Yahoo!ニュース ドキュメンタリー 今月観たい1本『苦しみを言葉に変えて 不登校生動画選手権へ 親子の挑戦』

社会や人々のありのままを切り取り、映し出すドキュメンタリー。映像というかたちでこの世界の“リアル”を知ることは、地球にも人にも優しい未来を考えるきっかけになります。
本連載では、気軽に観ることのできる約10分のドキュメンタリー作品を配信する「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」から、今観たい1本をセレクト。毎月テーマを変えて、映像という切り口から、持続可能でエシカルな社会を考えます。
5月のテーマは「生きづらさとの向き合い方」です。

大人も子どもも、生きづらさを感じたときに

「五月病」ということばがあるように、学校や職場など、慣れない環境下でのストレスによって心身の不調が出やすい5月。
周りに辛そうな人がいたとき、なんと言葉をかけてあげられるのでしょうか。
そして自分自身が精神的にも身体的にも苦しさを感じているとき、どう乗り越えていけばよいのでしょうか。
その答えはひとつではありませんが、ある少年とその母親の挑戦のストーリーが、生きづらさを抱えたときの手がかりとなるかもしれません。

『苦しみを言葉に変えて 不登校生動画選手権へ 親子の挑戦』

苦しみを言葉に変えて 不登校生動画選手権へ 親子の挑戦(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)

監督:吉野和保

作品のあらすじ

極龍(ごくりゅう・TikTokアカウント名)さんは、小学4年から中学卒業まで不登校を繰り返してきました。
原因は、クラスメートからの陰湿ないじめです。教師たちはいじめを認識しておらず、対策をとることもなく登校することだけを求めてきました。

学校に守ってくれる人がいない中で、極龍さんは「もう不登校にはなりたくない」という思いから通学。その結果、「死にたい」という気持ちを抱えるまでとなってしまいます。

16歳になり、フリースクールの高校に通う極龍さんは「学校へ行きたくない私から学校に行きたくない君へ」というテーマで不登校経験者から動画を募った「不登校生動画選手権」に挑戦することに。
近所で撮影した絶景写真とともに、「無理してまで学校に行かないでほしい、そう思っているのだと聞き自分は嬉(うれ)しかったです」と、辛かったときに母から言われた言葉を綴り、見事入賞を果たします。
動画を見て、母の理恵さんは、「覚えていたんやね」と涙を拭いながら笑うのでした。

不登校にどう向き合うか

文部科学省の最新の調査(2023年度)によると、小中学校における不登校児童の生徒数は34万人以上です。
15歳~64歳の生産年齢人口において、引きこもり状態にある人は、146万人とも言われています。

「自分のように不登校に悩む人の役に立ちたい」という想いから、「不登校生動画選手権」に参加した極龍さん。
動画の募集に先立ち開催されたワークショップで当時の記憶がよみがえり、言葉が出なくなってしまう彼の姿からは想像を絶する過去が垣間見えます。

動画制作を通じ、辛いいじめや不登校などの過去と向き合う彼の姿は、エールを送りたくなると同時に、観る人にも小さな勇気を与えてくれます。

その姿を長年見てきた母・理恵さんからもまた、不登校になってしまった子どもとの関わり方のヒントをみることができます。
「死んでしまったら何もできない、まずは生きてほしい。生きてさえいれば、なんぼでも勉強だってやりたいことだってできるんだから」。
かつてそう話した理恵さんが、動画選手権で受賞した息子に向ける誇らしそうな表情が印象的です。

生きるための選択をすること

生きづらさを感じたときに、一人抱え込んでしまうことは珍しいことではないでしょう。そのような人が身近にいたとき、そして自分自身がそうなったとき、解決方法を見出すことも簡単ではないかもしれません。

心を守るために不登校を選んだ親子が作中で強く伝えているのは、「まずは生きるための選択をすること」です。
極龍さんと母・理恵さんの挑戦は、生きた先に、まだ見ぬ新たな世界が待っていることを私たちに教えてくれています。

※作品はこちらから視聴できます
苦しみを言葉に変えて 不登校生動画選手権へ 親子の挑戦(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)

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