• 未来に残したい世界の絶景写真「オーロラ/イエローナイフ」

    今回が二回目の連載となる「未来に残したい世界の絶景写真」。 この連載では世界各国を回る旅人やツアーコンダクターが旅先で出会った景色をお届けします。世界から届く絶景写真から、人と自然が共存する豊かな社会の在り方を考えてみませんか。今回は、カナダのイエローナイフに出現するオーロラです。イエローナイフは、カナダ北西部ノースウェスト準州の州都。オーロラベルト上にあり、晴天率が高いことから、オーロラを鑑賞できる確率が高いことで有名です。“オーロラのメッカ”との呼び声も高く、その神秘的な光景を求めて、世界中から観光客が集まります。 オーロラ鑑賞に適している冬はマイナス30度まで下がる極寒の世界で、気が付けばまつ毛が凍っていることもしばしば。しかし、ひとたび空いっぱいに光のカーテンが出現すると、その美しさから、寒さを忘れるほどの感動が押し寄せます。秋には湖に写る逆さオーロラを望めるチャンスもあります。太陽と地球が見せてくれる光の天体ショー。私たちは奇跡的な条件の上に生かされているということを感じずにはいられません。未来に向けて守っていきたい地球の絶景の一つです。 ※画像をクリックすると拡大します photo by @tsugraphy_319

  • 世界幸福度ランキング2023。6年連続1位のフィンランドは日本よりも幸せ?

