新たな食の選択肢、プラントベースとは?進化した代替肉や植物性ミルクが続々登場

今、代替肉などの食品がベジタリアンなど一部の人にとどまらず、大きな広まりを見せています。動物性の原料をなるべく減らし、その代わりに植物性の原料へとシフトしていくことには様々なメリットがあります。
健康の向上だけでなく、環境問題や食糧危機の解決方法になるとされている「プラントベース」とはどういうものか、私たちや地球環境にとってどんなメリットがあるのかをご紹介します。

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プラントベースとは?

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プラントベースとは、プラント(=植物)がベース(=基本)になっているという意味で、動物由来の原料を完全に使用しない、または極力使用しない食事のことです。
ベジタリアンやビーガンと呼ばれる菜食主義の食事と違い、すべての食事で動物性の食品を摂らないというわけではありません。
また、動物愛護の観点からベジタリアンやビーガンになる人も多い中、プラントベースは環境保護などを目的にしているため、それらとは区別されています。

代表的なプラントベースフード

植物性の原料が使われるプラントベースの食品のことは、「プラントベースフード」と呼ばれています。
私たちが身近に購入できたり、レストランで選べるプラントベースフードにはどんなものがあるのでしょうか。代表的な例をご紹介します。

代替肉

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大豆ミートやフェイクミート、プラントベースミートとも呼ばれる代替肉は、プラントベースフードの代表的な食品です。
大豆やエンドウ豆を使用し、お肉そっくりの味や食感に作られた代替肉は、ここ数年で市場が急拡大し、クオリティがどんどん上がってきています。
スーパーに並ぶのは、ブロック状になっているものやミンチ状になっているもの、さらには、ハムやハンバーグ、ソーセージ、肉団子、からあげ、ナゲット、メンチカツ、サラダチキンタイプなど調理されている加工品の種類も豊富です。

プラントベースミルク

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牛乳にかわる代替ミルクとして人気が高まっているのが、豆類やナッツなどを原料にしたプラントベースミルク。
豆乳をはじめ、アーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルクなどが有名ですが、カシューナッツミルク、ピーナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、マカダミアミルク、くるみミルクなど、種類が豊富です。
料理に使えるものや、お砂糖などで飲みやすく加工されているものもあります。

※ミルクによっては環境に高い負荷をかけているものがあります。生産方法を確認することが大切です。

植物性チーズ

生乳が原料のチーズですが、豆乳や豆腐などの大豆やココナッツオイルを原料に、チーズに似せて作られたチーズ風食品が出てきています。
大きなブロックになっているものや、シュレッドタイプ、スライスになっているものもあり、料理によって使い分けがしやすくなっています。
味だけでなく、見かけも生乳から作られたチーズとそん色ありません。

植物性ヨーグルト

チーズと同じく生乳が使われるヨーグルト。このヨーグルトも植物性の原料が使われ、植物性のヨーグルトとして種類を増やしています。
大豆やアーモンドミルク、ココナッツなどから作られており、生乳からできるヨーグルトの様に、とろっとした食感が楽しめます。さらには飲むタイプも発売されています。

植物性バター

植物性のチーズとヨーグルトにくわえ、植物性のバターも登場しています。
ココナッツオイルなどが使われており、マーガリンよりも濃厚で硬さなども本来のバターに寄せて作られています。
そのため、パンに塗るだけでなく、料理やお菓子作りにも適しています。

外食産業や食品メーカーが注目するプラントベース

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2020年度、植物性の食材を使った代替食品の市場はおよそ246億円。2010年度の48億円と比べると、10年間で約5倍以上の拡大を見せています。
消費者の関心が年々高まっており、外食産業や食品メーカーが注目している食品であることが伺えます。

大手企業も参入を始めており、モスバーガー、ロッテリアなどのハンバーガーチェーンやファミリーレストランではソイミートなどが使われたプラントベースのメニューが提供されています。

