ネイチャーポジティブとは。自然と共生する未来へのヒント

気候変動や森林破壊、生物多様性の損失など、自然環境を取り巻く課題が深刻化しています。そんな中で注目されているのが、「ネイチャーポジティブ」という考え方です。

ネイチャーポジティブとは、自然への負荷を減らすだけではなく、失われた自然を回復し、より良い状態へと導くことを目指すもの。

今回は、ネイチャーポジティブの意味やリジェネラティブとの違い、世界と日本の動き、私たちにできる身近なアクションについてご紹介します。

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ネイチャーポジティブとは

出典:unsplash.com

ネイチャーポジティブは、日本語では「自然再興」と訳されます。

自然を回復軌道に乗せるために、生物多様性の損失を止め、生態系の健全性を取り戻すことを目指す概念です。

現在の地球は、生き物が凄まじい勢いで絶滅していく「ネガティブ」な状態にあり、それを種の数や生態系の質を回復させる「ポジティブ」な状態に変換する必要があります。

ネイチャーポジティブは、2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)やG7の「2030年自然協約」などでも掲げられ、国際的な認知が高まっています。

また国内では「生物多様性国家戦略2023-2030」において、2030年までにネイチャーポジティブを達成する目標が明記されています。

そもそも生物多様性とは、全ての生き物が持つ多様な違いや関わりを指します。

生物多様性には3つのレベルがあり、同じ種でも遺伝子の違いによって個性がある「遺伝子の多様性」、地球上の約3,000万種の生き物が生態系のバランスを保つ「種の多様性」、異なる生態系を保つことで自然の機能が維持される「生態系の多様性」です。

ネイチャーポジティブの実現には、生物多様性の損失の直接的な要因だけでなく、社会経済の変化による間接的な影響も見ていく必要があります。

例えば農林業の縮小による里山・里地の管理放棄やグローバル化による食料自給率の低下、外来種問題です。

なぜネイチャーポジティブが必要なのか

ネイチャーポジティブが必要とされるのは、自然資本の劣化や生態系の破壊によって、生物多様性が急速に失われているためです。

現在の地球は過去1,000万年間の平均と比較して、10倍から100倍もの速度で生き物が絶滅しています。

生物多様性の損失は、単純に動植物が減るだけでなく、人間社会を揺るがす深刻な問題を引き起こします。

世界のGDPの半分に相当する44兆ドル以上が、自然に依存しており、自然の損失によって脅かされる可能性があると報告されています。例えば食料や水、エネルギーの安定供給の不安定化、農業・漁業の雇用喪失、地域経済の破綻、森林伐採による自然災害への脆弱性の増大などが懸念されています。

ネイチャーポジティブは、SDGsの17の目標とも密接に関わっています。例えば、目標14の「海の豊かさを守ろう」では、海洋ごみの削減、海洋資源の持続的な管理・保護、海洋酸性化への抑制などがターゲットとされ、目標15の「陸の豊かさも守ろう」では、陸上の生態系の保全と回復、森林の管理、砂漠化への対応などが掲げられています。

SDGsの達成には、ネイチャーポジティブな行動が不可欠なのです。

ネイチャーポジティブとリジェネラティブとの違いは?

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ネイチャーポジティブに近い言葉に「リジェネラティブ」があります。どちらも自然を守り、回復させることを目指す概念ですが、目的やアプローチが異なります。

リジェネラティブは、自然や社会、人間の健康をこれ以上悪化させないだけでなく再生に向けて行う取り組みを指しており、地域全体を理解した上で、自然・人・社会が一体となって再生する仕組みをつくります。例えば「再生型農業」は、土壌の健康を回復させながら作物を育てる農法であり、適切な放牧管理は、土壌環境の改善や生態系の回復につながるとされています。

一方ネイチャーポジティブは、自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め、反転させることを目指す国際的な目標です。生物多様性の損失を防ぐだけでなく、プラスに転じさせるためにさまざまな取り組みを行います。ネイチャーポジティブはCOP15やG7などで国際目標として掲げられ、各国がその実現に向けて取り組んでいます。

ネイチャーポジティブに関する世界と日本の動き

世界では、2022年に「国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」が開催され、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させるための緊急行動をとることが示されました。また、2050年には「自然共生社会の実現」を目指しています。

日本では、2022年に環境省が「ネイチャーポジティブ経済研究会」を設置。2023年に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」では、デジタル技術などを活用して生物多様性や自然資本への影響の把握、技術開発、データ連携などの促進が示されました。2024年には「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」が発表され、企業や消費者の行動を変えるビジョンや道筋が提示されています。日本では、森林保全プロジェクトや里山再生活動などに取り組んでいます。

ネイチャーポジティブの身近な事例

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ネイチャーポジティブは近年多くの企業が取り組んでおり、身近な事例も存在します。

例えば食品メーカーが持続可能な農業への支援を行うことがあり、オーガニックな原料の調達や環境資源の再利用、農家との協働などを実践しています。

またアパレルブランドは、生態系に配慮した素材を利用する取り組みがあり、水や農薬の使用を抑えられるリネン・ヘンプの採用、リサイクル素材の活用などが一例です。

さまざまな自治体では、里山保全プロジェクトに取り組んでいます。里山保全と一口に言っても取り組みはさまざまで、例えば森林の手入れや湿地・ため池の管理、外来種の駆除などがあります。企業がCSRの一環でプロジェクトに参加することもあります。

また森林保護に関わるNPO法人は、間伐を行い森を健全に保つ活動や植林活動を行っています。絶滅危惧種の保護を目的とするNPO法人もあり、生態調査や事故防止などに取り組んでいます。

私たちにできること

ネイチャーポジティブの実現に向けて、政府や企業、自治体だけでなく、私たちが日常でできることがあります。

一つ目は、環境負荷が少ない商品を選ぶことです。例えば、持続可能な森林管理を証明する「FSC認証」の紙・木製品、持続可能な漁業と証明する「MSC認証」の魚、簡易包装の商品を選ぶことが挙げられます。

また、生物多様性に配慮した食生活を意識することも、一つの選択肢です。地産地消を意識すれば、不必要な輸送エネルギーを抑えられ、地域の自然環境を守ることにも繋がります。他にも、季節の野菜を多くの人が消費することで、農家がローテーションで野菜を作ることが可能になり、その結果、土壌のバランスが整う、特定種の害虫を増やし過ぎないなどの効果が期待できます。

さらに自治体やNPOが行っている自然保全活動やワークショップへ参加する、家庭菜園で在来植物を育てる、ごみ削減やリサイクルを意識することなども、ネイチャーポジティブ実現のための行動の一つです。

私たちができる一歩から始めよう

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自然とのつながりを取り戻し、未来へ豊かな環境を引き継いでいくために、ネイチャーポジティブという考え方はますます重要になっています。私たち一人ひとりの選択は小さく見えても、その積み重ねが自然を守り、育てる力になるのです。

食べ物や日用品を選ぶとき、地域の自然に目を向けるときなど、まずは身近なところから、自然と共に暮らす一歩を始めてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

吃音症を持つフリーライター。生きづらい特性があっても自分らしく働けると身をもって証明する。沖縄旅行が生きがい。特に石垣島の自然や文化に感銘を受け年3回程訪れている。

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