    2023年版の世界幸福度ランキングが発表されました。トップ20の国と日本のランキングを紹介するとともに、世界幸福度ランキングの概要やランキングの決まり方について説明していきます。 世界幸福度ランキングとは? 世界幸福度ランキングとは国連の関連団体であるSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2012年から発行している「World Hapiness Report」に記載されているランキングです。同年3月20日に宣言された「国際幸福デー」に合わせて毎年ランキングが発表されています。背景に2011年の国連総会で、幸せの国としても知られるブータンのティンレイ首相(当時)が「幸福度を国際社会全体の開発目標に据えよう」と問題提起し、全会一致で採択されたことがあります。世界的な金融危機や環境破壊の経験を踏まえ、GDPなどの経済指標だけでは豊かさや幸福度を測れないことから、世界的に幸福度を重視するような機運が高まっています。 ランキングはどうやって決まる? 出典:unsplash.com 世界幸福度ランキングはどのように決まるのでしょうか。幸福度の調査はカントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる方法を用いた世論調査によって行われます。具体的には、可能な限り最高の人生を10、最悪の人生を0とし、回答者に自分の人生が0から10のどの段階にあるかを評価してもらいます。得られた回答の過去3年間の平均値をスコアとし、ランク付けをしています。 また、報告書においては得られたスコアがどのような要因で説明できるか、統計学的な観点から分析しています。説明に使われる要因は以下の6つの項目です。 ・一人当たり国内総生産(GDP)・社会的支援(社会保障制度など)・健康寿命・人生選択の自由度・他人への寛容さ(寄付活動など)・腐敗認識度(国・政治への信頼) ここで注意が必要なのが、6つの項目は結果を後から分析するために用いられるものであって、幸福度のスコアやランキングには影響していないということです。World Hapiness Reportのホームページには以下の記述があります。 “Our happiness rankings are not based on any index of these six factors – the scores are instead based on individuals’ own assessments of their lives, in particular, their answers to the single-item Cantril ladder life-evaluation question”(我々の幸福度ランキングは6つの指標に基づきません。代わりに、スコアは個人の生活の評価、特に単一項目のカントリルラダー生活評価質問への回答に基づいています) https://worldhappiness.report/about/ ランキングはあくまでも、個人の主観的な生活評価に基づいているのです。 最新の世界幸福度ランキング 3月20日に最新の世界幸福度ランキングが発表されました。 World Happiness Report 2023 より再編 図には分析された6つの項目を色別で記載しています。6つの項目とは前述したとおりですが、紺色の「基準値 + 残差」の「基準値」は、全ての国に対して基準となる共通の値を与え、「残差」は6つの項目で分析しきれない部分を表すことを目的として導入されています。 上位3国は昨年と変わらない結果となりました。また、日本は47位で、昨年よりも順位があがっています。 ここからは、上位3国において、国民の幸福度の高さの所以はどこにあるのかと日本の順位が低い理由を考えていきます。 世界幸福度ランキング1位 <フィンランド> 出典:unsplash.com 6年連続で幸福度ランキング1位となったフィンランド。透明性の高い政治で国民からの信頼が厚いと言われており、社会保障制度が充実していることで知られています。