伊藤ハムやセブンプレミアム、トップバリュなどでは、代替肉を使用した加工品が充実。ハンバーグやハムなどたくさんの種類が開発されています。

また、スターバックスなど大手のコーヒーショップでは、牛乳の代わりとして、ソイミルクやアーモンドミルク、オーツミルクに変更することができます。

関連記事:環境に優しいおいしさ。東京でプラントベースを楽しめるレストラン&カフェを紹介

海外のプラントベース事情

プラントベースは海外でも消費者の支持を集めています。
「フレキシタリアン」とは、菜食主義のビーガンやベジタリアンに対して、準菜食主義者のこと。環境への配慮や、アニマルウェルフェアの観点から、このフレキシタリアンが欧米では増加しています。

関連記事:動物の権利も尊重する。アニマルウェルフェアとは

アメリカでは、2021年のプラントベースの市場は70億ドルにのぼり、前年からの1年で27%も増加。味や品質もどんどん進化し、企業同士の競争も激しくなっています。[1]

また、EUでは欧州委員会が進める「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略で植物性の食事への移行を支持しており、アメリカ同様、プラントベースの市場は拡大しています。

世界全体で見ると、2019年に食肉産業における代替肉食品は1%でしたが、2029年には10%にまで増えると予測されています。[2]

あと数年で訪れる「タンパク質危機」

レストランだけでなく、スーパーでも様々な種類が買えるようになってきているプラントベースフード。プラントベースが注目されるのには、いくつか理由があります。

急増の一途をたどる世界の人口。鶏や豚、牛など、今の畜産によるタンパク質だけでは、その人口を支えることができず、早ければ2025~2030年に需要と供給のバランスが崩れると言われています。タンパク質の需要と供給が逆転する現象は、「タンパク質危機」と呼ばれ、今のタンパク質の量では人口をまかないきれなくなるのです。
それまでに十分な量のタンパク質を確保することが大きな課題になっています。

牛肉1kgに対して11kgもの穀物が必要に

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しかし、タンパク質危機回避のために、単純に畜産物の量を増やしていけばいいかというと、そうではありません。増産のためにはより多くの水と土地を使用します。

さらに、飼料となる穀物も増産する必要があります。お肉1kgを生産するのに必要な飼料をとうもろこしで換算すると、牛肉は11kg、豚肉では6kg、鶏肉では4kgと言われています。穀物を育てるのに大量の水と広い土地が必要になり、それは水不足や森林伐採の問題にも繋がっていくのです。[3]

また、同量のタンパク質を摂るとき、大豆1に対して、牛に与える大豆などの飼料はその32倍必要になると言われています。お肉をプラントベースフードに置き換えることは、世界が直面するタンパク質危機に向けた一つの解決策と言えるでしょう。

畜産がもたらす環境への負荷

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土地や水を多く使用するという問題の他にも、畜産がもたらす環境への負荷は非常に大きいとされています。

CO2の約25倍の温室効果があるとされるメタンガス。牛のげっぷはそのメタンガスを多く含んでいます。CO2に換算すると、家畜のげっぷは全世界で発生している温室効果ガスの4%にも上るほど大きな割合を占めており、地球温暖化の理由のひとつになっていると言われています。[4]

また排せつ物が増えることも問題の一つです。家畜の排せつ物は河川や地下水へ流れ込むことで水質汚染を招くとされています。

持続可能な食のために選びたいプラントベース

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健康のためや動物愛護のためだけでなく、環境のためにも選びたいプラントベースフード。
日本は昔から大豆になじみが深く、調理方法もたくさんあるので、植物性の食品を選ぶのにも困りません。そして今さらに多くのプラントベースフードが登場しています。
完全に置き換えることは難しくても、一部お肉に置き換えて利用していくことが持続可能な食に繋がっていくのではないでしょうか。

【参考】
[1] Good Food Institute https://gfi.org/marketresearch/
[2] ジェトロHP https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/806084bfd0d121f7.html
[3] 農林水産省HP https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html
[4] 農研機構HP https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nilgs/144910.html

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