現在開催中「COP30」の概要や論点は?過去の参加者にもインタビュー

産業革命以前と比較して世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという国際的な目標、「1.5℃目標」が極めて厳しい岐路に立たされています。

そんな中、現在国連気候変動枠組条約(UNFCCC)加盟国が集まり、気候変動に関する国際的な枠組みや状況を議論、決定する会議であるCOP30が開催されています。

本記事では、COP30の主な論点を整理するとともに、一昨年行われたCOP28や昨年行われたCOP29に現地参加した関係者の声を通じて、私たちが注目すべき点をみていきます。

そもそもCOPとは?

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COP(Conference of the Parties)とは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に加盟する各国が毎年集まり、地球温暖化への対策を話し合う国際会議です。1995年に第1回が開催されて以来、気候変動に関する世界最大級の意思決定の場として続いています。

会議には、各国政府の代表だけでなく、研究者、NGO、企業、先住民コミュニティ、若者団体など、多様なステークホルダーが参加します。

各国がCO2を中心とした温室効果ガス排出削減の進捗を報告したり、新しい国際ルールを決めたり、民間企業が最新の取り組みを共有するなど、気候対策を加速させるための場として機能しています。

特に有名なのが、2015年のCOP21で採択された「パリ協定」。今世紀末の気温上昇を1.5〜2℃に抑えるため、世界全体で温室効果ガスの排出削減を進める枠組みです。COPはこのパリ協定の進捗を確認し、より強力な対策を議論する役割も担っています。

COP30の開催概要

COP30 は以下の通り、現在開催中。11月21日まで行われています。

開催日・場所:2025年11月10日〜21日、ブラジル・ベレン市

会議の位置づけ:パリ協定(Paris Agreement)達成に向けた「次の5年/10年」への転換点。特に、国別貢献目標(NDC)更新の期限でもある

主な参加者・枠組み:190ヶ国以上の締約国・政府代表・市民社会・産業界・学術界が参加

今年のCOP30で注目される5つのテーマ

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ここからはCOP30で論点となる注目のテーマを見ていきましょう。

  • 温度目標「1.5℃」への道筋

国連事務総長は、「1.5℃を超えるのは道義的失敗だ」と警鐘を発しています。 多くの国のNDCがこの目標に届いておらず、COP29からのギャップが課題です。

  • 気候資金と公平性

発展途上国からの要請が強まっており、先進国の資金提供・約束実行の信頼が問われています。 新しい資金メカニズム、炭素市場の整備、民間資金の動員も焦点となります。

  • 適応とレジリエンス強化(Adaptation & Resilience)

気候変動の影響(洪水・熱波・干ばつ等)が現実化しており、被害から守る仕組みが急務となっています。

  • 損失と被害(Loss & Damage)と気候正義

気候変動で不可逆な被害を受ける国・地域に対し、補償・支援の議論が深まっています。

  • 産業・貿易・都市構造の転換(Just Transition)

化石燃料から再生可能エネルギー、クリーン技術への転換。さらに、都市・輸送・建築の低炭素化。ブラジルが提案する「Climate Coalition(気候クラブ)」や炭素価格の議論も注目です。

昨年参加者に聞くCOPの意義

日本からも実際にCOPに参加している方々がいます。COP29に参加した一般社団法人Media is Hope共同代表理事である名取由佳さんと西田吉蔵さん、COP28に参加した株式会社UPDATERの厚田梨帆さんにお話を伺いました。

写真左から厚田さん、西田さん、名取さん

ーまずは、みなさんがCOPに行った目的は何ですか?

厚田さん

原発は核の平和利用にあたるのか?という疑問をもったことで、エネルギーの問題に関心を持ち、現在は再生可能エネルギー100%の電力小売を中心にした脱炭素ソリューション事業「みんな電力」を展開するUPDATERに在籍しています。2023年には、ドバイで開催されたCOP28に、ビジネスの視点から「脱炭素社会」への移行に取り組む企業グループ日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の若者代表として参加しました。

名取さん

Media is Hopeは、個人の発信では間に合わない気候変動の問題をもっとメディアに取り上げてもらうために、企業とメディアをつなぐという、役割を担っています。COP29では昨年に引き続き他国のメディアに自国の報道について聞いたり、メッセージをもらったりすることも行いましたが、その他にも、会場でのコミュニケーションや来てない日本メディアへ提供する素材、動画、情報、取材先をつなぐなど、橋渡しをする役割で参加しました。

ー諸外国のメディアと日本のメディアの違いは?

名取さん

諸外国のメディアと日本のメディアの大きな違いを感じます。一番には、諸外国のメディアは担当者が変わらないというところですね。気候変動担当の記者が長年継続していて、COPへの参加が8〜10回目という記者が多いです。気候変動は歴史的背景や企業の動きなども交えて発信しないと薄っぺらい報道になってしまうので、長年継続する必要があると思うんです。

西田さん

日本は気候変動報道が少ないと言われていますが、実はカウントしてみると海外とそこまで変わらないとの報告もあります。ただし1つの記事のボリュームが大きく違います。例えば単純な政府の発表を報告する記事になりがちで、実際に1.5度目標に対してどうなのか?など深掘りするような記事は少ないため見ている人は「へ~。」で終わってしまう。それも配置転換があることが原因になっていると思います。

ーCOP29に参加してみて、どんなことが印象的でしたか?

