アニマルフレンドリー

  • イタリア、トスカーナで体験。暮らすように滞在するアグリツーリズム【現地レポート】

    農家に宿泊する休暇の過ごし方が、都市部に住むヨーロッパに人から人気を集めています。動物に触れあいながら自然を身近に感じることは、子どもにとっても大人にとってもかけがえのない体験に。今回は、アグリツーリズムが盛んなイタリアから、トスカーナ地方で体験したファームステイをレポートします。 アグリツーリズムとは? アグリツーリズムとは、「アグリカルチャー(農業)」+「ツーリズム(観光)」を組み合わせた造語で、20世紀後半のヨーロッパで生まれました。ファームステイ、農家民宿、と言うとよりイメージしやすいと思います。それ以前から夏休みなどを田舎で過ごし、自然に触れ、現地の人と交流する習慣があったので、ヨーロッパの人々にとっては真新しい概念ではありませんが、近年は、より体系化。選択肢も増え、アグリツーリズムの滞在先が選べるサイトが充実し、情報も得られやすくなってきています。 イタリア・トスカーナ地方で盛んなアグリツーリズム イタリア全国で盛んなアグリツーリズム(イタリア語では「アグリツーリズモ」)ですが、イタリア中部のトスカーナ地方は、質、量、人気ともに群を抜いています。フィレンツェから少し足を伸ばすと、ワイナリーや丘の上の中世の街が宝石のように点在するトスカーナ。お城を改装したラグジュアリーなホテルなども多い中、ファミリーに最適なのがアグリツーリズモ滞在です。ハイシーズンは6月頃から。ヨーロッパ各地だけでなく、北米などから家族連れが次々に訪れ、自然や農家と触れ合いながら都会では体験できないスローライフを満喫します。一度滞在して気に入ると翌年もリピートするゲストが多く、アグリツーリズモのオーナー一家とは友人や家族のような関係になることも。基本的には、どの滞在も朝食付きで、夕食をとることもでき、子どもをプールで遊ばせている間などに、他のファミリーとも自然に交流が生まれるのもこの滞在の醍醐味です。 ワイン畑を見晴らす「アルパカの丘」でアグリツーリズム体験 トスカーナに住む義叔母が友人から、アルパカと触れ合えるアグリツーリズモがある、と聞いて今回訪れたのが、こちらの「LA VALLE DEGLI ALPACA(ラ・ヴァッレ・ディ・アルパカ)」。アルパカの谷、という意味ですが、実際はワインの産地、キャンティの丘の上にあるアグリツーリズムです。 オーナーが手作りした大きな家は、元々は宿泊客を迎えるために建てられたのですが、年々孫が増え、今はオーナー一家が3世帯で賑やかに暮らしています。4月から9月の半年間、日帰りのゲストを迎えるスタイルをとっています。屋外プールや、広い芝生を貸し切ることも可能。最大の魅力は、何と言ってもアルパカをはじめとした動物たちとの触れ合いです。 私たちが訪れた夕刻は、動物たちが庭から小屋に戻り始めていました。 アルパカは典型的な草食動物で、性格はとても穏やか。後ろの方から私たちをじっと見つめているアルパカもいれば好奇心旺盛で近づいてくるアルパカもいて、色々な反応を観察できます。4年前、夜中にオオカミの群れに襲われて12頭のアルパカが亡くなるという、嘘のような痛ましい出来事もあったそう。 生後2週間の赤ちゃんの可愛さと柔らかさは格別でした。 アルパカに続き、羊と馬も小屋に。これから動物たちは各部屋で食事を済ませ、19時頃寝るそう。放牧されていたアヒルや七面鳥たちも、鳥小屋へと戻ってきます。 ゲストの子どもたちはオーナー一家の子どもや犬とも自然に仲良くなり、暗くなるまで丘を駆け回って遊びます。子どもたちにとって、都会の日常では体験できない自然や動物との触れ合いは、何事にも変えがたい貴重な経験です。 オーガニックのローカルフードもファームステイの楽しみのひとつ 一方大人は、18時ごろから手作りのチーズや生ハム、ブルスケッタ、ワインでアペリティーボタイムがスタート。オーガニックのローカルフードはどれも新鮮で、絶品。 広い空が薄暮に染まるのを、ゆったりと眺めながらいただくワインも格別です。丘の向こうから吹くひんやりとした風に吹かれて、一日が終わります。 心豊かになれる旅の選択肢、アグリツーリズム ミラノやローマなど都会で働く人も、週末やバカンスは仕事モードをオフにして、家族や友人と、自然に囲まれてのんびりと過ごします。イタリアでは引きこもりという話を聞いたことがありません。長い夏休みや冬休みは反強制的に山や海に連れ出されるので、引きこもる暇がないのかもしれません。観光地をめぐる旅行とは一味違ったアグリツーリズム。動物や人々との交流を通して思い出に残る体験をしたい人におすすめしたい旅のスタイルです。 LA VALLE DEGLI ALPACAhttp://www.lavalledeglialpaca.com

  • 悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは

    グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。

  • 古いものを、カッコよく。ミラノのエコ蚤の市「EAST MARKET」に潜入!【現地レポート】

    行政や企業、市民が主体となり、世界の中でも持続可能な社会づくりが進むヨーロッパ。近年は特に環境問題への関心が高く、環境に負荷をかけない選択肢が増えてきています。rootusでは、現地に長年住むレポーターが、住んでいるからこそ見えてくるリアルな情報を発信。サステナブルな社会はどのように実現可能なのか、最前線から学べることを考えます。 フリーマーケットがエコに進化中 昔からヨーロッパ各地で開催されているフリーマーケットや青空市場。ヨーロッパにはもともと古いものを大切に使い続ける文化があり、最近はそこにアップサイクルアイテムなどのエコな要素も入ってきています。今回は、そんなヨーロッパ市民の生活になくてはならないマーケットに潜入。実際にどのようなものが売られているのか、どこまでエコ意識は浸透しているのか、見てきました。 訪れたのは、イタリアの首都ミラノで有名な蚤の市「EAST MARKET」。近年オシャレに敏感なミラネーゼたちの間で話題のフリーマーケットです。単なるヴィンテージの売買が目的ではなく、リユース、リサイクル、アップサイクルをもっと根付かせよう、という目的のもとに2014年にスタートしました。 イベントは不定期に開催され、SNSやホームページで開催日が告知されます。 ミラノのEAST MARKETは、19世紀から続くロンドンのリベラルな蚤の市「EAST STREET MARKET」の影響を受けており、21世紀仕様にアップデートされています。会場は広大な飛行機工場の跡地です。 出展者同士の物々交換もOK 約300店が出店する屋内スペースでは、「EVERYTHING OLD IS NEW AGAIN(=すべての古いものに価値を)」をコンセプトに、ヴィンテージ、リサイクル、アップサイクル、アート作品などが展示されています。 得意分野を活かしたアマチュアやプロが、来場客との売り買いを行っているだけでなく、出展者同士の物々交換が自由に繰り広げられています。 センスあふれるヴィンテージ雑貨がずらり 出店していたお店の一部を覗いてみましょう。 リキュールの空き瓶をアップサイクルしたソープボトル。空き缶を容器として再利用したキャンドルもありました。確かに捨てるのにはもったいないデザインの瓶や缶。一工夫でおしゃれなインテリアに変身です。 ヴィンテージのカラフルなスウォッチ。今はもう販売されていないレトロなデザインは、眺めているだけで楽しい! こちらは、ハイブランドのヴィンテージボタンをペンダントや指輪にアップサイクルしています。 他にも、古いおもちゃやポスターにライトニングを施して新たなアート作品を生み出したり、古着に新たなデザインやロゴを加えたり、様々なアイデアとクリエティビティを駆使したショップが軒を連ねます。もちろんどれもハイセンス。さすがイタリアです。 プラスチックフリーを徹底したフードコート 屋外のフードコートでは、多種多様なファストフードを楽しめます。 気心の知れた友達やカップルで来ていて、みんなアルコールを片手にお喋りしたり音楽に身を任せたり。思い思いに週末の夕べを過ごしています。ケバブやブリトー、フリットなど、お酒に合うインターナショナルなジャンクフードのお店が多いですが、プラスチックフリーというルールは徹底されていて、紙や植物性の透明容器を使っています。 スタートから9年目を迎えた現在の賑わいを見ると、EAST MARKETがエコロジカルなライフスタイルを若者に浸透させることに成功したことがわかります。ピースフルでクリエイティブな空間に、また足を運びたくなる、そんな素敵な場所でした。 EAST MARKETVia Mecenate, 88/A, Milan, Italyhttps://www.eastmarketmilano.com

