地域と福祉を繋ぐクラフトビール。方南ローカルグッドブリュワーズ

東京・丸ノ内線の始発駅、方南町。どこか懐かしい面影が残るこの街で、地元発のクラフトビールがいただけるのをご存知でしょうか。
方南ローカルグッドブリュワーズは、2022年に方南銀座商店街にオープンしたクラフトビール醸造所兼福祉施設です。

ビールをきっかけに、どんな人でも受け入れる場所をつくる福祉施設と地域。この二つのコラボレーションの生まれる場所から見えてくる、誰もが活躍できる社会、そして地域活性化の可能性を探ります。

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クラフトビールが繋ぐ、個性あふれる方南町と福祉

取材をしていると、通りがかりに醸造所のスタッフに声をかける地元の方たち。そんなアットホームな方南銀座商店街の真ん中に、方南ローカルグッドブリュワーズはあります。

実はこの方南町銀座商店街、「歌謡祭」や「方南プロレス」、「ハロウィン」などのイベントが一年を通して開催されるなど、ユニークな街であることでも有名。どうやら駅にはベビーカーおろすんジャーというヒーローがいるとか…!

誕生して今年で2年、そんな商店街の人々や地元の人々に愛されてきたのが、方南ローカルグッドブリュワーズです。

全国各地で様々なクラフトビールが登場するなか、方南ローカルグッドブリュワーズの大きな特徴は、障がいのある醸造士が活躍する福祉施設であるということ。

鋭敏な味覚を持つスタッフたちが日々試行錯誤し、ビールの高い品質と味を追求しながら、新しい福祉の在り方を体現するビールを生み出しています。

ローカルが感じられること、そして誰でも飲みやすいビールを追求

店長である白水さんに方南ローカルグッドブリュワーズで人気のビールをお聞きしました。

「現在定番のビールは5種類あります。一番人気は、黄色いパッケージの“ローカルグッドエール”です。個性が強いと思われがちなクラフトビールですが、これはスッキリとクリアな味わいで、どんな方でも飲みやすいように作られています。ローカルグッドエールのアルコール度数を1%にした白いパッケージの“ユニバーサルエール”は、お酒が得意でない方にもお試しいただけます。」

店長の白水さん

方南ローカルグッドブリュワーズでは、店頭販売だけではなく、ビールフェスなどにも出店。ビールファンが集うイベントでは、地元のパン屋さんのパンを使用し、ふんわり甘い香りが漂う味わいが特徴の“パンエール”や、和食や寿司に合う“IPA”、そして、方南町の焼き物、串ものを扱っている居酒屋に合わせて作られた、香ばしさとコクが際立つ“レッドエール”が人気だそう。
丸ノ内線の赤と掛け合わせ、パッケージには実在する方南町の人々の顔が描かれているのが目印です。

そのほか、方南町が押し出すゾンビに合わせた“ゾンビビール”や方南町と関わりの深い伊豆松崎町の柑橘を使ったビールなど、期間限定のビールも登場します。取材時、レモングラスを使ったビールを仕込み中。3月には店頭に並んでいます。

目指すのは、とがったビールではなく、みんなに寄り添うビール

クラフトビール醸造において長年の経験をもつ方をクオリティコントロールの担当者に置き、週一回は味と品質をチェック。その意見を元にスタッフが味の調整を行っています。ローカルグッドエールは、方向性はぶらさずに、なんとこれまで24回の改良を実施。

「お客さまでも味の違いに気が付かれる方もいます。そこも楽しんで飲んでもらえたら嬉しいですね。」(白水さん)

アップデートを重ねながらも、スタッフ全員が変わらずに持ち続ける信念があるそう。白水さんは、ビールづくりの上で最も大切にしていることを教えてくれました。

「私たちが大切にしていることは、一部の人のためのビールではなく、どんな方でもみんなが飲んで美味しいと思えるビール。飲んでいただける方に寄り添ったビールを目指しています。もうひとつのこだわりとして、欠かせないのが衛生面の管理です。ビールが酸化・劣化してしまわないよう、機械や器具を清潔にしておくことを強く意識しています。」

商店街が福祉の活動を後押し。方南町を象徴する場所のひとつに

お店に訪れるのは、全国のクラフトビールファン。そして、多くが地元の方たちです。

数種類のビールを取り揃えていることに加え、入りやすく親しみやすい雰囲気で、客層もさまざま。老若男女、一人でもグループでもふらっと立ち寄りやすいのが魅力です。

春までは、店先にこたつが用意され、そこでビールが飲めるというから驚き! さらに、商店街で買ってきた食べ物の持ち込みは自由。休日には、商店街の人の協力によって、クレープなどの出店も出るそうです。

方南町という街について白水さんはこう話します。

「方南町はどんな人でも受け入れるオープンな場所です。障がい者の働く施設に対して、敬遠されてしまうケースもあると思うんですが、方南町でそんなことは一切ありません。むしろ商店街が後押ししてくれていて、ビールが福祉と社会の懸け橋になっています。福祉に馴染みがない方にも知ってもらえるのは嬉しいですね。」

「障がいのあるスタッフもそうでないスタッフも、ビールづくりはゼロからスタートしています。だからこそ障がいのあるスタッフに対して、気を付けたほうが良いところを具体的に伝えたりできていると思います。一緒に成長しているという実感がありますね。」

今後の展望について白水さんはこう話します。

「方南ローカルグッドブリュワーズは2024年2月より就労継続支援B型事業所として運営を開始致しました。福祉施設として障がいを持つスタッフがより働きやすい環境を整えていきたいと思っています。
また、今年近くに新店舗をオープン予定です。そこに向けて醸造所はフル稼働しています。今後も事故なく安全にスタッフ全員で、感動してもらえるビールを作っていきたいと思っています。」

オープンから2年。街に溶け込みながら丹精込めてつくられるクラフトビールは今、方南町のアイコンになっています。

どんな人をも受け入れ、楽しみながらみんなで街を盛り上げていく。福祉と地域の持続可能なあり方のモデルが、方南ローカルグッドブリュワーズにはありました。

方南ローカルグッドブリュワーズ
東京都杉並区方南2-11-7 方南銀座商店街内

https://www.honanlocalgood.jp

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