植物性ミルクとは、豆類や穀物など植物由来の原料からつくられたミルクのことです。
日本では、植物性ミルクと言えば豆乳がなじみ深いですが、近年は環境に優しい、ヘルシーかつ栄養価が高いなどの理由からアーモンドミルクやオーツミルクをはじめとした植物性ミルクが人気に。
そんな植物性ミルクは、種類が多いゆえに、どれを選べば良いか迷ってしまうことも。
そこで今回は味や特徴、環境への影響などをご紹介。植物性ミルクを深堀りします!
植物性ミルクはサステナブル?
CO2排出量は、全産業の約3~4%を占めると言われている酪農業。牛のゲップから排出されるCO2が問題になっているのに加え、乳牛を飼育するためには多量の穀物を必要とし、その穀物の栽培には多くの水を使用します。その他にも、アニマルウェルフェアの観点からも工業的な乳牛の飼育はエシカルではない面が多く見られます。
そのような背景があり、環境のことを考慮する場合には、植物性ミルクを選んだほうがサステナブルであると言えます。
しかし、すべての植物性ミルクであれば環境負荷が低いとは言い切れません。なぜなら各ミルクを原料から栽培する際に使われる資源、輸送にかかる燃料消費なども考慮されるからです。
BBCでは以下のような表を発表しています。このような報道や書籍を参考に、それぞれの植物性ミルクの特徴を見ていきます。
人気の植物性ミルク6つは環境にやさしい?
今回は、数ある中から6つの植物性ミルクをピックアップ。それぞれのミルクの特徴や、栽培・輸送にかかる環境負荷をチェックしていきましょう。
ソイミルク(豆乳)
大豆からつくられており、日本人に最も馴染みのあるミルクです。豊富なタンパク質、ビタミンやオリゴ糖などが含まれています。
大豆生産におけるCO2排出量、水資源利用量は少ないとBBCは報じています。しかし大豆の多くが工業的農地で栽培されていることから、グリーンであるとは言い切れません。
さらに、他の植物性ミルクの原料となるナッツに比べて国産のものが多い印象がある大豆ですが、実は国内自給率は6%程度。北アメリカ・南アメリカ大陸からの輸入が大半であることから、輸送にかかる環境コストを考えると、国産のものを選ぶと良いでしょう。
アーモンドミルク
アーモンドを原料としてつくられたミルクです。カロリーや糖質が低く、ビタミンE、食物繊維が豊富で、近年はスイーツの材料やカフェドリンクとしても人気を得ています。
その人気の一方で、アーモンドの栽培には多量の水が必要で、1粒のアーモンドを栽培するのに3ℓもの水を使用します。さらに、アーモンドの木に使用する農薬はミツバチを危険にさらしており、2018年~2019年の間だけでもアーモンド産業で犠牲になったミツバチは500億匹と言われています。生産背景に責任を持っているメーカーを選ぶことが大切です。
オーツミルク
穀物の1種であるオーツ麦を原料としてつくられたミルクです。最近は、アーモンドミルクに並び、カフェなどでも牛乳の代わりによく使われているオーツミルク。植物性ミルクの中でもカルシウムが多く含まれていることが特徴で、食物繊維も豊富です。
原料となるオーツ麦の生産におけるCO2排出量、水資源利用量は少ないとBBCは発表。生産に必要な水の使用は、牛乳のおよそ15分の1の量と言われています。
日本における国内自給率は12%で、主にカナダ、オーストラリア、イギリスからの輸入頼りのため海外産オーツミルクの環境負荷は改善の余地があるものの、世界的に見ると、植物性ミルクの需要が高い北部の地域でも栽培が可能なため、農園から消費者までの輸送距離は短くて済むのが特徴です。
マカダミアミルク
マカダミアナッツを原料としてつくられたミルクです。ナッツミルクの中でも、不飽和脂肪酸であるオレイン酸や、アンチエイジングにも寄与するパルミトレイン酸が含まれます。
マカダミアナッツは、オーストラリアを筆頭にアフリカ、ケニア、グアテマラ、コスタリカなどの生産地からの輸入が必須です。
ただオーストラリア・マカダミア協会では農薬に頼らない外注除去など水、土壌、空気、在来の植生、野生動物の保護をうたっていることから、現地で消費する分にはサステナビリティへの貢献度が高いミルクと言えるでしょう。
ココナッツミルク
ココナッツの果肉からつくられたミルクです。カリウムやマグネシウム、銅や鉄などが豊富です。ただカロリーは高めなので、摂りすぎには注意したいミルクです。
ココナッツの栽培には、水や化学物質をほとんど必要としない点で環境にやさしいと言えます。また、優れた炭素吸収能力があり、生きている間は二酸化炭素を吸収し続けてくれます。
しかしナッツ同様、国産のココナッツは手に入らないので、輸送に環境負荷がかかります。
ヘンプミルク
健康・美容意識の高い人の間で話題となっている麻の実(ヘンプ)を原料としたミルクです。豊富な食物繊維のほか、ビタミンEや鉄分、亜鉛、銅、マグネシウムなど様々な栄養素を摂取することができます。
ヘンプは丈夫な植物で、農薬が無くても様々な地域で栽培できます。使用する水の量も比較的少なく、各部位に用途があるので、無駄なく使えるのも高ポイントです。
植物性ミルクはこれからより身近になる
健康志向の高まりや、環境保護の観点から普及しつつある植物性ミルクを、栄養素からだけでなく、環境負荷などから見てきました。
植物性ミルクであっても、条件次第では必ずしもエコとは言い難い場合もあります。
今後ますます身近になることが予想される植物性ミルク。選ぶ際には、その生産国や生産背景を知って選んでみてはいかがでしょうか。
参考:ジョージーナ ウィルソン=パウエル.これってホントにエコなの?,東京書籍,2021