  • 動物実験なし!おすすめのクルエルティフリーコスメ9選

    近年、動物を保護する観点からクルエルティフリーのコスメが注目されています。こちらの記事では、ネットや実店舗で購入できる、おすすめのクルエルティフリーコスメブランドをご紹介します! 時代の流れによって注目、クルエルティフリーコスメ 私たちが普段何気なく使っているコスメ。実は、私たちが安心して使えるよう、開発から製造までのいくつかの工程において、ウサギやラットなどの動物を使った実験が行われている場合があります。 そんな中、近年注目を浴びているのがクルエルティフリーコスメです。 クルエルティフリー(cruelty free)とは、直訳すると「残虐性がない」という意味で、開発から製造まで動物実験が行われていない製品を指します。 関連記事:クルエルティフリーとは?取り組みや認証マークについてご紹介 今回は、クルエルティフリーコスメブランドをピックアップ。コスメを買い替える際は、ぜひ参考にしてみてくださいね。 おすすめのクルエルティフリーコスメブランド9選 デパ地下やドラッグストアだけでなく、ネットでも購入できるクルエルティフリーコスメを集めました。クルエルティフリーでも品質や使用感に定評のあるものばかりです。動物に配慮しながら、美容を楽しみましょう! LUSH(ラッシュ) LUSHは、スキンケアアイテムやバスボムなどで有名なイギリスのブランドです。ユーモアあふれるネーミングと、思わず誰かにプレゼントしたくなるデザインが特徴的。LUSHでは、厳選した原材料でプロダクトを製造するだけでなく、創業以来、動物実験をせずにプロダクトづくりに努めています。多くの方に動物実験の現状を知ってもらうよう、公式ホームページ内に化粧品のための動物実験反対というページを立ち上げています。 THE BODY SHOP(ザ・ボディショップ) この投稿をInstagramで見る ザボディショップ(@thebodyshopjp)がシェアした投稿 THE BODY SHOPは、国内にも実店舗を多いイギリスのコスメブランド。ボディケアからメイクアップまで、種類や色が豊富に揃っているので、お気に入りが見つかるはず。THE BODY SHOでは長年、動物実験せずに商品を開発・製造。2018年には、「化粧品の動物実験反対キャンペーン」として830万筆の署名を集め、国連に提出しました。こちらのページには、動物実験に反対する詳細の情報を掲載しています。 Aēsop(イソップ) この投稿をInstagramで見る Aesop(@aesopskincare)がシェアした投稿 オーストラリアのコスメブランドAēsopは、スキンケアから香水まで、パーソナルケアやライフスタイルにかかわる多くのプロダクトを扱っています。製造のフェーズで動物実験を一切行わないだけでなく、成分に関しても、蜜蝋や蜂蜜などの動物由来成分を使用していません。公式ホームページ内のイソップは動物実験を行っていますか?に詳細が掲載されています。 On The Wild Side(オン・ザ・ワイルド・サイド) この投稿をInstagramで見る [日本公式]On The Wild Side(@onthewildside_japan)がシェアした投稿 On The Wild Sideは、フランスのコスメブランド。2021年に日本でも販売がスタートしました。非常にシンプルでありながら、肌本来の機能を取り戻すスキンケアラインを展開しています。プロダクトは、フランスの野生の植物から取れた天然由来成分を100%使用。自社で制定した厳しい基準をクリアしたオーガニックの原料のみを使用しています。 WELEDA(ヴェレダ) この投稿をInstagramで見る ヴェレダ・ジャパン(@weleda_japan)がシェアした投稿 ナチュラルコスメを使う人の中では定番のオーガニックブランドWELEDA。スキンケア、ボディケアアイテムなら何でも揃っています。中でもマッサージに使えるホワイトバーチオイルや妊婦・あかちゃん用のアイテムが人気です。自然の原料のみを使い、サステナブルな製品を生み出し続けるWELEDAも動物実験を行っていないクルエルティフリーコスメのひとつです。 BEIGIC(ベージック) この投稿をInstagramで見る BEIGIC ベージック日本公式(@beigic_jp)がシェアした投稿 BEIGICは、韓国発のコスメブランド。特にルーセントオイルとコーヒーの香りがするフェイススクラブが人気です。全てのプロダクトにおいて、ぺルー産のコーヒー豆由来のグリーンコーヒービーンオイルを使用。合成香料や合成着色料、シリコン、パラベン、サルフェートなどは使っていません。日本国内ではECサイトやQoo10、一部のロフトなどの実店舗でも購入可能です。 DEAR DAHLIA(ディアダリア) この投稿をInstagramで見る ディアダリア Dear Dahlia(@deardahlia_japan)がシェアした投稿 DEAR DAHLIAは、ファンデーションなどのベースメイクから、口紅などのポイントメイクにいたるまで、豊富なラインナップのメイクアップアイテムを取り揃える韓国のコスメブランドです。各プロダクトには、動物由来成分を入れず、天然由来成分を余すところなく使っています。直営店や@cosme storeの他にも、百貨店のECサイトやQoo10などネットでも取り扱うショップが多くあります。 NEMOHAMO(ネモハモ) この投稿をInstagramで見る NEMOHAMO(@nemohamo)がシェアした投稿 自然由来成分のみを使い、製造工程において一切排水や排煙を出さないサステナブルブランド。NEMOHAMOの名前のとおり、植物をまるごと使用した製品は、素肌に潤いと元気を与えてくれます。動物福祉に配慮した原料の使用を徹底し、動物実験も行っていません。 ICOR(イコ) この投稿をInstagramで見る ICOR(@icorbeauty)がシェアした投稿 北海道産の原料をふんだんに使ったスキンケアコスメに定評があるICOR。心、身体だけでなく自然環境も健やかであることを目指し、サステナブルな製品づくりをしています。もちろん動物実験もしていません。人気のオイルインミストトナーやバランシングセラムは、使用が良いだけでなく、香りにも癒されます。 次に買い替えるときはクルエルティフリーコスメにしませんか? 出典:pexels.com 今回は、お手軽に購入できるクルエルティフリーコスメブランド9つをご紹介しました。どのブランドもECサイトや実店舗で取り扱っているものです。次にコスメを買い替える際には、是非参考にしてみてくださいね。

  • 【CACTUS TOKYO】サボテンレザーで挑む、革職人不足と環境問題の解決

    CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。 こちらの後編では、CACTUS TOKYO代表の熊谷渓司さんと製品製作に携わるAtelier K.I.代表池田耕平さんのトークセッションのレポートを紹介します。 前編の工房ツアーレポートはこちら <スピーカー> CACTUS TOKYO代表 熊谷渓司(くまがいけいじ)氏 北海道出身。2017年に一橋大学商学部を卒業後、大手産業機械メーカーに入社し、経営企画・企業変革を担当。自然が好きであることをきっかけに、「人と自然が共に生きる社会」を目指して、2020年春にCACTUS TOKYOを創業。 Atelier K.I.代表 池田耕平(いけだこうへい)氏 革鞄・革小物のメーカーで経験を積んだ後、複数メーカーからサンプル製作の依頼を受けるサンプル職人として従事。CACTUS TOKYOの製品制作を担当。自身の皮革ブランドPRO-MENER(プロムネ)を立ち上げ、革職人の育成および指導にも尽力している。著書として『一流サンプル職人が教える 最高級ブランドバッグの仕立て技術 (Professional Series)』などを刊行。 少子高齢化が著しく進むなか、日本は労働人口の減少という社会問題に直面しています。革産業も例外ではなく、高齢化や海外製品との価格競争の激化で、産業を担う職人が不足しています。池田さんは職人の視点から、今の日本の社会問題にも通じる革産業の現状を語っています。 長年続く低賃金と価格競争で、日本では革職人不足が問題に 池田さん:今の日本の革産業の大きな問題は、未来を担う職人が少ないことです。職人の数が少ない理由として挙げられるのは、給与が安いことです。時給換算にすると約877円で、国内の平均時給を下回る数値となっています。給与が安い理由は、大手からの依頼を受けても価格交渉が難しく、技術水準が上がっても、原料が値上がりしても、工賃が上がらないからです。 物価の安い国との価格競争も一因です。20~30年前、日本の革製品の生産拠点は中国に移りました。私は前にいた国内の会社で製品サンプルを作っていましたが、95%以上が中国生産でした。20年くらい前からは中国生産の製品の価格も上昇。ベトナムやインドなど、より安く生産できる国や地域に生産拠点を移すといったことを繰り返している間に、日本の職人が減ってしまったのです。 問題解決には、革産業の現場を知ってもらうことから 革産業の職人が減っている今日の日本。池田さんは、まず、革職人が置かれている労働環境を知ってもらう必要があると話していました。 池田さん:今、「国内でつくりたい」というブランドやメーカーがすごく増えています。その理由として挙げられるのが、円安で海外製品の価格が高くなったことです。また、今の時代、海外でまとまった量を作っても、それが売れるような時代ではありません。大量消費の時代が終わり、「国内で作ろう」と思い立ったときには、もう職人さんがいないのです。職人の仕事は分業制であり、全工程において職人さんがバランスよく必要です。革製品にどれだけ手間がかかっているかを理解したうえで購入してもらうことが、この問題の解決には一番大切なのではないかと思います。 人材育成と柔軟な働き方で職人不足問題に取り組む 池田さんは、本業の革職人と並行して、職人育成の教室を運営。卒業後、生徒のなかには、職人としてAtelier K.I.のメンバーとして働くという人もいるそうです。また、Atelier K.Iでは、職人のクオリティを重視し、個人のライフスタイルやライフステージに寄り添った働き方にも取り組んでいます。 出典:https://atelier-ki.com/school/students/student-interview-02/ 池田さん:最初の何年かは、お互いの価値観の共有が必要なので、工房で働く形となりますが、家でこなせる能力があれば、こちらから専用のミシンを提供し、作業できます。パートタイムや在宅でもできる働き方もあり、子どもがいても自宅で働ける体制を整えています。 環境に優しいサボテンレザーで社会にインパクトを 池田さんの革産業のお話の後は、熊谷さんがサボテンレザーの可能性について語っています。 熊谷さん:サボテンレザーに着目したきっかけは、環境問題です。私はゴミ問題に関心があって事業を始めましたが、サボテンレザーを知れば知るほど、環境面や利便性においてポテンシャルがある素材だと感じました。 個人的には本革も好きですが、本革は素材自体が腐らないよう、工程でたくさんの水や薬品などを使います。日本のような法律が整っている国では、排水処理が必要であるものの、排水処理にもエネルギーが消費され、CO2が排出されるので、環境負荷がともないます。それに比べてサボテンレザーといった植物由来のレザーは、環境負荷が低いので、使う価値があると思っています。 最後に熊谷さんは、今の社会と未来に向けたメッセージを発信しています。 熊谷さん:私は「環境問題を何とかしたい」という思いでサボテンレザーをテーマにしたブランドを立ち上げました。その製品の認知度のアップと売り上げが増えることで、今ある革産業の問題も一緒に解決したいと思っています。私が目指しているのは、環境負荷の低いサボテンレザーが世の中に愛され、みんなが適正賃金で働ける未来です。 最後に~工房ツアーに参加してみて感じたこと~ (写真左から)杉田さん(CACTUS TOKYO)、熊谷さん(CACTUS TOKYO代表)、池田さん(Atelier K.I.代表)、井上さん (CACTUS TOKYO) 前編の記事にも記した通り、筆者がこちらの工房ツアーに参加したきっかけは、サボテンレザーに興味を持ち、実際の生産現場を見たいということでした。実際に参加すると、CACTUS TOKYOスタッフの方のサボテンレザーと環境問題の解決に関する熱い思いが伝わってきました。 また、Atelier K.I.池田さんの革産業における深刻な職人問題のお話には、驚きを隠せませんでした。まずは私たち消費者が高い技術で作られる製品の価値を知り、その上で買う物を選んでいけたらと思いました。 今回の記事を担当した筆者は、二人の子を持つ母親です。子どもたちの未来にも関わる今の日本の社会問題を他人事ではなく自分事として捉えていきたいと改めて思うようになりました。 前編のレポートはこちら CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube

  • CACTUS TOKYOの工房見学で触れる、サボテンレザーのポテンシャル

    CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。東京浅草で行われたイベントに参加してきました。その様子を前後編でご紹介します。 CACTUS TOKYOについて CACTUS TOKYOは、2020年1月に環境問題の解決に向けた事業としてスタート。代表の熊谷氏は、以前より自身のブログでの情報発信や、NPOでのボランティア活動などで環境問題に取り組んできました。活動のなかで、人々の関心を集めるには“おもしろい”“楽しい”という要素が必要であることを実感。より多くの方に環境問題に興味を持ってもらうツールとして、「サボテンレザー×ファッション」に可能性を見出しました。 CACTUS TOKYOでは、サボテンレザーを日本に広めるために精力的に活動。2022年に実施したクラウドファンディングでは224%を達成し、2回目のクラウドファンディングも成功を収めました。都内の大手百貨店への出品やテレビメディアへの出演、SDGs系のイベントの参加などを通して、着実にサボテンレザーの認知度を上げています。 そして、熊谷さんが製品の生産を行っていく上で直面したのが、日本の革産業が抱える、職人の減少や後継者不足の問題です。日本のものづくりの文化を守っていきたいとの思いから、工房ツアーを開催するなど、製品の背景にスポットライトが当たるような企画にも力を入れています。 CACTUS TOKYO初!工房ツアーレポート 今回のイベントは、実際の工房で、革職人の技術やものづくりの考え方を学びながら、普段は見ることのできない生産過程を知ることができるというもの。生産に携わる方たちと直接話ができるというのも魅力です。浅草に拠点を構えるAtelier K.I.の工房で行われたツアーは、CACTUS TOKYO代表熊谷渓司さんとAtelier K.I代表池田耕平さんのご挨拶とスタッフの紹介からスタート。熊谷さんの「ブランドを通じて世の中を見てほしい」という心のこもったメッセージが心に刺さりました。 この前編では、製品ができるまでの裏側とツアー参加者の三角財布づくり体験をレポート。後編では、CACTUS TOKYO代表熊谷さんとAtelier K.I代表池田さんのトークセッションを取材しています。 サボテンレザーとは CACTUS TOKYOの製品の特長は、サボテン繊維と植物由来の樹脂によって作られたサステナブルな「サボテンレザー」を使用している点です。サボテンレザーの強みは、主に次の3点が挙げられます。 ①手触りと見た目が本革に近く、ファッション性が高い②本革などと比較すると、擦り傷や水に強く、軽い③本革に比べると環境負荷が低い 特に本革のようなクオリティを求める方には、サボテンレザーがおすすめです。また、様々な理由から、サボテンレザーは環境にかかる負担が小さく、地球に優しい製品であることが知られています。 サボテンレザーがサステナブル×エコである理由 サボテンは雨水のみで生育し、灌漑施設を構える必要がないため環境に過度な負担をかけません。サボテンレザーができるまでの段階もエコで、なめし工程などで大量に水を使う本革と比べて、約1,647分の1の水で完成します。 エコな素材に加えて、CACTUS TOKYOでは生産過程から使用、廃棄に至るまでの環境負荷を可能な限り抑えています。CACTUS TOKYOの製品は一般的なブランドの製品と比べて、63%のCO2削減を実現しています。 出典:CACTUS TOKYO公式HP CACTUS TOKYOの製品ができるまで 革製品が作られる工程紹介は、池田さんのデモンストレーションと動画を用いて行われました。製品によって工程・内容・順序などが異なる場合がありますが、基本的な流れとしては、以下の4つのフェーズです。 今回はサボテンレザーを使った長財布の工程を実際に見ることができました。 ①裁断(革をパーツごとに切り取る作業) 専用の金型を革素材に当て、油圧を使った錘によって上からプレスをし、サボテンレザーをくり抜く。 ②漉き(革を適切な薄さに調整する作業) 段差がなくフラットに仕上がるよう、革の端部分の厚さを調整する、漉く(すく)作業を行う。 難易度が高く、かつ繊細な工程のため、専門の職人が対応する ③貼り合わせ(パーツ同士を貼り合わせる作業) 革製品専用の糊料を貼り付ける作業を繰り返す。製品を長持ちさせるために芯材は、必要不可欠。ミリ単位でずれないよう、細やかな配慮が必要になる。 ④縫製(専用ミシンで貼り合わせる) パーツを固定するために専用のミシンで縫い合わせる。長財布の場合、②の漉く過程で縁部分を薄くすることによって、ミシンがかけやすくなる。 ○最終チェック 4つの工程が完了したら、出来上がった製品の最終確認。ファスナーの開閉に問題がないか、ゆがみがないかなどを抜けもれなくチェックを行う。 以上がCACTUS TOKYOの製品ができるまでの流れです。池田さんの実演で特に印象的だったのが、角部分の緻密な糊付けです。角の生地をきれいに、かつ細かくギャザーをつくる工程は息を吞むほどの美しさでした。 参加者たちの質疑応答の時間もあり、天気と湿度をチェックしながら生地のコンディションや糊料の乾き状態などを考え、臨機応変に工程を変えることなどを教えていただきました。池田さんの普段の作業の様子を垣間見ることができ、大変有意義な工程紹介でした。 参加者の三角コインケースづくり体験 池田さんの革製品の工程説明の後は、参加者が実際にサボテンレザーの三角コインケースづくりにチャレンジ! 池田さんのアドバイスを受けながら、笑いありの和やかな雰囲気のなか、我を忘れてコインケースづくりに取り組みました。 ホックの凹凸をつくる作業は、斜めに曲がらないよう緊張しましたが、楽しいひと時でした。池田さんの作業を間近で拝見し、改めてモノづくりに携わる方への「感謝」の気持ちがこみあげてきました。 参加者の作品。一通り作れたので、ホッと一安心 CACTUS TOKYOの製品の背景や想いを知ることができたツアー 普段の生活では、なかなか見られない革職人の現場。製品ができるまでの工程を実際に見ることで、新しい視点を得られ、価値観も変わります。私自身、工房を見学し、職人さんのモノづくりへの情熱をリアルに感じることで、職人さんが想いを込めて作った製品を選んでいきたいと思うようになりました。 CACTUS TOKYOのアクションが社会にどのようなインパクトを与えていくのか、今後も注目していきたいと思います。 後編は、環境問題や日本の職人の後継者不足などに焦点を当てた熊谷さんと池田さんのトークセッションです。 CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube

  • 発祥の地EUからアニマルウェルフェアの今をレポート【現地レポート】

    イギリスで誕生したアニマルウェルフェア アニマルウェルフェアの概念が生まれたのは、18世紀のイギリスと言われています。 動物虐待防止法が制定されたのは19世紀初頭。1960年代には、畜産業における動物への虐待についての議論が活発化し、イギリス政府は「家畜に、立つ、寝る、向きを変える、身繕いする、手足を伸ばす自由を」という家畜の「5つの自由」を打ち出しました。これはその後アニマルウェルフェアの基本原則となり、この理念はヨーロッパで急速に浸透していったのです。これは、キリスト教の倫理観の下、動物愛護精神が根底にあったことが大きいとされています。 https://rootus.net/article/694 https://rootus.net/article/694 EUにおける鶏卵の飼育方法 現在EUでは、鶏卵は次のような飼育方法の表記が義務付けられています。 0(オーガニック):有機農業と有機飼料で育てられた鶏の卵。日中は放し飼いで、1羽あたり4㎡以上のスペースが確保されている。アニマルウェルフェアの実現度が最も高い。 1(放し飼い):日中、屋外で放し飼いにされて育てられた鶏の卵。オーガニックの鶏卵と同じく、1羽あたり4m2以上のスペースが利用可能。 2(平飼い):おがくずが敷かれた室内で育てられた鶏の卵。 1100cm2で1羽の鶏が飼育されている。 3(ケージ飼い):750cm2で1羽を飼育するというエンリッチドケージを採用。止まり木の設置なども義務付けられている。 スーパーなどで売られている卵には一つ一つに、このいずれかの番号と生産国、地域などが印字されています。EUでは、非常に狭く身動きのとれないバタリーケージは2012年に廃止されました。ちなみに日本では現在でも9割ほどの鶏卵はこのバタリーケージで飼育されています。 オーストリアやルクセンブルクでは、ケージ自体の使用を禁止。また、ドイツでは2020年にケージで飼育された産卵鶏は6%未満になっており、2025年までに廃止される予定です。 EUにおける豚の飼育方法 豚の飼育においては、妊娠期以外の「妊娠ストール」の使用が2013年より禁止されています。妊娠ストールとは、一頭ずつ入れられる檻のこと。立つか座るかスペースしかなく、方向転換ができないほど小さい檻で、EUでは2013年から使用が禁止されました。イギリスやスウェーデン、ノルウェーでは、妊娠期であってもストールを使用しておらず、他のEUの国々でも全ての時期を通してのストール廃止を求める声があがっています。 大手スーパーマーケットの卵売り場へ 実際にお店の卵売り場を見てみましょう。訪れたのはイタリアの大手スーパーマーケット、Esselunga(エッセルンガ)。BIO専門や高級セレクトショップというわけではなく、市民が日常使いするスーパーマーケットです。 こちらが卵売り場。ケージ飼い表記の卵はひとつも売られていませんでした。 オーガニックの種類も多く取り揃えています。オーガニックの卵の価格は、一番安い平飼いの卵と比べて2倍程度に抑えられているので、比較的手に取りやすいのも特徴です。 アグリツーリズムという新しい学び方 ミラノ中心地から車を20分ほど走らせると広がる、牧草地や田んぼのどかな風景。「カッシーナ」と呼ばれる農家では、消費者がそこで飼育されている家畜と触れ合いながら肉類や乳製品を購入でき、レストランが併設されているところも。また、暮らすように滞在できる農家もあります。このような新しい観光のかたち、アグリツーリズムが今、都市部に住む人たちからの注目を集めています。 口に入れるものが、どんな場所で誰によりどのように飼育され作られているのか。それが可視化されている安心感は、他のどんな価値にも代えがたいもの。新鮮さとおいしさも折り紙付きです。スーパーマーケットで売られている卵やお肉だけでなく、アグリツーリズムの人気の高まりからも、市民のアニマルウェルフェアへの関心の高さが伺えます。 アニマルウェルフェアのこれから。Farm to Tableの実現に向けて 欧州委員会は2020年に発表した「農場から食卓へ戦略」で、ラベル表示の統一化について検討を開始。2023年までにアニマルウェルフェアに関する規制を改正して、消費者に向けた基準をより明確にしていく方針です。 ケージ飼育に関する規制は、採卵鶏の他に肉用鶏、雌豚、子牛も対象に。市民の間でアニマルウェルフェアへの意識が高まり、署名活動などが活発化した結果、2027年までに段階的にケージ飼いを禁止していくことが決定しています。 また欧州委員会の検討チーム内では、家畜の移送・食肉処理までを含めた生産全般の情報がQRコードなどにより得られる仕組みを、生鮮食品や加工品などを対象に義務化する動きもあります。 動物にとっても消費者にとっても意義のあるこういった潮流を生んだのは、紛れもなくEU市民の声と力。市民は今後も購買行動や署名活動などを通じて、政府に訴え動かし評価する、必要不可欠な役割を担い続けていくことでしょう。