また、フィンランドでは、教育や子育てにも力を入れています。 教育の質の高さ・学力を競うのではなく、自分のために勉強するという価値観・生徒一人ひとりの状況を把握できるよう少人数教育を実施・教員は修士号取得など、厳しい条件をクリアしている・子どもの頃から自然の中で身体を動かすことを楽しめる環境が整っている 子育て環境・就学前教育から高等教育まで学費や給食費が無料・親の就労の有無にかかわらず、すべての子どもが保育園に入ることができる・16時ごろまでに仕事を終わらせる文化があり、残業はほとんどしない・妊娠期から就学するまで「ネウボラ制度」により家庭をサポートする担当者がつく・男性が育休を取得しやすい 世界幸福度ランキング2位 <デンマーク> 出典:pixabay.com デンマークは幸福度の高さと国際競争力を両立している国として知られています。社会保険料の代わりに高い税金により手厚い社会保障制度が整っていることが特徴です。その中でも、特に注目されている高齢者福祉について詳しく見ていきましょう。 高齢者福祉・年金の財源は税金のため、未加入や無年金にはならない・充実した年金制度で、生命保険に入る必要がない・自立を促す在宅介護が中心で、手厚いケアにより一人でも安心して暮らすことができる・すべての地方自治体が介護サービスを提供しており、無料で利用できる 世界幸福度ランキング3位 <アイスランド> 出典:unsplash.com アイスランドは、国土面積は北海道と四国を合わせたほどの小国ながら、1人当たりのGDPが高水準である裕福な国です。 社会保障が充実していることから、子どもからお年寄りまで安心して暮らせる環境が整っている上に、ジェンダー平等を推進している点も特徴的です。 ジェンダー平等・男女の同一労働・同一賃金を義務付ける法律を世界で初めて制定・クオータ制により、企業役員や議員などはメンバーの40%以上を女性とすることが定められている・育児休暇期間は、母親が6か月、父親が6か月に加え、どちらがとるか自由に決められる期間が6週間ある 日本の世界幸福度ランキング - 順位が低い理由は? 2023年の世界幸福度ランキングで日本は47位となり、昨年の54位から順位を上げました。また、スコアも昨年より上がっています。6つの分析項目でランキング1位のフィンランドと比較すると、人生選択の自由度、他人への寛容度、腐敗認識度が低いようです。 しかし、何よりも差が大きいのは「残差」の部分です。宗教や文化の違いから東アジアの人はカントリルラダーを控えめに回答する傾向にあることが知られています。残差の部分にその結果が表れ、ランキングに影響していると考えられます。 日本の幸福度を高めるためには? 実は6つの項目による分析結果だけをみると日本は20位のリトアニアよりもスコアが高いです。 主観的な回答に基づいて決まる世界幸福度ランキングは分析しきれない部分が大きく、高順位の国を見て日本の幸福度が低いと考えるのは安直です。幸福度を高めるために大切なことは順位を上げることではなく、分析結果から学ぶことだと言えます。 もし比較するのであれば、順位を見るのではなく、分析結果から日本の良いところや日本に足りないものを考える、過去の日本のスコアと比較して今の日本がどうかを評価する、などが良いでしょう。 世界幸福度ランキングの楽しみ方 出典:pexels.com 一見すると政治への信頼度や社会保障制度の充実度など、ランキング上位国は理想郷そのものに見えますが、その全てが完璧な訳ではありません。例えば、ランキング1位のフィンランドでは日本同様少子化の問題を抱えていますし、他にも、人道的な理由から多くの難民を受け入れたことが、社会保障制度の負担になるという声も上がっています。どれほど幸福度が高い国でも問題は抱えているものです。それでも多くのフィンランド国民は自分たちのことを幸せだと思っているということが幸福度ランキングからはわかります。 GDPや社会の制度そのものではなく「主観的に幸せだと思えること」が大切なことであり、幸福度ランキングが私たちに伝えてくれているものです。どのような宗教や文化、価値観を持つ国の人でも、自信を持って自分は幸せだと言える世界であってほしいですね。

