端材に命を吹き込む。ANIMA FORMAが生み出す一点モノのアートから大量生産社会を考える

本物の動物を想起させるANIMA FORMA(アニマフォルマ)の作品。ANIMA FORMAは、作品の材料にウール生地の生産過程で廃棄される端材を使ったアップサイクルアートプロジェクトです。作品を通して動物たちが私たちに語り掛けてくることとは? ANIMA FORMAのデザイナー村松恵さんに作品の背景にある想いを伺いました。

不要になったウール生地の端材に新たに命を吹き込んだアート“ANIMA FORMA”

ANIMA FORMAの展示会に訪れるなり、目に飛び込んでくるのは壁に掛けられた様々な動物たち。牛のような大きなものから、ムササビのような小さなものまで、本物にはない配色でありながら、どこかリアルで、まるで生きているかのような躍動感を感じます。
それもそのはず、作品はウールなどの生地の端材を使用し、形はカット前の剥いだ状態の動物の毛皮からインスピレーションを得たもの。
ANIMA FORMAは、コートやジャケットなどの衣服やブランケットなどに使われるウール生地の生産段階で出てしまう端材に命を吹き込み、壁に飾るアート、ウォールハンギングとして生まれ変わらせるアップサイクルのアートプロジェクトです。

きっかけは大量に生産される中で不要になる「端材」

プロジェクトを始動させたデザイナーの村松恵さんは、美術大学を卒業し、生活雑貨のデザイナーとして働くなど、長年テキスタイルデザインに関わってきました。そこでいつも目にしてきたのが、織物工場の端っこに積み上げられていたウール生地などの端材です。
衣服や雑貨の生産過程でどうしても発生してしまう端材の山を見て、いつも違和感があったと村松さんは言います。
「織物工場で不要になった端材を見るたびに、何かに使えないだろうかと考えていました。それと同時に、大量生産され使い捨てが当たり前になってしまった現代のモノの在り方にも疑問を持っていたんです。
その思いが形となったのが、端材となった獣毛を使った作品です。獣毛を再び動物の形に“戻す”ことで、獣毛の端材にまだ残存している生命の痕跡が見える化され、この世で唯一無二の価値を持つ毛物(獣)が生まれると感じました。」

量産されたものを唯一無二のアートに作り替えていく

本物の動物のようでありながら、インテリアにも溶け込むデザインのANIMA FORMAの作品は、製作段階からひとつひとつこだわりを持ってデザインされています。
「リアルすぎないようにしつつも、どんな動物かを想像できるようなフォルムにしています。革をとるために開いた状態にされた動物の毛皮を参考にはしていますが、全くその通りではなく、そこにデザインを加えて架空の動物を作り上げています。」
動物の色や柄を決めていく工程では、村松さんがひとつひとつをデザインし、二つとして同じ作品ができることはありません。
「工場から送られてくる端材は素材もカラーも様々です。季節やトレンドによって出回るカラーや柄が変わってくるので、その時々で違った表情に仕上がります。偶然的に集まった生地の端材を組み合わせて、思いもよらない配色の毛物(獣)が生まれる瞬間が、制作する中で一番面白いところだと思っています。」
レイアウトされた端材は、素材の繊維同士を絡ませフェルト化する“ニードルパンチ”という工程を経て、一枚の作品になります。

二つとして同じものがない作品からは、コピーされ大量に生産されたモノにはない、私たち人間や動物たちが持つ個性や多様性のようなものを感じます。その時にしかない出会いを楽しめるのも、ANIMA FORMAの大きな魅力のひとつです。

モノとの出会いから“本当のサステナブル”を考える

私生活では、アンティークの雑貨に出会える蚤の市によく足を運ぶという村松さん。ひとつひとつのモノとの出会いを大切にし、その時に“ビビッ!”とくる感覚も大切にしていると言います。
「私が着ている洋服はほとんどが古着なんです。アンティークの雑貨にも目がありません。洋服や雑貨が、どのように作られてどのように使われてきたのか、教えてもらったり、想像したりするのが好きなんです。そんな風にANIMA FORMAの作品も見てもらえたらという思いで制作しています。」

ここ数年で一気に持続可能な社会の在り方が考えられるようになってきましたが、“エコ”などのワードが書かれた商品を購入することだけではなく、もとからあるものを長く使うことや、モノとの出会いを大切にすることこそ、本当のサステナブルなのではないかと改めて気付かされます。

最後に、今後のアート活動について、村松さんにお聞きしました。
「ANIMA FORMAは私の活動の中のひとつのプロジェクトです。今後も新しいプロジェクトを立ち上げていきたいと思っていますが、どんなプロジェクトをするにしても、すでにあるものや不要なものを作り替えて価値を付けていくということは一貫してテーマにしていきたいです。」

今年、初の海外での展示会を控えているANIMA FORMA。強くもしなやかなメッセージを発信するアートプロジェクトはどのような広がりを見せるのか。これからも目が離せません。

プロフィール

村松恵さん

1983年東京生まれ。多摩美術大学生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒。株式会社良品計画の生活雑貨部企画デザイン室を経て独立。2021年、布地の生産過程において廃棄される端材を一点モノの毛物(獣)として蘇らせるアートプロジェクト「ANIMA FORMA」を始動。これまでの展示に「Life in Art Exhibition」MUJI GINZA(2021)「MEGUMI MURAMATSU EXHIBITION」世界遺産富岡製糸場(2022)「ANIMA FORMA×FEEL SEEN」FEEL SEEN GINZA (2023)などがある。

【ANIMA FORMA最新展示情報】
ANIMA FORMAがフィンランド フォルッサ市で行われるテキスタイルの展示会「Forssa textile week 2023」に出展予定。デザイン大国であり、サステナビリティへの意識・関心が高いフィンランドで、日本発・端材から作られる一点モノのANIMA FORMAの作品が披露されます。
https://www.forssatextileweek.fi/

ANIMA FORMA
公式HP https://animaforma.com/
公式インスタグラム @animaforma

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