  • 環境にも人にも優しいサステナブルファッション。今日から私たちにできることとは

    私たちの生活を彩ってくれるファッション。しかし今アパレル産業は、持続可能ではない仕組みが大きな問題になっています。ファストファッションなどの広まりで、私たちがより自由に楽しく洋服を選べるようになった一方で、大量生産・大量消費が行われています。それは、生産の段階で作る人の低賃金労働に繋がることもあり、環境への負荷も大きくなります。また、すぐに買い替えることで大量の廃棄が生まれてしまうのです。 自然環境や生産に携わる人、動物を傷つけないファッションとは。この記事では、今日から始められるサステナブルなアクションをご紹介します。 サステナブルファッションとは? サステナブルファッションとは、「衣服の生産の段階から、着用、廃棄に至るまで持続可能である取り組み」のことです。 具体的には、以下のようなことが挙げられます。 生産から廃棄に至るまで、環境への負担が最小限に抑えられていること 素材は環境に優しいオーガニック素材や、リサイクル・アップサイクルされた素材を使用していること 作り手の健全な労働環境が守られていること 動物を殺傷せずに作られていること 生産する側は環境や人に配慮した商品開発を行い、消費者は商品ができる背景を知った上で商品を選んでいくことが、サステナブルファッションに繋がると言えます。 1枚の洋服の生産が環境にかける負荷 原材料の調達から始まり、生産、輸送、販売を経て私たちのもとに届く洋服。その過程だけでも、環境に対して実に多くの影響を与えています。 原材料を見ると、コットンなどの天然繊維は栽培において多量の水を必要とし土壌汚染にも繋がる一方で、合成繊維も石油資源などを使用しています。生産する段階でも工場などで水を多量に使用し、CO2も多く排出しています。 日本で小売りされている洋服は約98%が海外製。日本へ商品を輸送する際にもCO2が多く排出されることになるのです。原材料調達から輸送までの生産過程において、服一枚あたりに換算すると、CO2の排出が約25.5kg、約2,300ℓもの水が使われているとされています。私たちが何気なく購入、着用、廃棄する洋服が作られるのに、想像を超える大きな環境負荷がかけられているのです。 手放された半数以上の洋服がごみとして廃棄に 洋服を購入したあと、着用から手放すまでの洋服の扱いもまた大きな課題になっています。一人当たりの衣服の利用状況を見ると、手放す洋服よりも、購入する洋服の方が多くなっており、一年間一度も来ていない洋服は一人当たりに換算すると25枚もあるとされています。 また洋服を手放す際には、ごみとして廃棄される処分方法がリサイクルやリユースを大きく上回り、日本国内だけでも一日平均で、大型トラック約130台分もの洋服が焼却・埋立処分されているのです。 大量生産と低価格がもたらす労働問題 大量生産と低価格の洋服がもたらすのは、環境への負荷だけではありません。2013年にバングラディッシュで起こった、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれるビル崩落事故。死者1100名以上、負傷者2500名以上というこの悲惨な事故は、今のアパレルの生産構造がもたらすひずみが世に知れ渡る大きなきっかけとなりました。縫製工場、商店、銀行などがひしめき合っていたラナ・プラザ。ビルは違法に増築されており、亀裂が見つかっていたのにも関わらず放置された末に、大型発電機と数千台のミシンの振動がきっかけとなって崩壊したとされています。 バングラディッシュには、安価な労働力を求めて欧米や日本からたくさんのファッションブランドが進出していましたが、生産現場は劣悪な労働環境だったのです。この事故をきっかけに、ファッション業界において健全な労働環境や作り手との公正な取引(フェアトレード)が叫ばれるようになりました。 ファーやウールなど動物を殺傷し作られている素材も 環境の負荷が最小限に抑えられていること、立場の弱い生産者が搾取されていないことと同じく、生産する際に動物を傷つけていないこともサステナブルファッションの大きな要の一つです。生産のときに動物が傷つけられるファッションは、リアルファーやウールなどが例として挙げられます。 リアルファーは、キツネやウサギ、ミンクなどの動物の毛を利用しますが、それは殺された動物から刈り取られています。ファーをとるために飼われている動物は狭い金網などの劣悪な環境で育てられ、乱暴に扱われ、残虐な方法で殺傷されるのです。 プラダやグッチなど世界的なハイブランドをはじめ、今では多くのファッションブランドがファーフリー(毛皮の不使用)を宣言しています。日本における毛皮の輸入量も減少傾向にありますが、依然としてリアルファーを使用したファッションアイテムは流通しています。 また、広くは知られていませんが、ウールの生産現場において「ミュールジング」が採用されている場合もあります。ミュールジングとは子羊のときに汚れの溜まりやすいお尻の部分を切り取ってしまうことです。効率的に毛を刈り取ることができ生産性が上がるミュールジングですが、無麻酔で行われるため羊に大きな苦痛をもたらします。イギリスやニュージーランドなどではすでに廃止されている一方で、オーストラリアなどのウールの生産現場では規制などは特にありません。 サステナブルファッションのために私たちができること 想像よりはるかに大きな負担を環境にかけ、商品によっては生産者や動物を傷つけた先にあるかもしれない私たちの衣服。 ここからは、ファッションが持続可能なものであるために、私たち一人ひとりができることをご紹介します。 ①本当に必要なのか、衝動買いではないかを考える 私たちは、どのくらいクローゼットの中を把握しているでしょうか。必要であるか考える前に衝動的に購入した洋服はどのくらいあるでしょうか。実は、私たちの64%は自分の持っている服を把握しないまま、新しい服を購入しているという環境省のデータがあります。また、今ある服をあと1年長く着れば、日本全体で年間約4万トンの廃棄物の削減になるとされています。 本当に必要な時に、必要な分だけ購入すること。衝動買いをする前にもう一度必要かどうかを考えること。簡単なことですが、それがサステナブルファッションの大前提です。 ②フリマアプリやリサイクルショップを活用する 近年利用者が増えてきているフリマアプリやリサイクルショップでは、まだまだ着用できる洋服が売られています。新品同様の物が売られていたり、お店にはもう並んでいない限定品などを購入できる場合も。欲しいものがあったときはまず、そのようなショップを確認してみましょう。 洋服を手放すときにも、はじめからごみとして処分することを選ぶのではなく、フリマアプリに出品したり、他の人に譲るという方法を検討してみることが大切です。 まだ着られる洋服を廃棄してごみを増やすのではなく、なるべく再利用できるかたちをとることは、CO2の削減にもつながります。 ③クルエルティフリー・アニマルフレンドリーであるか確認する クルエルティフリーとは、残虐性(=cruelty)がない(=free)ということ。つまり商品を作るうえで動物を傷付けたり殺したりしていないことを指します。近年は技術の進歩とともに、エコファーなどが出回るようになっています。またレザーも本革やフェイクレザーの端切れを使用し、生産過程において環境に配慮されたつくりのエコレザーも充実してきています。 おしゃれのために動物を殺したり傷つけたりすることがないよう、リアルファーなどは買わないという選択を。 ④受注生産など在庫を持たない仕組みを持っているブランドを選ぶ シーズンや流行によって売れ行きが変わる洋服。その在庫を大量にかかえるということは、廃棄になる洋服が増える可能性があるということ。受注生産であれば顧客の注文を受けてから生産をはじめるため、在庫を最小限に抑えることができます。販売前に予約を受けてから必要分を発注するお店もあります。オーダーが入った時に作る、売れる予定のものを必要分だけ発注する、といった仕組みであれば無駄な在庫を作りません。 ⑤リサイクル、またはアップサイクル素材を使用しているものを選ぶ リサイクルは、ごみを一度資源に戻してそこから再び製品を作ること。最近注目されているアップサイクルとは、廃棄される予定だったもの(本来は廃棄されるもの)にデザインなどを加えることにより、そのモノの価値を高めることです。例えば捨てられるはずだった生地で新たに洋服を作る、流行りが終わってしまったファッショングッズをリメイクするなどがアップサイクルといえます。 リサイクルやアップサイクルされた素材を使用した洋服を取り入れることは、資源の有効活用に繋がります。 ⑥フェアトレードの商品を選ぶ フェアトレードとは生産者との公正な取引のことを指します。大量生産で極端にコストの安い商品の裏側には、低賃金なうえに過酷な環境下で労働させられる作り手がいる可能性があります。グローバル化が進んだことにより、そのような労働を強いられているのは主に発展途上国の人たちです。 衣服を購入することによって、生産者を搾取するようなことがないよう、フェアトレードのマークや記載があるかどうかをチェックしてみましょう。 環境や作り手のことを配慮しながらファッションを楽しむ 私たちにできることは、今ある洋服を大切にし、手放すときの方法を考えること。購入するときは本当に必要かどうかを考えた上で、どのような素材を使って、どのように作られているかという商品の背景を知ることが大切です。 環境負荷の高いものや生産者を搾取するもの、動物を傷つけるものは購入しないという私たち一人ひとりの選択が、ファッションを持続可能なものへとしていく大事なアクションになります。 【参考】環境省ホームページ https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

