「ソーシャルグッド」という言葉を目にする機会が近年増えてきました。
直訳すると「社会にとって良いこと」ですが、その定義は明確ではなく、使われる場面もさまざまです。企業の取り組みや地域の活動、さらには個人の選択の中にも、ソーシャルグッドと呼べる実践が少しずつ広まりつつあります。
本記事では、ソーシャルグッドの意味やSDGsとの関係を整理しながら、具体的な事例や商品をご紹介します。身近なところから始められる、社会や環境に配慮した選択について、一緒に考えてみましょう。
ソーシャルグッドの定義

「ソーシャルグッド」という言葉を耳にする機会が、ここ数年でぐっと増えました。
しかし、改めてその意味を聞かれると、ちょっと言葉に詰まってしまう。そんな人も多いのではないでしょうか。
例えば、環境に優しい商品や、地域の課題解決に繋がる取り組み。
誰かの暮らしを少しだけ良くしたり、未来の社会をより良くしようとしたりする行動や価値観。そのような「社会にとって良いこと」全般の総称が「ソーシャルグッド」です。
本記事では、「ソーシャルグッド」がどのような場面で使われ、私たちの暮らしとどう繋がっているのかを、身近な視点から探っていきます。少しずつ理解を深めながら、生活に取り入れていきませんか。
ソーシャルグッドとSDGsの関係

「ソーシャルグッド」という言葉と「SDGs」は、よく似た文脈で語られることが多いですが、まったく同じ意味ではありません。
ソーシャルグッドは、「社会や地球にとってよい影響を与える行動やアイデア」の総称で、個人の選択から地域活動、企業の取り組みまで、幅広い行動が含まれます。
一方で、SDGs(持続可能な開発目標)は、国連が定めた17の目標と169のターゲットからなる、国際的な行動指針です。つまり、ソーシャルグッドは“SDGsを実現するための手段のひとつ”とも言えます。
たとえば、「リサイクル素材で作られた商品を選ぶ」「子どもの貧困に関心を寄せる」「地域の清掃活動に参加する」など、どれも日常の小さなソーシャルグッドですが、実はそれぞれがSDGsの達成にもつながっています。
ソーシャルグッドとSDGsは、持続可能な未来を築いていくためのアクションとして、一緒に覚えておきたい言葉です。
ソーシャルグッドにはどんな事例がある?

ソーシャルグッドに関する取り組みにはどのようなものがあるのでしょう。実は私たちの身近なところでも、社会や環境に良い影響を与える取り組みが広がっています。
ここでは、教育、フェアトレード、環境配慮、障がい者支援、復興支援といった、さまざまな分野での具体例を紹介します。
- 教育
教育の分野では、誰もが等しく学びの機会を得られる環境をつくることが求められており、これはまさにソーシャルグッドな取り組みといえます。
例えば、経済的な理由で塾に通えない子どもへの無料学習支援や、多様な学び方を認める教育環境づくりなどが含まれます。
また、ジェンダーや障がい、地域格差など、教育機会の不均衡を見直す取り組みも、ソーシャルグッドな未来を育む一歩です。
- フェアトレード
フェアトレードは、発展途上国の生産者が正当な対価を得られるようにする仕組みのことです。私たち消費者が「どこで、誰が、どう作ったか」に目を向けることは、経済のあり方を問い直すアクションになります。
公正な取引を支える製品を選ぶことが、遠く離れた誰かの暮らしを良くする力になるのです。
- 環境配慮
私たち一人ひとりのちょっとした環境に配慮した選択が、地球にとっては大きな変化に繋がります。
例えば、マイボトルやマイバッグの持参。使い捨てプラスチックを減らすこの行動は、今では多くの人にとって日常的な選択肢になりつつあります。
また、食材を無駄にせず使い切ることや、地元産の野菜を選ぶ「地産地消」も環境配慮の一つです。
環境省が推進する「COOL CHOICE(賢い選択)」では、エコ家電の使用や公共交通の活用など、地球温暖化対策のための具体的な選択を呼びかけています。
こうした一つひとつの選択が、温室効果ガスの削減や資源の有効活用に結びついているのです。
- 障がい者支援
すべての人が自分らしく働き、生きられる社会を目指すには、障がいのある人の雇用創出や、暮らしをサポートするサービス、バリアフリーな街づくりなどが欠かせません。
目の前にある「違い」を排除せず、互いに活かし合おうとする姿勢こそが、ソーシャルグッドの根本にあるのです。
- 復興支援
災害発生時には、一時的な支援だけでなく、長期的な視点で地域と共に歩むことが大切です。
義援金の寄付はもちろん、現地の特産品を買う、旅行で訪れるなど、経済的な復興への関わりも広い意味での支援になります。
「支援する/される」ではなく、「共に歩む」という姿勢が、ソーシャルグッドの精神を体現しているのです。
ソーシャルグッドの取り組み例

