2015年より世界で取り組みが始まり、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であるSDGsは、開始からもうすぐ10年が経とうとしています。日常的にSDGsやサステナブルという言葉を耳にする機会は増えたものの、具体的にどれだけ目標達成しているのか確認しておきたいものです。
この記事ではSDGsの2024年現在の進み具合などを整理していきます。世界や日本におけるSDGsの現状を把握したい方、課題を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
9月末はSDGs週間
2015年9月25日に国連でSDGsが採択されたことから、毎年9月25日を含む1週間が「SDGs週間(Global Goals Week)」と名付けられています。この1週間は、持続可能な開発目標を達成するために、世界各国でさまざまな取り組みが行われています。
日本ではSDGs週間に合わせて、2021年より「HAPPY EARTH FESTA」を開催。2024年は9月20日から28日まで東京・大阪・沖縄でイベントが開催されます。茶殻を用いたうちわ作りやビーチでのゴミ拾い、アンバサダーによる登壇イベントなど多種多様な催し物が行われる予定です。
SDGsとは?
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月の国連サミットで全会一致により採択された「持続可能な開発目標」です。2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として始まり、2030年までの国際目標が取り決められました。
17の目標、169のターゲットからできていて、環境問題や貧困、経済成長、教育、保健など、地球環境や社会を持続可能なものにしていくための目標がテーマごとに掲げられています。これらは「誰一人取り残さない」ことをキーワードに設定。先進国や発展途上国、中所得国など限定せず、全ての国に適用されていて、日本でも積極的な取り組みがなされています。
2024年現在の進み具合
SDGsは2030年までの目標とされている中、2024年現在の進捗はどのようになっているのでしょうか。17の目標の中から、3つを取り上げて紹介していきます。
1. 貧困をなくそう
SDGsの目標1は「貧困をなくそう」を掲げ、
・食事、水、電気、住むところや着るもの、くすりなどすべて合わせて1日に使えるお金が1.25米ドル未満で生活しなければならない状態極度に貧しい人を失くす
・各国の基準で「貧しい」とされる男性、女性、子どもの割合を少なくとも半分に減らすこと
などを目標としています。
実際2020年から2022年にかけて新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、世界の貧困率は2020年に数十年ぶりに増加し、進歩が3年遅れることになりました。
貧困状態にある人口は、低所得国と下位中所得国での増加により、2019年の8.9%から2020年には9.7%に増加しました。また上位中所得国と高所得国では財政支援が迅速に行われたことにより、極度の貧困は減少しています。2022年にはほとんどの国で、貧困はパンデミック前の水準に戻りました。
世界の労働貧困率は、2020年は7.7%、2023年には6.9%となっていて、2015年以降は労働貧困率が低下してきています。しかし人数で見てみると、2023年には世界中で約2億4,100万人もの労働者が極度の貧困状態にあることが分かり、2024年に前向きな変化はほとんどないようです。総合すると地域間の格差が大きくなっていることは明らかです。
2. 飢餓をゼロに
目標2は「飢餓をゼロに」と題して、
・誰もが安全で栄養のある食料を十分に手に入れられるようにすること
・成長が妨げられる5歳未満の子どもを減らすこと
などが掲げられています。
実際には世界の飢餓や食糧不足は、新型コロナウイルス感染症をきっかけに急増し、3年もの間、高止まりした状態でした。そして2022年には5歳未満の子ども1億4,800万人が発育阻害に苦しみ、2023年には約7億3,300万人が飢餓に直面。現在の状態が続くと、2030年には5人に1人の子どもが発育阻害に苦しむことになります。
そのような中、2022年には戦争の影響などにより世界の約60%の国が食糧価格の高騰を経験します。持続可能な食糧システムを目指す中、飢餓を減らす足かせになっているといえるでしょう。
13. 気候変動に具体的な対策を
目標13は「気候変動に具体的な対策を」を掲げていて、
・自然災害が起きた時に立ち直る力を備えること
・気候変動への対応を各国が国の政策や戦略、計画に入れること
を目指しています。
近年気候危機が加速。気温上昇が続き、世界の温室効果ガス排出量は年々増加し続けているのが現状です。ゆえに世界的に異常気象が起こり、激化する災害に苦しみ、人々の命と暮らしが破壊されています。
世界的に経済や社会コストの増大を回避するためにも、低炭素化に早急に取り組む必要があります。全ての温室効果ガスをカバーし、地球の気温上昇を1.5度未満に抑える目標を掲げて、高い志で取り組んでいかなければなりません。
SDGsは達成できる?
SDGsの17の目標の中から3つの目標を取り上げて、進捗を確認してきました。では実際にSDGsの全体の目標はどれほど達成できているのでしょうか。
現状、SDGsのターゲットのうち、軌道に乗っているのはわずか17%。半数近くのターゲットは最低限しか進捗しておらず、また3分の1超のターゲットは停滞または後退していることが明らかになっています。先ほど貧困、飢餓、気温変動の現状について紹介した中でも記載したように、新型コロナウイルス感染症による停滞、戦争の悪化などに加えて、地政学的緊張や気候変動の拡大により、目標達成に向けて停滞してしまっているようです。
国際目標達成を目指す2030年まであと6年余り。「より強力でより効果的な国際協力によって、いますぐに前進を最大化させることが緊急に必要である」とアントニオ・グテーレス国連事務総長は述べています。
2030年のゴールに向けて
2024年のSDGs達成度ランキングを見ると、世界167ヵ国中、日本は18位という結果に。また持続可能な開発目標をどのくらい達成しているかを示す「SDGs指数スコア」は79.9という数値が出ています。日本の数値は世界的に見て高く、一定の成果を出しているといえます。ただ17全ての目標で高水準を確保しているわけではなく、たとえば目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」や目標13の「気候変動に具体的な対策を」という目標は、深刻な課題を残しています。政府だけでなく、企業や一般市民もより意識を高めて、達成に向けて進んでいくことが大切です。
参考:
https://unstats.un.org/sdgs/report/2024/The-Sustainable-Development-Goals-Report-2024.pdf
https://files.unsdsn.org/sustainable-development-report-2024.pdf