  • 悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは

    グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。

  • 「相手の目線に立つことが強い社会への第一歩」福祉団体ビーンズが目指すもの

    エシカルやサステナブルなライフワークを持つ人へのインタビューを通じて、“本当の豊かさ”を見つめ直すrootusの本企画。今回は、障害のあるスタッフが活躍するロースタリーカフェ併設の福祉施設「ソーシャルグッドロースターズ」などを手掛け、多方面で障がい者の支援を行ってきた一般社団法人ビーンズの代表坂野拓海さんをお迎えします。坂野さんの言葉には、「誰一人として取り残さない」社会の本質とその実現に向けたヒントが散りばめられています。 坂野拓海さんプロフィール 経営コンサルタントとして働いた後、“密に個人と向き合う仕事がしたい”と障がい者専門の就職支援会社に入社。そこでの仕事や様々なボランティア経験を積むうちに、知的障がいや精神障がいなど目に見えづらい障がいがある方への支援の必要性を感じ、ビーンズを設立。2018年には就労支援施設であるコーヒーショップ「ソーシャルグッドロースターズ」をオープン。2022年には、クラフトビールの醸造所「方南ローカルグッドブリュワーズ」をオープンし、これまでにない形で施設利用者と社会が繋がれるソーシャルグッドな場所を作り出している。 時間をかけながら、やりがいある現場を作っていく ――rootusは以前「ソーシャルグッドロースターズ」を取材しましたが、坂野さんが代表を務めるビーンズでは、障がい者の方を中心に支援されていますよね。 「私たちは障がいのあるなしに関わらず、何かしらの困難を抱えている人のサポートをしたいと思っています。身体障がいや知的障がいなど、障がいと一言に言っても様々な障がいがありますが、障がいの中には、虐待や社会生活の中で生じてしまったものも少なからずあるのです。そのような困難の中にいる方の立場に立って、総合的にサポートしていく場を作っていこうと動いています。 ここ数年力を入れてきた「ソーシャルグッドロースターズ」や「方南ローカルグッドブリュワーズ」では、障がい者が、従来のような単純作業ではなく、一人ひとりがスキルを身に着け、生き生きと働けるような就労支援施設を目指しています。 障がいも困難も人それぞれですが、今の時代に合った選択肢をできるだけ多く増やし、個人に合った支援を提供していきたいと思っています。」 本格的なスペシャリティコーヒーを提供する千代田区のソーシャルグッドロースターズ ――多角的に支援事業をされていますが、活動や運営の中で大切にしていることはありますか。 「“場を作る人を育てること”というのは大切にしています。代表として、意見を言いたくなるときもあるのですが、それだけでは現場が育たず、施設利用者やスタッフも委縮してしまいます。時間がかかることがほとんどですが、みんなで意見を出し合って、みんなで課題を解決していく。それを繰り返していくうちに、現場がどんどんブラッシュアップされていき、ノウハウがたまっていく。そんな場所であったら、全員が生き生きとやりがいを持って働けるようになるのだと、ソーシャルグッドロースターズの運営を通し、身を持って感じています。」 対等に生きていくために、一緒に楽しみを見つけ成長していく現場を ――福祉に携わる方の働きかたの見直しが求められている中で、職員にとってもビーンズの運営方針は革新的なものですよね。 「長年福祉の現場に携わってきましたが、障がい者を支援する仕事は、肉体的にも精神的にもきついことが多く、正直、心から楽しさを感じ、喜びを持って働こうという雰囲気ではありませんでした。それは、慢性的な人手不足や人材が育たないことからも顕著ですね。でも、障がい者の方を支援するということは、お世話をすることとイコールではないと思うんです。一緒にどう楽しみながら、一緒にどう成長していけるか、ともに対等に生きていくためには、視点の転換が大切だと感じます。」 方南ローカルグッドブリュワーズのクラフトビールは商店街の新名物に 誰一人取り残されないために必要なのは、批判ではなく、困っている人と同じ目線に立つこと ――近年はSDGsの広がりもあり、「誰一人取り残さない社会」というキーワードが注目されるようになっていますよね。福祉を取り巻く環境にも変化は見られますか。 「変化はかなり感じますね。日本を含む先進国では中間層が薄くなってきているとよく言われますが、取り残される側になる人も増えてきていると感じます。そのため、みんなが取り残される当事者になる可能性が増し、取り残されることへの危機感も持っているのではないかと思います。私たちのような活動に目を向けていただける機会も増えました。ともに生きていける社会の実現に向けて、一人ひとりの意識が変わってきている証拠なのではないでしょうか。 そんな社会で大切なのは、分断や批判ではなく、困っている人と同じ目線に立って、必要な支え方を模索すること、支援の選択肢を増やすことではないかと思います。幸運なことに、日本は生活困窮者などに向けての行政の支援は充実しており、システムは十分に機能しています。そこに困っている人の気持ちに寄り添う人々や、団体が増えていけば、さらに助け合いの輪が広がっていくのではないでしょうか。」 ――これまでにない方法で福祉のあり方を追求してきたビーンズですが、これからの展望を教えてください。 「ソーシャルグッドロースターズや方南ローカルグッドブリュワーズは、障がい者など生活が困難な人たちへ向けた支援の“出口”だと思っています。ここで社会とつながりを持ち、積み上げた経験やスキルを活かして、他の場所に飛び立っていく人もいます。これからは、そのような“出口”の支援だけでなく、支援の“入口”になる場所も作っていきたいと思っています。社会には、様々な理由で頼れる人がおらず、身動きが取れない人がたくさんいらっしゃいます。そのような方を受け入れるのが支援の入口だと思っています。生活がままならない方の受け入れ先となり、スキルや経験を積んで社会で活躍できるようになるまで総合的、継続的に支援できるような団体になっていきたいです。」 本当に強い社会とは、ポジティブな循環が生まれる社会のこと ――最後に、坂野さんにとっての「豊かさ」とはなにか教えて下さい。 「豊かさとは、“自分も相手も気分がいいこと”だと思っています。これは職場や家庭でもそうですが、関わるみんながお互いを知ろうと努力し、相手を尊重し合うことで、一日を心地よく過ごすことができる、そんな関わり方が理想ですよね。ともに時間を過ごす人やチームがあることは、何事にも代えがたいことです。それこそ、取り残されない社会の実現に向けて大切なことの一つではないかと思います。信頼できるコミュニティやバックグラウンドがあるからまた新たなことに挑戦できるんですよね。そのような良い循環が生まれる社会は、とても強いものであると思います。」 取材中に何度も、「私よりも施設利用者や職員が主役です」という言葉が出てきた坂野さん。ビーンズでは、活動に関わる利用者やスタッフ中心の運営であることが垣間見えました。 障がいがあるかどうかにかかわらず、一人ひとりが個性を生かし、尊重し合うことの大切さが求められる今。お互いの目線に立ち理解しようとする姿勢こそが、誰一人として取り残さない、強く豊かな社会の実現に向けた第一歩なのではないでしょうか。 ソーシャルグッドロースターズ 公式ホームページ方南ローカルグッドブリュワーズ 公式ホームページ 取材・文 / rootus編集部