  • イタリア、トスカーナで体験。暮らすように滞在するアグリツーリズム【現地レポート】

    農家に宿泊する休暇の過ごし方が、都市部に住むヨーロッパに人から人気を集めています。動物に触れあいながら自然を身近に感じることは、子どもにとっても大人にとってもかけがえのない体験に。今回は、アグリツーリズムが盛んなイタリアから、トスカーナ地方で体験したファームステイをレポートします。 アグリツーリズムとは? アグリツーリズムとは、「アグリカルチャー(農業)」+「ツーリズム(観光)」を組み合わせた造語で、20世紀後半のヨーロッパで生まれました。ファームステイ、農家民宿、と言うとよりイメージしやすいと思います。それ以前から夏休みなどを田舎で過ごし、自然に触れ、現地の人と交流する習慣があったので、ヨーロッパの人々にとっては真新しい概念ではありませんが、近年は、より体系化。選択肢も増え、アグリツーリズムの滞在先が選べるサイトが充実し、情報も得られやすくなってきています。 イタリア・トスカーナ地方で盛んなアグリツーリズム イタリア全国で盛んなアグリツーリズム(イタリア語では「アグリツーリズモ」)ですが、イタリア中部のトスカーナ地方は、質、量、人気ともに群を抜いています。フィレンツェから少し足を伸ばすと、ワイナリーや丘の上の中世の街が宝石のように点在するトスカーナ。お城を改装したラグジュアリーなホテルなども多い中、ファミリーに最適なのがアグリツーリズモ滞在です。ハイシーズンは6月頃から。ヨーロッパ各地だけでなく、北米などから家族連れが次々に訪れ、自然や農家と触れ合いながら都会では体験できないスローライフを満喫します。一度滞在して気に入ると翌年もリピートするゲストが多く、アグリツーリズモのオーナー一家とは友人や家族のような関係になることも。基本的には、どの滞在も朝食付きで、夕食をとることもでき、子どもをプールで遊ばせている間などに、他のファミリーとも自然に交流が生まれるのもこの滞在の醍醐味です。 ワイン畑を見晴らす「アルパカの丘」でアグリツーリズム体験 トスカーナに住む義叔母が友人から、アルパカと触れ合えるアグリツーリズモがある、と聞いて今回訪れたのが、こちらの「LA VALLE DEGLI ALPACA(ラ・ヴァッレ・ディ・アルパカ)」。アルパカの谷、という意味ですが、実際はワインの産地、キャンティの丘の上にあるアグリツーリズムです。 オーナーが手作りした大きな家は、元々は宿泊客を迎えるために建てられたのですが、年々孫が増え、今はオーナー一家が3世帯で賑やかに暮らしています。4月から9月の半年間、日帰りのゲストを迎えるスタイルをとっています。屋外プールや、広い芝生を貸し切ることも可能。最大の魅力は、何と言ってもアルパカをはじめとした動物たちとの触れ合いです。 私たちが訪れた夕刻は、動物たちが庭から小屋に戻り始めていました。 アルパカは典型的な草食動物で、性格はとても穏やか。後ろの方から私たちをじっと見つめているアルパカもいれば好奇心旺盛で近づいてくるアルパカもいて、色々な反応を観察できます。4年前、夜中にオオカミの群れに襲われて12頭のアルパカが亡くなるという、嘘のような痛ましい出来事もあったそう。 生後2週間の赤ちゃんの可愛さと柔らかさは格別でした。 アルパカに続き、羊と馬も小屋に。これから動物たちは各部屋で食事を済ませ、19時頃寝るそう。放牧されていたアヒルや七面鳥たちも、鳥小屋へと戻ってきます。 ゲストの子どもたちはオーナー一家の子どもや犬とも自然に仲良くなり、暗くなるまで丘を駆け回って遊びます。子どもたちにとって、都会の日常では体験できない自然や動物との触れ合いは、何事にも変えがたい貴重な経験です。 オーガニックのローカルフードもファームステイの楽しみのひとつ 一方大人は、18時ごろから手作りのチーズや生ハム、ブルスケッタ、ワインでアペリティーボタイムがスタート。オーガニックのローカルフードはどれも新鮮で、絶品。 広い空が薄暮に染まるのを、ゆったりと眺めながらいただくワインも格別です。丘の向こうから吹くひんやりとした風に吹かれて、一日が終わります。 心豊かになれる旅の選択肢、アグリツーリズム ミラノやローマなど都会で働く人も、週末やバカンスは仕事モードをオフにして、家族や友人と、自然に囲まれてのんびりと過ごします。イタリアでは引きこもりという話を聞いたことがありません。長い夏休みや冬休みは反強制的に山や海に連れ出されるので、引きこもる暇がないのかもしれません。観光地をめぐる旅行とは一味違ったアグリツーリズム。動物や人々との交流を通して思い出に残る体験をしたい人におすすめしたい旅のスタイルです。 LA VALLE DEGLI ALPACAhttp://www.lavalledeglialpaca.com

  • 悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは

    グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。

  • 古いものを、カッコよく。ミラノのエコ蚤の市「EAST MARKET」に潜入!【現地レポート】

    行政や企業、市民が主体となり、世界の中でも持続可能な社会づくりが進むヨーロッパ。近年は特に環境問題への関心が高く、環境に負荷をかけない選択肢が増えてきています。rootusでは、現地に長年住むレポーターが、住んでいるからこそ見えてくるリアルな情報を発信。サステナブルな社会はどのように実現可能なのか、最前線から学べることを考えます。 フリーマーケットがエコに進化中 昔からヨーロッパ各地で開催されているフリーマーケットや青空市場。ヨーロッパにはもともと古いものを大切に使い続ける文化があり、最近はそこにアップサイクルアイテムなどのエコな要素も入ってきています。今回は、そんなヨーロッパ市民の生活になくてはならないマーケットに潜入。実際にどのようなものが売られているのか、どこまでエコ意識は浸透しているのか、見てきました。 訪れたのは、イタリアの首都ミラノで有名な蚤の市「EAST MARKET」。近年オシャレに敏感なミラネーゼたちの間で話題のフリーマーケットです。単なるヴィンテージの売買が目的ではなく、リユース、リサイクル、アップサイクルをもっと根付かせよう、という目的のもとに2014年にスタートしました。 イベントは不定期に開催され、SNSやホームページで開催日が告知されます。 ミラノのEAST MARKETは、19世紀から続くロンドンのリベラルな蚤の市「EAST STREET MARKET」の影響を受けており、21世紀仕様にアップデートされています。会場は広大な飛行機工場の跡地です。 出展者同士の物々交換もOK 約300店が出店する屋内スペースでは、「EVERYTHING OLD IS NEW AGAIN(=すべての古いものに価値を)」をコンセプトに、ヴィンテージ、リサイクル、アップサイクル、アート作品などが展示されています。 得意分野を活かしたアマチュアやプロが、来場客との売り買いを行っているだけでなく、出展者同士の物々交換が自由に繰り広げられています。 センスあふれるヴィンテージ雑貨がずらり 出店していたお店の一部を覗いてみましょう。 リキュールの空き瓶をアップサイクルしたソープボトル。空き缶を容器として再利用したキャンドルもありました。確かに捨てるのにはもったいないデザインの瓶や缶。一工夫でおしゃれなインテリアに変身です。 ヴィンテージのカラフルなスウォッチ。今はもう販売されていないレトロなデザインは、眺めているだけで楽しい! こちらは、ハイブランドのヴィンテージボタンをペンダントや指輪にアップサイクルしています。 他にも、古いおもちゃやポスターにライトニングを施して新たなアート作品を生み出したり、古着に新たなデザインやロゴを加えたり、様々なアイデアとクリエティビティを駆使したショップが軒を連ねます。もちろんどれもハイセンス。さすがイタリアです。 プラスチックフリーを徹底したフードコート 屋外のフードコートでは、多種多様なファストフードを楽しめます。 気心の知れた友達やカップルで来ていて、みんなアルコールを片手にお喋りしたり音楽に身を任せたり。思い思いに週末の夕べを過ごしています。ケバブやブリトー、フリットなど、お酒に合うインターナショナルなジャンクフードのお店が多いですが、プラスチックフリーというルールは徹底されていて、紙や植物性の透明容器を使っています。 スタートから9年目を迎えた現在の賑わいを見ると、EAST MARKETがエコロジカルなライフスタイルを若者に浸透させることに成功したことがわかります。ピースフルでクリエイティブな空間に、また足を運びたくなる、そんな素敵な場所でした。 EAST MARKETVia Mecenate, 88/A, Milan, Italyhttps://www.eastmarketmilano.com

