素材や形、トレンド、自分に似合うかどうか。洋服を選ぶときに大切にしていることは人それぞれ。でも、もし自分が身に着けている服が、知らず知らずのうちに誰かを傷つけていたら…?これから先、私たちが洋服を選ぶ際の基準にプラスしたいのが、“生産者にとっても消費者にとってもハッピーであるかどうか”です。 今回は、フェアトレードファッションの草分け的存在であるピープルツリーからフェアトレードファッションの根本的な考え方を学び、その大切さを一緒に考えます。 ●ピープルツリー 1991年に2人のイギリス人によって日本で設立されたフェアトレード専門ブランド。オーガニックコットンの衣類や、チョコレートやコーヒーなどの食品、雑貨など幅広くオリジナルで展開。日本では自由が丘と立川高島屋S.C.に直営店がある他、全国のセレクトショップなどで取り扱いがある。WFTO(世界フェアトレード連盟)に加盟し、製品にはWFTO保証ラベル(原材料から生産までフェアトレードを保証するラベル)を付けている。 お話を伺ったのは、ピープルツリー広報の鈴木啓美さん。2023年のファッションレボリューションウィークで参加者からの反響が大きかった、映画「メイド・イン・バングラデシュ」の解説を交えながら、フェアトレードについて基礎的なところからお聞きしました。 そもそもフェアトレードってなに? ――ファッションの話の前に、フェアトレードとは何かを教えていただけますか。 端的に言うなら、貧困問題と環境問題をビジネスの力で解決しようとする取り組みです。直訳すると「公平・公正な貿易、取引」となります。スポーツで公平性を表すフェアプレーの“フェア”をイメージしていただけると近いと思います。 ピープルツリーが加盟するWFTOは生産者の労働条件、賃金、児童労働、環境などに関しての基準「フェアトレード10の指針」を定めています。 Photo by ピープルツリー そのうちの1つ「適正な金額を支払う」だけが注目されフェアトレードの代名詞のようになっているのが現状ですが、それは「手段」の1つ。何のためにやっているのかという「目的」が大事です。「みんなが幸せに暮らせること」をゴールに、10の指針をもとに、様々な活動をしています。 フェアトレードという言葉ができるまで Photo by ピープルツリー ――ただ適正な金額を支払うだけではなく、生産者も幸せに暮らせることが大切ということですね。いつ頃できた概念なのでしょうか? 国際的な会議の場で初めて「フェアトレード」という言葉が使われたのは1984~85年頃と言われています。1950年代からチャリティー貿易が存在していましたが、対等というよりも“助けてあげる”という意味合いが強いものでした。そこから1960年代に、取引は対等であるべきだという考えのもと、フェアトレードの前身となるオルター(オルタナティブ)トレードと呼ばれる概念が生まれたのです。日本では70年代から80年代にかけて、フェアトレードに類する活動をする団体が活動を始めました。 参考:https://fairtrade-forum-japan.org/fairtrade/fairtrade-history ファストファッションの“アンフェア”な真実 ――今年のFRW※1に、ピープルツリーは映画「メイド・イン・バングラデシュ」※2の上映・解説イベントを開催しました。フェアトレードの視点から作品を観るときのポイントを教えてください。 「メイド・イン・バングラデシュ」は、縫製工場で働く女性工員たちが労働組合を発足するまでの奮闘を描いた映画です。作品はフィクションであるものの、監督のルバイヤット・ホセインが沢山の工場労働者に会ってリサーチし製作した、限りなくリアルに近い物語です。工場での話だけではなく、ところどころにバングラデシュで働く人々が置かれている状況が散りばめられており、主人公シムの人生もまさにバングラデシュで生きる女性の現状を映し出しています。 ――衣類産業大国であるバングラデシュの現状がとてもよく描かれていました。 バングラデシュは世界2位の衣類輸出国であり、国内の7~8割が衣料に関わる産業です。しかし、映画にもあるように、政治家などの権力者と工場経営者に癒着があったり、権力者自らがオーナーであったりして、労働者に目が向いていない事実があります。国外に安価な労働力を提供する一方で、労働者の賃金や労働環境は後回しにされているのです。 例えば作中、シムは、労働組合を作るための資料として、労働者権利団体のナシマに渡されたスマートフォンで工場内の様子を密かに撮影します。そこではグローバルアパレル企業の白人男性が工場見学に来るのですが、「君の工場は高すぎる!」と値下げを求めているのです。労働組合が存在せず、権利が保障されていない状態で、労働者は満足のいく賃金をもらえていません。それにも関わらず、先進国で洋服をさらに安く売るために工賃の値下げを要求される。このシーンからは、先進国において消費者が安価な洋服を求め、企業がそれに応えようと考えた結果、生産国で働く労働者にコスト削減のしわ寄せがいっているということを知ることができます。 ※1 ファッションレボリューションウィーク。毎年、4月24日を含む1週間、ファッションの透明性を高めることを目的としたイベントが世界中で開かれる。縫製工場で働く1,100名以上の女性が犠牲となった2013年4月24日の「ラナ・プラザ崩壊事故」がきっかけとなっている。 ※2 世界のファッション産業を支えるバングラデシュで、縫製工場の過酷な労働環境と低賃金の改善に立ち上がったひとりの女性の実話をもとに製作されたヒューマンストーリー。 生産背景以外にも目を向けたい現地のリアル Photo by ピープルツリー ――安さの裏にこういった現実があることは常に意識しておきたいですね。他にもこの映画から私たちが学べることはありますか。 作品では、ジェンダーの問題と児童婚の現状も垣間見えます。実はバングラデシュは、政治の面で見ると首相をはじめ女性議員の割合が日本よりかなり大きく、最新のジェンダーギャップ指数も59位で日本よりはるかに上位にいます。ところが、経済面で見ると、バングラデシュは男性の失業率が高く、作中のシムと夫のように、女性が縫製工場などで働き家計を支えているという構図が珍しくないんですよね。数字だけを見ると女性の社会進出が進んでいるかのように見えますが、どういう基準でジャッジされた数字なのか、その裏側にある事実を知ろうとすることが大切だと思います。 ――生産の現場はもちろん、生産国がどのような状況なのか、知ろうとすることが重要ですね。 シムが、母親から11歳の時に40歳の人と結婚させられそうになったと告白する場面も衝撃的です。バングラデシュの法律では18歳以下の結婚は禁止されていますが、なんと半数以上が18歳以下で結婚していると言われています。貧困から脱しようと、母親が子どもの幼い頃からお金持ちの男性を探すケースが多いのです。幼い頃に結婚をすると、低年齢により妊娠・出産のリスクが高まる、虐待の対象となる、教育の機会を奪われることなどが懸念されます。 このように、私たちの衣服と深い関わりのあるバングラデシュの日常を、物語を通して知ることができるのもこの映画の特徴です。個人レベルで起きているように見える問題も、国際市場での立場、社会通念や文化的背景からくる社会システムのひずみが要因で起きているということが見えてきます。 フェアトレードファッションはこうやって作られる Photo by ピープルツリー ――ファストファッションが作られる生産背景はイメージできましたが、フェアトレードの衣類は具体的にどのように作られるのでしょうか。 ピープルツリーのファッションを例にすると、「フェアトレードの10の指針」をクリアし、WFTOに加盟する、信頼のおける生産者団体との取引を行っています。 オーガニックコットンをはじめとする素材の調達から最終加工まで、どこで誰がどんなふうにつくっているのか把握すること、生産者に無理強いをしないため生産に十分な時間を設けること、生産団体にオーダーする時点で最大50%を前払いすることなど、双方向のやり取りをすること、透明性と公平性を保つために様々な取り組みを行っています。また、製品は日本向けに企画し、団体に所属する生産者たちが持てる技術を活かした上で、手作業でひとつひとつ丁寧に作られます。そうすることで、伝統的な手仕事の継承にもつながるのです。 日本で販売するとなると、クオリティも大事になってきますので、技術支援や細やかなフィードバックを行うなど、生産者がスキルを磨けるようなサポートも欠かしません。 その他、生産活動以外の取り組みの例として、女性の地位向上のための研修や子どもの教育に関する支援、労働者の人権のために尽力しているバングラデシュの弁護士の支援なども、ピープルツリーの母体であるNGOグローバル・ヴィレッジを通して行っています。 私たちにできることは、消費するということに責任を持つこと。 出典:pexels.com ――洋服の生産の背景を知ってしまうと、どんな洋服を購入したら良いのかわからない…という方も多いと思います。大きなアクションではなく、私たち消費者が今日から始められることはありますか? 今まで選択してきたものと、生産の背景を意識して選択してみたもの、一見似ているけれど何が違うのか?そのような小さな疑問を持つことから始めてみるのがいいのではないかと思います。洋服を買う際には、タグを見る、どこで作られているのか、素材にどのような違いがあるのかを気にしてみるなど、小さな気づきから知識を増やしていけば良いのです。完璧を求めるのではなく、今の時点でより良い方を選べるように努め、良かったらそれを友人に広めるのもいいですよね。 「とりあえず」の買い物はしないことも一つの方法です。間に合わせで購入するのではなく、ずっと大切にしたいと思える物だけを選びたいですよね。 また、疑問に思ったことがあれば、ブランドに問い合わせをすることや、SNSで発信することも重要です。企業に消費者の声を届けることで、企業側もそのニーズに気が付くようになります。 企業は今あるリソースを活かし一歩踏み出すことが重要 ――社会に貢献するアクションを起こしたいと考えている企業ができることは何でしょうか。 企業は、自分たちの元々持っているフィールドにおいて一歩踏み出すことが大切だと思います。つまり、自社の事業の延長線上で取り組むということです。そもそも何のために創設されたのか、原点を改めて見つめると、自分たちの使命が盛り込まれていると思うのです。 企業も個人も、大きな変革や完璧さを最初から求めるではなく、今あるリソースを活かせる方法で社会に貢献していくのが、健やかで無理のない方法なのではないかと思います。 フェアトレードファッションを学んで 「フェアトレードも、SDGsもサステナブルも、地球と人、みんなが幸せに暮らせるようにするためのものです。そして、忘れたくないのは、その“みんな”という中にはちゃんと自分自身も含まれているということですよね。自己犠牲や我慢を強いるものだと続かないので、自分も楽しむことが大事だと思います」最後に鈴木さんはこうお話してくれました。フェアトレードは、特別なことではなく、他の人に対して対等・平等に向き合う、という人としての基本的な姿勢なのだと改めて感じました。 私たちの洋服を取り巻く“アンフェア”な関係は、今も世界のあらゆるところで存在しています。洋服を身に着ける人も作り手も、みんなが対等な世の中であるために、現状を知り、一人ひとりが小さなアクションを起こしていくことが、これからのファッションには求められているのではないでしょうか。
名前の通り、ファッション業界に革命を起こそうとイギリスで立ち上がったファッションレボリューション(Fashion Revolution)。キャンペーンが立ち上がって10年という節目となる今年、4月24日のファッションレボリューションデーに合わせて、日本国内でも様々なイベントが開催されました。今回はイベントを振り返りながら、持続可能なファッションの在り方と、私たちができることを考えます。 ファッションレボリューションとは? ファッションレボリューション(Fashion Revolution)は、2013年4月24日にバングラデシュで起こった、ラナ・プラザビル崩落を契機に立ち上がった社会運動です。このような事故を二度と起こさないため、消費者側が企業・ブランド側に生産背景の透明性を問いかけ、ファッション業界を健全なものに変えていこうと2014年に始まりました。 関連記事:4月24日は何の日?ファッションレボリューションデーとは関連記事:悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは “顔の見えない”洋服はどこから来るのか 私たちのクローゼットにある洋服のうち、労働者の働く環境や待遇が明らかになっているものはどのくらいあるでしょうか。スーパーではよく“顔の見える”野菜などが売られていますが、洋服にそのようなタグが付いていることはほとんどありません。どうして生産者の顔が見える洋服が少ないのでしょうか。大きな理由の一つとして、私たちが思っている以上に、衣服の生産には実に多くの人の手を必要とするためです。例えばコットン製品の場合、綿の栽培から始まり、紡績、加工、縫製、輸送などを経て私たちの元に届きます。 今年Fashion Revolution Japanが発表したレポート「#RememberRanaPlaza Collection 断念から考える日本のファッション産業の現在地 ラナ・プラザ崩落事故から 10 年目の考察と展望」では、衣服のトレースについて詳しく書かれています。 出展:#RememberRanaPlaza Collection 断念から考える日本のファッション産業の現在地 ラナ・プラザ崩落事故から 10 年目の考察と展望(pdf) もともと多くの生産工程を辿る衣服ですが、グローバル化が進み生産拠点をコストが安い東南アジアに移す企業が増えてきたことなどで、サプライチェーンはさらに複雑化。メーカーでさえサプライチェーンを把握しきれていないケースが多くあるのが現状です。 ラナ・プラザ崩壊事故からもわかるように、洋服が低価格で手に入るようになった背景には、労働環境が守られておらず、生活を成り立たせるための賃金が支払われていないなどの問題が隠されている可能性があります。洋服を購入するときに、その洋服の生産背景を知ろうとすることが、私たち消費者には求められているのです。 「whomademyclothes?(誰が私の洋服を作ったの?)」という問いかけから始まったファッションレボリューションは、洋服を購入しファッションを楽しむ私たち全員が知っておきたいムーブメントです。 2023年4月、未来のファッションを考えるイベントが多数開催 ファッションレボリューションデーのある4月は、ファッションにまつわるイベントが全国で開催されました。主催者は学生や企業、研究者など様々。ファッション業界が抱える問題について知り、私たち一人ひとりにできることを考えるための1か月となりました。 Theater for Good この投稿をInstagramで見る Theater for Good(@theater_for_good)がシェアした投稿 開催日:2023年4月2日主催:村瀬悠 坂井ゆきね Z世代による、Z世代のための映画上映会。ファストファッションの裏側に迫るドキュメンタリー映画『The True Cost』を鑑賞し、エシカルファッションについて語り合われ、社会課題に興味・関心をもつ同世代同士の交流を図る場ともなった。主催者は2人の大学生で、そのうちの一人、坂井さんは大学内でエシカルファッションを楽しく広めるためのサークル「Around 20(あらとぅ)」を立ち上げて活動。同じく主催者の村瀬さんは学生の傍ら社会派カメラマンとしての活動も行う人物。 Plastic collection 2023 この投稿をInstagramで見る Plastic Collection in 三重県四日市(@regenefashionshow_)がシェアした投稿 開催日:2023年4月8日 三重県の四日市市で開催されたFashion Revolution Japanのパートナーイベント。四日市市のイメージを「公害の街」から「漁網の街」へ塗り替えるべく、漁業で使われる漁網をアップサイクルしてファッションショーを開催。イベントの発起人である吉田凱一さんの祖父が営んでいた漁網工場の廃棄漁網とプラスチックゴミから衣装や舞台装飾が作られ、エキサイト四日市・バザールというイベントで披露された。開催にあたってクラウドファンディングで資金を集め、会場となった商店街の協力も得て行われた。 『メイド・イン・バングラデシュ』オンライン上映会&トーク ~ファッションレボリューション企画~ 主催:ピープルツリー開催日:2023年4月23日 昨年日本でも上映された、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが労働組合を立ち上げるまでの奮闘を描いた映画『メイド イン バングラデシュ』。フェアトレード専門ブランドであるピープルツリーがファッションレボリューション企画として、メイドインバングラディッシュをVimeoにて限定公開した。鑑賞後は、ピープルツリーの鈴木啓美さんが映画について解説をするオンライントークがZoom上で行われた。 イベント詳細:https://www.peopletree.co.jp/special/frw2023/ ラナプラザの崩落事故から10年、「ザ・トゥルー・コスト」上映会&これからの10年のファッションをつくる『TEN』御披露目&決起会 この投稿をInstagramで見る エシカルファッション_Enter the E(@enter_the_e)がシェアした投稿 開催日:2023年4月23日主催:Enter the E エシカルファッションセレクトショップであるEnter the Eが『The True Cost』の上映と、グループディスカッションを実施。 “10年後のファッション”を題に、参加者全員でエシカルなファッションをどのように実現していくのか語り合われた。イベント後半では、Enter the Eが新たにローンチするオリジナルアパレルブランド「TEN」についての紹介があり、バングラデシュへの訪問の報告や、植月さんが「TEN」に込めた思い、展望などを共有する場となった。現在、「TEN」プロジェクトの仲間「TEN CREW」の募集を兼ねたクラウドファンディング(https://rescuex.jp/project/45133)が行われている。 ソーイング竹内から学ぶ縫製工場のサステナビリティー この投稿をInstagramで見る 山口大人(@yamaguchi_otona)がシェアした投稿 開催日:2023年4月25日主催:FashionGood lab. ファッションビジネス学会FashionGood研究部会が主宰するFashionGood lab.が、兵庫県にあるエコフレンドリーファクトリー、ソーイング竹内の竹内祐太さんをゲストに迎えて行われた、オンライン講座。播州織の産地である兵庫県で、キッチン雑貨などファブリック用品の縫製を行っているソーイング竹内は、2004年に環境省が策定した「エコアクション21」の認定をいち早く受けた企業。さらに、竹内さんがクリエイティブディレクターを務めるオリジナルブランド「BF KITCHEN」はエコアクション21オブザイヤー2021で金賞を受賞している。講座では、ソーイング竹内の環境経営や地域での取り組みなど、持続可能な運営についてのレクチャーやディスカッションが行われた。 ファッションと労働 - 持続可能なサプライチェーンを地に足をつけて考える – この投稿をInstagramで見る 山口大人(@yamaguchi_otona)がシェアした投稿 開催日:2023年4月28日主催:FashionGood lab. 東京都武蔵野市のフェアトレードタウン認定を目指す、フェアトレードむさしのの協力を受け、武蔵境駅近くの図書館「武蔵野プレイス」で開催されたFashionGood lab.主催のイベント。イベントは、『繊維産業の責任ある企業行動ガイドライン』の編纂に携わったILO(国際労働機関)の田中竜介さんによるガイドライン解説と、繊維産業の研究者、縫製工場代表、セレクトショップ代表の三名によるクロストークの二部構成で行われた。 まだまだ続く2023年のFashion Revolution 洋服を購入するときに、「なぜこの値段なのだろう?」と一度考えてみることや、ファッションレボリューションのような活動に参加してみることは、私たち一人ひとりができる大切なアクションです。今年Fashion Revolution Japanは、Fashion Revolution Week(4月22日~29日)期間中にとどまらず、6月に表参道のGYLEにてトークイベントと展覧会を開催します。今年ますます盛り上がりを見せるFashion Revolutionに参加してみては? Fashion Revolution Japan 公式ホームページ:https://www.fashionrevolution.org/asia/japan/
