【2025年】世界平和度指数ランキング最新版。日本の順位と推移・指標の意味も解説

近年、世界各地で紛争やテロ、政治的対立が絶えず、地政学的リスクや治安不安がかつてないほど高まっています。ニュースを見れば、遠い国の出来事であっても、私たちの暮らしや経済に影響が及ぶことを実感する場面も多くなりました。


こうした状況の中、世界の国々を「平和度」でランク付けする国際指標「世界平和度指数(Global Peace Index:GPI)」の最新版が発表されています。


日本は現在、世界の中でどの位置にいるのでしょうか。そして、そもそもこの「世界平和度指数」とはどのような指標なのでしょうか。

今回の記事では、最新ランキングの要点とその特徴、さらにこの指数がどのような指標で構成されているのかを解説します。

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世界平和度指数(GPI)とは?

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そもそも「世界平和度指数(GPI)」とはどのような指標なのでしょうか。まずはその概要について整理していきましょう。

1.世界平和度指数の概要

「世界平和度指数(Global Peace Index, GPI)」は、オーストラリアに本拠を置く独立系シンクタンク「経済平和研究所(Institute for Economics & Peace, IEP)」が2007年から毎年発表している、各国の平和度を測る国際指標です。

この指数では、世界の独立国家および地域合わせて163か国・地域(世界人口の約99.7%)を対象に平和度を比較してランキング化しています。

2.スコアの仕組み

紛争や治安に関する23の指標を用いて評価が行われており、これらは「社会の安全と安心のレベル」「進行中の国内および国際紛争の程度」そして「軍事化の程度」という3つの領域に分類されています。

(表1)23個の評価指標

External Conflicts Fought:国外で戦われた紛争
Internal Conflicts Fought:国内で戦われた紛争
Violent Demonstrations:暴力的なデモ
Deaths from Internal Conflict:国内紛争による死者数
Neighbouring Countries Relations:近隣諸国との関係
Intensity of Internal Conflict:国内紛争の激しさ
Refugees and IDPs:難民および国内避難民
Political Instability政治的不安定性
Weapons Imports武器輸入
Violent Crime暴力犯罪
Deaths from External Conflict:国外紛争による死者数
Incarceration Rate:投獄率
Military Expenditure (% GDP)軍事費GDP
Police Rate:警察官の数(人口に対する比率)
Weapons Exports武器輸出
Access to Small Arms:小型武器へのアクセス
Political Terror Scale:政治的テロの度合い
Nuclear and Heavy Weapons:核兵器および重火器
Terrorism Impact:テロの影響
Perceptions of Criminality:犯罪に対する認識
Armed Services Personnel Rate:軍隊の規模(兵員数)
Homicide Rate:殺人率
UN Peacekeeping Funding:国連平和維持活動への資金援助

世界平和度指数では各国に1から5のスコアが与えられ、スコアが低いほど「平和」であることを示します。

言い換えると、スコアが小さい国ほど暴力や紛争が少なく安定した状態にあり、逆にスコアが大きい国ほど紛争・不安定要因や軍事化の度合いが高いと評価されます。

2025年世界平和度指数ランキング(最新版)

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最新のランキングはどのようになっているのでしょうか。2025年度版のランキングと、地域ごとの傾向を見ていきましょう。

1.2025年版・世界平和度指数ランキング(1位〜163位)

(表2)世界平和度指数ランキング(2025年)

