今、「旬」が見直されています。旬のものが体にいいとなんとなくわかっていても、その理由や、具体的な効果までは詳しく知らないという方も少なくありません。旬が見直されている背景と、旬の食材の魅力、それらを食べるメリットを多角的に解説します。
なぜ今“旬”が見直されているのか

食べ物の「旬」が見直されている背景には、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、地産地消や食育、生物多様性、持続可能な環境への意識が高まったことがあります。
技術の進歩と流通網の発達により、一年中どんな食材でも手に入る昨今では、食べ物で季節を感じることが少なくなりました。しかし本来、日本の伝統食ともいわれる和食は「旬を食す」ともいわれるように、食を通して季節を感じ、季節を味わうものでもあります。
旬を食すとはどういうことか、旬の食材の魅力、持続可能な環境との関係を詳しくみていきましょう。
そもそも「旬」とは何か?

旬とは、自然の生産サイクルで育てた野菜や果物が採れる季節や、魚介類が最も多く獲れる季節のことをさします。
旬の食材は栄養価が高く、香りや旨味が凝縮されています。多様な調理法でそれらを最大限に引き出し、五感で食事を味わい、季節を楽しみ、健康を維持してきたのが和食です。
非日常的な懐石料理や割烹などから日常的な家庭料理までを含む多様な和食は、伝統的な日本の食文化。それを支えてきたのは、四季折々の旬の食材です。
旬は、日本の食文化に欠かすことのできないものの一つであるといえます。
旬のものを食べるメリット

スーパーには、季節を問わず野菜や果物、魚介類などの食材が並びます。食べたいものを食べたいと思った時に食べられますが、旬の時期に食べたほうがさまざまなメリットがあります。
- 旬ではない時期に比べて、栄養価が高い
- 素材のもつ香りや旨味、甘みが強く、美味しい
- 季節ごとに必要な栄養素が多く含まれている
- 収穫量や漁獲量が増えるため、入手しやすく価格が安い
- 自然のサイクルで生産されているので、環境負荷が少ない
これらのことから、旬のものは人と環境、そしてお財布にも優しいことがわかります。
旬のものを食べるデメリットは?
メリットがある一方で、デメリットもあります。
- 店頭に並ぶ食材が、一時的に偏りやすくなる
- 旬の時期を過ぎると収穫量が減り、手に入りにくくなる
- 食材によっては保存がきかない、腐りやすいものがある
- 下処理に手間のかかるものがある
旬の野菜や果物のなかには、灰汁抜きが必要なものや日持ちのしないものもありますが、少し手を加えることで、デメリットをメリットに変えることができます。
ピクルスやぬか漬けにしたり、スライスやざく切りにして冷凍しておくと、保存がきくだけでなく日々の料理にさっと使えて便利です。ソースやジャムにして瓶詰めすると、長期保存もできます。使いきれそうにない時は、早めに加工するのがおすすめです。
なぜ旬の食べ物はおいしいのか?

旬のものを食べるメリットでお伝えしたように、旬の食材は香りや旨味が強くなり、とても美味しくなります。それはいったいなぜでしょうか。
本来野菜や果物は、自然のサイクルのなかで育ちます。例えば冬の野菜の代表格ほうれん草は、夏の強い日差しでは、栄養を蓄える前に一気に成長してしまいますが、冬の低温のなかであれば、じっくり時間をかけて光合成をして栄養を蓄えることができます。
それぞれの特性を知り、気候特性にあった環境で、自然の力を最大限に活用して育てることで、旬の時期の食べ物は一年のうちで最も美味しくなるのです。
特性にあわない環境下で栽培する場合、病気を防いだり、栄養を与えたりするための農薬や化学肥料が使われます。それらの多用は土壌の微生物を減少させ、保水力や栄養分を低下させてしまいます。ひどい場合は土壌構造を破壊し、生物多様性や水質などの環境に負荷をかけてしまう可能性も否定できません。
旬の食べ物は美味しいだけでなく、自然のサイクルを維持するうえでも大切な役割を担っているといえます。
旬の食べ物を食べることで得られる効果

栄養価が高い旬の食べ物を食べることで、さまざまな効果が期待できます。
- 抵抗力を高めるため、免疫アップが期待できる
- 代謝を促し体の調子を整える
- 季節ごとに必要な栄養が含まれており、丈夫な体づくりを助ける
春の野菜は冬の間に蓄積した老廃物を体の外に出し、新しい細胞を作りだす手助けをしてくれます。夏の野菜は体を冷やし、体調を整えてくれます。良質な油を蓄えた秋の作物や魚は、冬に備える体作りに。冬の野菜は体を温めて、寒さから守ってくれます。
旬の食べ物は季節の変化に対応できるよう、体の内側からの健康を支えてくれるのです。
旬を味わうことは、自然と繋がること

美味しくて栄養価が高く、人の健康や自然のサイクルの維持に欠かすことのできない旬の食べ物。それらを五感で味わう日本の食のスタイルは、自然と繋がることのできるサステナブルな暮らし方のひとつです。四季のある日本だからこそ、無理なくできるのかもしれません。
次の季節、あなたは何を食べて自然と繋がりますか?