毎年4月24日に定められている「ファッションレボリューションデー」をご存知ですか? 洋服を購入し、ファッションを楽しむ私たちと深くかかわっているこの日。 今回は、ファッションレボリューションデーを定めた「ファッションレボリューション」の概要やファッションについて私たち一人ひとりが考えていきたいことを見ていきます。 ファッションレボリューションとは 出典:unsplash.com ファッションレボリューション(Fashion Revolution)は、ファッション産業の透明性を高めていこうとするグローバルキャンペーンのことです。環境を保護・回復し、成長や利益よりも人を大切にする世界的なファッション産業をビジョンに、世界中で様々な活動が行われています。 ファッションレボリューションでは、具体的に以下を目的としています。 ・世界のファッション業界において人と環境の搾取を終わらせる・安全で尊厳のある労働条件と生活賃金をサプライチェーンのすべての人に・世界のファッション業界全体における力を再分配し平等なバランスを保つ・世界のファッション業界における労働運動の拡大と強化・世界のファッション産業が限りある資源の保全と生態系の再生への取り組みを行う・バリューチェーン全体の透明性と説明責任を当たり前にする・使い捨てをやめ、材料をより長く使用し、無駄にしないシステムへの移行・遺産や技術、地域で語り継がれてきた智慧が認められ、大切にされること 日本はキャンペーンがスタートした2014年から参加。今では世界に約100の支部を持つ世界的な動きに発展しています。 ファッションレボリューションデーはなぜ4月24日? 出典:unsplash.com ファッションレボリューションという世界的なムーブメントが誕生したきっかけは、2013年4月24日に発生したバングラデシュの商業ビルの崩壊事故、いわゆる「ラナ・プラザ崩壊事故」にあります。事故現場となった商業ビル内には当時多くの縫製工場などがひしめき合っており、ビルの崩壊によって、そこで働く人々が負傷し命を落としました。その多くが縫製作業を行う若い女性だったと言われています。この事故により、杜撰な建物の管理だけでなく、長時間労働が当たり前であったことなど劣悪な労働環境が明るみになり、大きな社会問題となったのです。 この悲劇がきっかけで、SNSでは自分の洋服の写真とともに、「#whomademyclothes(私の服は誰が作ったの?)」というハッシュタグをつけて投稿するというムーブメントが生まれます。ムーブメントはやがてファッションレボリューションに発展。ファッションレボリューションは、2013年にイギリスのキャリー・ソマーズとオルソラ・デ・カストロという2人のデザイナーによって設立されました。ファッションレボリューションでは、ラナ・プラザ崩壊事故が起こった4月24日をファッションレボリューションデーと定めています。 関連記事:悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは 世界中で広がるエシカルファッション 出典:pexels.com ラナ・プラザ崩壊事故や消費者の声によって、ファッションに関わる企業は、労働者の働き方や生産ラインの見直しを余儀なくされました。生産にかかわる人々の人権や環境への負荷を考慮した「エシカルファッション」の考え方が広まっていったのです。 エシカルファッションとは、調達・製造・流通・販売の4つのプロセスを通して「人・社会・地球環境・地域」のことを考え、展開されるファッションを指します。かみ砕いていうと、売上や生産量を最優先にするのではなく、地球環境や人、社会を重要視します。例えば、生産者の労働環境が守られ適正賃金が支払われている、製造時の排水や廃棄物・CO2をなるべく出さない努力をしている、毛皮など動物を傷つける素材を使用していないなど、人権の尊重に加えて、環境も考慮されたものがエシカルファッションと呼ばれています。 関連記事:環境にも人にも優しいサステナブルファッション。今日から私たちにできることとは 2022年日本のファッションレボリューションウィークイベント ファッションレボリューションでは毎年4月24日を含む1週間を「ファッションレボリューションウィーク」(※毎年期間の設定に相違あり)と定め、自分たちが着ている服は誰が作り、どのような生産プロセスを経ているかを見直す期間としています。 日本でもファッションレボリューションウィークが開催されており、2022年は「服を長く愛するために#LovedClothesLast」をテーマに、東京渋谷のヒカリエでイベントが行われました。服の寿命を延ばすワークショップや、服のお直しに関するトークイベントなど、服をできるだけ長く使用するためのヒントが詰まった内容でした。 2023年ファッションレボリューションウィーク 2023年は4月22日~29日の期間でファッションレボリューションウィークが開催されます。ラナ・プラザ崩壊事故から10年の節目にあたる2023年は、Manifesto for a Fashion Revolution がテーマ。世界的にサステナブルファッションが広まってはいるものの、気候変動や増加する社会的な不公正を解決するには進みが遅すぎるとした上で、「公正な取引が行われること」「適正賃金が支払われること」「環境を保全し修復すること」など、2018年にファッションレボリューションが制定した10のマニュフェストをテーマとして掲げます。 今年も日本を含む各国で様々なイベントが行われる予定です。日本における最新のイベント情報はFashion Revolution Japanの公式インスタグラムをチェックしてみてくださいね。 エシカルファッションを知るために 出典:pexels.com 最後に、私たちがファッションレボリューションに参加する方法を見てみましょう。 ファッションレボリューションウィークのイベントに参加してみる 前述した通り、ファッションレボリューションウィークには、東京を中心にイベント行われています。実際に話を聞き、体験することでエシカルファッションがぐっと身近になるはずです。 SNSでタグ付けしてみる 自分の洋服のロゴがわかる写真とともに「#whomademyclothes(誰が私の服をつくっているの?)」のタグをつけてSNSに投稿することで、ファッションレボリューションのムーブメントに参加できます。 ファッションレボリューション公式SNSをフォローする ファッションレボリューション公式のSNSでは、ファッションに関して学べる投稿が数多くあります。また英語ですが、YouTubeチャンネルでもたくさんの情報を得ることができます。フォローしてファッションの在り方を考えるのも一つの方法です。 他にも、EU市民であれば、Good Clothes,Fair Pay(ファッション産業に携わる人の生活賃金を要求するための署名活動)に参加できます。 ファッションレボリューションデーである4月24日には、今着ている洋服はどこでどのようにして作られたものなのか、自分自身はどのような方法でエシカルファッションを取り入れるのか、考えてみてはいかがでしょうか。 Fashion Revolution JapanInstagram https://www.instagram.com/fashionrevolutionjapan/Fashion RevolutionInstagram https://www.instagram.com/fash_rev/YouTube https://www.youtube.com/channel/UC0JS74vyisaHej_xEq_zZ1w
グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。
世界中で衣服の大量消費・大量廃棄の問題が取りざたされる中、不要になった衣類を捨てるのではなく、新しい素材として再利用する動きが進んでいます。今回は、不要な衣服を原料とするファイバーボード「PANECO(パネコ)」を開発した株式会社ワークスタジオを取材。パネコ開発の背景にある、廃棄衣服の問題意識やサーキュラーエコノミーの考え方について話を伺いました。 インテリアとして生まれ変わる廃棄衣服 誰もがファッションを手軽に楽しめる時代。その一方で、衣服のライフサイクルが早まり、それが大量廃棄に繋がっているとされている。環境への負荷を最小限にとどめ、持続可能な社会を作っていくために、衣服の大量廃棄は私たちが今すぐに向き合わなければならない問題のひとつだ。 そんな中、一つの新しい技術が今注目されている。廃棄になるはずだった衣服が原料になっているファイバーボード「PANECO(パネコ)」だ。パネコは、衣服を細かく粉砕し、特殊な技術を用いて作られている。現在は主に、大手アパレルブランドの内装や什器、企業の受付カウンターとして使用されることが多い。 パネコが什器として使用されているFREAK'S STORE(株式会社デイトナ・インターナショナル)。写真は、アミュプラザ博多店 また、パネコの大きな特徴の一つとして、木製のボードのように加工がしやすいという点が挙げられ、コースターやハンガーなど、デザインや使い方次第で様々な製品を生み出すことができる。 衣服由来ということもあり、パネコの質感やカラーも特徴的だ。使用する衣服次第では様々な色のボードを作ることができ、子ども部屋のインテリアにもなりそうなカラフルで可愛らしいものもある。 サーキュラーエコノミーを取り入れたミニマムなデザイン パネコのボードがサステナブルであるのは、不要になった衣服を原料としている点だけではない。「パネコは繰り返しボードとして再利用することが可能で、役目が終わった時のことまで考えて生産されています。」そう語るのは、株式会社ワークスタジオの篠嵜さんだ。「使用後のボードは再度、粉砕し原料として使用できます。パネコを使用することにより、廃棄物を減らすことが可能となります。」手放すときのことも考えて生産するサーキュラーエコノミーの考え方が取り入れられているのだ。 例えば今までは、什器が大掛かりに入れ替えられていた店舗の内装リニューアルも、パネコのような環境配慮型の素材選定や設計により廃棄物を出さず、ミニマルでシンプルな入れ替えが実現する。 パネコは衣類だけでなく、スニーカーや木材を原料に混ぜ込んで作ることもできる 洋服が行きつく先を視察することでより深くファッションロスを考える ワークスタジオは、もともとは什器のデザインなどを行っており、アパレル業界ともかかわりの深い会社だった。衣類からもボードを作れるのではないかという話から、洋服の大量廃棄問題を知ることとなり、約3年の研究を経て、リサイクルボードであるパネコの開発に成功した。 ワークスタジオでは、洋服の廃棄問題に本格的に取り組みたいとの思いから、代表と社員が世界中から古着が集まるアフリカのガーナを訪問。先進国で不要となった衣服の行く末を実際にその目で見てきた。 ガーナでは、マーケットに各国から届いた古着が届けられ、商人は売れそうな洋服を見極めて持ち帰るが、売れないと判断された洋服は捨てられてしまいゴミとなる。ガーナに届けられた衣類の多くが廃棄になってしまうというのが現実だ。さらに、不要とされた洋服はゴミになるといっても焼却処分されるわけではない。衣類はゴミ置き場に運ばれると、そのまま積み上げられ、見上げるほど巨大なゴミの山の一部となる。ゴミの山のすぐ近くには住宅もあり、人々の生活がある。隣接する海にも、ゴミの一部が流れ出て、洋服が波の打ち付ける砂浜に埋まってしまい、どんなに引っ張っても回収できない状態になっているという。 状況は違うにせよ、日本でも毎日大量の洋服が捨てられていく。私たちも他人ごとではなく、一人ひとりが考えていかなくてはいけない大きな問題だ。 展示会では廃棄になった服の山を表現。来場者の目をひいた 「都市森林」から価値あるものを作り出す 「都市鉱山ということばがあるように、私たちは都市森林があると思っています。都市森林とはクローゼットに眠っている衣服のことで、それも立派な資源のひとつと考えています。」篠嵜さんは話す。「1つの考えとして、我々、消費者自身が何かを購入する時に、モノのライフサイクルを考えることが大切だと思います。」 輸送時の環境負荷なども考えてアップサイクルやリサイクルはその土地で行う「地産地消」のかたちをとるパネコ。次は、海外でも、その国や土地で出た廃棄衣類を原料に、ファイバーボードを製造する技術を広めていく予定だ。 持続可能なファッションを目指すために 国内で毎日何万トンもあるといわれる洋服の廃棄。今私たち消費者には大きな意識の変革が求められている。必要以上に購入せず、一枚の洋服を大切に長持ちさせること。それでも不要になった衣服はパネコのような選択肢があるということを知っておきたい。今後店舗でパネコを見かけたときは、未来に向けて持続可能なファッションとはなにか、今一度考えてみてほしい。 PANECO®公式HP https://paneco.tokyo/
エシカル・サステナブルな界隈で様々な活動をしている筆者が、「エシカルな買い物」というテーマで2022年のBest Buyをご紹介。1年を通してたくさんの商品に触れた中で、購入して本当に良かったものをセレクトしました。ファッション編とプロダクト編に分け2回にわたりお送りします。今回はファッション編です! プロダクト編はこちら Heralbony×Kapok Knotのダウンストール 長年応援している「ヘラルボニー」が「カポックノット」とコラボレーションしたダウンストール。 ここ数年で急成長し露出も増しているのでご存知の方も多いと思いますが、ヘラルボニーは“異彩を放て”をスローガンに、福祉×アートという軸で幅広く活動し、“障害”のある人たちの可能性を切り拓いている企業です。筆者はローンチ間もない頃に出会い、以来ずっと応援しておりイベントやポップアップにも足を運んでいます。 一方、カポックノットは「カポック」という木の実から採れる繊維をダウンのように用いてプロダクトを作っているファッションブランド。従来のダウンに比べ軽く、さらに吸湿発熱機能があるという軽くて温かいアニマルフリーな新素材が特徴です。 その2ブランドがコラボレーションしたダウンストールが、昨年10月下旬に大阪の阪急うめだ本店で開催されたヘラルボニーの催事内でお披露目されました。3色展開されており、筆者が選んだのは「風のロンド」という作品が描かれたベージュのストールです。ちなみに、両社のコラボレーションは一昨年にも一度行われていました。 Heralbony公式HP https://www.heralbony.jp/ Kapok Knot公式HP https://kapok-knot.com/ amaitoのキャップ 鹿児島県、奄美大島の染め職人さんのブランド「あまいと」から購入したキャップ。藍染は有名ですが、泥染はご存じでしょうか? 着物の大島紬を作る際に用いる伝統的な染色技法なのですが、粒子や成分が他とは異なり、奄美の泥でないと出せない風合いがあるそうです。昨年の晩夏にボランティアで参加したチャリティーイベントで、あまいとを展開する一般社団法人Amamiしま作捌繰(あまみしまさばくり) と出会いました。 以前から染色に関心を持っていたので惹かれ、何にするか迷った結果、このキャップを購入。初めにテーチ木(車輪梅)と呼ばれる植物で媒染(ばいせん:染料を繊維に定着させる工程)し、ツバは藍、パネル(ハギ)は藍の部分と泥の部分をそれぞれ筆で色を付けていく。そんな手間がかかった、個性的なキャップがとても気に入っています。 amaito公式HP https://sabakuri.base.shop/ one novaのアンダーウェア 毎年一着買い足している「ワンノバ」のボクサーパンツ。手持ちの数を増やしたくなるほどに良いのです! このオリーブグリーンは昨年5月ころに数量限定で販売されたカラーでした(現在は販売終了)。 立ち上げ当初から「世界一“透明な”パンツ」と掲げ、素材や生産背景を透明化し、丁寧にユーザーに伝えていました。そういったストーリーの面だけではなく、最高の穿き心地もが気に入っていて、自分用に買い足したり、同性におすすめしたりしています。まるで穿いていないのではないかというくらい下着の存在を感じさせません。勝負パンツにしてくれている友人もいます。 昨年8月にリニューアルを行い、メンズのボクサーパンツのみだったラインナップが、ユニセックスのボクサーパンツとウィメンズのブラジャー、ビキニパンツの4種類に増えました。これを男性だけが味わっているのはもったいないと思っていたので、着用できる人の幅が広がったのはファンとして喜ばしい刷新でした。 onenova公式HP https://onenova.jp/ children of the discordance × UGGのブーツ ファッションブランド「children of the discordance(以下、チルドレン)」がムートンブーツで有名な「UGG」とコラボレーションしたブーツ。こちらに関してはエシカルブランドというわけでも、エシカルな売り文句があるものでもありません。ただ、2つのブランドそれぞれに、エシカルなマインドが備わっています。UGGは原料調達やクラフツマンシップを大切にしており、LGBTQ+などのマイノリティの支援も積極的に行っています。チルドレンはアップサイクルやフェアトレードを積極的に取り入れています。大きく打ち出してはいないものの、デザイナーから、生産に携わるすべての人への感謝が伝わってきます。元はデザインが好きで購入していましたが、過去に読んだインタビュー記事でもそのような内容があり、想いと背景を知ってよりファンになりました。ライニング(靴の内側)にウールとリヨセルの2種類の繊維を使用したり、プラスチックフリーでゴミがほとんど出ないような梱包方法であったり、原料選定や包装 からもエシカルマインドを感じられます。 UGG公式HP https://www.ugg.com/jp/ children of the discordance公式HP https://www.childrenofthediscordance.com/ 【番外編】 最後に、番外編として昨年経験した、エシカルな購買体験をシェアします。エシカルファッションの幅を広げる選択肢としてぜひ参考にしてみてください。 RAGTAGのイベントで購入した、ステラマッカートニーのジャケット 昨年ワールド北青山ビルの1Fスペースで開催された、ユーズドセレクトショップ「RAG TAG」とクリエイターとユーザーをつなぐプロジェクト「246st.MARKET」のコラボイベント。そこで購入したのがウィメンズのテーラードジャケットです。(筆者は男性で、本来であればボタンのかけ方が反対ですが、あまり気にせず思い切って購入しました。) イベントは “GOOD FOR FUTURE” をテーマに、RAGTAGの倉庫にクリエイターが足を運び、商品をセレクトして自身の商品とともに展示販売をするという催しでした。会場にはファッション好きが大勢来場。有名ブランドの新品同様の古着もあり、中には数十万円するものまで…! 古着を購入し、おしゃれを楽しむのも立派なエシカルファッションです。現役で活躍しているクリエイターたちのセンスに触れられる購買体験は、ファッションの楽しさを感じながらエシカルアクションができる面白いイベントだと感じました。 RAGTAG公式HP https://www.ragtag.jp/ 246st.MARKET公式HP https://246stmarket.com/ KEEPWEARINGのプロジェクトで購入したメリノウール100%Tシャツ 楽しく社会問題を解決しようと立ち上がった大学生によるプロジェクト「KEEPWEARING」から、メリノウール100%のTシャツを購入しました。KEEPWEARINGは、昨年の4月1日からの100日間、あるチャレンジを始動。この試みに賛同し、参加してみました。100日間のチャレンジ、それは名前のKEEPWEARING が示す通り、“着続ける”というものです。ウールマークカンパニーが「体温調整」「防臭性」「汚れにくい」「手入れが簡単」などの特徴を示しているように、ウール(羊毛)は、天然の機能性素材。 多くの人は夏も冬も機能性インナーに助けられていると思いますが、機能性インナーは基本的に石油由来の化学繊維を使用していて、洗濯をするとマイクロプラスチックが流れ出てしまうのが難点でした。無洗百人チャレンジと名付けられたプロジェクトでは、100日間洗わずに着続けることで、このウールの特性を再確認し、洗濯という行為について考え直すことができます。 メリノウールの生地は、REDA JAPANが提供。REDAはイタリアのスーツ生地メーカーで、Bコープ認証やグローバルリサイクルスタンダード、ウールマーク認証など数々のエシカルな認証を取得しています。 ファウンダーの宮沢さんに聞いたところ、確認できただけで100人中25人が達成したとのことでした。(筆者は達成しました!)ウールが高機能であっても、そのキャパを引き出してあげるのは、やはり着用者の仕事。脱いだらハンガーに掛ける、スチームをあてる、風通しの良いところに干すなどしていたのですが、100日間臭いは発生しませんでした。プロジェクトに参加してみて、知識として知ってはいたウールの特性を、身をもって体験できた機会になりました。 KEEPWEARING公式HP https://keep-wearing.stores.jp/ 2022年のエシカルファッションを振り返って エシカルマインドが根付く魅力的なファッションアイテムが目白押しだった2022年。企業同士のコラボも多く見かけました。 大量消費・大量廃棄を懸念し買うことを躊躇してしまったり、環境や人、動物を傷つけないよう慎重になりすぎてファッションを楽しめていない方もいるかもしれません。しかし、最近はサステナブルでエシカルなブランドがどんどん増えています。ぜひ楽しくエシカルに買い物をするための参考にしてみてください。
CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。 こちらの後編では、CACTUS TOKYO代表の熊谷渓司さんと製品製作に携わるAtelier K.I.代表池田耕平さんのトークセッションのレポートを紹介します。 前編の工房ツアーレポートはこちら <スピーカー> CACTUS TOKYO代表 熊谷渓司(くまがいけいじ)氏 北海道出身。2017年に一橋大学商学部を卒業後、大手産業機械メーカーに入社し、経営企画・企業変革を担当。自然が好きであることをきっかけに、「人と自然が共に生きる社会」を目指して、2020年春にCACTUS TOKYOを創業。 Atelier K.I.代表 池田耕平(いけだこうへい)氏 革鞄・革小物のメーカーで経験を積んだ後、複数メーカーからサンプル製作の依頼を受けるサンプル職人として従事。CACTUS TOKYOの製品制作を担当。自身の皮革ブランドPRO-MENER(プロムネ)を立ち上げ、革職人の育成および指導にも尽力している。著書として『一流サンプル職人が教える 最高級ブランドバッグの仕立て技術 (Professional Series)』などを刊行。 少子高齢化が著しく進むなか、日本は労働人口の減少という社会問題に直面しています。革産業も例外ではなく、高齢化や海外製品との価格競争の激化で、産業を担う職人が不足しています。池田さんは職人の視点から、今の日本の社会問題にも通じる革産業の現状を語っています。 長年続く低賃金と価格競争で、日本では革職人不足が問題に 池田さん:今の日本の革産業の大きな問題は、未来を担う職人が少ないことです。職人の数が少ない理由として挙げられるのは、給与が安いことです。時給換算にすると約877円で、国内の平均時給を下回る数値となっています。給与が安い理由は、大手からの依頼を受けても価格交渉が難しく、技術水準が上がっても、原料が値上がりしても、工賃が上がらないからです。 物価の安い国との価格競争も一因です。20~30年前、日本の革製品の生産拠点は中国に移りました。私は前にいた国内の会社で製品サンプルを作っていましたが、95%以上が中国生産でした。20年くらい前からは中国生産の製品の価格も上昇。ベトナムやインドなど、より安く生産できる国や地域に生産拠点を移すといったことを繰り返している間に、日本の職人が減ってしまったのです。 問題解決には、革産業の現場を知ってもらうことから 革産業の職人が減っている今日の日本。池田さんは、まず、革職人が置かれている労働環境を知ってもらう必要があると話していました。 池田さん:今、「国内でつくりたい」というブランドやメーカーがすごく増えています。その理由として挙げられるのが、円安で海外製品の価格が高くなったことです。また、今の時代、海外でまとまった量を作っても、それが売れるような時代ではありません。大量消費の時代が終わり、「国内で作ろう」と思い立ったときには、もう職人さんがいないのです。職人の仕事は分業制であり、全工程において職人さんがバランスよく必要です。革製品にどれだけ手間がかかっているかを理解したうえで購入してもらうことが、この問題の解決には一番大切なのではないかと思います。 人材育成と柔軟な働き方で職人不足問題に取り組む 池田さんは、本業の革職人と並行して、職人育成の教室を運営。卒業後、生徒のなかには、職人としてAtelier K.I.のメンバーとして働くという人もいるそうです。また、Atelier K.Iでは、職人のクオリティを重視し、個人のライフスタイルやライフステージに寄り添った働き方にも取り組んでいます。 出典:https://atelier-ki.com/school/students/student-interview-02/ 池田さん:最初の何年かは、お互いの価値観の共有が必要なので、工房で働く形となりますが、家でこなせる能力があれば、こちらから専用のミシンを提供し、作業できます。パートタイムや在宅でもできる働き方もあり、子どもがいても自宅で働ける体制を整えています。 環境に優しいサボテンレザーで社会にインパクトを 池田さんの革産業のお話の後は、熊谷さんがサボテンレザーの可能性について語っています。 熊谷さん:サボテンレザーに着目したきっかけは、環境問題です。私はゴミ問題に関心があって事業を始めましたが、サボテンレザーを知れば知るほど、環境面や利便性においてポテンシャルがある素材だと感じました。 個人的には本革も好きですが、本革は素材自体が腐らないよう、工程でたくさんの水や薬品などを使います。日本のような法律が整っている国では、排水処理が必要であるものの、排水処理にもエネルギーが消費され、CO2が排出されるので、環境負荷がともないます。それに比べてサボテンレザーといった植物由来のレザーは、環境負荷が低いので、使う価値があると思っています。 最後に熊谷さんは、今の社会と未来に向けたメッセージを発信しています。 熊谷さん:私は「環境問題を何とかしたい」という思いでサボテンレザーをテーマにしたブランドを立ち上げました。その製品の認知度のアップと売り上げが増えることで、今ある革産業の問題も一緒に解決したいと思っています。私が目指しているのは、環境負荷の低いサボテンレザーが世の中に愛され、みんなが適正賃金で働ける未来です。 最後に~工房ツアーに参加してみて感じたこと~ (写真左から)杉田さん(CACTUS TOKYO)、熊谷さん(CACTUS TOKYO代表)、池田さん(Atelier K.I.代表)、井上さん (CACTUS TOKYO) 前編の記事にも記した通り、筆者がこちらの工房ツアーに参加したきっかけは、サボテンレザーに興味を持ち、実際の生産現場を見たいということでした。実際に参加すると、CACTUS TOKYOスタッフの方のサボテンレザーと環境問題の解決に関する熱い思いが伝わってきました。 また、Atelier K.I.池田さんの革産業における深刻な職人問題のお話には、驚きを隠せませんでした。まずは私たち消費者が高い技術で作られる製品の価値を知り、その上で買う物を選んでいけたらと思いました。 今回の記事を担当した筆者は、二人の子を持つ母親です。子どもたちの未来にも関わる今の日本の社会問題を他人事ではなく自分事として捉えていきたいと改めて思うようになりました。 前編のレポートはこちら CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube
CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。東京浅草で行われたイベントに参加してきました。その様子を前後編でご紹介します。 CACTUS TOKYOについて CACTUS TOKYOは、2020年1月に環境問題の解決に向けた事業としてスタート。代表の熊谷氏は、以前より自身のブログでの情報発信や、NPOでのボランティア活動などで環境問題に取り組んできました。活動のなかで、人々の関心を集めるには“おもしろい”“楽しい”という要素が必要であることを実感。より多くの方に環境問題に興味を持ってもらうツールとして、「サボテンレザー×ファッション」に可能性を見出しました。 CACTUS TOKYOでは、サボテンレザーを日本に広めるために精力的に活動。2022年に実施したクラウドファンディングでは224%を達成し、2回目のクラウドファンディングも成功を収めました。都内の大手百貨店への出品やテレビメディアへの出演、SDGs系のイベントの参加などを通して、着実にサボテンレザーの認知度を上げています。 そして、熊谷さんが製品の生産を行っていく上で直面したのが、日本の革産業が抱える、職人の減少や後継者不足の問題です。日本のものづくりの文化を守っていきたいとの思いから、工房ツアーを開催するなど、製品の背景にスポットライトが当たるような企画にも力を入れています。 CACTUS TOKYO初!工房ツアーレポート 今回のイベントは、実際の工房で、革職人の技術やものづくりの考え方を学びながら、普段は見ることのできない生産過程を知ることができるというもの。生産に携わる方たちと直接話ができるというのも魅力です。浅草に拠点を構えるAtelier K.I.の工房で行われたツアーは、CACTUS TOKYO代表熊谷渓司さんとAtelier K.I代表池田耕平さんのご挨拶とスタッフの紹介からスタート。熊谷さんの「ブランドを通じて世の中を見てほしい」という心のこもったメッセージが心に刺さりました。 この前編では、製品ができるまでの裏側とツアー参加者の三角財布づくり体験をレポート。後編では、CACTUS TOKYO代表熊谷さんとAtelier K.I代表池田さんのトークセッションを取材しています。 サボテンレザーとは CACTUS TOKYOの製品の特長は、サボテン繊維と植物由来の樹脂によって作られたサステナブルな「サボテンレザー」を使用している点です。サボテンレザーの強みは、主に次の3点が挙げられます。 ①手触りと見た目が本革に近く、ファッション性が高い②本革などと比較すると、擦り傷や水に強く、軽い③本革に比べると環境負荷が低い 特に本革のようなクオリティを求める方には、サボテンレザーがおすすめです。また、様々な理由から、サボテンレザーは環境にかかる負担が小さく、地球に優しい製品であることが知られています。 サボテンレザーがサステナブル×エコである理由 サボテンは雨水のみで生育し、灌漑施設を構える必要がないため環境に過度な負担をかけません。サボテンレザーができるまでの段階もエコで、なめし工程などで大量に水を使う本革と比べて、約1,647分の1の水で完成します。 エコな素材に加えて、CACTUS TOKYOでは生産過程から使用、廃棄に至るまでの環境負荷を可能な限り抑えています。CACTUS TOKYOの製品は一般的なブランドの製品と比べて、63%のCO2削減を実現しています。 出典:CACTUS TOKYO公式HP CACTUS TOKYOの製品ができるまで 革製品が作られる工程紹介は、池田さんのデモンストレーションと動画を用いて行われました。製品によって工程・内容・順序などが異なる場合がありますが、基本的な流れとしては、以下の4つのフェーズです。 今回はサボテンレザーを使った長財布の工程を実際に見ることができました。 ①裁断(革をパーツごとに切り取る作業) 専用の金型を革素材に当て、油圧を使った錘によって上からプレスをし、サボテンレザーをくり抜く。 ②漉き(革を適切な薄さに調整する作業) 段差がなくフラットに仕上がるよう、革の端部分の厚さを調整する、漉く(すく)作業を行う。 難易度が高く、かつ繊細な工程のため、専門の職人が対応する ③貼り合わせ(パーツ同士を貼り合わせる作業) 革製品専用の糊料を貼り付ける作業を繰り返す。製品を長持ちさせるために芯材は、必要不可欠。ミリ単位でずれないよう、細やかな配慮が必要になる。 ④縫製(専用ミシンで貼り合わせる) パーツを固定するために専用のミシンで縫い合わせる。長財布の場合、②の漉く過程で縁部分を薄くすることによって、ミシンがかけやすくなる。 ○最終チェック 4つの工程が完了したら、出来上がった製品の最終確認。ファスナーの開閉に問題がないか、ゆがみがないかなどを抜けもれなくチェックを行う。 以上がCACTUS TOKYOの製品ができるまでの流れです。池田さんの実演で特に印象的だったのが、角部分の緻密な糊付けです。角の生地をきれいに、かつ細かくギャザーをつくる工程は息を吞むほどの美しさでした。 参加者たちの質疑応答の時間もあり、天気と湿度をチェックしながら生地のコンディションや糊料の乾き状態などを考え、臨機応変に工程を変えることなどを教えていただきました。池田さんの普段の作業の様子を垣間見ることができ、大変有意義な工程紹介でした。 参加者の三角コインケースづくり体験 池田さんの革製品の工程説明の後は、参加者が実際にサボテンレザーの三角コインケースづくりにチャレンジ! 池田さんのアドバイスを受けながら、笑いありの和やかな雰囲気のなか、我を忘れてコインケースづくりに取り組みました。 ホックの凹凸をつくる作業は、斜めに曲がらないよう緊張しましたが、楽しいひと時でした。池田さんの作業を間近で拝見し、改めてモノづくりに携わる方への「感謝」の気持ちがこみあげてきました。 参加者の作品。一通り作れたので、ホッと一安心 CACTUS TOKYOの製品の背景や想いを知ることができたツアー 普段の生活では、なかなか見られない革職人の現場。製品ができるまでの工程を実際に見ることで、新しい視点を得られ、価値観も変わります。私自身、工房を見学し、職人さんのモノづくりへの情熱をリアルに感じることで、職人さんが想いを込めて作った製品を選んでいきたいと思うようになりました。 CACTUS TOKYOのアクションが社会にどのようなインパクトを与えていくのか、今後も注目していきたいと思います。 後編は、環境問題や日本の職人の後継者不足などに焦点を当てた熊谷さんと池田さんのトークセッションです。 CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube
この数年でファッション業界でもSDGsやリサイクルにフォーカスした取り組みが進んでおり、SNSを中心にさまざまな情報が発信されています。その取り組みのなかでも捨てられるはずだったものや材料を価値のあるものに作り直し、新しいプロダクトとして蘇らせる「アップサイクル」が注目されています。 本記事は、アップサイクルの概要と、日本各地で展開するアップサイクルのブランドについて紹介していきましょう。 アップサイクルとは? 出典:pexels.com アップサイクルとは、商品の製造行程によって出された廃棄物や副産物、素材の損傷・劣化などで使えなくなったものを、デザインし直し、全く別の新しいプロダクトとして創り出すことを指します。 廃棄物を活用することでゴミの削減になるため、CO2の削減など環境問題解決のためのアクションとして、今、注目されているリサイクル手法の一つです。 例えば耐用年数を越えたソーラーパネルをテーブルとして利用したり、擦り切れたタイヤをカバンに作り変えたりと、アップサイクルは家具業界からファッション業界まで、さまざまな業界で注目されています。 アップサイクルの例 出典:pexels.com 実は私たちの身の回りにもアップサイクルの例があります。一例を紹介していきましょう。 ・規格外野菜:スイーツやお菓子の素材として活用 ・海洋プラスチックごみ:プレートやランプシェードのかさとして活用 ・不要なパウダー系コスメアイテム:特殊処理してアート(絵)の素材として活用 ・オフィスや学校の廃棄物:キャビネットや跳び箱を家具としてリメイク ・自転車チューブ:ベルトの素材としてリメイク ・破棄される生花:ドライフラワーとして活用 このように実にさまざまなアップサイクルのプロダクトがあります。視点を変えるだけで、新たな付加価値が生まれるということがわかりますね。 おすすめアップサイクルのファッションブランド ユニクロやH&Mでは、不要になった衣料を回収し、それらを加工し、新しい衣服として生み出す取り組みが進んでいます。こちらの2つ以外にも、独自のアイデアで、アップサイクルに取り組んでいるファッションブランドがありますので、おすすめを紹介していきましょう。 Öffen(オッフェン) この投稿をInstagramで見る Öffen / オッフェン(@offen_gallery)がシェアした投稿 Öffen(オッフェン)は、今、深刻な社会問題になっているプラスチックゴミに着目。シューズの素材にペットボトルをリサイクルした糸を活用しています。製造工程を極力少なくすることで、工場のCO2削減にも尽力。シンプル、かつ上品な雰囲気が漂うデザインは、ファンやフォロワーの心を惹きつけています。 Öffen(オッフェン)公式ホームページ LOVST TOKYO この投稿をInstagramで見る LOVST TOKYO(@lovst_tokyo)がシェアした投稿 LOVST TOKYOは、廃棄リンゴから生まれた「アップルレザー」を中心に野菜やフルーツなどをアップサイクルしたリュックやハンドバッグなどを販売。リンゴを加工する際に出る大量のリンゴの絞りかす(皮や芯)をどうにかしたいと開発されたアップルレザー。レザーの風合いを維持できるよう、適切な分量で樹脂と配合し、撥水性にも優れています。 LoVst-Tokyo 公式ホームページ nest Robe この投稿をInstagramで見る nest Robe(@nest_robe)がシェアした投稿 nest RobeのUpcycleLino(アップサイクルリノ)シリーズは、深刻な問題の一つである衣料ロスに着目。裁断くずができるだけでないように自社工場で工夫を重ねたうえで、製作のプロセスでどうしても発生する裁断くずを再び糸にする方法を考案。裁断くずは細かく粉砕、原綿の状態にし、オーガニックのバージン綿と一緒に紡いで糸を作り上げています。自社の商品の裁断くずを原料とし、商品を作り、自社で売るという完全循環型の仕組みとなっています。もともと糸からこだわって選定しているので、上質な生地の衣服が出来上がります。 nest Robe 公式ホームページ SPINGLE MOVE(スピングルムーヴ) この投稿をInstagramで見る スピングルムーヴ公式アカウント(@spingle_move)がシェアした投稿 シューズブランド「SPINGLE MOVE」は、広島県府中市に本社を構える株式会社スピングルカンパニーによる日本製ハンドメイドスニーカーブランド。こちらのブランドでは、「ONGAESHIプロジェクト」として、国内外から広島や長崎に送られる千羽鶴を、再生糸として加工し、シューズの生地としてアップサイクルをしています。このプロジェクトには、千羽鶴が新しい製品に生まれ変わり、平和を願う人々の元に届いてほしいという願いが込められています。 スピングルムーブ 公式ホームページ 千羽鶴をアップサイクルした「ONGAESHIプロジェクト」コラボモデル 季縁 この投稿をInstagramで見る 季縁-KIEN- kimono dress(着物ドレス)(@kien_kimonodress)がシェアした投稿 季縁は、京都を拠点にした着物リメイクのショップです。選りすぐりのヴィンテージ着物をメンテナンスし、新たな反物の状態にして、それを現代の生活に合うよう、ドレスなどへと再生。衣類の過剰生産に疑問を投げかけ、日本の美しい伝統文化を守っていく取り組みを行っています。「祖母が使っていた着物のサイズが自分の体形とマッチしない」「箪笥に眠っている着物をどうにかしたい」という方のために、持ち込んだ着物のアップサイクルも行っています。 季縁-KIEN 公式ホームページ アップサイクルアイテムで、エコとおしゃれを両立しよう 今回は、廃棄されるはずだったものを有効活用し、アップサイクルしたプロダクトを扱うファッションブランドをピックアップしました。洋服や靴、バッグを買おうとするとき、アップサイクルのブランドを選ぶことは、ファッションアイテムの大量生産にストップをかけ、ゴミを減らすというアクションに繋がります。 デザイン性と機能性が高いものが多く、エコであるのはもちろん、ファッションアイテムとして秀逸なものが揃うアップサイクルブランド。ぜひお気に入りのアイテムを見つけてみてはいかがでしょうか。