順位国名スコア前年からの変動
1位アイスランド1.095↔︎
2位アイルランド1.26↔︎
3位ニュージーランド1.282↑2
4位オーストリア1.294↓1
5位スイス1.294↓1
6位シンガポール1.357↔︎
7位ポルトガル1.371↑1
8位デンマーク1.393↓1
9位スロベニア1.409↔︎
10位フィンランド1.42↑1
11位チェコ1.435↑2
12位日本1.44↑3
13位マレーシア1.469↓1
14位オランダ1.491↔︎
14位カナダ1.491↓5
16位ベルギー1.492↑4
17位ハンガリー1.5↓1
18位オーストラリア1.505↑1
19位クロアチア1.519↓1
20位ドイツ1.533↓3
21位ブータン1.536↔︎
22位ラトビア1.558↑5
22位リトアニア1.558↑5
24位エストニア1.559↓2
25位スペイン1.578↔︎
26位モーリシャス1.586↓3
27位カタール1.593↓1
28位スロバキア1.609↑1
29位ブルガリア1.61↑1
30位イギリス1.634↑2
31位クウェート1.642↔︎
32位ノルウェー1.644↓8
33位イタリア1.662↑1
34位モンテネグロ1.685↑5
35位スウェーデン1.709↓2
36位ポーランド1.713↓1
37位モンゴル1.719↑8
38位ルーマニア1.721↓2
38位ベトナム1.721↑1
40位台湾1.73↓2
41位韓国1.736↑2
42位オマーン1.738↓5
43位ボツワナ1.743↓2
44位東ティモール1.758↑5
45位ギリシャ1.764↓3
46位アルゼンチン1.768↑5
47位ラオス1.783↓3
48位ウルグアイ1.784↔︎
49位インドネシア1.786↑3
50位ナミビア1.789↑4
51位北マケドニア1.799↓4
52位アルバニア1.812↓6
52位アラブ首長国連邦1.812↑2
54位コスタリカ1.843↓4
55位ガンビア1.855↑16
56位カザフスタン1.875↑5
57位シエラレオネ1.887↑2
58位アルメニア1.893↑10
59位マダガスカル1.895↓6
59位ボスニアヘルツェゴビナ1.895↓3
61位ガーナ1.898↓3
62位チリ1.899↔︎
63位コソボ1.908↓3
64位セルビア1.914↓1
64位ザンビア1.914↓9
66位モルドバ1.918↓2
67位ウズベキスタン1.926↑2
68位キプロス1.933↓1
69位セネガル1.936↑5
70位リベリア1.939↑6
71位マラウイ1.955↑14
72位ヨルダン1.957↓2
73位タンザニア1.965↓8
74位フランス1.967↑5
75位パラグアイ1.981↑2
76位ネパール1.987↑8
76位アンゴラ1.987↓11
78位キリギス1.988↑5
79位タジキスタン1.996↑10
79位ドミニカ共和国1.996↑6
81位チュニジア1.998↓3
82位赤道ギニア2.004↑15
83位ボリビア2.005↓10
84位パナマ2.006↑4
85位モロッコ2.012↓3
86位タイ2.017↓5
87位カンボジア2.019↓12
87位トルクメニスタン2.019↑7
89位トリニダードトバゴ2.02↓17
90位サウジアラビア2.035↑14
91位ルワンダ2.036↑12
92位アルジェリア2.042↓1
93位ジャマイカ2.047↓13
94位コートジボワール2.066↓2
95位アゼルバイジャン2.067↑17
96位ペルー2.073↑14
97位スリランカ2.075↑2
98位中国2.093↓11
99位エスワティニ2.094↓5
100位バーレーン2.099↓7
101位ギニアビサウ2.112↓ 5
102位キューバ2.123↓ 2
103位コンゴ共和国2.132↓ 5
104位エルサルバドル2.136↑ 1
105位フィリピン2.148↑ 6
106位ガイアナ2.149
107位エジプト2.157↑ 2
108位グアテマラ2.174
109位ジョージア2.185↓ 8
110位モーリタニア2.204↓ 8
111位ニカラグア2.207↑ 2
112位ベナン2.211↑ 5
113位ウガンダ2.217↑ 12
114位ジンバブエ2.223↓ 8
115位インド2.229
116位パプアニューギニア2.23↓ 9
117位ガボン2.238↑ 1
118位ギニア2.253↑ 6
119位レソト2.267↓ 4
119位ベラルーシ2.267↓ 2
121位モザンビーク2.273↑ 7
122位ジブチ2.276↓ 2
123位バングラデシュ2.318↓ 33
124位南アフリカ2.347↑ 3
124位ホンジュラス2.347↓ 4
126位トーゴ2.381↑ 7
127位ケニア2.392↓ 1
128位アメリカ合衆国2.443
129位エクアドル2.459
130位ブラジル2.472↑ 1
131位リビア2.478↓ 1
132位エリトリア2.542↑ 6
133位ブルンジ2.574↓ 3
134位チャド2.593
135位メキシコ2.636↑ 2
136位レバノン2.674↓ 1
137位カメルーン2.683↓ 5
138位エチオピア2.688↑ 5
139位ベネズエラ2.692↓ 3
140位コロンビア2.695↑ 1
141位ハイチ2.731↑ 3
142位イラン2.75↓ 4
143位ニジェール2.759↓ 4
144位パキスタン2.797↓ 4
145位パレスチナ2.811↑ 1
146位トルコ2.852↑ 1
147位イラク2.862↑ 3
148位ナイジェリア2.869↓ 3
149位北朝鮮2.911
150位中央アフリカ共和国2.912↓ 2
151位ソマリア2.983↑ 3
152位ブルキナファソ3.016
153位ミャンマー3.045↓ 2
154位マリ3.061↓ 1
155位イスラエル3.108
156位南スーダン3.117↑ 2
157位シリア3.184↓ 1
158位アフガニスタン3.229↑ 2
159位イエメン3.262
160位コンゴ民主共和国3.292↓ 3
161位スーダン3.323↑ 2
162位ウクライナ3.434↓ 3
163位ロシア3.441↓ 2