さまざまなジャンルで広がりを見せているソーシャルグッドの取り組み。実際にはどのような形で実践されているのでしょうか。ここでは、実際に行われているさまざまな取り組みについてご紹介します。
身近な視点から捉えることで、「自分にできること」への気づきにも繋がるかもしれません。
①さいたま市のソーシャルグッドなまちづくり
さいたま市は、2019年に「SDGs未来都市」に選定されました。日本経済新聞社が隔年で実施し、「持続可能なまちづくりの総合力」を数値で可視化・ランキング化する「全国市区SDGs先進度調査」では、毎回上位に選ばれています。
市民の「住みやすさ」実感が90%以上になることを目指す「CS90+運動、」浦和美園でのスマートシティ・脱炭素化、企業と連携するCS・SDGsパートナーズや市内企業の認証制度、市民・学生参加型イベントなど、多方面でソーシャルグッドなまちづくりを推進しています。
②ユニクロのソーシャルグッドな取り組み
ユニクロは「服のチカラを、社会のチカラに。」をスローガンに掲げ、衣料品を通じた社会貢献活動を展開しています。
その取り組みは、環境配慮、難民支援、障がい者雇用、次世代教育など多岐にわたり、企業としての社会的責任を果たすとともに、持続可能な社会の実現を目指しています。
例えば2006年からは、不要になった自社製品の回収を開始し、現在では「RE.UNIQLO」として、世界23の国と地域で展開。 回収された衣料は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との連携により、難民や被災者など、服を必要とする人々に届けられ、2024年12月時点でUNHCRへの衣料寄贈は5,600万点以上と報告されています。
また、2001年から本格的に障がい者雇用に取り組み、国内の店舗では1店舗1名以上の採用を目標に掲げています。
ソーシャルグッドな商品

ソーシャルグッドな商品を選ぶことは、私たちが日常の中で手軽にできる社会貢献の一つです。
ここでは、ソーシャルグッドな商品の事例についてご紹介します。
①福祉施設で作られたサデコMONOがたりの手作り製品
「サデコMONOがたり」は、さいたま市の障がい者福祉施設で作られた製品を販売するオンラインショップです。
公益社団法人埼玉デザイン協議会(サデコ)が運営し、障がいのある人たちが作る製品を、それが出来上がるまでの物語とともに楽しむことができます。
②自然に配慮したNikeのFlyleatherシューズ
Nikeの「Flyleather」は、天然皮革のような見た目や肌触り、匂いを持つ高性能素材。水力を利用した加工法により、合成素材にリサイクルレザー繊維を50%以上配合して製造されています。
この素材は、従来の天然皮革に比べて温室効果ガスの排出量が少なく、気候変動に与える影響が抑えられているため、従来の革に比べて環境負荷を大幅に削減。さらに、耐久性や軽量性にも優れているということで、注目されています。
③震災復興に繋がる、復興庁の「イチオシの逸品」
復興庁が運営する「イチオシの逸品」は、東日本大震災で被災した岩手・宮城・福島の3県の事業者が作る優れた商品を紹介するサイトです。
地元に根差した事業者が地域の良さを活かして作りあげた商品を通じて、被災地の復興支援に繋がります。
ソーシャルグッドは身近な一歩から
「ソーシャルグッド」は、特別な企業や団体だけの活動ではありません。
地域に根差した取り組みや、日々の暮らしの中の小さな選択も、社会や環境にとって価値ある行動として位置づけられます。今回ご紹介したように、福祉・環境・教育・災害支援など、多様な分野でソーシャルグッドの実践は進んでいます。
そうしたアクションの多くは、誰かの「もっと良くしたい」という思いから生まれています。私たち一人ひとりが、自分なりの視点で「社会にとって良いこと」を考え、行動に移すこと。その積み重ねが、より持続可能な未来をつくる力になります。