金や宝石などを使ったジュエリーは古くから人々を魅了し続けています。でもその美しいジュエリーの裏側で、人が傷つけられ自然が犠牲になっているとしたら…? ジュエリーは、生産する際の労働の搾取や環境破壊が大きな問題になっています。ずっと身に着けたいものだからこそ、生産過程が分かり、安心してつけられるものを選びたいですよね。 この記事では、エシカルジュエリーの魅力とおすすめのブランドをご紹介します! エシカルジュエリーとは? 出典:pexels.com エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味。つまり、エシカルジュエリーは、生産に携わる人や自然環境に十分に配慮されて作られているアクセサリーのことです。例えば生産する人の労働環境が守られていたり、生産過程における環境負荷が少ないなど、人や自然、動物を傷つけずに作られています。最近ではゴミになるはずだったものをアップサイクルして作られたアクセサリーも多く登場しています。 エシカルジュエリーのブランドでは、その生産の背景を明示して透明性を保っており、私たち消費者も安心して手に取ることができます。この記事では、国内でも増えてきているエシカルジュエリーブランドをご紹介します。 ジュエリーが抱えるたくさんの問題 出典:pexels.com 私たちの手に届くまで、ジュエリーはどのような過程をたどってきているのでしょうか。実は美しいジュエリーの裏側には、深刻な人権侵害や環境汚染などの問題がかくれているケースが珍しくありません。 例えば、金は採掘される際に、毒性の高い水銀が使われ、人々の健康や環境の大きな脅威になっています。鉱山の開発もたくさんの資源を必要とし、多くの二酸化炭素を排出するため、環境にとって優しいものとは言えません。また、ダイヤモンドはコンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)と呼ばれるものがあります。アフリカで内紛が起こっている地域では、ダイヤモンドが武器の調達資源になっていることがあるのです。劣悪な環境での低賃金労働や、児童労働も行われています。 これまでのジュエリーは、作る人の人権が守られていなかったり、環境汚染につながっているなど、多くの問題を抱えてきました。 エシカルジュエリーの特徴 出典:photo-ac.com そんなジュエリーの問題を解決すべく生まれたのが、人権や環境に配慮して作られているエシカルジュエリーです。エシカルジュエリーの特徴には以下のようなものがあります。 児童労働や強制労働などの労働搾取が行われていない 採掘する人の労働環境が危険なものではない フェアトレード(生産者と公正な取引がなされている) 生産者の自立支援が行われている リサイクルやアップサイクルされた素材を使用している 自然環境に配慮している この中のひとつではなく、ブランドによってはいくつか、もしくはすべてに配慮して作られています。 毎日身に着けるもの、また、婚約指輪や結婚指輪など一生大切にしたいものは、誰も傷つけないエシカルジュエリーを選ぶのがおすすめです。 おすすめエシカルジュエリーブランド 国内で購入できるおすすめのエシカルジュエリーブランドを集めました。ぜひジュエリーを買う際の参考にしてみてください。 HASUNA 日本のエシカルジュエリーの中でもトップの人気を誇るHASUNA。創業者がインドで劣悪な環境の鉱山とそこで働く人に衝撃を受け、立ち上がったブランドです。自らの足で環境などを確かめ、素材は産地と採掘工程がわかるものを使っています。金は働く人や環境に配慮されたエシカルゴールドを使用。また、各国で生産者の自立支援も行っています。オンラインショップの他、表参道には路面店があり、他の都市でも取り扱い店舗があるので、手に取って見ることができるのも嬉しいポイントです。https://hasuna.com/ この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 ERATHRISE エシカルジュエリーの人気ブランド。ジュエリーの多くの素材は発展途上国で産出されます。そこで働く人々とフェアに、伝統を受け継ぎながら、プロダクトを作り出しているEARTHRISE。ジュエリーに使われているのは、紛争の資金源とならないダイヤモンドや、フェアトレードのゴールド・シルバーなど。人や環境に配慮された素材と、それを加工する職人の高い技術が、高品質のジュエリーを生み出しています。表参道に路面店があり、各地でポップアップも開催しています。https://earthrise-j.com/ この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 MOTHERHOUSE 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもとバングラディッシュからスタートしたMOTHERHOUSE。今では関東に20店舗以上、近畿に8店舗、その他の地域や海外にも店舗が増え続けている人気バッグブランドです。もともとバングラディッシュで作られるバッグの販売から始まりましたが、現在はスリランカやミャンマー、ネパールのジュエリーも販売しています。石の個性を大切に、現地の職人の技術を生かして作られるネックレスやピアスは、ネーミングから強いメッセージ性を感じるものばかり。給与水準の高さや昇給制度など、現地ではトップクラスで働く環境が整備されています。https://www.mother-house.jp/ この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 GYPPHY どんなファッションやシーンにも合う、ファッショナブルなジュエリーが楽しめるエシカルジュエリーブランド。GYPPHYでダイヤモンドの代わりに使われるのは、人の手によって合成された宝石であるモアサナイト。モアサナイトは、ダイヤモンドにまさると言われる輝きと耐久性が大きな特徴です。鉱山開発もせず紛争の資金源にもならないモアサナイトは、まさにエシカル。最近は世界でファッション感度の高い人たちからの支持を集めている、新しい時代のジュエリーです。また、ゴールドやシルバーは、採掘の際に環境負荷を低減し、働く人の環境など、厳しく基準を設け、それをクリアしたものを使用。手に入れやすい価格も人気の理由の一つです。https://gypphy-shop.com/ この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 sobolon 環境に配慮した素材を使ったりアップサイクルされた素材を使うのも、エシカルジュエリーの特徴のひとつ。sobolonでは、海岸に漂着したプラスチックを使用してアクセサリーを作っています。クリエイターが海に出向き、海洋プラスチックを回収。その海洋プラスチックは、ひとつひとつデザインされ、思いのこもった加工を経て、かわいいアートのようなアクセサリーへと変身します。ひとつとして同じものがないアクセサリーは、身に着けるたびに海の大切さを思い出させてくれます。https://sobolon3695.thebase.in/ この投稿をInstagramで見る 海洋プラスチックジュエリーsobolon(そぼろん)(@sobolon3695)がシェアした投稿 大切なジュエリーだから他の人や環境を傷つけないエシカルなものを 出典:pexels.com 今回は、おすすめのエシカルジュエリーブランドをご紹介しました。毎日身に着けるもの、特別な日にプレゼントしたいもの、一生大切にしたいものだから、背景を知り、きちんと選びたいもの。美しいと思って購入しても、その裏で環境や人を傷つけていたら悲しいですよね。 私たち一人ひとりが、ジュエリーの素材がどこからきてどのように作られているかを知り、人にとっても自然にとっても優しいエシカルジュエリーを選ぶこと。そのことが、ジュエリーの裏にひそむ問題の解決への一歩となっていくのではないでしょうか。
私たちの生活を彩ってくれるファッション。しかし今アパレル産業は、持続可能ではない仕組みが大きな問題になっています。ファストファッションなどの広まりで、私たちがより自由に楽しく洋服を選べるようになった一方で、大量生産・大量消費が行われています。それは、生産の段階で作る人の低賃金労働に繋がることもあり、環境への負荷も大きくなります。また、すぐに買い替えることで大量の廃棄が生まれてしまうのです。 自然環境や生産に携わる人、動物を傷つけないファッションとは。この記事では、今日から始められるサステナブルなアクションをご紹介します。 サステナブルファッションとは? サステナブルファッションとは、「衣服の生産の段階から、着用、廃棄に至るまで持続可能である取り組み」のことです。 具体的には、以下のようなことが挙げられます。 生産から廃棄に至るまで、環境への負担が最小限に抑えられていること 素材は環境に優しいオーガニック素材や、リサイクル・アップサイクルされた素材を使用していること 作り手の健全な労働環境が守られていること 動物を殺傷せずに作られていること 生産する側は環境や人に配慮した商品開発を行い、消費者は商品ができる背景を知った上で商品を選んでいくことが、サステナブルファッションに繋がると言えます。 1枚の洋服の生産が環境にかける負荷 原材料の調達から始まり、生産、輸送、販売を経て私たちのもとに届く洋服。その過程だけでも、環境に対して実に多くの影響を与えています。 原材料を見ると、コットンなどの天然繊維は栽培において多量の水を必要とし土壌汚染にも繋がる一方で、合成繊維も石油資源などを使用しています。生産する段階でも工場などで水を多量に使用し、CO2も多く排出しています。 日本で小売りされている洋服は約98%が海外製。日本へ商品を輸送する際にもCO2が多く排出されることになるのです。原材料調達から輸送までの生産過程において、服一枚あたりに換算すると、CO2の排出が約25.5kg、約2,300ℓもの水が使われているとされています。私たちが何気なく購入、着用、廃棄する洋服が作られるのに、想像を超える大きな環境負荷がかけられているのです。 手放された半数以上の洋服がごみとして廃棄に 洋服を購入したあと、着用から手放すまでの洋服の扱いもまた大きな課題になっています。一人当たりの衣服の利用状況を見ると、手放す洋服よりも、購入する洋服の方が多くなっており、一年間一度も来ていない洋服は一人当たりに換算すると25枚もあるとされています。 また洋服を手放す際には、ごみとして廃棄される処分方法がリサイクルやリユースを大きく上回り、日本国内だけでも一日平均で、大型トラック約130台分もの洋服が焼却・埋立処分されているのです。 大量生産と低価格がもたらす労働問題 大量生産と低価格の洋服がもたらすのは、環境への負荷だけではありません。2013年にバングラディッシュで起こった、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれるビル崩落事故。死者1100名以上、負傷者2500名以上というこの悲惨な事故は、今のアパレルの生産構造がもたらすひずみが世に知れ渡る大きなきっかけとなりました。縫製工場、商店、銀行などがひしめき合っていたラナ・プラザ。ビルは違法に増築されており、亀裂が見つかっていたのにも関わらず放置された末に、大型発電機と数千台のミシンの振動がきっかけとなって崩壊したとされています。 バングラディッシュには、安価な労働力を求めて欧米や日本からたくさんのファッションブランドが進出していましたが、生産現場は劣悪な労働環境だったのです。この事故をきっかけに、ファッション業界において健全な労働環境や作り手との公正な取引(フェアトレード)が叫ばれるようになりました。 ファーやウールなど動物を殺傷し作られている素材も 環境の負荷が最小限に抑えられていること、立場の弱い生産者が搾取されていないことと同じく、生産する際に動物を傷つけていないこともサステナブルファッションの大きな要の一つです。生産のときに動物が傷つけられるファッションは、リアルファーやウールなどが例として挙げられます。 リアルファーは、キツネやウサギ、ミンクなどの動物の毛を利用しますが、それは殺された動物から刈り取られています。ファーをとるために飼われている動物は狭い金網などの劣悪な環境で育てられ、乱暴に扱われ、残虐な方法で殺傷されるのです。 プラダやグッチなど世界的なハイブランドをはじめ、今では多くのファッションブランドがファーフリー(毛皮の不使用)を宣言しています。日本における毛皮の輸入量も減少傾向にありますが、依然としてリアルファーを使用したファッションアイテムは流通しています。 また、広くは知られていませんが、ウールの生産現場において「ミュールジング」が採用されている場合もあります。ミュールジングとは子羊のときに汚れの溜まりやすいお尻の部分を切り取ってしまうことです。効率的に毛を刈り取ることができ生産性が上がるミュールジングですが、無麻酔で行われるため羊に大きな苦痛をもたらします。イギリスやニュージーランドなどではすでに廃止されている一方で、オーストラリアなどのウールの生産現場では規制などは特にありません。 サステナブルファッションのために私たちができること 想像よりはるかに大きな負担を環境にかけ、商品によっては生産者や動物を傷つけた先にあるかもしれない私たちの衣服。 ここからは、ファッションが持続可能なものであるために、私たち一人ひとりができることをご紹介します。 ①本当に必要なのか、衝動買いではないかを考える 私たちは、どのくらいクローゼットの中を把握しているでしょうか。必要であるか考える前に衝動的に購入した洋服はどのくらいあるでしょうか。実は、私たちの64%は自分の持っている服を把握しないまま、新しい服を購入しているという環境省のデータがあります。また、今ある服をあと1年長く着れば、日本全体で年間約4万トンの廃棄物の削減になるとされています。 本当に必要な時に、必要な分だけ購入すること。衝動買いをする前にもう一度必要かどうかを考えること。簡単なことですが、それがサステナブルファッションの大前提です。 ②フリマアプリやリサイクルショップを活用する 近年利用者が増えてきているフリマアプリやリサイクルショップでは、まだまだ着用できる洋服が売られています。新品同様の物が売られていたり、お店にはもう並んでいない限定品などを購入できる場合も。欲しいものがあったときはまず、そのようなショップを確認してみましょう。 洋服を手放すときにも、はじめからごみとして処分することを選ぶのではなく、フリマアプリに出品したり、他の人に譲るという方法を検討してみることが大切です。 まだ着られる洋服を廃棄してごみを増やすのではなく、なるべく再利用できるかたちをとることは、CO2の削減にもつながります。 ③クルエルティフリー・アニマルフレンドリーであるか確認する クルエルティフリーとは、残虐性(=cruelty)がない(=free)ということ。つまり商品を作るうえで動物を傷付けたり殺したりしていないことを指します。近年は技術の進歩とともに、エコファーなどが出回るようになっています。またレザーも本革やフェイクレザーの端切れを使用し、生産過程において環境に配慮されたつくりのエコレザーも充実してきています。 おしゃれのために動物を殺したり傷つけたりすることがないよう、リアルファーなどは買わないという選択を。 ④受注生産など在庫を持たない仕組みを持っているブランドを選ぶ シーズンや流行によって売れ行きが変わる洋服。その在庫を大量にかかえるということは、廃棄になる洋服が増える可能性があるということ。受注生産であれば顧客の注文を受けてから生産をはじめるため、在庫を最小限に抑えることができます。販売前に予約を受けてから必要分を発注するお店もあります。オーダーが入った時に作る、売れる予定のものを必要分だけ発注する、といった仕組みであれば無駄な在庫を作りません。 ⑤リサイクル、またはアップサイクル素材を使用しているものを選ぶ リサイクルは、ごみを一度資源に戻してそこから再び製品を作ること。最近注目されているアップサイクルとは、廃棄される予定だったもの(本来は廃棄されるもの)にデザインなどを加えることにより、そのモノの価値を高めることです。例えば捨てられるはずだった生地で新たに洋服を作る、流行りが終わってしまったファッショングッズをリメイクするなどがアップサイクルといえます。 リサイクルやアップサイクルされた素材を使用した洋服を取り入れることは、資源の有効活用に繋がります。 ⑥フェアトレードの商品を選ぶ フェアトレードとは生産者との公正な取引のことを指します。大量生産で極端にコストの安い商品の裏側には、低賃金なうえに過酷な環境下で労働させられる作り手がいる可能性があります。グローバル化が進んだことにより、そのような労働を強いられているのは主に発展途上国の人たちです。 衣服を購入することによって、生産者を搾取するようなことがないよう、フェアトレードのマークや記載があるかどうかをチェックしてみましょう。 環境や作り手のことを配慮しながらファッションを楽しむ 私たちにできることは、今ある洋服を大切にし、手放すときの方法を考えること。購入するときは本当に必要かどうかを考えた上で、どのような素材を使って、どのように作られているかという商品の背景を知ることが大切です。 環境負荷の高いものや生産者を搾取するもの、動物を傷つけるものは購入しないという私たち一人ひとりの選択が、ファッションを持続可能なものへとしていく大事なアクションになります。 【参考】環境省ホームページ https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