2.最新2025年版世界平和度指数ランキングの傾向

2025年版世界平和度指数では世界の平和度の平均スコアが前年より0.36%悪化し、2014年から毎年悪化の傾向です。

地域別では、評価対象である8つの地域のうち、7地域が前年より平和度スコアを落とし、改善が見られたのは南米のみでした。

中でも南アジアでは悪化が顕著で、バングラデシュにおける強権的な統治、パキスタンでの国内の不安定化・国境をめぐる緊張の高まりなどがその要因とされています。

一方、地域別で最も平和度が高いのは西部・中部ヨーロッパで、逆に最も平和度が低いのは中東・北アフリカ地域となっています。

日本の順位と評価ポイント

出典:unsplash.com

世界の平和度ランキングにおいて、日本はどんな評価を受けているのでしょうか。まずは最新2025年の順位と評価のポイントについて整理しましょう。

1.日本の最新の順位

2025年版の世界平和度指数(GPI)では、日本は世界12位、スコア1.440です。前年の17位から順位を上げ、再びトップ15圏内に入りました。

2.日本の評価のポイント

日本が最も強みを発揮しているのは「安全・安心」領域です。

治安の良さ、犯罪の少なさ、テロへの耐性、そして政治の安定性といった要素が高く評価され、日本が「安心して暮らせる社会」であることが数字にも表れています。

また、紛争関連の指標(国内外の武力紛争の関与や死者数など)も安定しており、「国内・国際紛争」領域でも良好な評価を得ています。

一方で、課題とされているのが「軍事化」領域です。防衛費の増加や兵力・兵器の保有状況などを反映するこの領域で、日本のスコアは相対的に高めに出てしまっています。世界的な安全保障環境の緊張が高まるなか、日本でも防衛費拡大の動きが続いており、この点が順位の足を引っ張りやすい要因となっているようです。

日本の順位の推移

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現在の日本の順位とその特徴について把握できましたが、これまではどのような結果だったのでしょうか。順位の推移を振り返ってみましょう。

(表3)日本の順位の推移(2018年〜2025年)

順位スコア
2025年12位1.44
2024年17位1.525
2023年9位1.336
2022年10位1.336
2021年12位1.373
2020年9位1.36
2019年9位1.369
2018年9位1.391

この推移から分かるように、日本は長らく世界トップ10前後の水準を維持してきましたが、2024年に一時的に順位を17位まで落としています。この背景には、世界的な地政学リスクの高まりと、それに伴う防衛費拡大など軍事化スコアの悪化が影響しています。そして2025年には、治安や社会の安定性が改めて高く評価され、順位を12位に戻しています。

アジア太平洋地域における日本の平和度順位は、シンガポールに次ぐ2位です。台湾は40位、韓国は41位で、日本よりもやや順位を下げています。日本は地域内でも特に高い評価を受けている先進国の一つといえるでしょう。

世界から見た「平和な国」とは?

