訪日観光客の急増で問題に。各国から学ぶ、オーバーツーリズム対策

連日ニュースでも取り上げられている通り、コロナ禍が明けて行動制限がなくなった上に、円安傾向が追い風となり、海外からの旅行者は増すばかり。

日本政府観光局によると、2月に日本を訪れた外国人旅行者は推計で278万8000人。2月としては過去最多となりました。そこで問題になっているのがオーバーツーリズムです。

今、海外でもオーバーツーリズム対策の導入が増えています。本記事では、海外におけるオーバーツーリズム対策について見ていきましょう。

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オーバーツーリズムとは

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オーバーツーリズムとは、一つの地域に観光客が過剰に集中し、環境的・社会的・文化的に良からぬ影響を与える現象のことです。過剰な観光需要によってインフラが十分に対応しきれなくなり、生活の質の低下、自然環境の損傷、その地域ならではの文化の喪失など、マイナスの影響をもたらすことが考えられます。

オーバーツーリズムは、特に人気の観光地に起こりやすい現象です。旅行者が急増する今、地域とそこで生活をする人たちの未来を考え、どのような取り組みができるかが重要視されています。

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世界各地のオーバーツーリズム対策事例

各国が頭を悩ませるオーバーツーリズム問題。海外の地域が実際に取り入れている、もしくはこれから導入する予定のオーバーツーリズム対策をご紹介します。

【アメリカ/ハワイ】観光スポットの入場予約制を導入

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ハワイ・オアフ島にあるダイヤモンドヘッドでは、訪問者の数を制限し、登山客の混雑緩和を目的とした事前予約制が2022年4月に始まりました。予約制の導入によって、登山時間の分散に成功。分散したことによる効果か、登山途中の脱水症状や捻挫などの救急サービスを要請する件数が減るなどの傾向が見られています。他にも、同島のハナウマ湾自然保護区でも2021年4月から予約制がスタートしました。

同じく、ハワイ・マウイ島のイアオ渓谷州立公園でも2023年春から入場予約制を導入。ハワイ非住者は事前に予約が必要で、かつ駐車場料金がかかるようになりました。

【オーストラリア/ケアンズ】入場制限とCO2削減プログラムの実施

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世界最大のサンゴ礁地帯であり、その美しさから世界中の人を魅了してきた世界遺産グレートバリアリーフ。その豊かな自然を守るための検討がなされてきました。
ケアンズでは、グレートバリアリーフ内の観光として利用できるエリアを全体の7%にとどめ、観光ツアー会社に向けて厳しい内容の許可制にする取り組みをしています。
他にも、アクティビティで使用する道具はすべてスタッフが運び、ゴミ一つ残さないことなどを実践。

同エリアにある人気観光地フランクランド島では、上陸人数を1日あたり100人に制限し、ツアー会社に厳格な許可制を導入したり、観光客による駐車車両の増加が問題となっていた、モスマン渓谷では、一般車両の進入を禁止するなどの対応がなされています。

さらに、ケアンズ観光局主催の視察ツアーにおいては、旅行することで発生するCO2排出を少しでも抑制できるよう、ツアーに参加した観光客の名前で植樹するといった「カーボンオフセットプログラム」を行うなど画期的な取り組みも行われています。

【フランス/パリ】住民と歩行者ファーストの街づくり

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2024年夏季オリンピック開催地のパリでも、オーバーツーリズム対策を積極的に実施。中心部は、非居住者の車が1日あたり18万台超行き交い、この数は地元住民の車の10倍以上と言われており、その対応に迫られてきました。
パリでは、地域の環境と住民の生活を守るため、観光バスを規制。車優先の道や広場を、自転車や徒歩向けのレーンに変える対応を行っています。

有名なシャンゼリゼ通りもオリンピックに向けて大改修の予定。緑を増やして車を減らすことを目的に、木が植えられ、歩道が整備され、歩く庭園に生まれ変わります。

常に混雑するエッフェル塔の足下にあるイエナ橋を公園にする計画もあり、ソフトモビリティを取り入れることで車両の通行を公共交通機関のみにし、歩行者を優先する構造に変わる予定です。

【イタリア/ベネチア】観光客に対する入場料の導入

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水の都ベネチアは、人口が約4万9000人であるのに対し、昨年の観光客は約2000万人で、オーバーツーリズムが常に住民の頭を悩ませてきました。
観光客の人数を制限するため、ベネチアでは2024年4月25日から、繁忙期における入場料の導入を開始。オンラインで事前に5ユーロの支払いが必要です。現在は試験的な運用ですが、今後特定の時期に価格を上げていく検討もなされています。

【イタリア/リビエラ】写真撮影での長居が罰金の対象に

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フランスからイタリアにかけての地中海沿岸に位置するリビエラでは、澄み渡る海やカラフルな建物が美しく、撮影する観光客で歩道が混雑するといった現象がありました。
推定人口が400人以下というリビエラにあるポルトフィーノ半島エリアでは、観光客の混雑緩和のため、自撮りをするために長時間居座ることを禁止。ルール違反した場合、最高275ユーロの罰金(※2024年2月4日時点)が徴収されます。

各国・各地のオーバーツーリズムを学ぼう

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各国が悩まされているオーバーツーリズム。日本でも京都や鎌倉などの観光地だけでなく、SNS等の影響によって予想外に人気に火が付く地域もあります。

地域のキャパシティを越してしまうと、環境汚染や騒音・渋滞の発生は必ず起こると言っても良いでしょう。日本にとって大切な資源となりつつある観光と、地元の人々の生活をどう両立していくかが今問われています。

具体的な対策を知り、持続可能な観光の在り方を考えることが重要になっているのです。

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