素材や形、トレンド、自分に似合うかどうか。洋服を選ぶときに大切にしていることは人それぞれ。でも、もし自分が身に着けている服が、知らず知らずのうちに誰かを傷つけていたら…?これから先、私たちが洋服を選ぶ際の基準にプラスしたいのが、“生産者にとっても消費者にとってもハッピーであるかどうか”です。 今回は、フェアトレードファッションの草分け的存在であるピープルツリーからフェアトレードファッションの根本的な考え方を学び、その大切さを一緒に考えます。 ●ピープルツリー 1991年に2人のイギリス人によって日本で設立されたフェアトレード専門ブランド。オーガニックコットンの衣類や、チョコレートやコーヒーなどの食品、雑貨など幅広くオリジナルで展開。日本では自由が丘と立川高島屋S.C.に直営店がある他、全国のセレクトショップなどで取り扱いがある。WFTO(世界フェアトレード連盟)に加盟し、製品にはWFTO保証ラベル(原材料から生産までフェアトレードを保証するラベル)を付けている。 お話を伺ったのは、ピープルツリー広報の鈴木啓美さん。2023年のファッションレボリューションウィークで参加者からの反響が大きかった、映画「メイド・イン・バングラデシュ」の解説を交えながら、フェアトレードについて基礎的なところからお聞きしました。 そもそもフェアトレードってなに? ――ファッションの話の前に、フェアトレードとは何かを教えていただけますか。 端的に言うなら、貧困問題と環境問題をビジネスの力で解決しようとする取り組みです。直訳すると「公平・公正な貿易、取引」となります。スポーツで公平性を表すフェアプレーの“フェア”をイメージしていただけると近いと思います。 ピープルツリーが加盟するWFTOは生産者の労働条件、賃金、児童労働、環境などに関しての基準「フェアトレード10の指針」を定めています。 Photo by ピープルツリー そのうちの1つ「適正な金額を支払う」だけが注目されフェアトレードの代名詞のようになっているのが現状ですが、それは「手段」の1つ。何のためにやっているのかという「目的」が大事です。「みんなが幸せに暮らせること」をゴールに、10の指針をもとに、様々な活動をしています。 フェアトレードという言葉ができるまで Photo by ピープルツリー ――ただ適正な金額を支払うだけではなく、生産者も幸せに暮らせることが大切ということですね。いつ頃できた概念なのでしょうか? 国際的な会議の場で初めて「フェアトレード」という言葉が使われたのは1984~85年頃と言われています。1950年代からチャリティー貿易が存在していましたが、対等というよりも“助けてあげる”という意味合いが強いものでした。そこから1960年代に、取引は対等であるべきだという考えのもと、フェアトレードの前身となるオルター(オルタナティブ)トレードと呼ばれる概念が生まれたのです。日本では70年代から80年代にかけて、フェアトレードに類する活動をする団体が活動を始めました。 参考:https://fairtrade-forum-japan.org/fairtrade/fairtrade-history ファストファッションの“アンフェア”な真実 ――今年のFRW※1に、ピープルツリーは映画「メイド・イン・バングラデシュ」※2の上映・解説イベントを開催しました。フェアトレードの視点から作品を観るときのポイントを教えてください。 「メイド・イン・バングラデシュ」は、縫製工場で働く女性工員たちが労働組合を発足するまでの奮闘を描いた映画です。作品はフィクションであるものの、監督のルバイヤット・ホセインが沢山の工場労働者に会ってリサーチし製作した、限りなくリアルに近い物語です。工場での話だけではなく、ところどころにバングラデシュで働く人々が置かれている状況が散りばめられており、主人公シムの人生もまさにバングラデシュで生きる女性の現状を映し出しています。 ――衣類産業大国であるバングラデシュの現状がとてもよく描かれていました。 バングラデシュは世界2位の衣類輸出国であり、国内の7~8割が衣料に関わる産業です。しかし、映画にもあるように、政治家などの権力者と工場経営者に癒着があったり、権力者自らがオーナーであったりして、労働者に目が向いていない事実があります。国外に安価な労働力を提供する一方で、労働者の賃金や労働環境は後回しにされているのです。 例えば作中、シムは、労働組合を作るための資料として、労働者権利団体のナシマに渡されたスマートフォンで工場内の様子を密かに撮影します。そこではグローバルアパレル企業の白人男性が工場見学に来るのですが、「君の工場は高すぎる!」と値下げを求めているのです。労働組合が存在せず、権利が保障されていない状態で、労働者は満足のいく賃金をもらえていません。それにも関わらず、先進国で洋服をさらに安く売るために工賃の値下げを要求される。このシーンからは、先進国において消費者が安価な洋服を求め、企業がそれに応えようと考えた結果、生産国で働く労働者にコスト削減のしわ寄せがいっているということを知ることができます。 ※1 ファッションレボリューションウィーク。毎年、4月24日を含む1週間、ファッションの透明性を高めることを目的としたイベントが世界中で開かれる。縫製工場で働く1,100名以上の女性が犠牲となった2013年4月24日の「ラナ・プラザ崩壊事故」がきっかけとなっている。 ※2 世界のファッション産業を支えるバングラデシュで、縫製工場の過酷な労働環境と低賃金の改善に立ち上がったひとりの女性の実話をもとに製作されたヒューマンストーリー。 生産背景以外にも目を向けたい現地のリアル Photo by ピープルツリー ――安さの裏にこういった現実があることは常に意識しておきたいですね。他にもこの映画から私たちが学べることはありますか。 作品では、ジェンダーの問題と児童婚の現状も垣間見えます。実はバングラデシュは、政治の面で見ると首相をはじめ女性議員の割合が日本よりかなり大きく、最新のジェンダーギャップ指数も59位で日本よりはるかに上位にいます。ところが、経済面で見ると、バングラデシュは男性の失業率が高く、作中のシムと夫のように、女性が縫製工場などで働き家計を支えているという構図が珍しくないんですよね。数字だけを見ると女性の社会進出が進んでいるかのように見えますが、どういう基準でジャッジされた数字なのか、その裏側にある事実を知ろうとすることが大切だと思います。 ――生産の現場はもちろん、生産国がどのような状況なのか、知ろうとすることが重要ですね。 シムが、母親から11歳の時に40歳の人と結婚させられそうになったと告白する場面も衝撃的です。バングラデシュの法律では18歳以下の結婚は禁止されていますが、なんと半数以上が18歳以下で結婚していると言われています。貧困から脱しようと、母親が子どもの幼い頃からお金持ちの男性を探すケースが多いのです。幼い頃に結婚をすると、低年齢により妊娠・出産のリスクが高まる、虐待の対象となる、教育の機会を奪われることなどが懸念されます。 このように、私たちの衣服と深い関わりのあるバングラデシュの日常を、物語を通して知ることができるのもこの映画の特徴です。個人レベルで起きているように見える問題も、国際市場での立場、社会通念や文化的背景からくる社会システムのひずみが要因で起きているということが見えてきます。 フェアトレードファッションはこうやって作られる Photo by ピープルツリー ――ファストファッションが作られる生産背景はイメージできましたが、フェアトレードの衣類は具体的にどのように作られるのでしょうか。 ピープルツリーのファッションを例にすると、「フェアトレードの10の指針」をクリアし、WFTOに加盟する、信頼のおける生産者団体との取引を行っています。 オーガニックコットンをはじめとする素材の調達から最終加工まで、どこで誰がどんなふうにつくっているのか把握すること、生産者に無理強いをしないため生産に十分な時間を設けること、生産団体にオーダーする時点で最大50%を前払いすることなど、双方向のやり取りをすること、透明性と公平性を保つために様々な取り組みを行っています。また、製品は日本向けに企画し、団体に所属する生産者たちが持てる技術を活かした上で、手作業でひとつひとつ丁寧に作られます。そうすることで、伝統的な手仕事の継承にもつながるのです。 日本で販売するとなると、クオリティも大事になってきますので、技術支援や細やかなフィードバックを行うなど、生産者がスキルを磨けるようなサポートも欠かしません。 その他、生産活動以外の取り組みの例として、女性の地位向上のための研修や子どもの教育に関する支援、労働者の人権のために尽力しているバングラデシュの弁護士の支援なども、ピープルツリーの母体であるNGOグローバル・ヴィレッジを通して行っています。 私たちにできることは、消費するということに責任を持つこと。 出典:pexels.com ――洋服の生産の背景を知ってしまうと、どんな洋服を購入したら良いのかわからない…という方も多いと思います。大きなアクションではなく、私たち消費者が今日から始められることはありますか? 今まで選択してきたものと、生産の背景を意識して選択してみたもの、一見似ているけれど何が違うのか?そのような小さな疑問を持つことから始めてみるのがいいのではないかと思います。洋服を買う際には、タグを見る、どこで作られているのか、素材にどのような違いがあるのかを気にしてみるなど、小さな気づきから知識を増やしていけば良いのです。完璧を求めるのではなく、今の時点でより良い方を選べるように努め、良かったらそれを友人に広めるのもいいですよね。 「とりあえず」の買い物はしないことも一つの方法です。間に合わせで購入するのではなく、ずっと大切にしたいと思える物だけを選びたいですよね。 また、疑問に思ったことがあれば、ブランドに問い合わせをすることや、SNSで発信することも重要です。企業に消費者の声を届けることで、企業側もそのニーズに気が付くようになります。 企業は今あるリソースを活かし一歩踏み出すことが重要 ――社会に貢献するアクションを起こしたいと考えている企業ができることは何でしょうか。 企業は、自分たちの元々持っているフィールドにおいて一歩踏み出すことが大切だと思います。つまり、自社の事業の延長線上で取り組むということです。そもそも何のために創設されたのか、原点を改めて見つめると、自分たちの使命が盛り込まれていると思うのです。 企業も個人も、大きな変革や完璧さを最初から求めるではなく、今あるリソースを活かせる方法で社会に貢献していくのが、健やかで無理のない方法なのではないかと思います。 フェアトレードファッションを学んで 「フェアトレードも、SDGsもサステナブルも、地球と人、みんなが幸せに暮らせるようにするためのものです。そして、忘れたくないのは、その“みんな”という中にはちゃんと自分自身も含まれているということですよね。自己犠牲や我慢を強いるものだと続かないので、自分も楽しむことが大事だと思います」最後に鈴木さんはこうお話してくれました。フェアトレードは、特別なことではなく、他の人に対して対等・平等に向き合う、という人としての基本的な姿勢なのだと改めて感じました。 私たちの洋服を取り巻く“アンフェア”な関係は、今も世界のあらゆるところで存在しています。洋服を身に着ける人も作り手も、みんなが対等な世の中であるために、現状を知り、一人ひとりが小さなアクションを起こしていくことが、これからのファッションには求められているのではないでしょうか。
名前の通り、ファッション業界に革命を起こそうとイギリスで立ち上がったファッションレボリューション(Fashion Revolution)。キャンペーンが立ち上がって10年という節目となる今年、4月24日のファッションレボリューションデーに合わせて、日本国内でも様々なイベントが開催されました。今回はイベントを振り返りながら、持続可能なファッションの在り方と、私たちができることを考えます。 ファッションレボリューションとは? ファッションレボリューション(Fashion Revolution)は、2013年4月24日にバングラデシュで起こった、ラナ・プラザビル崩落を契機に立ち上がった社会運動です。このような事故を二度と起こさないため、消費者側が企業・ブランド側に生産背景の透明性を問いかけ、ファッション業界を健全なものに変えていこうと2014年に始まりました。 関連記事:4月24日は何の日?ファッションレボリューションデーとは関連記事:悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは “顔の見えない”洋服はどこから来るのか 私たちのクローゼットにある洋服のうち、労働者の働く環境や待遇が明らかになっているものはどのくらいあるでしょうか。スーパーではよく“顔の見える”野菜などが売られていますが、洋服にそのようなタグが付いていることはほとんどありません。どうして生産者の顔が見える洋服が少ないのでしょうか。大きな理由の一つとして、私たちが思っている以上に、衣服の生産には実に多くの人の手を必要とするためです。例えばコットン製品の場合、綿の栽培から始まり、紡績、加工、縫製、輸送などを経て私たちの元に届きます。 今年Fashion Revolution Japanが発表したレポート「#RememberRanaPlaza Collection 断念から考える日本のファッション産業の現在地 ラナ・プラザ崩落事故から 10 年目の考察と展望」では、衣服のトレースについて詳しく書かれています。 出展:#RememberRanaPlaza Collection 断念から考える日本のファッション産業の現在地 ラナ・プラザ崩落事故から 10 年目の考察と展望(pdf) もともと多くの生産工程を辿る衣服ですが、グローバル化が進み生産拠点をコストが安い東南アジアに移す企業が増えてきたことなどで、サプライチェーンはさらに複雑化。メーカーでさえサプライチェーンを把握しきれていないケースが多くあるのが現状です。 ラナ・プラザ崩壊事故からもわかるように、洋服が低価格で手に入るようになった背景には、労働環境が守られておらず、生活を成り立たせるための賃金が支払われていないなどの問題が隠されている可能性があります。洋服を購入するときに、その洋服の生産背景を知ろうとすることが、私たち消費者には求められているのです。 「whomademyclothes?(誰が私の洋服を作ったの?)」という問いかけから始まったファッションレボリューションは、洋服を購入しファッションを楽しむ私たち全員が知っておきたいムーブメントです。 2023年4月、未来のファッションを考えるイベントが多数開催 ファッションレボリューションデーのある4月は、ファッションにまつわるイベントが全国で開催されました。主催者は学生や企業、研究者など様々。ファッション業界が抱える問題について知り、私たち一人ひとりにできることを考えるための1か月となりました。 Theater for Good この投稿をInstagramで見る Theater for Good(@theater_for_good)がシェアした投稿 開催日:2023年4月2日主催:村瀬悠 坂井ゆきね Z世代による、Z世代のための映画上映会。ファストファッションの裏側に迫るドキュメンタリー映画『The True Cost』を鑑賞し、エシカルファッションについて語り合われ、社会課題に興味・関心をもつ同世代同士の交流を図る場ともなった。主催者は2人の大学生で、そのうちの一人、坂井さんは大学内でエシカルファッションを楽しく広めるためのサークル「Around 20(あらとぅ)」を立ち上げて活動。同じく主催者の村瀬さんは学生の傍ら社会派カメラマンとしての活動も行う人物。 Plastic collection 2023 この投稿をInstagramで見る Plastic Collection in 三重県四日市(@regenefashionshow_)がシェアした投稿 開催日:2023年4月8日 三重県の四日市市で開催されたFashion Revolution Japanのパートナーイベント。四日市市のイメージを「公害の街」から「漁網の街」へ塗り替えるべく、漁業で使われる漁網をアップサイクルしてファッションショーを開催。イベントの発起人である吉田凱一さんの祖父が営んでいた漁網工場の廃棄漁網とプラスチックゴミから衣装や舞台装飾が作られ、エキサイト四日市・バザールというイベントで披露された。開催にあたってクラウドファンディングで資金を集め、会場となった商店街の協力も得て行われた。 『メイド・イン・バングラデシュ』オンライン上映会&トーク ~ファッションレボリューション企画~ 主催:ピープルツリー開催日:2023年4月23日 昨年日本でも上映された、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが労働組合を立ち上げるまでの奮闘を描いた映画『メイド イン バングラデシュ』。フェアトレード専門ブランドであるピープルツリーがファッションレボリューション企画として、メイドインバングラディッシュをVimeoにて限定公開した。鑑賞後は、ピープルツリーの鈴木啓美さんが映画について解説をするオンライントークがZoom上で行われた。 イベント詳細:https://www.peopletree.co.jp/special/frw2023/ ラナプラザの崩落事故から10年、「ザ・トゥルー・コスト」上映会&これからの10年のファッションをつくる『TEN』御披露目&決起会 この投稿をInstagramで見る エシカルファッション_Enter the E(@enter_the_e)がシェアした投稿 開催日:2023年4月23日主催:Enter the E エシカルファッションセレクトショップであるEnter the Eが『The True Cost』の上映と、グループディスカッションを実施。 “10年後のファッション”を題に、参加者全員でエシカルなファッションをどのように実現していくのか語り合われた。イベント後半では、Enter the Eが新たにローンチするオリジナルアパレルブランド「TEN」についての紹介があり、バングラデシュへの訪問の報告や、植月さんが「TEN」に込めた思い、展望などを共有する場となった。現在、「TEN」プロジェクトの仲間「TEN CREW」の募集を兼ねたクラウドファンディング(https://rescuex.jp/project/45133)が行われている。 ソーイング竹内から学ぶ縫製工場のサステナビリティー この投稿をInstagramで見る 山口大人(@yamaguchi_otona)がシェアした投稿 開催日:2023年4月25日主催:FashionGood lab. ファッションビジネス学会FashionGood研究部会が主宰するFashionGood lab.が、兵庫県にあるエコフレンドリーファクトリー、ソーイング竹内の竹内祐太さんをゲストに迎えて行われた、オンライン講座。播州織の産地である兵庫県で、キッチン雑貨などファブリック用品の縫製を行っているソーイング竹内は、2004年に環境省が策定した「エコアクション21」の認定をいち早く受けた企業。さらに、竹内さんがクリエイティブディレクターを務めるオリジナルブランド「BF KITCHEN」はエコアクション21オブザイヤー2021で金賞を受賞している。講座では、ソーイング竹内の環境経営や地域での取り組みなど、持続可能な運営についてのレクチャーやディスカッションが行われた。 ファッションと労働 - 持続可能なサプライチェーンを地に足をつけて考える – この投稿をInstagramで見る 山口大人(@yamaguchi_otona)がシェアした投稿 開催日:2023年4月28日主催:FashionGood lab. 東京都武蔵野市のフェアトレードタウン認定を目指す、フェアトレードむさしのの協力を受け、武蔵境駅近くの図書館「武蔵野プレイス」で開催されたFashionGood lab.主催のイベント。イベントは、『繊維産業の責任ある企業行動ガイドライン』の編纂に携わったILO(国際労働機関)の田中竜介さんによるガイドライン解説と、繊維産業の研究者、縫製工場代表、セレクトショップ代表の三名によるクロストークの二部構成で行われた。 まだまだ続く2023年のFashion Revolution 洋服を購入するときに、「なぜこの値段なのだろう?」と一度考えてみることや、ファッションレボリューションのような活動に参加してみることは、私たち一人ひとりができる大切なアクションです。今年Fashion Revolution Japanは、Fashion Revolution Week(4月22日~29日)期間中にとどまらず、6月に表参道のGYLEにてトークイベントと展覧会を開催します。今年ますます盛り上がりを見せるFashion Revolutionに参加してみては? Fashion Revolution Japan 公式ホームページ:https://www.fashionrevolution.org/asia/japan/
