【CACTUS TOKYO】サボテンレザーで挑む、革職人不足と環境問題の解決

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CACTUS TOKYO(カクタストーキョー)は、サボテン由来のレザー素材からできたアイテムを扱うサステナブルファッションブランドです。
オンラインショップやポップアップイベントを中心に、シンプルなデザインと使い勝手を考えたバッグや財布を展開。「自然や社会と共生する文化を育てていく」ことをモットーに、人と地球に優しい製品を生み出しています。

今回CACTUS TOKYOは初めての工房ツアーを実施。

こちらの後編では、CACTUS TOKYO代表の熊谷渓司さんと製品製作に携わるAtelier K.I.代表池田耕平さんのトークセッションのレポートを紹介します。

前編の工房ツアーレポートはこちら

<スピーカー>

CACTUS TOKYO代表 熊谷渓司(くまがいけいじ)氏

北海道出身。2017年に一橋大学商学部を卒業後、大手産業機械メーカーに入社し、経営企画・企業変革を担当。自然が好きであることをきっかけに、「人と自然が共に生きる社会」を目指して、2020年春にCACTUS TOKYOを創業。

Atelier K.I.代表 池田耕平(いけだこうへい)氏

革鞄・革小物のメーカーで経験を積んだ後、複数メーカーからサンプル製作の依頼を受けるサンプル職人として従事。CACTUS TOKYOの製品制作を担当。自身の皮革ブランドPRO-MENER(プロムネ)を立ち上げ、革職人の育成および指導にも尽力している。著書として『一流サンプル職人が教える 最高級ブランドバッグの仕立て技術 (Professional Series)』などを刊行。

少子高齢化が著しく進むなか、日本は労働人口の減少という社会問題に直面しています。革産業も例外ではなく、高齢化や海外製品との価格競争の激化で、産業を担う職人が不足しています。池田さんは職人の視点から、今の日本の社会問題にも通じる革産業の現状を語っています。

長年続く低賃金と価格競争で、日本では革職人不足が問題に

池田さん:今の日本の革産業の大きな問題は、未来を担う職人が少ないことです。職人の数が少ない理由として挙げられるのは、給与が安いことです。時給換算にすると約877円で、国内の平均時給を下回る数値となっています。
給与が安い理由は、大手からの依頼を受けても価格交渉が難しく、技術水準が上がっても、原料が値上がりしても、工賃が上がらないからです。

物価の安い国との価格競争も一因です。20~30年前、日本の革製品の生産拠点は中国に移りました。私は前にいた国内の会社で製品サンプルを作っていましたが、95%以上が中国生産でした。20年くらい前からは中国生産の製品の価格も上昇。ベトナムやインドなど、より安く生産できる国や地域に生産拠点を移すといったことを繰り返している間に、日本の職人が減ってしまったのです。

問題解決には、革産業の現場を知ってもらうことから

革産業の職人が減っている今日の日本。池田さんは、まず、革職人が置かれている労働環境を知ってもらう必要があると話していました。

池田さん:今、「国内でつくりたい」というブランドやメーカーがすごく増えています。その理由として挙げられるのが、円安で海外製品の価格が高くなったことです。
また、今の時代、海外でまとまった量を作っても、それが売れるような時代ではありません。大量消費の時代が終わり、「国内で作ろう」と思い立ったときには、もう職人さんがいないのです。
職人の仕事は分業制であり、全工程において職人さんがバランスよく必要です。革製品にどれだけ手間がかかっているかを理解したうえで購入してもらうことが、この問題の解決には一番大切なのではないかと思います。

人材育成と柔軟な働き方で職人不足問題に取り組む

池田さんは、本業の革職人と並行して、職人育成の教室を運営。卒業後、生徒のなかには、職人としてAtelier K.I.のメンバーとして働くという人もいるそうです。
また、Atelier K.Iでは、職人のクオリティを重視し、個人のライフスタイルやライフステージに寄り添った働き方にも取り組んでいます。

出典:https://atelier-ki.com/school/students/student-interview-02/

池田さん:最初の何年かは、お互いの価値観の共有が必要なので、工房で働く形となりますが、家でこなせる能力があれば、こちらから専用のミシンを提供し、作業できます。パートタイムや在宅でもできる働き方もあり、子どもがいても自宅で働ける体制を整えています。

環境に優しいサボテンレザーで社会にインパクトを

池田さんの革産業のお話の後は、熊谷さんがサボテンレザーの可能性について語っています。

熊谷さん:サボテンレザーに着目したきっかけは、環境問題です。私はゴミ問題に関心があって事業を始めましたが、サボテンレザーを知れば知るほど、環境面や利便性においてポテンシャルがある素材だと感じました。

個人的には本革も好きですが、本革は素材自体が腐らないよう、工程でたくさんの水や薬品などを使います。日本のような法律が整っている国では、排水処理が必要であるものの、排水処理にもエネルギーが消費され、CO2が排出されるので、環境負荷がともないます。それに比べてサボテンレザーといった植物由来のレザーは、環境負荷が低いので、使う価値があると思っています。

最後に熊谷さんは、今の社会と未来に向けたメッセージを発信しています。

熊谷さん:私は「環境問題を何とかしたい」という思いでサボテンレザーをテーマにしたブランドを立ち上げました。その製品の認知度のアップと売り上げが増えることで、今ある革産業の問題も一緒に解決したいと思っています。
私が目指しているのは、環境負荷の低いサボテンレザーが世の中に愛され、みんなが適正賃金で働ける未来です。

最後に~工房ツアーに参加してみて感じたこと~

(写真左から)杉田さん(CACTUS TOKYO)、熊谷さん(CACTUS TOKYO代表)、池田さん(Atelier K.I.代表)、井上さん (CACTUS TOKYO)

前編の記事にも記した通り、筆者がこちらの工房ツアーに参加したきっかけは、サボテンレザーに興味を持ち、実際の生産現場を見たいということでした。実際に参加すると、CACTUS TOKYOスタッフの方のサボテンレザーと環境問題の解決に関する熱い思いが伝わってきました。

また、Atelier K.I.池田さんの革産業における深刻な職人問題のお話には、驚きを隠せませんでした。まずは私たち消費者が高い技術で作られる製品の価値を知り、その上で買う物を選んでいけたらと思いました。

今回の記事を担当した筆者は、二人の子を持つ母親です。子どもたちの未来にも関わる今の日本の社会問題を他人事ではなく自分事として捉えていきたいと改めて思うようになりました。

前編のレポートはこちら

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この記事を書いた人

writer

元専業主婦の編集ライター兼校正者。子育てや教育、美容、ライフスタイルを中心とした複数のジャンルで記事企画や執筆、インタビューに携わり、キャリアを重ねる。近年は、持続可能な社会環境づくりに関心を抱く。成人した娘と息子を持つ母。

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