農家に宿泊する休暇の過ごし方が、都市部に住むヨーロッパに人から人気を集めています。動物に触れあいながら自然を身近に感じることは、子どもにとっても大人にとってもかけがえのない体験に。
今回は、アグリツーリズムが盛んなイタリアから、トスカーナ地方で体験したファームステイをレポートします。
アグリツーリズムとは?
アグリツーリズムとは、「アグリカルチャー(農業)」+「ツーリズム(観光)」を組み合わせた造語で、20世紀後半のヨーロッパで生まれました。ファームステイ、農家民宿、と言うとよりイメージしやすいと思います。それ以前から夏休みなどを田舎で過ごし、自然に触れ、現地の人と交流する習慣があったので、ヨーロッパの人々にとっては真新しい概念ではありませんが、近年は、より体系化。選択肢も増え、アグリツーリズムの滞在先が選べるサイトが充実し、情報も得られやすくなってきています。
イタリア・トスカーナ地方で盛んなアグリツーリズム
イタリア全国で盛んなアグリツーリズム(イタリア語では「アグリツーリズモ」)ですが、イタリア中部のトスカーナ地方は、質、量、人気ともに群を抜いています。フィレンツェから少し足を伸ばすと、ワイナリーや丘の上の中世の街が宝石のように点在するトスカーナ。お城を改装したラグジュアリーなホテルなども多い中、ファミリーに最適なのがアグリツーリズモ滞在です。ハイシーズンは6月頃から。ヨーロッパ各地だけでなく、北米などから家族連れが次々に訪れ、自然や農家と触れ合いながら都会では体験できないスローライフを満喫します。一度滞在して気に入ると翌年もリピートするゲストが多く、アグリツーリズモのオーナー一家とは友人や家族のような関係になることも。
基本的には、どの滞在も朝食付きで、夕食をとることもでき、子どもをプールで遊ばせている間などに、他のファミリーとも自然に交流が生まれるのもこの滞在の醍醐味です。
ワイン畑を見晴らす「アルパカの丘」でアグリツーリズム体験
トスカーナに住む義叔母が友人から、アルパカと触れ合えるアグリツーリズモがある、と聞いて今回訪れたのが、こちらの「LA VALLE DEGLI ALPACA(ラ・ヴァッレ・ディ・アルパカ)」。アルパカの谷、という意味ですが、実際はワインの産地、キャンティの丘の上にあるアグリツーリズムです。
オーナーが手作りした大きな家は、元々は宿泊客を迎えるために建てられたのですが、年々孫が増え、今はオーナー一家が3世帯で賑やかに暮らしています。4月から9月の半年間、日帰りのゲストを迎えるスタイルをとっています。
屋外プールや、広い芝生を貸し切ることも可能。
最大の魅力は、何と言ってもアルパカをはじめとした動物たちとの触れ合いです。
私たちが訪れた夕刻は、動物たちが庭から小屋に戻り始めていました。
アルパカは典型的な草食動物で、性格はとても穏やか。後ろの方から私たちをじっと見つめているアルパカもいれば好奇心旺盛で近づいてくるアルパカもいて、色々な反応を観察できます。
4年前、夜中にオオカミの群れに襲われて12頭のアルパカが亡くなるという、嘘のような痛ましい出来事もあったそう。
生後2週間の赤ちゃんの可愛さと柔らかさは格別でした。
アルパカに続き、羊と馬も小屋に。これから動物たちは各部屋で食事を済ませ、19時頃寝るそう。放牧されていたアヒルや七面鳥たちも、鳥小屋へと戻ってきます。
ゲストの子どもたちはオーナー一家の子どもや犬とも自然に仲良くなり、暗くなるまで丘を駆け回って遊びます。
子どもたちにとって、都会の日常では体験できない自然や動物との触れ合いは、何事にも変えがたい貴重な経験です。
オーガニックのローカルフードもファームステイの楽しみのひとつ
一方大人は、18時ごろから手作りのチーズや生ハム、ブルスケッタ、ワインでアペリティーボタイムがスタート。オーガニックのローカルフードはどれも新鮮で、絶品。
広い空が薄暮に染まるのを、ゆったりと眺めながらいただくワインも格別です。丘の向こうから吹くひんやりとした風に吹かれて、一日が終わります。
心豊かになれる旅の選択肢、アグリツーリズム
ミラノやローマなど都会で働く人も、週末やバカンスは仕事モードをオフにして、家族や友人と、自然に囲まれてのんびりと過ごします。
イタリアでは引きこもりという話を聞いたことがありません。長い夏休みや冬休みは反強制的に山や海に連れ出されるので、引きこもる暇がないのかもしれません。
観光地をめぐる旅行とは一味違ったアグリツーリズム。動物や人々との交流を通して思い出に残る体験をしたい人におすすめしたい旅のスタイルです。
LA VALLE DEGLI ALPACA
http://www.lavalledeglialpaca.com