毎年4月24日に定められている「ファッションレボリューションデー」をご存知ですか? 洋服を購入し、ファッションを楽しむ私たちと深くかかわっているこの日。 今回は、ファッションレボリューションデーを定めた「ファッションレボリューション」の概要やファッションについて私たち一人ひとりが考えていきたいことを見ていきます。 ファッションレボリューションとは 出典:unsplash.com ファッションレボリューション(Fashion Revolution)は、ファッション産業の透明性を高めていこうとするグローバルキャンペーンのことです。環境を保護・回復し、成長や利益よりも人を大切にする世界的なファッション産業をビジョンに、世界中で様々な活動が行われています。 ファッションレボリューションでは、具体的に以下を目的としています。 ・世界のファッション業界において人と環境の搾取を終わらせる・安全で尊厳のある労働条件と生活賃金をサプライチェーンのすべての人に・世界のファッション業界全体における力を再分配し平等なバランスを保つ・世界のファッション業界における労働運動の拡大と強化・世界のファッション産業が限りある資源の保全と生態系の再生への取り組みを行う・バリューチェーン全体の透明性と説明責任を当たり前にする・使い捨てをやめ、材料をより長く使用し、無駄にしないシステムへの移行・遺産や技術、地域で語り継がれてきた智慧が認められ、大切にされること 日本はキャンペーンがスタートした2014年から参加。今では世界に約100の支部を持つ世界的な動きに発展しています。 ファッションレボリューションデーはなぜ4月24日? 出典:unsplash.com ファッションレボリューションという世界的なムーブメントが誕生したきっかけは、2013年4月24日に発生したバングラデシュの商業ビルの崩壊事故、いわゆる「ラナ・プラザ崩壊事故」にあります。事故現場となった商業ビル内には当時多くの縫製工場などがひしめき合っており、ビルの崩壊によって、そこで働く人々が負傷し命を落としました。その多くが縫製作業を行う若い女性だったと言われています。この事故により、杜撰な建物の管理だけでなく、長時間労働が当たり前であったことなど劣悪な労働環境が明るみになり、大きな社会問題となったのです。 この悲劇がきっかけで、SNSでは自分の洋服の写真とともに、「#whomademyclothes(私の服は誰が作ったの?)」というハッシュタグをつけて投稿するというムーブメントが生まれます。ムーブメントはやがてファッションレボリューションに発展。ファッションレボリューションは、2013年にイギリスのキャリー・ソマーズとオルソラ・デ・カストロという2人のデザイナーによって設立されました。ファッションレボリューションでは、ラナ・プラザ崩壊事故が起こった4月24日をファッションレボリューションデーと定めています。 関連記事:悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは 世界中で広がるエシカルファッション 出典:pexels.com ラナ・プラザ崩壊事故や消費者の声によって、ファッションに関わる企業は、労働者の働き方や生産ラインの見直しを余儀なくされました。生産にかかわる人々の人権や環境への負荷を考慮した「エシカルファッション」の考え方が広まっていったのです。 エシカルファッションとは、調達・製造・流通・販売の4つのプロセスを通して「人・社会・地球環境・地域」のことを考え、展開されるファッションを指します。かみ砕いていうと、売上や生産量を最優先にするのではなく、地球環境や人、社会を重要視します。例えば、生産者の労働環境が守られ適正賃金が支払われている、製造時の排水や廃棄物・CO2をなるべく出さない努力をしている、毛皮など動物を傷つける素材を使用していないなど、人権の尊重に加えて、環境も考慮されたものがエシカルファッションと呼ばれています。 関連記事:環境にも人にも優しいサステナブルファッション。今日から私たちにできることとは 2022年日本のファッションレボリューションウィークイベント ファッションレボリューションでは毎年4月24日を含む1週間を「ファッションレボリューションウィーク」(※毎年期間の設定に相違あり)と定め、自分たちが着ている服は誰が作り、どのような生産プロセスを経ているかを見直す期間としています。 日本でもファッションレボリューションウィークが開催されており、2022年は「服を長く愛するために#LovedClothesLast」をテーマに、東京渋谷のヒカリエでイベントが行われました。服の寿命を延ばすワークショップや、服のお直しに関するトークイベントなど、服をできるだけ長く使用するためのヒントが詰まった内容でした。 2023年ファッションレボリューションウィーク 2023年は4月22日~29日の期間でファッションレボリューションウィークが開催されます。ラナ・プラザ崩壊事故から10年の節目にあたる2023年は、Manifesto for a Fashion Revolution がテーマ。世界的にサステナブルファッションが広まってはいるものの、気候変動や増加する社会的な不公正を解決するには進みが遅すぎるとした上で、「公正な取引が行われること」「適正賃金が支払われること」「環境を保全し修復すること」など、2018年にファッションレボリューションが制定した10のマニュフェストをテーマとして掲げます。 今年も日本を含む各国で様々なイベントが行われる予定です。日本における最新のイベント情報はFashion Revolution Japanの公式インスタグラムをチェックしてみてくださいね。 エシカルファッションを知るために 出典:pexels.com 最後に、私たちがファッションレボリューションに参加する方法を見てみましょう。 ファッションレボリューションウィークのイベントに参加してみる 前述した通り、ファッションレボリューションウィークには、東京を中心にイベント行われています。実際に話を聞き、体験することでエシカルファッションがぐっと身近になるはずです。 SNSでタグ付けしてみる 自分の洋服のロゴがわかる写真とともに「#whomademyclothes(誰が私の服をつくっているの?)」のタグをつけてSNSに投稿することで、ファッションレボリューションのムーブメントに参加できます。 ファッションレボリューション公式SNSをフォローする ファッションレボリューション公式のSNSでは、ファッションに関して学べる投稿が数多くあります。また英語ですが、YouTubeチャンネルでもたくさんの情報を得ることができます。フォローしてファッションの在り方を考えるのも一つの方法です。 他にも、EU市民であれば、Good Clothes,Fair Pay(ファッション産業に携わる人の生活賃金を要求するための署名活動)に参加できます。 ファッションレボリューションデーである4月24日には、今着ている洋服はどこでどのようにして作られたものなのか、自分自身はどのような方法でエシカルファッションを取り入れるのか、考えてみてはいかがでしょうか。 Fashion Revolution JapanInstagram https://www.instagram.com/fashionrevolutionjapan/Fashion RevolutionInstagram https://www.instagram.com/fash_rev/YouTube https://www.youtube.com/channel/UC0JS74vyisaHej_xEq_zZ1w
グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。
世界中で衣服の大量消費・大量廃棄の問題が取りざたされる中、不要になった衣類を捨てるのではなく、新しい素材として再利用する動きが進んでいます。今回は、不要な衣服を原料とするファイバーボード「PANECO(パネコ)」を開発した株式会社ワークスタジオを取材。パネコ開発の背景にある、廃棄衣服の問題意識やサーキュラーエコノミーの考え方について話を伺いました。 インテリアとして生まれ変わる廃棄衣服 誰もがファッションを手軽に楽しめる時代。その一方で、衣服のライフサイクルが早まり、それが大量廃棄に繋がっているとされている。環境への負荷を最小限にとどめ、持続可能な社会を作っていくために、衣服の大量廃棄は私たちが今すぐに向き合わなければならない問題のひとつだ。 そんな中、一つの新しい技術が今注目されている。廃棄になるはずだった衣服が原料になっているファイバーボード「PANECO(パネコ)」だ。パネコは、衣服を細かく粉砕し、特殊な技術を用いて作られている。現在は主に、大手アパレルブランドの内装や什器、企業の受付カウンターとして使用されることが多い。 パネコが什器として使用されているFREAK'S STORE(株式会社デイトナ・インターナショナル)。写真は、アミュプラザ博多店 また、パネコの大きな特徴の一つとして、木製のボードのように加工がしやすいという点が挙げられ、コースターやハンガーなど、デザインや使い方次第で様々な製品を生み出すことができる。 衣服由来ということもあり、パネコの質感やカラーも特徴的だ。使用する衣服次第では様々な色のボードを作ることができ、子ども部屋のインテリアにもなりそうなカラフルで可愛らしいものもある。 サーキュラーエコノミーを取り入れたミニマムなデザイン パネコのボードがサステナブルであるのは、不要になった衣服を原料としている点だけではない。「パネコは繰り返しボードとして再利用することが可能で、役目が終わった時のことまで考えて生産されています。」そう語るのは、株式会社ワークスタジオの篠嵜さんだ。「使用後のボードは再度、粉砕し原料として使用できます。パネコを使用することにより、廃棄物を減らすことが可能となります。」手放すときのことも考えて生産するサーキュラーエコノミーの考え方が取り入れられているのだ。 例えば今までは、什器が大掛かりに入れ替えられていた店舗の内装リニューアルも、パネコのような環境配慮型の素材選定や設計により廃棄物を出さず、ミニマルでシンプルな入れ替えが実現する。 パネコは衣類だけでなく、スニーカーや木材を原料に混ぜ込んで作ることもできる 洋服が行きつく先を視察することでより深くファッションロスを考える ワークスタジオは、もともとは什器のデザインなどを行っており、アパレル業界ともかかわりの深い会社だった。衣類からもボードを作れるのではないかという話から、洋服の大量廃棄問題を知ることとなり、約3年の研究を経て、リサイクルボードであるパネコの開発に成功した。 ワークスタジオでは、洋服の廃棄問題に本格的に取り組みたいとの思いから、代表と社員が世界中から古着が集まるアフリカのガーナを訪問。先進国で不要となった衣服の行く末を実際にその目で見てきた。 ガーナでは、マーケットに各国から届いた古着が届けられ、商人は売れそうな洋服を見極めて持ち帰るが、売れないと判断された洋服は捨てられてしまいゴミとなる。ガーナに届けられた衣類の多くが廃棄になってしまうというのが現実だ。さらに、不要とされた洋服はゴミになるといっても焼却処分されるわけではない。衣類はゴミ置き場に運ばれると、そのまま積み上げられ、見上げるほど巨大なゴミの山の一部となる。ゴミの山のすぐ近くには住宅もあり、人々の生活がある。隣接する海にも、ゴミの一部が流れ出て、洋服が波の打ち付ける砂浜に埋まってしまい、どんなに引っ張っても回収できない状態になっているという。 状況は違うにせよ、日本でも毎日大量の洋服が捨てられていく。私たちも他人ごとではなく、一人ひとりが考えていかなくてはいけない大きな問題だ。 展示会では廃棄になった服の山を表現。来場者の目をひいた 「都市森林」から価値あるものを作り出す 「都市鉱山ということばがあるように、私たちは都市森林があると思っています。都市森林とはクローゼットに眠っている衣服のことで、それも立派な資源のひとつと考えています。」篠嵜さんは話す。「1つの考えとして、我々、消費者自身が何かを購入する時に、モノのライフサイクルを考えることが大切だと思います。」 輸送時の環境負荷なども考えてアップサイクルやリサイクルはその土地で行う「地産地消」のかたちをとるパネコ。次は、海外でも、その国や土地で出た廃棄衣類を原料に、ファイバーボードを製造する技術を広めていく予定だ。 持続可能なファッションを目指すために 国内で毎日何万トンもあるといわれる洋服の廃棄。今私たち消費者には大きな意識の変革が求められている。必要以上に購入せず、一枚の洋服を大切に長持ちさせること。それでも不要になった衣服はパネコのような選択肢があるということを知っておきたい。今後店舗でパネコを見かけたときは、未来に向けて持続可能なファッションとはなにか、今一度考えてみてほしい。 PANECO®公式HP https://paneco.tokyo/
エシカル・サステナブルな界隈で様々な活動をしている筆者が、「エシカルな買い物」というテーマで2022年のBest Buyをご紹介。1年を通してたくさんの商品に触れた中で、購入して本当に良かったものをセレクトしました。ファッション編とプロダクト編に分け2回にわたりお送りします。今回はファッション編です! プロダクト編はこちら Heralbony×Kapok Knotのダウンストール 長年応援している「ヘラルボニー」が「カポックノット」とコラボレーションしたダウンストール。 ここ数年で急成長し露出も増しているのでご存知の方も多いと思いますが、ヘラルボニーは“異彩を放て”をスローガンに、福祉×アートという軸で幅広く活動し、“障害”のある人たちの可能性を切り拓いている企業です。筆者はローンチ間もない頃に出会い、以来ずっと応援しておりイベントやポップアップにも足を運んでいます。 一方、カポックノットは「カポック」という木の実から採れる繊維をダウンのように用いてプロダクトを作っているファッションブランド。従来のダウンに比べ軽く、さらに吸湿発熱機能があるという軽くて温かいアニマルフリーな新素材が特徴です。 その2ブランドがコラボレーションしたダウンストールが、昨年10月下旬に大阪の阪急うめだ本店で開催されたヘラルボニーの催事内でお披露目されました。3色展開されており、筆者が選んだのは「風のロンド」という作品が描かれたベージュのストールです。ちなみに、両社のコラボレーションは一昨年にも一度行われていました。 Heralbony公式HP https://www.heralbony.jp/ Kapok Knot公式HP https://kapok-knot.com/ amaitoのキャップ 鹿児島県、奄美大島の染め職人さんのブランド「あまいと」から購入したキャップ。藍染は有名ですが、泥染はご存じでしょうか? 着物の大島紬を作る際に用いる伝統的な染色技法なのですが、粒子や成分が他とは異なり、奄美の泥でないと出せない風合いがあるそうです。昨年の晩夏にボランティアで参加したチャリティーイベントで、あまいとを展開する一般社団法人Amamiしま作捌繰(あまみしまさばくり) と出会いました。 以前から染色に関心を持っていたので惹かれ、何にするか迷った結果、このキャップを購入。初めにテーチ木(車輪梅)と呼ばれる植物で媒染(ばいせん:染料を繊維に定着させる工程)し、ツバは藍、パネル(ハギ)は藍の部分と泥の部分をそれぞれ筆で色を付けていく。そんな手間がかかった、個性的なキャップがとても気に入っています。 amaito公式HP https://sabakuri.base.shop/ one novaのアンダーウェア 毎年一着買い足している「ワンノバ」のボクサーパンツ。手持ちの数を増やしたくなるほどに良いのです! このオリーブグリーンは昨年5月ころに数量限定で販売されたカラーでした(現在は販売終了)。 立ち上げ当初から「世界一“透明な”パンツ」と掲げ、素材や生産背景を透明化し、丁寧にユーザーに伝えていました。そういったストーリーの面だけではなく、最高の穿き心地もが気に入っていて、自分用に買い足したり、同性におすすめしたりしています。まるで穿いていないのではないかというくらい下着の存在を感じさせません。勝負パンツにしてくれている友人もいます。 昨年8月にリニューアルを行い、メンズのボクサーパンツのみだったラインナップが、ユニセックスのボクサーパンツとウィメンズのブラジャー、ビキニパンツの4種類に増えました。これを男性だけが味わっているのはもったいないと思っていたので、着用できる人の幅が広がったのはファンとして喜ばしい刷新でした。 onenova公式HP https://onenova.jp/ children of the discordance × UGGのブーツ ファッションブランド「children of the discordance(以下、チルドレン)」がムートンブーツで有名な「UGG」とコラボレーションしたブーツ。こちらに関してはエシカルブランドというわけでも、エシカルな売り文句があるものでもありません。ただ、2つのブランドそれぞれに、エシカルなマインドが備わっています。UGGは原料調達やクラフツマンシップを大切にしており、LGBTQ+などのマイノリティの支援も積極的に行っています。チルドレンはアップサイクルやフェアトレードを積極的に取り入れています。大きく打ち出してはいないものの、デザイナーから、生産に携わるすべての人への感謝が伝わってきます。元はデザインが好きで購入していましたが、過去に読んだインタビュー記事でもそのような内容があり、想いと背景を知ってよりファンになりました。ライニング(靴の内側)にウールとリヨセルの2種類の繊維を使用したり、プラスチックフリーでゴミがほとんど出ないような梱包方法であったり、原料選定や包装 からもエシカルマインドを感じられます。 UGG公式HP https://www.ugg.com/jp/ children of the discordance公式HP https://www.childrenofthediscordance.com/ 【番外編】 最後に、番外編として昨年経験した、エシカルな購買体験をシェアします。エシカルファッションの幅を広げる選択肢としてぜひ参考にしてみてください。 RAGTAGのイベントで購入した、ステラマッカートニーのジャケット 昨年ワールド北青山ビルの1Fスペースで開催された、ユーズドセレクトショップ「RAG TAG」とクリエイターとユーザーをつなぐプロジェクト「246st.MARKET」のコラボイベント。そこで購入したのがウィメンズのテーラードジャケットです。(筆者は男性で、本来であればボタンのかけ方が反対ですが、あまり気にせず思い切って購入しました。) イベントは “GOOD FOR FUTURE” をテーマに、RAGTAGの倉庫にクリエイターが足を運び、商品をセレクトして自身の商品とともに展示販売をするという催しでした。会場にはファッション好きが大勢来場。有名ブランドの新品同様の古着もあり、中には数十万円するものまで…! 古着を購入し、おしゃれを楽しむのも立派なエシカルファッションです。現役で活躍しているクリエイターたちのセンスに触れられる購買体験は、ファッションの楽しさを感じながらエシカルアクションができる面白いイベントだと感じました。 RAGTAG公式HP https://www.ragtag.jp/ 246st.MARKET公式HP https://246stmarket.com/ KEEPWEARINGのプロジェクトで購入したメリノウール100%Tシャツ 楽しく社会問題を解決しようと立ち上がった大学生によるプロジェクト「KEEPWEARING」から、メリノウール100%のTシャツを購入しました。KEEPWEARINGは、昨年の4月1日からの100日間、あるチャレンジを始動。この試みに賛同し、参加してみました。100日間のチャレンジ、それは名前のKEEPWEARING が示す通り、“着続ける”というものです。ウールマークカンパニーが「体温調整」「防臭性」「汚れにくい」「手入れが簡単」などの特徴を示しているように、ウール(羊毛)は、天然の機能性素材。 多くの人は夏も冬も機能性インナーに助けられていると思いますが、機能性インナーは基本的に石油由来の化学繊維を使用していて、洗濯をするとマイクロプラスチックが流れ出てしまうのが難点でした。無洗百人チャレンジと名付けられたプロジェクトでは、100日間洗わずに着続けることで、このウールの特性を再確認し、洗濯という行為について考え直すことができます。 メリノウールの生地は、REDA JAPANが提供。REDAはイタリアのスーツ生地メーカーで、Bコープ認証やグローバルリサイクルスタンダード、ウールマーク認証など数々のエシカルな認証を取得しています。 ファウンダーの宮沢さんに聞いたところ、確認できただけで100人中25人が達成したとのことでした。(筆者は達成しました!)ウールが高機能であっても、そのキャパを引き出してあげるのは、やはり着用者の仕事。脱いだらハンガーに掛ける、スチームをあてる、風通しの良いところに干すなどしていたのですが、100日間臭いは発生しませんでした。プロジェクトに参加してみて、知識として知ってはいたウールの特性を、身をもって体験できた機会になりました。 KEEPWEARING公式HP https://keep-wearing.stores.jp/ 2022年のエシカルファッションを振り返って エシカルマインドが根付く魅力的なファッションアイテムが目白押しだった2022年。企業同士のコラボも多く見かけました。 大量消費・大量廃棄を懸念し買うことを躊躇してしまったり、環境や人、動物を傷つけないよう慎重になりすぎてファッションを楽しめていない方もいるかもしれません。しかし、最近はサステナブルでエシカルなブランドがどんどん増えています。ぜひ楽しくエシカルに買い物をするための参考にしてみてください。
CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。 こちらの後編では、CACTUS TOKYO代表の熊谷渓司さんと製品製作に携わるAtelier K.I.代表池田耕平さんのトークセッションのレポートを紹介します。 前編の工房ツアーレポートはこちら <スピーカー> CACTUS TOKYO代表 熊谷渓司(くまがいけいじ)氏 北海道出身。2017年に一橋大学商学部を卒業後、大手産業機械メーカーに入社し、経営企画・企業変革を担当。自然が好きであることをきっかけに、「人と自然が共に生きる社会」を目指して、2020年春にCACTUS TOKYOを創業。 Atelier K.I.代表 池田耕平(いけだこうへい)氏 革鞄・革小物のメーカーで経験を積んだ後、複数メーカーからサンプル製作の依頼を受けるサンプル職人として従事。CACTUS TOKYOの製品制作を担当。自身の皮革ブランドPRO-MENER(プロムネ)を立ち上げ、革職人の育成および指導にも尽力している。著書として『一流サンプル職人が教える 最高級ブランドバッグの仕立て技術 (Professional Series)』などを刊行。 少子高齢化が著しく進むなか、日本は労働人口の減少という社会問題に直面しています。革産業も例外ではなく、高齢化や海外製品との価格競争の激化で、産業を担う職人が不足しています。池田さんは職人の視点から、今の日本の社会問題にも通じる革産業の現状を語っています。 長年続く低賃金と価格競争で、日本では革職人不足が問題に 池田さん:今の日本の革産業の大きな問題は、未来を担う職人が少ないことです。職人の数が少ない理由として挙げられるのは、給与が安いことです。時給換算にすると約877円で、国内の平均時給を下回る数値となっています。給与が安い理由は、大手からの依頼を受けても価格交渉が難しく、技術水準が上がっても、原料が値上がりしても、工賃が上がらないからです。 物価の安い国との価格競争も一因です。20~30年前、日本の革製品の生産拠点は中国に移りました。私は前にいた国内の会社で製品サンプルを作っていましたが、95%以上が中国生産でした。20年くらい前からは中国生産の製品の価格も上昇。ベトナムやインドなど、より安く生産できる国や地域に生産拠点を移すといったことを繰り返している間に、日本の職人が減ってしまったのです。 問題解決には、革産業の現場を知ってもらうことから 革産業の職人が減っている今日の日本。池田さんは、まず、革職人が置かれている労働環境を知ってもらう必要があると話していました。 池田さん:今、「国内でつくりたい」というブランドやメーカーがすごく増えています。その理由として挙げられるのが、円安で海外製品の価格が高くなったことです。また、今の時代、海外でまとまった量を作っても、それが売れるような時代ではありません。大量消費の時代が終わり、「国内で作ろう」と思い立ったときには、もう職人さんがいないのです。職人の仕事は分業制であり、全工程において職人さんがバランスよく必要です。革製品にどれだけ手間がかかっているかを理解したうえで購入してもらうことが、この問題の解決には一番大切なのではないかと思います。 人材育成と柔軟な働き方で職人不足問題に取り組む 池田さんは、本業の革職人と並行して、職人育成の教室を運営。卒業後、生徒のなかには、職人としてAtelier K.I.のメンバーとして働くという人もいるそうです。また、Atelier K.Iでは、職人のクオリティを重視し、個人のライフスタイルやライフステージに寄り添った働き方にも取り組んでいます。 出典:https://atelier-ki.com/school/students/student-interview-02/ 池田さん:最初の何年かは、お互いの価値観の共有が必要なので、工房で働く形となりますが、家でこなせる能力があれば、こちらから専用のミシンを提供し、作業できます。パートタイムや在宅でもできる働き方もあり、子どもがいても自宅で働ける体制を整えています。 環境に優しいサボテンレザーで社会にインパクトを 池田さんの革産業のお話の後は、熊谷さんがサボテンレザーの可能性について語っています。 熊谷さん:サボテンレザーに着目したきっかけは、環境問題です。私はゴミ問題に関心があって事業を始めましたが、サボテンレザーを知れば知るほど、環境面や利便性においてポテンシャルがある素材だと感じました。 個人的には本革も好きですが、本革は素材自体が腐らないよう、工程でたくさんの水や薬品などを使います。日本のような法律が整っている国では、排水処理が必要であるものの、排水処理にもエネルギーが消費され、CO2が排出されるので、環境負荷がともないます。それに比べてサボテンレザーといった植物由来のレザーは、環境負荷が低いので、使う価値があると思っています。 最後に熊谷さんは、今の社会と未来に向けたメッセージを発信しています。 熊谷さん:私は「環境問題を何とかしたい」という思いでサボテンレザーをテーマにしたブランドを立ち上げました。その製品の認知度のアップと売り上げが増えることで、今ある革産業の問題も一緒に解決したいと思っています。私が目指しているのは、環境負荷の低いサボテンレザーが世の中に愛され、みんなが適正賃金で働ける未来です。 最後に~工房ツアーに参加してみて感じたこと~ (写真左から)杉田さん(CACTUS TOKYO)、熊谷さん(CACTUS TOKYO代表)、池田さん(Atelier K.I.代表)、井上さん (CACTUS TOKYO) 前編の記事にも記した通り、筆者がこちらの工房ツアーに参加したきっかけは、サボテンレザーに興味を持ち、実際の生産現場を見たいということでした。実際に参加すると、CACTUS TOKYOスタッフの方のサボテンレザーと環境問題の解決に関する熱い思いが伝わってきました。 また、Atelier K.I.池田さんの革産業における深刻な職人問題のお話には、驚きを隠せませんでした。まずは私たち消費者が高い技術で作られる製品の価値を知り、その上で買う物を選んでいけたらと思いました。 今回の記事を担当した筆者は、二人の子を持つ母親です。子どもたちの未来にも関わる今の日本の社会問題を他人事ではなく自分事として捉えていきたいと改めて思うようになりました。 前編のレポートはこちら CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube
CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。東京浅草で行われたイベントに参加してきました。その様子を前後編でご紹介します。 CACTUS TOKYOについて CACTUS TOKYOは、2020年1月に環境問題の解決に向けた事業としてスタート。代表の熊谷氏は、以前より自身のブログでの情報発信や、NPOでのボランティア活動などで環境問題に取り組んできました。活動のなかで、人々の関心を集めるには“おもしろい”“楽しい”という要素が必要であることを実感。より多くの方に環境問題に興味を持ってもらうツールとして、「サボテンレザー×ファッション」に可能性を見出しました。 CACTUS TOKYOでは、サボテンレザーを日本に広めるために精力的に活動。2022年に実施したクラウドファンディングでは224%を達成し、2回目のクラウドファンディングも成功を収めました。都内の大手百貨店への出品やテレビメディアへの出演、SDGs系のイベントの参加などを通して、着実にサボテンレザーの認知度を上げています。 そして、熊谷さんが製品の生産を行っていく上で直面したのが、日本の革産業が抱える、職人の減少や後継者不足の問題です。日本のものづくりの文化を守っていきたいとの思いから、工房ツアーを開催するなど、製品の背景にスポットライトが当たるような企画にも力を入れています。 CACTUS TOKYO初!工房ツアーレポート 今回のイベントは、実際の工房で、革職人の技術やものづくりの考え方を学びながら、普段は見ることのできない生産過程を知ることができるというもの。生産に携わる方たちと直接話ができるというのも魅力です。浅草に拠点を構えるAtelier K.I.の工房で行われたツアーは、CACTUS TOKYO代表熊谷渓司さんとAtelier K.I代表池田耕平さんのご挨拶とスタッフの紹介からスタート。熊谷さんの「ブランドを通じて世の中を見てほしい」という心のこもったメッセージが心に刺さりました。 この前編では、製品ができるまでの裏側とツアー参加者の三角財布づくり体験をレポート。後編では、CACTUS TOKYO代表熊谷さんとAtelier K.I代表池田さんのトークセッションを取材しています。 サボテンレザーとは CACTUS TOKYOの製品の特長は、サボテン繊維と植物由来の樹脂によって作られたサステナブルな「サボテンレザー」を使用している点です。サボテンレザーの強みは、主に次の3点が挙げられます。 ①手触りと見た目が本革に近く、ファッション性が高い②本革などと比較すると、擦り傷や水に強く、軽い③本革に比べると環境負荷が低い 特に本革のようなクオリティを求める方には、サボテンレザーがおすすめです。また、様々な理由から、サボテンレザーは環境にかかる負担が小さく、地球に優しい製品であることが知られています。 サボテンレザーがサステナブル×エコである理由 サボテンは雨水のみで生育し、灌漑施設を構える必要がないため環境に過度な負担をかけません。サボテンレザーができるまでの段階もエコで、なめし工程などで大量に水を使う本革と比べて、約1,647分の1の水で完成します。 エコな素材に加えて、CACTUS TOKYOでは生産過程から使用、廃棄に至るまでの環境負荷を可能な限り抑えています。CACTUS TOKYOの製品は一般的なブランドの製品と比べて、63%のCO2削減を実現しています。 出典:CACTUS TOKYO公式HP CACTUS TOKYOの製品ができるまで 革製品が作られる工程紹介は、池田さんのデモンストレーションと動画を用いて行われました。製品によって工程・内容・順序などが異なる場合がありますが、基本的な流れとしては、以下の4つのフェーズです。 今回はサボテンレザーを使った長財布の工程を実際に見ることができました。 ①裁断(革をパーツごとに切り取る作業) 専用の金型を革素材に当て、油圧を使った錘によって上からプレスをし、サボテンレザーをくり抜く。 ②漉き(革を適切な薄さに調整する作業) 段差がなくフラットに仕上がるよう、革の端部分の厚さを調整する、漉く(すく)作業を行う。 難易度が高く、かつ繊細な工程のため、専門の職人が対応する ③貼り合わせ(パーツ同士を貼り合わせる作業) 革製品専用の糊料を貼り付ける作業を繰り返す。製品を長持ちさせるために芯材は、必要不可欠。ミリ単位でずれないよう、細やかな配慮が必要になる。 ④縫製(専用ミシンで貼り合わせる) パーツを固定するために専用のミシンで縫い合わせる。長財布の場合、②の漉く過程で縁部分を薄くすることによって、ミシンがかけやすくなる。 ○最終チェック 4つの工程が完了したら、出来上がった製品の最終確認。ファスナーの開閉に問題がないか、ゆがみがないかなどを抜けもれなくチェックを行う。 以上がCACTUS TOKYOの製品ができるまでの流れです。池田さんの実演で特に印象的だったのが、角部分の緻密な糊付けです。角の生地をきれいに、かつ細かくギャザーをつくる工程は息を吞むほどの美しさでした。 参加者たちの質疑応答の時間もあり、天気と湿度をチェックしながら生地のコンディションや糊料の乾き状態などを考え、臨機応変に工程を変えることなどを教えていただきました。池田さんの普段の作業の様子を垣間見ることができ、大変有意義な工程紹介でした。 参加者の三角コインケースづくり体験 池田さんの革製品の工程説明の後は、参加者が実際にサボテンレザーの三角コインケースづくりにチャレンジ! 池田さんのアドバイスを受けながら、笑いありの和やかな雰囲気のなか、我を忘れてコインケースづくりに取り組みました。 ホックの凹凸をつくる作業は、斜めに曲がらないよう緊張しましたが、楽しいひと時でした。池田さんの作業を間近で拝見し、改めてモノづくりに携わる方への「感謝」の気持ちがこみあげてきました。 参加者の作品。一通り作れたので、ホッと一安心 CACTUS TOKYOの製品の背景や想いを知ることができたツアー 普段の生活では、なかなか見られない革職人の現場。製品ができるまでの工程を実際に見ることで、新しい視点を得られ、価値観も変わります。私自身、工房を見学し、職人さんのモノづくりへの情熱をリアルに感じることで、職人さんが想いを込めて作った製品を選んでいきたいと思うようになりました。 CACTUS TOKYOのアクションが社会にどのようなインパクトを与えていくのか、今後も注目していきたいと思います。 後編は、環境問題や日本の職人の後継者不足などに焦点を当てた熊谷さんと池田さんのトークセッションです。 CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube
この数年でファッション業界でもSDGsやリサイクルにフォーカスした取り組みが進んでおり、SNSを中心にさまざまな情報が発信されています。その取り組みのなかでも捨てられるはずだったものや材料を価値のあるものに作り直し、新しいプロダクトとして蘇らせる「アップサイクル」が注目されています。 本記事は、アップサイクルの概要と、日本各地で展開するアップサイクルのブランドについて紹介していきましょう。 アップサイクルとは? 出典:pexels.com アップサイクルとは、商品の製造行程によって出された廃棄物や副産物、素材の損傷・劣化などで使えなくなったものを、デザインし直し、全く別の新しいプロダクトとして創り出すことを指します。 廃棄物を活用することでゴミの削減になるため、CO2の削減など環境問題解決のためのアクションとして、今、注目されているリサイクル手法の一つです。 例えば耐用年数を越えたソーラーパネルをテーブルとして利用したり、擦り切れたタイヤをカバンに作り変えたりと、アップサイクルは家具業界からファッション業界まで、さまざまな業界で注目されています。 アップサイクルの例 出典:pexels.com 実は私たちの身の回りにもアップサイクルの例があります。一例を紹介していきましょう。 ・規格外野菜:スイーツやお菓子の素材として活用 ・海洋プラスチックごみ:プレートやランプシェードのかさとして活用 ・不要なパウダー系コスメアイテム:特殊処理してアート(絵)の素材として活用 ・オフィスや学校の廃棄物:キャビネットや跳び箱を家具としてリメイク ・自転車チューブ:ベルトの素材としてリメイク ・破棄される生花:ドライフラワーとして活用 このように実にさまざまなアップサイクルのプロダクトがあります。視点を変えるだけで、新たな付加価値が生まれるということがわかりますね。 おすすめアップサイクルのファッションブランド ユニクロやH&Mでは、不要になった衣料を回収し、それらを加工し、新しい衣服として生み出す取り組みが進んでいます。こちらの2つ以外にも、独自のアイデアで、アップサイクルに取り組んでいるファッションブランドがありますので、おすすめを紹介していきましょう。 Öffen(オッフェン) この投稿をInstagramで見る Öffen / オッフェン(@offen_gallery)がシェアした投稿 Öffen(オッフェン)は、今、深刻な社会問題になっているプラスチックゴミに着目。シューズの素材にペットボトルをリサイクルした糸を活用しています。製造工程を極力少なくすることで、工場のCO2削減にも尽力。シンプル、かつ上品な雰囲気が漂うデザインは、ファンやフォロワーの心を惹きつけています。 Öffen(オッフェン)公式ホームページ LOVST TOKYO この投稿をInstagramで見る LOVST TOKYO(@lovst_tokyo)がシェアした投稿 LOVST TOKYOは、廃棄リンゴから生まれた「アップルレザー」を中心に野菜やフルーツなどをアップサイクルしたリュックやハンドバッグなどを販売。リンゴを加工する際に出る大量のリンゴの絞りかす(皮や芯)をどうにかしたいと開発されたアップルレザー。レザーの風合いを維持できるよう、適切な分量で樹脂と配合し、撥水性にも優れています。 LoVst-Tokyo 公式ホームページ nest Robe この投稿をInstagramで見る nest Robe(@nest_robe)がシェアした投稿 nest RobeのUpcycleLino(アップサイクルリノ)シリーズは、深刻な問題の一つである衣料ロスに着目。裁断くずができるだけでないように自社工場で工夫を重ねたうえで、製作のプロセスでどうしても発生する裁断くずを再び糸にする方法を考案。裁断くずは細かく粉砕、原綿の状態にし、オーガニックのバージン綿と一緒に紡いで糸を作り上げています。自社の商品の裁断くずを原料とし、商品を作り、自社で売るという完全循環型の仕組みとなっています。もともと糸からこだわって選定しているので、上質な生地の衣服が出来上がります。 nest Robe 公式ホームページ SPINGLE MOVE(スピングルムーヴ) この投稿をInstagramで見る スピングルムーヴ公式アカウント(@spingle_move)がシェアした投稿 シューズブランド「SPINGLE MOVE」は、広島県府中市に本社を構える株式会社スピングルカンパニーによる日本製ハンドメイドスニーカーブランド。こちらのブランドでは、「ONGAESHIプロジェクト」として、国内外から広島や長崎に送られる千羽鶴を、再生糸として加工し、シューズの生地としてアップサイクルをしています。このプロジェクトには、千羽鶴が新しい製品に生まれ変わり、平和を願う人々の元に届いてほしいという願いが込められています。 スピングルムーブ 公式ホームページ 千羽鶴をアップサイクルした「ONGAESHIプロジェクト」コラボモデル 季縁 この投稿をInstagramで見る 季縁-KIEN- kimono dress(着物ドレス)(@kien_kimonodress)がシェアした投稿 季縁は、京都を拠点にした着物リメイクのショップです。選りすぐりのヴィンテージ着物をメンテナンスし、新たな反物の状態にして、それを現代の生活に合うよう、ドレスなどへと再生。衣類の過剰生産に疑問を投げかけ、日本の美しい伝統文化を守っていく取り組みを行っています。「祖母が使っていた着物のサイズが自分の体形とマッチしない」「箪笥に眠っている着物をどうにかしたい」という方のために、持ち込んだ着物のアップサイクルも行っています。 季縁-KIEN 公式ホームページ アップサイクルアイテムで、エコとおしゃれを両立しよう 今回は、廃棄されるはずだったものを有効活用し、アップサイクルしたプロダクトを扱うファッションブランドをピックアップしました。洋服や靴、バッグを買おうとするとき、アップサイクルのブランドを選ぶことは、ファッションアイテムの大量生産にストップをかけ、ゴミを減らすというアクションに繋がります。 デザイン性と機能性が高いものが多く、エコであるのはもちろん、ファッションアイテムとして秀逸なものが揃うアップサイクルブランド。ぜひお気に入りのアイテムを見つけてみてはいかがでしょうか。