  • 子どもたちに慶事ボランティアを行うイチゴイニシアチブがトークイベント開催

    あなたが出来ること、一緒に考えませんか? 虐待や貧困などにより、生みの親と離れて暮らすこどもは全国で約42,000人。そこには、生みの親に代わり、彼らを育てる里親や児童養護施設の職員がいます。 今回は、里親・施設・ボランティア団体の3名が、それぞれの立場から「生みの親と離れて暮らすこども達の暮らし」をテーマに子どもの支援についてお話しします。 現状や制度はどうなっているの? 血が繋がらなくても家族になれる? 児童養護施設ってどんな所? 私が出来ることは? イベントは、“日々の暮らし”を大事にする無印良品が運営するカフェ「Cafe MUJI 二子玉川」での開催。 あなたができることを一緒に考えませんか。 【里親・施設での、子どもの暮らし イベント日程】 日時:2023年3月10日(金) 15時〜16時半 場所:無印良品 Cafe MUJI 二子玉川(玉川高島屋S・Cマロニエコート) 東京都世田谷区玉川2-27-5 入場:無料 ※要事前申し込み 【お申込みはこちら ※直接予約フォームに飛びます】 https://docs.google.com/forms/d/1UJ9UiwfPXv7LCqwn32yw3sRbZKf6Y9XWIV0B0uGy8jI/viewform 【登壇者】 ・児童養護施設 東京育成園 東京都世田谷区下馬にある明治時代に開設された児童養護施設。2020年に世田谷区より里親支援事業(フォスタリング事業)の業務委託を受け、「フォスターサポートセンターともがき」を開設。 ・一般社団法人いちご言祝ぎの杜 イチゴイニシアチブ 日本の児童養護施設を中心に、その子のためだけを思い、祝う特別なバースデープログラムと、子どもたちの成長を喜ぶ伝統的なお祝いの儀式を一流のプロフェッショナルたちの手で贈るプロジェクトチーム。