出典:unsplash.com

平和度の高い国には、どのような共通点があるのでしょうか。GPIスコアの高い国を手がかりに、文化や政策の視点からその特徴を整理してみましょう。

1.スコア上位国の特徴

2025年版の世界平和度指数で上位にラインクインしたのは、アイスランド(1位)、アイルランド(2位)、ニュージーランド(3位)、オーストリア(4位)、スイス(5位)など。

これらの国々には、いくつかの共通点が見られます。

まず、国内外の紛争にほとんど関与しておらず、軍事的な衝突や外交上の不安定要素が極めて少ないことが挙げられます。また、防衛費や兵力規模が小さく、武器の輸出入も限定的であるため、軍事化の度合いが低いという特徴があります。

さらに、殺人や暴力犯罪の発生率が低く、日常生活における安全性が高い点も共通しています。つまり、単に戦争がないだけでなく、社会の安全と政治の安定が両立していることが、これらの国々が平和度ランキングの上位に位置する理由なのです。

2.幸福度との関係

世界平和度指数上位国は、世界幸福度ランキングでも高い評価を得ているケースが多いです。

例えば、フィンランドやデンマークなどの北欧諸国は、幸福度ランキングで毎年上位を占め、平和度でも高いスコアを維持しています。

学術的にも、「社会の安全」「政治への信頼」「公平な制度」といった要素は、平和度と幸福度の両方を高める基盤になることが示されています。このように、平和な社会は、市民の幸福感や生活満足度にも直結しているのです。

3.平和を支える政策と文化

平和な国家の背景には、暴力や紛争が無いだけではなく、社会や制度を支える構造的な要素が存在します。経済・平和研究所(IEP)はこれを「ポジティブ・ピース」と呼び、持続的な平和を築くための8つの要素を示しています。

それは、十分に機能する政府、健全なビジネス環境、他者の権利の尊重、隣国との良好な関係、情報の自由な流通、高い教育水準(人的資本)、汚職の少なさ、そして公平な資源分配といった項目です。

平和度ランキングの上位に位置している国々は、これらの「ポジティブ・ピース」の条件をバランスよく備えています。

例えば、アイスランドは軍事力をほとんど持たず、市民社会の信頼関係や参加意識が強く根付いています。ニュージーランドやスイスもまた、透明性の高い政治と公正な社会制度を通じて、市民生活に安定と安全をもたらしています。

こうした政策や文化が組み合わさることで、単に戦争が無いだけでなく、社会が長期的に安定し、人々の幸福度や生活満足度の向上へと繋がっているのです。

数字から考える“平和”と日本のこれから

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世界平和度指数のランキングは、国の平和を単純に序列化するものではなく、私たちが社会の現状を知り、未来を考えるための「気づきの指標」です。

そこには、治安や政治の安定だけでなく、外交関係や国際情勢の影響も反映されており、社会の安定・個人の安全・国際関係が複雑に絡み合っていることが示されています。

日本はこれまで比較的高い順位を維持してきましたが、軍事化や国際情勢の変化など、課題も少なくありません。

ランキングの数字をきっかけに、私たち一人ひとりが「平和とは何か」を改めて考え、安心できる暮らしをどう守り育てていくかを見つめ直すことが、これからの未来に向けて重要な姿勢になるでしょう。

参考:
Global Peace Index 2025
経済平和研究所(IEP)
World Hapiness Report

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この記事を書いた人

元エコビジネス系コンサルタントのフリーライター/ラジオディレクター。大好きなあんこと白米を食べながら日々言葉とメディアの可能性を模索する。おはぎを考えてくれた人、本当にありがとう。将来素敵な本を出すためにいろんな経験をしたい20代。

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