金や宝石などを使ったジュエリーは古くから人々を魅了し続けています。でもその美しいジュエリーの裏側で、人が傷つけられ自然が犠牲になっているとしたら…? ジュエリーは、生産する際の労働の搾取や環境破壊が大きな問題になっています。ずっと身に着けたいものだからこそ、生産過程が分かり、安心してつけられるものを選びたいですよね。 この記事では、エシカルジュエリーの魅力とおすすめのブランドをご紹介します! エシカルジュエリーとは? 出典:pexels.com エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味。つまり、エシカルジュエリーは、生産に携わる人や自然環境に十分に配慮されて作られているアクセサリーのことです。例えば生産する人の労働環境が守られていたり、生産過程における環境負荷が少ないなど、人や自然、動物を傷つけずに作られています。最近ではゴミになるはずだったものをアップサイクルして作られたアクセサリーも多く登場しています。 エシカルジュエリーのブランドでは、その生産の背景を明示して透明性を保っており、私たち消費者も安心して手に取ることができます。この記事では、国内でも増えてきているエシカルジュエリーブランドをご紹介します。 ジュエリーが抱えるたくさんの問題 出典:pexels.com 私たちの手に届くまで、ジュエリーはどのような過程をたどってきているのでしょうか。実は美しいジュエリーの裏側には、深刻な人権侵害や環境汚染などの問題がかくれているケースが珍しくありません。 例えば、金は採掘される際に、毒性の高い水銀が使われ、人々の健康や環境の大きな脅威になっています。鉱山の開発もたくさんの資源を必要とし、多くの二酸化炭素を排出するため、環境にとって優しいものとは言えません。また、ダイヤモンドはコンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)と呼ばれるものがあります。アフリカで内紛が起こっている地域では、ダイヤモンドが武器の調達資源になっていることがあるのです。劣悪な環境での低賃金労働や、児童労働も行われています。 これまでのジュエリーは、作る人の人権が守られていなかったり、環境汚染につながっているなど、多くの問題を抱えてきました。 エシカルジュエリーの特徴 出典:photo-ac.com そんなジュエリーの問題を解決すべく生まれたのが、人権や環境に配慮して作られているエシカルジュエリーです。エシカルジュエリーの特徴には以下のようなものがあります。 児童労働や強制労働などの労働搾取が行われていない 採掘する人の労働環境が危険なものではない フェアトレード(生産者と公正な取引がなされている) 生産者の自立支援が行われている リサイクルやアップサイクルされた素材を使用している 自然環境に配慮している この中のひとつではなく、ブランドによってはいくつか、もしくはすべてに配慮して作られています。 毎日身に着けるもの、また、婚約指輪や結婚指輪など一生大切にしたいものは、誰も傷つけないエシカルジュエリーを選ぶのがおすすめです。 おすすめエシカルジュエリーブランド 国内で購入できるおすすめのエシカルジュエリーブランドを集めました。ぜひジュエリーを買う際の参考にしてみてください。 HASUNA 日本のエシカルジュエリーの中でもトップの人気を誇るHASUNA。創業者がインドで劣悪な環境の鉱山とそこで働く人に衝撃を受け、立ち上がったブランドです。自らの足で環境などを確かめ、素材は産地と採掘工程がわかるものを使っています。金は働く人や環境に配慮されたエシカルゴールドを使用。また、各国で生産者の自立支援も行っています。オンラインショップの他、表参道には路面店があり、他の都市でも取り扱い店舗があるので、手に取って見ることができるのも嬉しいポイントです。https://hasuna.com/ この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 ERATHRISE エシカルジュエリーの人気ブランド。ジュエリーの多くの素材は発展途上国で産出されます。そこで働く人々とフェアに、伝統を受け継ぎながら、プロダクトを作り出しているEARTHRISE。ジュエリーに使われているのは、紛争の資金源とならないダイヤモンドや、フェアトレードのゴールド・シルバーなど。人や環境に配慮された素材と、それを加工する職人の高い技術が、高品質のジュエリーを生み出しています。表参道に路面店があり、各地でポップアップも開催しています。https://earthrise-j.com/ この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 MOTHERHOUSE 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもとバングラディッシュからスタートしたMOTHERHOUSE。今では関東に20店舗以上、近畿に8店舗、その他の地域や海外にも店舗が増え続けている人気バッグブランドです。もともとバングラディッシュで作られるバッグの販売から始まりましたが、現在はスリランカやミャンマー、ネパールのジュエリーも販売しています。石の個性を大切に、現地の職人の技術を生かして作られるネックレスやピアスは、ネーミングから強いメッセージ性を感じるものばかり。給与水準の高さや昇給制度など、現地ではトップクラスで働く環境が整備されています。https://www.mother-house.jp/ この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 GYPPHY どんなファッションやシーンにも合う、ファッショナブルなジュエリーが楽しめるエシカルジュエリーブランド。GYPPHYでダイヤモンドの代わりに使われるのは、人の手によって合成された宝石であるモアサナイト。モアサナイトは、ダイヤモンドにまさると言われる輝きと耐久性が大きな特徴です。鉱山開発もせず紛争の資金源にもならないモアサナイトは、まさにエシカル。最近は世界でファッション感度の高い人たちからの支持を集めている、新しい時代のジュエリーです。また、ゴールドやシルバーは、採掘の際に環境負荷を低減し、働く人の環境など、厳しく基準を設け、それをクリアしたものを使用。手に入れやすい価格も人気の理由の一つです。https://gypphy-shop.com/ この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 sobolon 環境に配慮した素材を使ったりアップサイクルされた素材を使うのも、エシカルジュエリーの特徴のひとつ。sobolonでは、海岸に漂着したプラスチックを使用してアクセサリーを作っています。クリエイターが海に出向き、海洋プラスチックを回収。その海洋プラスチックは、ひとつひとつデザインされ、思いのこもった加工を経て、かわいいアートのようなアクセサリーへと変身します。ひとつとして同じものがないアクセサリーは、身に着けるたびに海の大切さを思い出させてくれます。https://sobolon3695.thebase.in/ この投稿をInstagramで見る 海洋プラスチックジュエリーsobolon(そぼろん)(@sobolon3695)がシェアした投稿 大切なジュエリーだから他の人や環境を傷つけないエシカルなものを 出典:pexels.com 今回は、おすすめのエシカルジュエリーブランドをご紹介しました。毎日身に着けるもの、特別な日にプレゼントしたいもの、一生大切にしたいものだから、背景を知り、きちんと選びたいもの。美しいと思って購入しても、その裏で環境や人を傷つけていたら悲しいですよね。 私たち一人ひとりが、ジュエリーの素材がどこからきてどのように作られているかを知り、人にとっても自然にとっても優しいエシカルジュエリーを選ぶこと。そのことが、ジュエリーの裏にひそむ問題の解決への一歩となっていくのではないでしょうか。
私たちの生活を彩ってくれるファッション。しかし今アパレル産業は、持続可能ではない仕組みが大きな問題になっています。ファストファッションなどの広まりで、私たちがより自由に楽しく洋服を選べるようになった一方で、大量生産・大量消費が行われています。それは、生産の段階で作る人の低賃金労働に繋がることもあり、環境への負荷も大きくなります。また、すぐに買い替えることで大量の廃棄が生まれてしまうのです。 自然環境や生産に携わる人、動物を傷つけないファッションとは。この記事では、今日から始められるサステナブルなアクションをご紹介します。 サステナブルファッションとは? サステナブルファッションとは、「衣服の生産の段階から、着用、廃棄に至るまで持続可能である取り組み」のことです。 具体的には、以下のようなことが挙げられます。 生産から廃棄に至るまで、環境への負担が最小限に抑えられていること 素材は環境に優しいオーガニック素材や、リサイクル・アップサイクルされた素材を使用していること 作り手の健全な労働環境が守られていること 動物を殺傷せずに作られていること 生産する側は環境や人に配慮した商品開発を行い、消費者は商品ができる背景を知った上で商品を選んでいくことが、サステナブルファッションに繋がると言えます。 1枚の洋服の生産が環境にかける負荷 原材料の調達から始まり、生産、輸送、販売を経て私たちのもとに届く洋服。その過程だけでも、環境に対して実に多くの影響を与えています。 原材料を見ると、コットンなどの天然繊維は栽培において多量の水を必要とし土壌汚染にも繋がる一方で、合成繊維も石油資源などを使用しています。生産する段階でも工場などで水を多量に使用し、CO2も多く排出しています。 日本で小売りされている洋服は約98%が海外製。日本へ商品を輸送する際にもCO2が多く排出されることになるのです。原材料調達から輸送までの生産過程において、服一枚あたりに換算すると、CO2の排出が約25.5kg、約2,300ℓもの水が使われているとされています。私たちが何気なく購入、着用、廃棄する洋服が作られるのに、想像を超える大きな環境負荷がかけられているのです。 手放された半数以上の洋服がごみとして廃棄に 洋服を購入したあと、着用から手放すまでの洋服の扱いもまた大きな課題になっています。一人当たりの衣服の利用状況を見ると、手放す洋服よりも、購入する洋服の方が多くなっており、一年間一度も来ていない洋服は一人当たりに換算すると25枚もあるとされています。 また洋服を手放す際には、ごみとして廃棄される処分方法がリサイクルやリユースを大きく上回り、日本国内だけでも一日平均で、大型トラック約130台分もの洋服が焼却・埋立処分されているのです。 大量生産と低価格がもたらす労働問題 大量生産と低価格の洋服がもたらすのは、環境への負荷だけではありません。2013年にバングラディッシュで起こった、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれるビル崩落事故。死者1100名以上、負傷者2500名以上というこの悲惨な事故は、今のアパレルの生産構造がもたらすひずみが世に知れ渡る大きなきっかけとなりました。縫製工場、商店、銀行などがひしめき合っていたラナ・プラザ。ビルは違法に増築されており、亀裂が見つかっていたのにも関わらず放置された末に、大型発電機と数千台のミシンの振動がきっかけとなって崩壊したとされています。 バングラディッシュには、安価な労働力を求めて欧米や日本からたくさんのファッションブランドが進出していましたが、生産現場は劣悪な労働環境だったのです。この事故をきっかけに、ファッション業界において健全な労働環境や作り手との公正な取引(フェアトレード)が叫ばれるようになりました。 ファーやウールなど動物を殺傷し作られている素材も 環境の負荷が最小限に抑えられていること、立場の弱い生産者が搾取されていないことと同じく、生産する際に動物を傷つけていないこともサステナブルファッションの大きな要の一つです。生産のときに動物が傷つけられるファッションは、リアルファーやウールなどが例として挙げられます。 リアルファーは、キツネやウサギ、ミンクなどの動物の毛を利用しますが、それは殺された動物から刈り取られています。ファーをとるために飼われている動物は狭い金網などの劣悪な環境で育てられ、乱暴に扱われ、残虐な方法で殺傷されるのです。 プラダやグッチなど世界的なハイブランドをはじめ、今では多くのファッションブランドがファーフリー(毛皮の不使用)を宣言しています。日本における毛皮の輸入量も減少傾向にありますが、依然としてリアルファーを使用したファッションアイテムは流通しています。 また、広くは知られていませんが、ウールの生産現場において「ミュールジング」が採用されている場合もあります。ミュールジングとは子羊のときに汚れの溜まりやすいお尻の部分を切り取ってしまうことです。効率的に毛を刈り取ることができ生産性が上がるミュールジングですが、無麻酔で行われるため羊に大きな苦痛をもたらします。イギリスやニュージーランドなどではすでに廃止されている一方で、オーストラリアなどのウールの生産現場では規制などは特にありません。 サステナブルファッションのために私たちができること 想像よりはるかに大きな負担を環境にかけ、商品によっては生産者や動物を傷つけた先にあるかもしれない私たちの衣服。 ここからは、ファッションが持続可能なものであるために、私たち一人ひとりができることをご紹介します。 ①本当に必要なのか、衝動買いではないかを考える 私たちは、どのくらいクローゼットの中を把握しているでしょうか。必要であるか考える前に衝動的に購入した洋服はどのくらいあるでしょうか。実は、私たちの64%は自分の持っている服を把握しないまま、新しい服を購入しているという環境省のデータがあります。また、今ある服をあと1年長く着れば、日本全体で年間約4万トンの廃棄物の削減になるとされています。 本当に必要な時に、必要な分だけ購入すること。衝動買いをする前にもう一度必要かどうかを考えること。簡単なことですが、それがサステナブルファッションの大前提です。 ②フリマアプリやリサイクルショップを活用する 近年利用者が増えてきているフリマアプリやリサイクルショップでは、まだまだ着用できる洋服が売られています。新品同様の物が売られていたり、お店にはもう並んでいない限定品などを購入できる場合も。欲しいものがあったときはまず、そのようなショップを確認してみましょう。 洋服を手放すときにも、はじめからごみとして処分することを選ぶのではなく、フリマアプリに出品したり、他の人に譲るという方法を検討してみることが大切です。 まだ着られる洋服を廃棄してごみを増やすのではなく、なるべく再利用できるかたちをとることは、CO2の削減にもつながります。 ③クルエルティフリー・アニマルフレンドリーであるか確認する クルエルティフリーとは、残虐性(=cruelty)がない(=free)ということ。つまり商品を作るうえで動物を傷付けたり殺したりしていないことを指します。近年は技術の進歩とともに、エコファーなどが出回るようになっています。またレザーも本革やフェイクレザーの端切れを使用し、生産過程において環境に配慮されたつくりのエコレザーも充実してきています。 おしゃれのために動物を殺したり傷つけたりすることがないよう、リアルファーなどは買わないという選択を。 ④受注生産など在庫を持たない仕組みを持っているブランドを選ぶ シーズンや流行によって売れ行きが変わる洋服。その在庫を大量にかかえるということは、廃棄になる洋服が増える可能性があるということ。受注生産であれば顧客の注文を受けてから生産をはじめるため、在庫を最小限に抑えることができます。販売前に予約を受けてから必要分を発注するお店もあります。オーダーが入った時に作る、売れる予定のものを必要分だけ発注する、といった仕組みであれば無駄な在庫を作りません。 ⑤リサイクル、またはアップサイクル素材を使用しているものを選ぶ リサイクルは、ごみを一度資源に戻してそこから再び製品を作ること。最近注目されているアップサイクルとは、廃棄される予定だったもの(本来は廃棄されるもの)にデザインなどを加えることにより、そのモノの価値を高めることです。例えば捨てられるはずだった生地で新たに洋服を作る、流行りが終わってしまったファッショングッズをリメイクするなどがアップサイクルといえます。 リサイクルやアップサイクルされた素材を使用した洋服を取り入れることは、資源の有効活用に繋がります。 ⑥フェアトレードの商品を選ぶ フェアトレードとは生産者との公正な取引のことを指します。大量生産で極端にコストの安い商品の裏側には、低賃金なうえに過酷な環境下で労働させられる作り手がいる可能性があります。グローバル化が進んだことにより、そのような労働を強いられているのは主に発展途上国の人たちです。 衣服を購入することによって、生産者を搾取するようなことがないよう、フェアトレードのマークや記載があるかどうかをチェックしてみましょう。 環境や作り手のことを配慮しながらファッションを楽しむ 私たちにできることは、今ある洋服を大切にし、手放すときの方法を考えること。購入するときは本当に必要かどうかを考えた上で、どのような素材を使って、どのように作られているかという商品の背景を知ることが大切です。 環境負荷の高いものや生産者を搾取するもの、動物を傷つけるものは購入しないという私たち一人ひとりの選択が、ファッションを持続可能なものへとしていく大事なアクションになります。 【参考】環境省ホームページ https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/