  • 未来に残したい世界の絶景「バオバブの木/マダガスカル」

    今回が1回目の連載「未来に残したい世界の絶景」。 この連載では世界各国を回る旅人やツアーコンダクターが旅先で出会った景色をお届け。この先ずっと守っていきたい豊かな自然や文化から、持続可能な社会の大切さを感じてみませんか。 第一回目は、マダガスカルのモロンダバ郊外にあるバオバブの並木道。 マダガスカルは、アフリカの南東に浮かぶ島国です。バオバブは、アフリカ原産の木で、巨大な幹が特徴。古いものだと樹齢2000年を超えるものもあると言われています。 マダガスカルでは古くから市民の間で親しまれ、その大きさと個性的なフォルムは世界中の旅行者を魅了し続けています。 バオバブの木を目にして驚くのがその圧倒的な存在感。バオバブが立ち並ぶこの場所は、昼間の姿と夕景の姿の違いがまた美しく、時間の経過を忘れて見入ってしまうほど、印象的な場所です。 何千年も生きると言われるバオバブですが、実は近年枯れるペースが速くなっていることが発見されました。原因の特定には至っていませんが、気候変動が原因になっているとする研究者もいます。 私たちが生まれるずっと前からそこに生きるバオバブの木。未来に向けて守っていきたい地球の絶景の一つです。 ※画像をクリックすると拡大します photo by @tsugraphy_319

  • 洋服の大量廃棄問題に挑む。環境配慮型ファイバーボード「PANECO®」

    世界中で衣服の大量消費・大量廃棄の問題が取りざたされる中、不要になった衣類を捨てるのではなく、新しい素材として再利用する動きが進んでいます。今回は、不要な衣服を原料とするファイバーボード「PANECO(パネコ)」を開発した株式会社ワークスタジオを取材。パネコ開発の背景にある、廃棄衣服の問題意識やサーキュラーエコノミーの考え方について話を伺いました。 インテリアとして生まれ変わる廃棄衣服 誰もがファッションを手軽に楽しめる時代。その一方で、衣服のライフサイクルが早まり、それが大量廃棄に繋がっているとされている。環境への負荷を最小限にとどめ、持続可能な社会を作っていくために、衣服の大量廃棄は私たちが今すぐに向き合わなければならない問題のひとつだ。 そんな中、一つの新しい技術が今注目されている。廃棄になるはずだった衣服が原料になっているファイバーボード「PANECO(パネコ)」だ。パネコは、衣服を細かく粉砕し、特殊な技術を用いて作られている。現在は主に、大手アパレルブランドの内装や什器、企業の受付カウンターとして使用されることが多い。 パネコが什器として使用されているFREAK'S STORE(株式会社デイトナ・インターナショナル)。写真は、アミュプラザ博多店 また、パネコの大きな特徴の一つとして、木製のボードのように加工がしやすいという点が挙げられ、コースターやハンガーなど、デザインや使い方次第で様々な製品を生み出すことができる。 衣服由来ということもあり、パネコの質感やカラーも特徴的だ。使用する衣服次第では様々な色のボードを作ることができ、子ども部屋のインテリアにもなりそうなカラフルで可愛らしいものもある。 サーキュラーエコノミーを取り入れたミニマムなデザイン パネコのボードがサステナブルであるのは、不要になった衣服を原料としている点だけではない。「パネコは繰り返しボードとして再利用することが可能で、役目が終わった時のことまで考えて生産されています。」そう語るのは、株式会社ワークスタジオの篠嵜さんだ。「使用後のボードは再度、粉砕し原料として使用できます。パネコを使用することにより、廃棄物を減らすことが可能となります。」手放すときのことも考えて生産するサーキュラーエコノミーの考え方が取り入れられているのだ。 例えば今までは、什器が大掛かりに入れ替えられていた店舗の内装リニューアルも、パネコのような環境配慮型の素材選定や設計により廃棄物を出さず、ミニマルでシンプルな入れ替えが実現する。 パネコは衣類だけでなく、スニーカーや木材を原料に混ぜ込んで作ることもできる 洋服が行きつく先を視察することでより深くファッションロスを考える ワークスタジオは、もともとは什器のデザインなどを行っており、アパレル業界ともかかわりの深い会社だった。衣類からもボードを作れるのではないかという話から、洋服の大量廃棄問題を知ることとなり、約3年の研究を経て、リサイクルボードであるパネコの開発に成功した。 ワークスタジオでは、洋服の廃棄問題に本格的に取り組みたいとの思いから、代表と社員が世界中から古着が集まるアフリカのガーナを訪問。先進国で不要となった衣服の行く末を実際にその目で見てきた。 ガーナでは、マーケットに各国から届いた古着が届けられ、商人は売れそうな洋服を見極めて持ち帰るが、売れないと判断された洋服は捨てられてしまいゴミとなる。ガーナに届けられた衣類の多くが廃棄になってしまうというのが現実だ。さらに、不要とされた洋服はゴミになるといっても焼却処分されるわけではない。衣類はゴミ置き場に運ばれると、そのまま積み上げられ、見上げるほど巨大なゴミの山の一部となる。ゴミの山のすぐ近くには住宅もあり、人々の生活がある。隣接する海にも、ゴミの一部が流れ出て、洋服が波の打ち付ける砂浜に埋まってしまい、どんなに引っ張っても回収できない状態になっているという。 状況は違うにせよ、日本でも毎日大量の洋服が捨てられていく。私たちも他人ごとではなく、一人ひとりが考えていかなくてはいけない大きな問題だ。 展示会では廃棄になった服の山を表現。来場者の目をひいた 「都市森林」から価値あるものを作り出す 「都市鉱山ということばがあるように、私たちは都市森林があると思っています。都市森林とはクローゼットに眠っている衣服のことで、それも立派な資源のひとつと考えています。」篠嵜さんは話す。「1つの考えとして、我々、消費者自身が何かを購入する時に、モノのライフサイクルを考えることが大切だと思います。」 輸送時の環境負荷なども考えてアップサイクルやリサイクルはその土地で行う「地産地消」のかたちをとるパネコ。次は、海外でも、その国や土地で出た廃棄衣類を原料に、ファイバーボードを製造する技術を広めていく予定だ。 持続可能なファッションを目指すために 国内で毎日何万トンもあるといわれる洋服の廃棄。今私たち消費者には大きな意識の変革が求められている。必要以上に購入せず、一枚の洋服を大切に長持ちさせること。それでも不要になった衣服はパネコのような選択肢があるということを知っておきたい。今後店舗でパネコを見かけたときは、未来に向けて持続可能なファッションとはなにか、今一度考えてみてほしい。 PANECO®公式HP https://paneco.tokyo/