  • 動物実験なし!おすすめのクルエルティフリーコスメ9選

    近年、動物を保護する観点からクルエルティフリーのコスメが注目されています。こちらの記事では、ネットや実店舗で購入できる、おすすめのクルエルティフリーコスメブランドをご紹介します! 時代の流れによって注目、クルエルティフリーコスメ 私たちが普段何気なく使っているコスメ。実は、私たちが安心して使えるよう、開発から製造までのいくつかの工程において、ウサギやラットなどの動物を使った実験が行われている場合があります。 そんな中、近年注目を浴びているのがクルエルティフリーコスメです。 クルエルティフリー(cruelty free)とは、直訳すると「残虐性がない」という意味で、開発から製造まで動物実験が行われていない製品を指します。 関連記事:クルエルティフリーとは?取り組みや認証マークについてご紹介 今回は、クルエルティフリーコスメブランドをピックアップ。コスメを買い替える際は、ぜひ参考にしてみてくださいね。 おすすめのクルエルティフリーコスメブランド9選 デパ地下やドラッグストアだけでなく、ネットでも購入できるクルエルティフリーコスメを集めました。クルエルティフリーでも品質や使用感に定評のあるものばかりです。動物に配慮しながら、美容を楽しみましょう! LUSH(ラッシュ) LUSHは、スキンケアアイテムやバスボムなどで有名なイギリスのブランドです。ユーモアあふれるネーミングと、思わず誰かにプレゼントしたくなるデザインが特徴的。LUSHでは、厳選した原材料でプロダクトを製造するだけでなく、創業以来、動物実験をせずにプロダクトづくりに努めています。多くの方に動物実験の現状を知ってもらうよう、公式ホームページ内に化粧品のための動物実験反対というページを立ち上げています。 THE BODY SHOP(ザ・ボディショップ) この投稿をInstagramで見る ザボディショップ(@thebodyshopjp)がシェアした投稿 THE BODY SHOPは、国内にも実店舗を多いイギリスのコスメブランド。ボディケアからメイクアップまで、種類や色が豊富に揃っているので、お気に入りが見つかるはず。THE BODY SHOでは長年、動物実験せずに商品を開発・製造。2018年には、「化粧品の動物実験反対キャンペーン」として830万筆の署名を集め、国連に提出しました。こちらのページには、動物実験に反対する詳細の情報を掲載しています。 Aēsop(イソップ) この投稿をInstagramで見る Aesop(@aesopskincare)がシェアした投稿 オーストラリアのコスメブランドAēsopは、スキンケアから香水まで、パーソナルケアやライフスタイルにかかわる多くのプロダクトを扱っています。製造のフェーズで動物実験を一切行わないだけでなく、成分に関しても、蜜蝋や蜂蜜などの動物由来成分を使用していません。公式ホームページ内のイソップは動物実験を行っていますか?に詳細が掲載されています。 On The Wild Side(オン・ザ・ワイルド・サイド) この投稿をInstagramで見る [日本公式]On The Wild Side(@onthewildside_japan)がシェアした投稿 On The Wild Sideは、フランスのコスメブランド。2021年に日本でも販売がスタートしました。非常にシンプルでありながら、肌本来の機能を取り戻すスキンケアラインを展開しています。プロダクトは、フランスの野生の植物から取れた天然由来成分を100%使用。自社で制定した厳しい基準をクリアしたオーガニックの原料のみを使用しています。 WELEDA(ヴェレダ) この投稿をInstagramで見る ヴェレダ・ジャパン(@weleda_japan)がシェアした投稿 ナチュラルコスメを使う人の中では定番のオーガニックブランドWELEDA。スキンケア、ボディケアアイテムなら何でも揃っています。中でもマッサージに使えるホワイトバーチオイルや妊婦・あかちゃん用のアイテムが人気です。自然の原料のみを使い、サステナブルな製品を生み出し続けるWELEDAも動物実験を行っていないクルエルティフリーコスメのひとつです。 BEIGIC(ベージック) この投稿をInstagramで見る BEIGIC ベージック日本公式(@beigic_jp)がシェアした投稿 BEIGICは、韓国発のコスメブランド。特にルーセントオイルとコーヒーの香りがするフェイススクラブが人気です。全てのプロダクトにおいて、ぺルー産のコーヒー豆由来のグリーンコーヒービーンオイルを使用。合成香料や合成着色料、シリコン、パラベン、サルフェートなどは使っていません。日本国内ではECサイトやQoo10、一部のロフトなどの実店舗でも購入可能です。 DEAR DAHLIA(ディアダリア) この投稿をInstagramで見る ディアダリア Dear Dahlia(@deardahlia_japan)がシェアした投稿 DEAR DAHLIAは、ファンデーションなどのベースメイクから、口紅などのポイントメイクにいたるまで、豊富なラインナップのメイクアップアイテムを取り揃える韓国のコスメブランドです。各プロダクトには、動物由来成分を入れず、天然由来成分を余すところなく使っています。直営店や@cosme storeの他にも、百貨店のECサイトやQoo10などネットでも取り扱うショップが多くあります。 NEMOHAMO(ネモハモ) この投稿をInstagramで見る NEMOHAMO(@nemohamo)がシェアした投稿 自然由来成分のみを使い、製造工程において一切排水や排煙を出さないサステナブルブランド。NEMOHAMOの名前のとおり、植物をまるごと使用した製品は、素肌に潤いと元気を与えてくれます。動物福祉に配慮した原料の使用を徹底し、動物実験も行っていません。 ICOR(イコ) この投稿をInstagramで見る ICOR(@icorbeauty)がシェアした投稿 北海道産の原料をふんだんに使ったスキンケアコスメに定評があるICOR。心、身体だけでなく自然環境も健やかであることを目指し、サステナブルな製品づくりをしています。もちろん動物実験もしていません。人気のオイルインミストトナーやバランシングセラムは、使用が良いだけでなく、香りにも癒されます。 次に買い替えるときはクルエルティフリーコスメにしませんか? 出典:pexels.com 今回は、お手軽に購入できるクルエルティフリーコスメブランド9つをご紹介しました。どのブランドもECサイトや実店舗で取り扱っているものです。次にコスメを買い替える際には、是非参考にしてみてくださいね。

  • 【CACTUS TOKYO】サボテンレザーで挑む、革職人不足と環境問題の解決

    CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。 こちらの後編では、CACTUS TOKYO代表の熊谷渓司さんと製品製作に携わるAtelier K.I.代表池田耕平さんのトークセッションのレポートを紹介します。 前編の工房ツアーレポートはこちら <スピーカー> CACTUS TOKYO代表 熊谷渓司(くまがいけいじ)氏 北海道出身。2017年に一橋大学商学部を卒業後、大手産業機械メーカーに入社し、経営企画・企業変革を担当。自然が好きであることをきっかけに、「人と自然が共に生きる社会」を目指して、2020年春にCACTUS TOKYOを創業。 Atelier K.I.代表 池田耕平(いけだこうへい)氏 革鞄・革小物のメーカーで経験を積んだ後、複数メーカーからサンプル製作の依頼を受けるサンプル職人として従事。CACTUS TOKYOの製品制作を担当。自身の皮革ブランドPRO-MENER(プロムネ)を立ち上げ、革職人の育成および指導にも尽力している。著書として『一流サンプル職人が教える 最高級ブランドバッグの仕立て技術 (Professional Series)』などを刊行。 少子高齢化が著しく進むなか、日本は労働人口の減少という社会問題に直面しています。革産業も例外ではなく、高齢化や海外製品との価格競争の激化で、産業を担う職人が不足しています。池田さんは職人の視点から、今の日本の社会問題にも通じる革産業の現状を語っています。 長年続く低賃金と価格競争で、日本では革職人不足が問題に 池田さん:今の日本の革産業の大きな問題は、未来を担う職人が少ないことです。職人の数が少ない理由として挙げられるのは、給与が安いことです。時給換算にすると約877円で、国内の平均時給を下回る数値となっています。給与が安い理由は、大手からの依頼を受けても価格交渉が難しく、技術水準が上がっても、原料が値上がりしても、工賃が上がらないからです。 物価の安い国との価格競争も一因です。20~30年前、日本の革製品の生産拠点は中国に移りました。私は前にいた国内の会社で製品サンプルを作っていましたが、95%以上が中国生産でした。20年くらい前からは中国生産の製品の価格も上昇。ベトナムやインドなど、より安く生産できる国や地域に生産拠点を移すといったことを繰り返している間に、日本の職人が減ってしまったのです。 問題解決には、革産業の現場を知ってもらうことから 革産業の職人が減っている今日の日本。池田さんは、まず、革職人が置かれている労働環境を知ってもらう必要があると話していました。 池田さん:今、「国内でつくりたい」というブランドやメーカーがすごく増えています。その理由として挙げられるのが、円安で海外製品の価格が高くなったことです。また、今の時代、海外でまとまった量を作っても、それが売れるような時代ではありません。大量消費の時代が終わり、「国内で作ろう」と思い立ったときには、もう職人さんがいないのです。職人の仕事は分業制であり、全工程において職人さんがバランスよく必要です。革製品にどれだけ手間がかかっているかを理解したうえで購入してもらうことが、この問題の解決には一番大切なのではないかと思います。 人材育成と柔軟な働き方で職人不足問題に取り組む 池田さんは、本業の革職人と並行して、職人育成の教室を運営。卒業後、生徒のなかには、職人としてAtelier K.I.のメンバーとして働くという人もいるそうです。また、Atelier K.Iでは、職人のクオリティを重視し、個人のライフスタイルやライフステージに寄り添った働き方にも取り組んでいます。 出典:https://atelier-ki.com/school/students/student-interview-02/ 池田さん:最初の何年かは、お互いの価値観の共有が必要なので、工房で働く形となりますが、家でこなせる能力があれば、こちらから専用のミシンを提供し、作業できます。パートタイムや在宅でもできる働き方もあり、子どもがいても自宅で働ける体制を整えています。 環境に優しいサボテンレザーで社会にインパクトを 池田さんの革産業のお話の後は、熊谷さんがサボテンレザーの可能性について語っています。 熊谷さん:サボテンレザーに着目したきっかけは、環境問題です。私はゴミ問題に関心があって事業を始めましたが、サボテンレザーを知れば知るほど、環境面や利便性においてポテンシャルがある素材だと感じました。 個人的には本革も好きですが、本革は素材自体が腐らないよう、工程でたくさんの水や薬品などを使います。日本のような法律が整っている国では、排水処理が必要であるものの、排水処理にもエネルギーが消費され、CO2が排出されるので、環境負荷がともないます。それに比べてサボテンレザーといった植物由来のレザーは、環境負荷が低いので、使う価値があると思っています。 最後に熊谷さんは、今の社会と未来に向けたメッセージを発信しています。 熊谷さん:私は「環境問題を何とかしたい」という思いでサボテンレザーをテーマにしたブランドを立ち上げました。その製品の認知度のアップと売り上げが増えることで、今ある革産業の問題も一緒に解決したいと思っています。私が目指しているのは、環境負荷の低いサボテンレザーが世の中に愛され、みんなが適正賃金で働ける未来です。 最後に~工房ツアーに参加してみて感じたこと~ (写真左から)杉田さん(CACTUS TOKYO)、熊谷さん(CACTUS TOKYO代表)、池田さん(Atelier K.I.代表)、井上さん (CACTUS TOKYO) 前編の記事にも記した通り、筆者がこちらの工房ツアーに参加したきっかけは、サボテンレザーに興味を持ち、実際の生産現場を見たいということでした。実際に参加すると、CACTUS TOKYOスタッフの方のサボテンレザーと環境問題の解決に関する熱い思いが伝わってきました。 また、Atelier K.I.池田さんの革産業における深刻な職人問題のお話には、驚きを隠せませんでした。まずは私たち消費者が高い技術で作られる製品の価値を知り、その上で買う物を選んでいけたらと思いました。 今回の記事を担当した筆者は、二人の子を持つ母親です。子どもたちの未来にも関わる今の日本の社会問題を他人事ではなく自分事として捉えていきたいと改めて思うようになりました。 前編のレポートはこちら CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube

