世界幸福度ランキング2023。6年連続1位のフィンランドは日本よりも幸せ?

2023年版の世界幸福度ランキングが発表されました。
トップ20の国と日本のランキングを紹介するとともに、世界幸福度ランキングの概要やランキングの決まり方について説明していきます。

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世界幸福度ランキングとは?

世界幸福度ランキングとは国連の関連団体であるSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2012年から発行している「World Hapiness Report」に記載されているランキングです。
同年3月20日に宣言された「国際幸福デー」に合わせて毎年ランキングが発表されています。
背景に2011年の国連総会で、幸せの国としても知られるブータンのティンレイ首相(当時)が「幸福度を国際社会全体の開発目標に据えよう」と問題提起し、全会一致で採択されたことがあります。
世界的な金融危機や環境破壊の経験を踏まえ、GDPなどの経済指標だけでは豊かさや幸福度を測れないことから、世界的に幸福度を重視するような機運が高まっています。

ランキングはどうやって決まる?

出典:unsplash.com

世界幸福度ランキングはどのように決まるのでしょうか。
幸福度の調査はカントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる方法を用いた世論調査によって行われます。具体的には、可能な限り最高の人生を10、最悪の人生を0とし、回答者に自分の人生が0から10のどの段階にあるかを評価してもらいます。得られた回答の過去3年間の平均値をスコアとし、ランク付けをしています。

また、報告書においては得られたスコアがどのような要因で説明できるか、統計学的な観点から分析しています。説明に使われる要因は以下の6つの項目です。

・一人当たり国内総生産(GDP)
・社会的支援(社会保障制度など)
・健康寿命
・人生選択の自由度
・他人への寛容さ(寄付活動など)
・腐敗認識度(国・政治への信頼)

ここで注意が必要なのが、6つの項目は結果を後から分析するために用いられるものであって、幸福度のスコアやランキングには影響していないということです。World Hapiness Reportのホームページには以下の記述があります。

“Our happiness rankings are not based on any index of these six factors – the scores are instead based on individuals’ own assessments of their lives, in particular, their answers to the single-item Cantril ladder life-evaluation question”
(我々の幸福度ランキングは6つの指標に基づきません。代わりに、スコアは個人の生活の評価、特に単一項目のカントリルラダー生活評価質問への回答に基づいています)

https://worldhappiness.report/about/

ランキングはあくまでも、個人の主観的な生活評価に基づいているのです。

最新の世界幸福度ランキング

3月20日に最新の世界幸福度ランキングが発表されました。

世界幸福度ランキング2023
World Happiness Report 2023 より再編

図には分析された6つの項目を色別で記載しています。6つの項目とは前述したとおりですが、紺色の「基準値 + 残差」の「基準値」は、全ての国に対して基準となる共通の値を与え、「残差」は6つの項目で分析しきれない部分を表すことを目的として導入されています。

上位3国は昨年と変わらない結果となりました。また、日本は47位で、昨年よりも順位があがっています。

ここからは、上位3国において、国民の幸福度の高さの所以はどこにあるのかと日本の順位が低い理由を考えていきます。

世界幸福度ランキング1位 <フィンランド>

出典:unsplash.com

6年連続で幸福度ランキング1位となったフィンランド。
透明性の高い政治で国民からの信頼が厚いと言われており、社会保障制度が充実していることで知られています。また、フィンランドでは、教育や子育てにも力を入れています。

教育の質の高さ
・学力を競うのではなく、自分のために勉強するという価値観
・生徒一人ひとりの状況を把握できるよう少人数教育を実施
・教員は修士号取得など、厳しい条件をクリアしている
・子どもの頃から自然の中で身体を動かすことを楽しめる環境が整っている

子育て環境
・就学前教育から高等教育まで学費や給食費が無料
・親の就労の有無にかかわらず、すべての子どもが保育園に入ることができる
・16時ごろまでに仕事を終わらせる文化があり、残業はほとんどしない
・妊娠期から就学するまで「ネウボラ制度」により家庭をサポートする担当者がつく
・男性が育休を取得しやすい

世界幸福度ランキング2位 <デンマーク>

出典:pixabay.com

デンマークは幸福度の高さと国際競争力を両立している国として知られています。社会保険料の代わりに高い税金により手厚い社会保障制度が整っていることが特徴です。その中でも、特に注目されている高齢者福祉について詳しく見ていきましょう。

高齢者福祉
・年金の財源は税金のため、未加入や無年金にはならない
・充実した年金制度で、生命保険に入る必要がない
・自立を促す在宅介護が中心で、手厚いケアにより一人でも安心して暮らすことができる
・すべての地方自治体が介護サービスを提供しており、無料で利用できる

世界幸福度ランキング3位 <アイスランド>

出典:unsplash.com

アイスランドは、国土面積は北海道と四国を合わせたほどの小国ながら、1人当たりのGDPが高水準である裕福な国です。

社会保障が充実していることから、子どもからお年寄りまで安心して暮らせる環境が整っている上に、ジェンダー平等を推進している点も特徴的です。

ジェンダー平等
・男女の同一労働・同一賃金を義務付ける法律を世界で初めて制定
・クオータ制により、企業役員や議員などはメンバーの40%以上を女性とすることが定められている
・育児休暇期間は、母親が6か月、父親が6か月に加え、どちらがとるか自由に決められる期間が6週間ある

日本の世界幸福度ランキング – 順位が低い理由は?

2023年の世界幸福度ランキングで日本は47位となり、昨年の54位から順位を上げました。また、スコアも昨年より上がっています。
6つの分析項目でランキング1位のフィンランドと比較すると、人生選択の自由度、他人への寛容度、腐敗認識度が低いようです。

しかし、何よりも差が大きいのは「残差」の部分です。
宗教や文化の違いから東アジアの人はカントリルラダーを控えめに回答する傾向にあることが知られています。残差の部分にその結果が表れ、ランキングに影響していると考えられます。

日本の幸福度を高めるためには?

実は6つの項目による分析結果だけをみると日本は20位のリトアニアよりもスコアが高いです。

主観的な回答に基づいて決まる世界幸福度ランキングは分析しきれない部分が大きく、高順位の国を見て日本の幸福度が低いと考えるのは安直です。幸福度を高めるために大切なことは順位を上げることではなく、分析結果から学ぶことだと言えます。

もし比較するのであれば、順位を見るのではなく、分析結果から日本の良いところや日本に足りないものを考える、過去の日本のスコアと比較して今の日本がどうかを評価する、などが良いでしょう。

世界幸福度ランキングの楽しみ方

出典:pexels.com

一見すると政治への信頼度や社会保障制度の充実度など、ランキング上位国は理想郷そのものに見えますが、その全てが完璧な訳ではありません。
例えば、ランキング1位のフィンランドでは日本同様少子化の問題を抱えていますし、他にも、人道的な理由から多くの難民を受け入れたことが、社会保障制度の負担になるという声も上がっています。
どれほど幸福度が高い国でも問題は抱えているものです。それでも多くのフィンランド国民は自分たちのことを幸せだと思っているということが幸福度ランキングからはわかります。

GDPや社会の制度そのものではなく「主観的に幸せだと思えること」が大切なことであり、幸福度ランキングが私たちに伝えてくれているものです。
どのような宗教や文化、価値観を持つ国の人でも、自信を持って自分は幸せだと言える世界であってほしいですね。

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