  • ソーシャルグッドロースターズに聞く、人と社会に寄り添うコーヒーができるまで

    東京、神田に画期的なコーヒーショップがあるのをご存知でしょうか。ソーシャルグッドロースターズ千代田は、福祉施設でありながら、こだわりのコーヒーを提供するコーヒーショップです。今世界が未来に向けて目指す、「誰一人取り残さない社会」はどのように作られるのか?そのヒントを探すため、商品のクオリティだけでなく、コーヒーに関わる人たちに重きを置くソーシャルグッドロースターズを取材しました。 新しいかたちの福祉施設 平日の昼下がり。ソーシャルグッドロースターズには、近隣に住む人や、オフィスで働く人々が一杯のコーヒーを求めて次々と来店する。 コーヒーの香ばしい香りが充満する店内は、生豆の選別や焙煎、接客、コーヒーのドリップなど、それぞれの仕事に取り組むスタッフで活気づいている。 ソーシャルグッドロースターズが他のコーヒーショップと違う点は、焙煎所を兼ねるロースタリーカフェでありながら、障がいがある人が働く福祉施設でもあるという点だ。ここでは様々な障がいのある人たちが、コーヒーづくりから接客に至るまで、それぞれ得意な分野を担当しながら専門的な経験を積める就労の場として活用している。 はじまりは障がい者の働き方の現状を知ったこと ソーシャルグッドロースターズを運営する一般社団法人ビーンズ代表の坂野さんは、障がい者の方と一緒に外出するボランティアをしていた際、本人やその母親から働き先がない、と聞くことがよくあったと言う。 「実際に障がい者の人と一緒に仕事を探してみると、働き先の数はあるものの、職種が極端に少ない状況でした。どうしても単純作業が多く、やりがいやスキルアップの機会を見いだせない仕事が多かったのです。それは高い離職率からも顕著でした。そこで、障がい者の人も、社会で働く他の人々と同じように、技術を習得でき、自分の仕事に誇りを持って働けるような福祉施設を作りたいと思い、このような場所を立ち上げることになりました。」 “障がい者でもできる仕事”ではなく、“みんながやりたいと思えるような仕事”で、スキルも身に着けられるような仕事を、と選んだのがコーヒーショップだった。 一人ひとりの個性が生かされたコーヒーづくり ここでのコーヒーづくりは、人の手で生豆をひとつひとつ選別するハンドソーティングから始まる。農産物である生豆の中には虫が食っているものや欠けている豆があり、それが入ってしまうと雑味に繋がるとされるため、取り除く必要があるのだ。簡単なようで、意外と難しいハンドソーティングは、集中力と根気がいる作業だ。 選別された豆は、世界でもトップクラスの焙煎機「GIESEN」で焙煎。ブレンドの作業では、一人ではなく味覚の鋭い障がい者を含めたスタッフ数人で行い、調整して本当に美味しいと思えるものに仕上げている。そして最後にコーヒーは、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れていくか、バリスタの手によってエスプレッソマシンで淹れられ提供される。 このように、ハンドソーティングからはじまり、焙煎、ブレンド、ドリップ、接客に至るまで、たくさんの役割がある中、スタッフは、それぞれが自分の能力を発揮できる持ち場についている。美味しいコーヒーをつくり提供するという共通のゴールを持ちながら、個性を生かし、尊重し合いながら働いているのだ。 社会の一員として誇りを持って働ける現場を ソーシャルグッドロースターズでは、立ち上げの際の設備投資を惜しまなかったと坂野さんは話す。「みんながチャレンジしていける場を作りたかったんです。そのためには世界レベルの焙煎機やエスプレッソマシンが必要だと思いました。最初は誰一人として機械の使い方がわからなかったんですよ(笑)でも今は、使いこなせるスタッフが数名います。」実際にここで働くことで一人ひとりの知識や経験値、技術が向上しているのだ。 「スタッフには、福祉施設だということをアピールしないで下さいよ、と言われます。障がいのあるなしに関わらず、全員が社会で働く一人として、プライドを持って働いてくれているんです。」お店でコーヒーが作られていく過程を見ると、どの工程も訓練やスキルがないと難しい。そして出来上がったコーヒーも一流のコーヒーショップと遜色がない。声を掛け合う和やかな空気が流れる中、スタッフがそれぞれの仕事に熱中する様子からは、美味しいコーヒーを作りたいという意気込みが伝わってくる。 どこまでも平等であることを追求する ソーシャルグッドロースターズで仕入れる豆は、インドのコーヒー農園からフェアトレードで購入している。持続可能なコーヒーの生産を目指すコーヒーサプライヤーであるオリジンコーヒーグループと「人に優しいコーヒーを」という思いを一緒に、できるだけコーヒー生産者に売り上げを還元できるような仕組みを整えた。 豆が生産されてからお店に届くまで、どこにどのくらいコストがかかっているか、徹底的に透明化。ソーシャルグッドロースターズでは、その詳細を毎回仕入れごとに確認している。 社会にとって平等であるか、ということをどこまでも追及しているのだ。 一杯のコーヒーを通して見えてくるこれからの社会 名前の通り、「ソーシャルグッド」な流れを生み出すソーシャルグッドロースターズ。ここにいると、「誰一人取り残さない社会」とはどんなものなのか、一杯のコーヒーを通して見えてくる。障がいのあるなしに関わらず、一人ひとりの多様性を認め合い、みんなが平等に社会の一員として活躍できること。そしてそれが社会にとって良い循環を生み出していくこと。美味しいコーヒーとともに、誰もが大切に思われる社会の重要性を考えさせてくれる貴重なコーヒーショップだ。 ソーシャルグッドロースターズ千代田東京都千代田区神田錦町1-14-13 LANDPOOL KANDA TERRACE 2F10:00~18:00日曜定休・都営新宿線/三田線/東京メトロ 半蔵門線「神保町駅」徒歩6分・都営新宿線「小川町駅」徒歩2分・東京メトロ 丸ノ内線「淡路町駅」徒歩2分・東京メトロ 千代田線「新御茶ノ水駅」徒歩2分・JR/つくばエキスプレス/東京メトロ 日比谷線「秋葉原駅」徒歩12分https://sgroasters.jp/

