに見学できるつくり。訪問者が麹菌の働きや温度管理の重要性を直感的に学べます。
麹づくりは米の浸漬から始まり、菌を付ける「種切り」、育てる日々を経て「出麹」で完成します。施設では温度を32〜34℃前後に保ち、菌の活性を安定させる管理が行われていました。
ワークショップで楽しむ麹・梅酒づくり体験

麹室の隣には、麹作り体験をはじめさまざまなワークショップ体験ができるエリアがあります。

ワークショップは種類が豊富で、手軽な塩麹作りや梅酒作りのワークショップから本格的な米麹づくりまで用意されています。
フレーバーを加える体験ができる塩麹や醤油麹作りでは、自宅で数週間発酵を続けて仕上げる工程を学びます。
梅酒づくりワークショップは日本酒・ブランデー・ウォッカ・焼酎・ウイスキーなど多様な酒がベースとして使われ、一般的にアルコール度数が低いとされる日本酒は、21%以上のものを選んで使用しています。

麹づくりのプログラムは、最終工程の出麹だけを体験する初心者向けコースから、種切りに関わる本格的なコースまであり、朝の甘酒づくりやランチ付きの回も。
出来た生麹を試食したり持ち帰ったりできるのが魅力です(種切り体験の方は後日お届け)。実際に麹の香りや仕上がりを見比べることで、発酵の繊細さが理解できます。
曜日によって日本語中心の回と英語や中国語での回を使い分け、外国人にも発酵文化を伝えているそう。
黒麹甘酒や塩麹の販売も。広がる発酵プロダクト

施設では乾燥麹や米麹、麦麹、さらに黒麹を使った製品を製造・販売しています。お米は京都のササニシキ使用し、甘酒に特化した米麹を生産。
麹の「枯らし(乾燥させること)」やパッキングなどの小規模な製造作業も施設内の作業所で行っており、体験と製造が同じ場所で行われていることに大きな価値を感じます。
他にもお酒に合う珍味の販売などもありました。

珍しい黒い甘酒は、酸味のある黒麹を使用。新商品の黒麹甘酒である「KUROCO」は爽やかでキリッとした味わいが印象的でした。


酒屋が作った施設というだけあって、すべてのジャンルのお酒が置いてあると言っても過言ではないくらい、全国各地のありとあらゆるお酒が販売されていました。

発酵を“感じる”

施設内には飲食スペースもあり、さまざまな種類の甘酒や日本酒、各種ドリンクが楽しめるようになっていました。

「甘酒飲み比べ」(税込850円)をいただいてみました。左上から時計回りに、甘酒、玄米甘酒、黒麦麹甘酒、黒麹甘酒です。
こちらの甘酒はすべて麹からできているためノンアルコール。沢山飲んでも酔うことはありません。甘酒はお米のジュースという感じで一番飲みやすく、玄米甘酒は少し香ばしさが加わり深みのある味わい。黒麹甘酒は少し酸味があるのでさっぱりしていて、最後にいただいた黒麦麹甘酒はほろ苦さが独特で刺激的な味わいでした。それぞれに個性が光っていて全く味わいが違います。
同じ発酵の製法でも材料が変わるとこんなにも味わいが変化することに、驚きと発見がありました。
梅小路醗酵所が描く循環型ライフスタイル

梅小路醗酵所は、発酵を単なる食品加工技術とするのではなく、教育や観光、地域の産業振興につなげることを目指しています。
麹づくりを公開することで街の人々との関わりの場所とし、ワークショップを通じて次世代へ技術と知恵を継承する役割も担っており、発酵を軸にした小さなコミュニティを生み出したいと考えているとのこと。
様々な角度から発酵文化を伝えることで、持続可能な食文化の基盤を育てることを目指しています。
発酵で暮らしをサステナブルに楽しむ
見て学び、作って味わえる場を通じて、現代の暮らしに取り入れやすい発酵文化に触れることができる梅小路醗酵所。
まずは、ワークショップで麹づくりや梅酒づくりに参加し、実際に手を動かせば、発酵の価値が深く理解できるはず。生活に、暮らしを豊かにしてくれるサステナブルな「発酵」を取り入れてみませんか。
店舗情報
京都府京都市下京区観喜寺町15 梅小路ポテル京都内
10:00〜22:00(L.O 21:30)
年中無休