  • CACTUS TOKYOの工房見学で触れる、サボテンレザーのポテンシャル

    CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。 今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。東京浅草で行われたイベントに参加してきました。その様子を前後編でご紹介します。 CACTUS TOKYOについて CACTUS TOKYOは、2020年1月に環境問題の解決に向けた事業としてスタート。代表の熊谷氏は、以前より自身のブログでの情報発信や、NPOでのボランティア活動などで環境問題に取り組んできました。活動のなかで、人々の関心を集めるには“おもしろい”“楽しい”という要素が必要であることを実感。より多くの方に環境問題に興味を持ってもらうツールとして、「サボテンレザー×ファッション」に可能性を見出しました。 CACTUS TOKYOでは、サボテンレザーを日本に広めるために精力的に活動。2022年に実施したクラウドファンディングでは224%を達成し、2回目のクラウドファンディングも成功を収めました。都内の大手百貨店への出品やテレビメディアへの出演、SDGs系のイベントの参加などを通して、着実にサボテンレザーの認知度を上げています。 そして、熊谷さんが製品の生産を行っていく上で直面したのが、日本の革産業が抱える、職人の減少や後継者不足の問題です。日本のものづくりの文化を守っていきたいとの思いから、工房ツアーを開催するなど、製品の背景にスポットライトが当たるような企画にも力を入れています。 CACTUS TOKYO初!工房ツアーレポート 今回のイベントは、実際の工房で、革職人の技術やものづくりの考え方を学びながら、普段は見ることのできない生産過程を知ることができるというもの。生産に携わる方たちと直接話ができるというのも魅力です。浅草に拠点を構えるAtelier K.I.の工房で行われたツアーは、CACTUS TOKYO代表熊谷渓司さんとAtelier K.I代表池田耕平さんのご挨拶とスタッフの紹介からスタート。熊谷さんの「ブランドを通じて世の中を見てほしい」という心のこもったメッセージが心に刺さりました。 この前編では、製品ができるまでの裏側とツアー参加者の三角財布づくり体験をレポート。後編では、CACTUS TOKYO代表熊谷さんとAtelier K.I代表池田さんのトークセッションを取材しています。 サボテンレザーとは CACTUS TOKYOの製品の特長は、サボテン繊維と植物由来の樹脂によって作られたサステナブルな「サボテンレザー」を使用している点です。サボテンレザーの強みは、主に次の3点が挙げられます。 ①手触りと見た目が本革に近く、ファッション性が高い②本革などと比較すると、擦り傷や水に強く、軽い③本革に比べると環境負荷が低い 特に本革のようなクオリティを求める方には、サボテンレザーがおすすめです。また、様々な理由から、サボテンレザーは環境にかかる負担が小さく、地球に優しい製品であることが知られています。 サボテンレザーがサステナブル×エコである理由 サボテンは雨水のみで生育し、灌漑施設を構える必要がないため環境に過度な負担をかけません。サボテンレザーができるまでの段階もエコで、なめし工程などで大量に水を使う本革と比べて、約1,647分の1の水で完成します。 エコな素材に加えて、CACTUS TOKYOでは生産過程から使用、廃棄に至るまでの環境負荷を可能な限り抑えています。CACTUS TOKYOの製品は一般的なブランドの製品と比べて、63%のCO2削減を実現しています。 出典:CACTUS TOKYO公式HP CACTUS TOKYOの製品ができるまで 革製品が作られる工程紹介は、池田さんのデモンストレーションと動画を用いて行われました。製品によって工程・内容・順序などが異なる場合がありますが、基本的な流れとしては、以下の4つのフェーズです。 今回はサボテンレザーを使った長財布の工程を実際に見ることができました。 ①裁断(革をパーツごとに切り取る作業) 専用の金型を革素材に当て、油圧を使った錘によって上からプレスをし、サボテンレザーをくり抜く。 ②漉き(革を適切な薄さに調整する作業) 段差がなくフラットに仕上がるよう、革の端部分の厚さを調整する、漉く(すく)作業を行う。 難易度が高く、かつ繊細な工程のため、専門の職人が対応する ③貼り合わせ(パーツ同士を貼り合わせる作業) 革製品専用の糊料を貼り付ける作業を繰り返す。製品を長持ちさせるために芯材は、必要不可欠。ミリ単位でずれないよう、細やかな配慮が必要になる。 ④縫製(専用ミシンで貼り合わせる) パーツを固定するために専用のミシンで縫い合わせる。長財布の場合、②の漉く過程で縁部分を薄くすることによって、ミシンがかけやすくなる。 ○最終チェック 4つの工程が完了したら、出来上がった製品の最終確認。ファスナーの開閉に問題がないか、ゆがみがないかなどを抜けもれなくチェックを行う。 以上がCACTUS TOKYOの製品ができるまでの流れです。池田さんの実演で特に印象的だったのが、角部分の緻密な糊付けです。角の生地をきれいに、かつ細かくギャザーをつくる工程は息を吞むほどの美しさでした。 参加者たちの質疑応答の時間もあり、天気と湿度をチェックしながら生地のコンディションや糊料の乾き状態などを考え、臨機応変に工程を変えることなどを教えていただきました。池田さんの普段の作業の様子を垣間見ることができ、大変有意義な工程紹介でした。 参加者の三角コインケースづくり体験 池田さんの革製品の工程説明の後は、参加者が実際にサボテンレザーの三角コインケースづくりにチャレンジ! 池田さんのアドバイスを受けながら、笑いありの和やかな雰囲気のなか、我を忘れてコインケースづくりに取り組みました。 ホックの凹凸をつくる作業は、斜めに曲がらないよう緊張しましたが、楽しいひと時でした。池田さんの作業を間近で拝見し、改めてモノづくりに携わる方への「感謝」の気持ちがこみあげてきました。 参加者の作品。一通り作れたので、ホッと一安心 CACTUS TOKYOの製品の背景や想いを知ることができたツアー 普段の生活では、なかなか見られない革職人の現場。製品ができるまでの工程を実際に見ることで、新しい視点を得られ、価値観も変わります。私自身、工房を見学し、職人さんのモノづくりへの情熱をリアルに感じることで、職人さんが想いを込めて作った製品を選んでいきたいと思うようになりました。 CACTUS TOKYOのアクションが社会にどのようなインパクトを与えていくのか、今後も注目していきたいと思います。 後編は、環境問題や日本の職人の後継者不足などに焦点を当てた熊谷さんと池田さんのトークセッションです。 CACTUS TOKYO公式ホームページ公式Instagram公式Twitter Atelier K.I.公式ホームページ公式Instagram公式Facebook公式YouTube

  • 発祥の地EUからアニマルウェルフェアの今をレポート【現地レポート】

    イギリスで誕生したアニマルウェルフェア アニマルウェルフェアの概念が生まれたのは、18世紀のイギリスと言われています。 動物虐待防止法が制定されたのは19世紀初頭。1960年代には、畜産業における動物への虐待についての議論が活発化し、イギリス政府は「家畜に、立つ、寝る、向きを変える、身繕いする、手足を伸ばす自由を」という家畜の「5つの自由」を打ち出しました。これはその後アニマルウェルフェアの基本原則となり、この理念はヨーロッパで急速に浸透していったのです。これは、キリスト教の倫理観の下、動物愛護精神が根底にあったことが大きいとされています。 https://rootus.net/article/694 https://rootus.net/article/694 EUにおける鶏卵の飼育方法 現在EUでは、鶏卵は次のような飼育方法の表記が義務付けられています。 0(オーガニック):有機農業と有機飼料で育てられた鶏の卵。日中は放し飼いで、1羽あたり4㎡以上のスペースが確保されている。アニマルウェルフェアの実現度が最も高い。 1(放し飼い):日中、屋外で放し飼いにされて育てられた鶏の卵。オーガニックの鶏卵と同じく、1羽あたり4m2以上のスペースが利用可能。 2(平飼い):おがくずが敷かれた室内で育てられた鶏の卵。 1100cm2で1羽の鶏が飼育されている。 3(ケージ飼い):750cm2で1羽を飼育するというエンリッチドケージを採用。止まり木の設置なども義務付けられている。 スーパーなどで売られている卵には一つ一つに、このいずれかの番号と生産国、地域などが印字されています。EUでは、非常に狭く身動きのとれないバタリーケージは2012年に廃止されました。ちなみに日本では現在でも9割ほどの鶏卵はこのバタリーケージで飼育されています。 オーストリアやルクセンブルクでは、ケージ自体の使用を禁止。また、ドイツでは2020年にケージで飼育された産卵鶏は6%未満になっており、2025年までに廃止される予定です。 EUにおける豚の飼育方法 豚の飼育においては、妊娠期以外の「妊娠ストール」の使用が2013年より禁止されています。妊娠ストールとは、一頭ずつ入れられる檻のこと。立つか座るかスペースしかなく、方向転換ができないほど小さい檻で、EUでは2013年から使用が禁止されました。イギリスやスウェーデン、ノルウェーでは、妊娠期であってもストールを使用しておらず、他のEUの国々でも全ての時期を通してのストール廃止を求める声があがっています。 大手スーパーマーケットの卵売り場へ 実際にお店の卵売り場を見てみましょう。訪れたのはイタリアの大手スーパーマーケット、Esselunga(エッセルンガ)。BIO専門や高級セレクトショップというわけではなく、市民が日常使いするスーパーマーケットです。 こちらが卵売り場。ケージ飼い表記の卵はひとつも売られていませんでした。 オーガニックの種類も多く取り揃えています。オーガニックの卵の価格は、一番安い平飼いの卵と比べて2倍程度に抑えられているので、比較的手に取りやすいのも特徴です。 アグリツーリズムという新しい学び方 ミラノ中心地から車を20分ほど走らせると広がる、牧草地や田んぼのどかな風景。「カッシーナ」と呼ばれる農家では、消費者がそこで飼育されている家畜と触れ合いながら肉類や乳製品を購入でき、レストランが併設されているところも。また、暮らすように滞在できる農家もあります。このような新しい観光のかたち、アグリツーリズムが今、都市部に住む人たちからの注目を集めています。 口に入れるものが、どんな場所で誰によりどのように飼育され作られているのか。それが可視化されている安心感は、他のどんな価値にも代えがたいもの。新鮮さとおいしさも折り紙付きです。スーパーマーケットで売られている卵やお肉だけでなく、アグリツーリズムの人気の高まりからも、市民のアニマルウェルフェアへの関心の高さが伺えます。 アニマルウェルフェアのこれから。Farm to Tableの実現に向けて 欧州委員会は2020年に発表した「農場から食卓へ戦略」で、ラベル表示の統一化について検討を開始。2023年までにアニマルウェルフェアに関する規制を改正して、消費者に向けた基準をより明確にしていく方針です。 ケージ飼育に関する規制は、採卵鶏の他に肉用鶏、雌豚、子牛も対象に。市民の間でアニマルウェルフェアへの意識が高まり、署名活動などが活発化した結果、2027年までに段階的にケージ飼いを禁止していくことが決定しています。 また欧州委員会の検討チーム内では、家畜の移送・食肉処理までを含めた生産全般の情報がQRコードなどにより得られる仕組みを、生鮮食品や加工品などを対象に義務化する動きもあります。 動物にとっても消費者にとっても意義のあるこういった潮流を生んだのは、紛れもなくEU市民の声と力。市民は今後も購買行動や署名活動などを通じて、政府に訴え動かし評価する、必要不可欠な役割を担い続けていくことでしょう。