名取さん

ひとつあげるとすれば議長が重要だと感じました。2023年のドバイも2024年のアゼルバイジャンも、どちらも産油国でありながら脱炭素の必要性を感じているからこそ議長になり国としても変化していきつつ、存在感を示したいという思いがあったと思います。ですが、国力の違いがあることで議長の力量の違いは感じました。

ドバイでは、グリーンウォッシュだという批判を受けながらも再エネ3倍や化石燃料を段階的に廃止するという文言も盛り込むことができ、大きな成果がありました。アゼルバイジャンもそれを目指したものの、国として歴史も浅く、石油や原油で成り立っている国なので、冒頭挨拶で「石油は神からの恵みだ」とつい言ってしまって・・・。

西田さん

ですが実際行ってみるとしょうがないな・・・と思ってしまうところもあって。紀元前からガスが燃え続けていて、そこは神聖な場所として神殿のようになっています。神からの恵みだ、と言ってしまう気持ちはわかる気もします。我々はつい非難してしまいがちだけど、先進国は産油国の恩恵を受けて発展してきているので、リスペクトしながらも、地球環境をより良くしていくにはどうしたら良いか、という議論の仕方が必要なんだと思います。

名取さん

現実にはCOPの中でもハレーションが起きていて、「産油国が議長になるのはどうなのか?議長を決めるプロセスを考え直した方が良い」という意見が上がり署名も立ち上がっていました。

総体的に見て2023年に比べ、2024年の成果は薄かった印象はあります。途上国への支援として3千億ドルが決まりましたが、これもかなり不満が残る結果になりました。本来はすでに被害があることから1兆ドルを目指して議論が行われていたからです。これを受けて、今後は議長を決めるプロセスが変わっていくのでは?と言われています。

ーCOPの存在意義はどんなところにあると思いますか?

名取さん

飛行機に乗っていくのはどうなのか?などいろいろな意見はありますが、COPの開催にはそれだけの価値があると感じています。国を超えて共通認識を作り、この会議があることで「なぁなぁ」になっていた事も改めてしっかり取り組まなければと、政府や企業も身が引き締まるはずです。集まることで出る排出量はありますが、各国との合意ができているのはCOPがあるからです。

また、解決に向けて尽力する人たちや、実際に被害を受けている人たちの声を直接聞くことは非常に重要だと思いますね。改善点はあるものの、COPでは戦争がある中でも同じ土俵で話し合いが行われます。G7とは違って200カ国が集まって話し合いができ、そこに市民も加わり声を上げられることはとても貴重だと思います。

西田さん
今は化石賞くらいしか話題にならないのですが、本当はいろんなことが起きているのでそこを追ってほしいなと思います。

政府、企業、市民・若者、専門家などそれぞれにとってのCOPがあって、情報分断が起きてしまっているのかもしれません。

垣根を越えて話し合えるといいなと思いますし、メディアはそのような対談の場を作れるのではないかと思っています。

今年ブラジルで行われるCOP30では、NDC(温室効果ガス削減目標)を各国が持ち寄ってその目標を達成するとどれだけ気温上昇を抑えられるのか算出し、足りなければそれぞれの国が削減目標を見直すという機会にもなります。ぜひ注目して欲しいです!

ー最後に私たち個人ができることはあるのでしょうか?

名取さん

それぞれが所属する組織内でできることはあると思います。政策がなかなか進まないもどかしさはありますが、再生可能エネルギーを進める企業を応援するなど、広げられる部分を広げていくことが重要だと感じます。みなさんの関心分野や場所で応援できるところを応援して欲しいなと思います。

厚田さん

マイボトルを持つなど日々のアクションも大事ですが、生活する上で欠かせない電気を選ぶことも個人のできることだと思います。家庭の電力を再生可能エネルギー由来に変えることでCO2を削減できるので、ぜひ取り組んで欲しいなと思います。マンションに住んでいてもパワーシフトができますし、近年は火力発電と比較しても電気代はさほど変わらなくなってきています。

COP30に注目してみよう

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気候変動という地球規模の課題に対して、各国が協調して次のステップを決めていくCOP。

COP30では森林・支援・脱炭素といった重要テーマが中心となっており、私たちの暮らしやビジネスにも示唆を与え得るものです。

いま世界がどう変わろうとしているかを知るために、ぜひ注目してみては。

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この記事を書いた人

特殊ペインター・写真家・ソーシャルベンチャーの仕事を経て現在スナックママとしてソーシャルグッドな場づくりをしているお酒好き。一人一人が自分を表現して生きられる豊かな社会を作るのが夢。特に関心があるのはジェンダーと気候変動。