  • 環境にも人にも優しいサステナブルファッション。今日から私たちにできることとは

    私たちの生活を彩ってくれるファッション。しかし今アパレル産業は、持続可能ではない仕組みが大きな問題になっています。ファストファッションなどの広まりで、私たちがより自由に楽しく洋服を選べるようになった一方で、大量生産・大量消費が行われています。それは、生産の段階で作る人の低賃金労働に繋がることもあり、環境への負荷も大きくなります。また、すぐに買い替えることで大量の廃棄が生まれてしまうのです。 自然環境や生産に携わる人、動物を傷つけないファッションとは。この記事では、今日から始められるサステナブルなアクションをご紹介します。 サステナブルファッションとは? サステナブルファッションとは、「衣服の生産の段階から、着用、廃棄に至るまで持続可能である取り組み」のことです。 具体的には、以下のようなことが挙げられます。 生産から廃棄に至るまで、環境への負担が最小限に抑えられていること 素材は環境に優しいオーガニック素材や、リサイクル・アップサイクルされた素材を使用していること 作り手の健全な労働環境が守られていること 動物を殺傷せずに作られていること 生産する側は環境や人に配慮した商品開発を行い、消費者は商品ができる背景を知った上で商品を選んでいくことが、サステナブルファッションに繋がると言えます。 1枚の洋服の生産が環境にかける負荷 原材料の調達から始まり、生産、輸送、販売を経て私たちのもとに届く洋服。その過程だけでも、環境に対して実に多くの影響を与えています。 原材料を見ると、コットンなどの天然繊維は栽培において多量の水を必要とし土壌汚染にも繋がる一方で、合成繊維も石油資源などを使用しています。生産する段階でも工場などで水を多量に使用し、CO2も多く排出しています。 日本で小売りされている洋服は約98%が海外製。日本へ商品を輸送する際にもCO2が多く排出されることになるのです。原材料調達から輸送までの生産過程において、服一枚あたりに換算すると、CO2の排出が約25.5kg、約2,300ℓもの水が使われているとされています。私たちが何気なく購入、着用、廃棄する洋服が作られるのに、想像を超える大きな環境負荷がかけられているのです。 手放された半数以上の洋服がごみとして廃棄に 洋服を購入したあと、着用から手放すまでの洋服の扱いもまた大きな課題になっています。一人当たりの衣服の利用状況を見ると、手放す洋服よりも、購入する洋服の方が多くなっており、一年間一度も来ていない洋服は一人当たりに換算すると25枚もあるとされています。 また洋服を手放す際には、ごみとして廃棄される処分方法がリサイクルやリユースを大きく上回り、日本国内だけでも一日平均で、大型トラック約130台分もの洋服が焼却・埋立処分されているのです。 大量生産と低価格がもたらす労働問題 大量生産と低価格の洋服がもたらすのは、環境への負荷だけではありません。2013年にバングラディッシュで起こった、「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれるビル崩落事故。死者1100名以上、負傷者2500名以上というこの悲惨な事故は、今のアパレルの生産構造がもたらすひずみが世に知れ渡る大きなきっかけとなりました。縫製工場、商店、銀行などがひしめき合っていたラナ・プラザ。ビルは違法に増築されており、亀裂が見つかっていたのにも関わらず放置された末に、大型発電機と数千台のミシンの振動がきっかけとなって崩壊したとされています。 バングラディッシュには、安価な労働力を求めて欧米や日本からたくさんのファッションブランドが進出していましたが、生産現場は劣悪な労働環境だったのです。この事故をきっかけに、ファッション業界において健全な労働環境や作り手との公正な取引(フェアトレード)が叫ばれるようになりました。 ファーやウールなど動物を殺傷し作られている素材も 環境の負荷が最小限に抑えられていること、立場の弱い生産者が搾取されていないことと同じく、生産する際に動物を傷つけていないこともサステナブルファッションの大きな要の一つです。生産のときに動物が傷つけられるファッションは、リアルファーやウールなどが例として挙げられます。 リアルファーは、キツネやウサギ、ミンクなどの動物の毛を利用しますが、それは殺された動物から刈り取られています。ファーをとるために飼われている動物は狭い金網などの劣悪な環境で育てられ、乱暴に扱われ、残虐な方法で殺傷されるのです。 プラダやグッチなど世界的なハイブランドをはじめ、今では多くのファッションブランドがファーフリー(毛皮の不使用)を宣言しています。日本における毛皮の輸入量も減少傾向にありますが、依然としてリアルファーを使用したファッションアイテムは流通しています。 また、広くは知られていませんが、ウールの生産現場において「ミュールジング」が採用されている場合もあります。ミュールジングとは子羊のときに汚れの溜まりやすいお尻の部分を切り取ってしまうことです。効率的に毛を刈り取ることができ生産性が上がるミュールジングですが、無麻酔で行われるため羊に大きな苦痛をもたらします。イギリスやニュージーランドなどではすでに廃止されている一方で、オーストラリアなどのウールの生産現場では規制などは特にありません。 サステナブルファッションのために私たちができること 想像よりはるかに大きな負担を環境にかけ、商品によっては生産者や動物を傷つけた先にあるかもしれない私たちの衣服。 ここからは、ファッションが持続可能なものであるために、私たち一人ひとりができることをご紹介します。 ①本当に必要なのか、衝動買いではないかを考える 私たちは、どのくらいクローゼットの中を把握しているでしょうか。必要であるか考える前に衝動的に購入した洋服はどのくらいあるでしょうか。実は、私たちの64%は自分の持っている服を把握しないまま、新しい服を購入しているという環境省のデータがあります。また、今ある服をあと1年長く着れば、日本全体で年間約4万トンの廃棄物の削減になるとされています。 本当に必要な時に、必要な分だけ購入すること。衝動買いをする前にもう一度必要かどうかを考えること。簡単なことですが、それがサステナブルファッションの大前提です。 ②フリマアプリやリサイクルショップを活用する 近年利用者が増えてきているフリマアプリやリサイクルショップでは、まだまだ着用できる洋服が売られています。新品同様の物が売られていたり、お店にはもう並んでいない限定品などを購入できる場合も。欲しいものがあったときはまず、そのようなショップを確認してみましょう。 洋服を手放すときにも、はじめからごみとして処分することを選ぶのではなく、フリマアプリに出品したり、他の人に譲るという方法を検討してみることが大切です。 まだ着られる洋服を廃棄してごみを増やすのではなく、なるべく再利用できるかたちをとることは、CO2の削減にもつながります。 ③クルエルティフリー・アニマルフレンドリーであるか確認する クルエルティフリーとは、残虐性(=cruelty)がない(=free)ということ。つまり商品を作るうえで動物を傷付けたり殺したりしていないことを指します。近年は技術の進歩とともに、エコファーなどが出回るようになっています。またレザーも本革やフェイクレザーの端切れを使用し、生産過程において環境に配慮されたつくりのエコレザーも充実してきています。 おしゃれのために動物を殺したり傷つけたりすることがないよう、リアルファーなどは買わないという選択を。 ④受注生産など在庫を持たない仕組みを持っているブランドを選ぶ シーズンや流行によって売れ行きが変わる洋服。その在庫を大量にかかえるということは、廃棄になる洋服が増える可能性があるということ。受注生産であれば顧客の注文を受けてから生産をはじめるため、在庫を最小限に抑えることができます。販売前に予約を受けてから必要分を発注するお店もあります。オーダーが入った時に作る、売れる予定のものを必要分だけ発注する、といった仕組みであれば無駄な在庫を作りません。 ⑤リサイクル、またはアップサイクル素材を使用しているものを選ぶ リサイクルは、ごみを一度資源に戻してそこから再び製品を作ること。最近注目されているアップサイクルとは、廃棄される予定だったもの(本来は廃棄されるもの)にデザインなどを加えることにより、そのモノの価値を高めることです。例えば捨てられるはずだった生地で新たに洋服を作る、流行りが終わってしまったファッショングッズをリメイクするなどがアップサイクルといえます。 リサイクルやアップサイクルされた素材を使用した洋服を取り入れることは、資源の有効活用に繋がります。 ⑥フェアトレードの商品を選ぶ フェアトレードとは生産者との公正な取引のことを指します。大量生産で極端にコストの安い商品の裏側には、低賃金なうえに過酷な環境下で労働させられる作り手がいる可能性があります。グローバル化が進んだことにより、そのような労働を強いられているのは主に発展途上国の人たちです。 衣服を購入することによって、生産者を搾取するようなことがないよう、フェアトレードのマークや記載があるかどうかをチェックしてみましょう。 環境や作り手のことを配慮しながらファッションを楽しむ 私たちにできることは、今ある洋服を大切にし、手放すときの方法を考えること。購入するときは本当に必要かどうかを考えた上で、どのような素材を使って、どのように作られているかという商品の背景を知ることが大切です。 環境負荷の高いものや生産者を搾取するもの、動物を傷つけるものは購入しないという私たち一人ひとりの選択が、ファッションを持続可能なものへとしていく大事なアクションになります。 【参考】環境省ホームページ https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/