  • 夜パンB&Bカフェが新オープン。枝元なほみさんが目指す「繋がる社会」とは

    協力パン屋から売れ残りそうなパンを引き取って販売する「夜のパン屋さん」。今回、夜のパン屋さんが新しいプロジェクトとして、築150年の古民家「けやきの森の季楽堂」で「夜パンB&Bカフェ」をスタート。 運営を行う、THE BIG ISSUE JapanとMINI JAPANのスローガン「BIG LOVE」からBをとってB&Bと名付けられました。毎月第二土曜日に開催し、カフェに加えて、夜のパン屋さんやマルシェなども出店。「次に来る誰か」のためにランチ代などを先払いできる「お福分け券」の仕組みを整えるなど、金銭的に余裕がない人でも利用しやすいアイデアが取り入れられています。 今回は、夜のパン屋さんを立ち上げた枝元なほみさんに、夜のパン屋さんが目指す「人と人が繋がる社会」についてお話を伺いました。 枝元なほみさんProfile 横浜市生まれ。料理研究家としてテレビや雑誌などで活躍。農業支援活動団体「チームむかご」を立ち上げ、NPO法人「ビッグイシュー基金」の共同代表を務めながら、雑誌「ビッグイシュー日本版」では連載を持つ。2020年にはパン屋さんで廃棄になりそうなパンを救う「夜のパン屋さん」をオープンし話題に。これまで多数の執筆を手掛けており、近著として『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしくフードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)がある。 枝元なほみさん 公式TwitterNPO法人ビッグイシュー基金公式ホームページ 循環させる大切さを届けたい思いで、夜のパン屋さんをオープン ――はじめに、今回のカフェの元となっている「夜のパン屋さん」をスタートしたいきさつを教えてください。 枝元さん:2019年に私が連載をしている『ビッグイシュー日本版』を発行する「有限会社ビッグイシュー日本」(ホームレスの人の仕事をつくり、生活再建を応援する社会的企業)に篤志家の方から寄付のお申し出があったのですが、「皆さんに配って終わりではなく、何らかの形で循環できるよう使っていただきたい」との要望でした。「新たな仕事の場づくりができないか?」とビッグイシューのスタッフから相談を受けて、夕方まで売り切れなかったパンを街のパン屋さんからお預かりし、それを夜の時間帯に販売することを思いついたのです。破棄になるかもしれなかったパンを、必要としている人に届けるのです。一見あまり関連のないように感じる夜のパン屋さんとビッグイシューですが、ふたつとも「最後のつなぎ役」という役割でリンクしています。 ――夜のパン屋さんの活動は、SDGsの考え方とも深くかかわっていますよね 枝元さん:最近は社会の流れも変わってきて、みなさんが「自分たちもやらなくては」という雰囲気になり、一緒にやりたいと声をかけて下さる方が増えてきました。テレビで夜のパン屋さんを観て協力してくださるパン屋さんもいます。賛同してくださる方が増え、同じ想いを持ってできるのが嬉しいですね。 みんなで環境問題や社会問題解決の意識を持っていけたらと思っています。食べ物が満足に行き渡らない人たちのことや、自然環境のことを、子どもたちと一緒に学び考えながら食べ物をいただくことが大事ではないでしょうか。 「夜パンB&Bカフェ」はお互いを受け入れ合い、交流する場所にしたい ――今回、夜のパン屋さんから発展して「夜パンB&Bカフェ」をオープンするに至った経緯を教えてください。 枝元さん:夜のパン屋さん(以下、夜パン)は東京で2020年10月に始まり、オープンから2年が経ちました。つい最近、札幌にもオープンしたところです。夜パンの運営が軌道に乗り始め、次のステップに進めると感じたときに、色々な人とゆっくり話ができ、交流し合うカフェが出来たらいいなと思いました。そこでできたのが、練馬のけやきの森の季楽堂での「夜パンB&Bカフェ」の構想です。 自動車のMINIが企画する「BIG LOVE ACTION powered by MINI.※1」で支援先に選んでいただいたことで、場所を1年間借りるサポートを受けることができ、実施が可能になりました。カフェの運営パートナーとして、その他のサポートもして下さっています。 (※1)BIG LOVE ACTION powered by MINI. 性別・年齢・国籍にかかわらず、誰もが個性を発揮できる未来の実現を目的としたソーシャル・アントレプレナー支援の企画。世の中を良くするアイデアの中から、サポーターの投票により支援プロジェクトを選定。選ばれた活動に対し、MINI Japanが継続的なサポートを行なう。 カフェは、開放的でありながら温かみのある空間 ――令和の時代とは思えないほど、「夜パンB&Bカフェ」は昭和の古き良き空気を感じます。懐かしい気分になりますね。 枝元さん:古民家だからというのもあると思いますが、誰でも受け入れる雰囲気がありますよね。このカフェは滞在時間に制限はなく、縁側でお茶を飲みながら何時間過ごしても大丈夫です。 イベントでは新鮮な野菜なども販売されている ビッグイシューも協力して年末年始に実施している、生活に困っている人が無料で食事ができる場「年越し大人食堂」では、生活相談を受けたり、炊き出しをしたりしていますが、元気のない男性が多く、女性や小さなお子さん連れの方は食料をもらったらすぐ帰ってしまうことも多いんですよ。でも私はそういう人たちともお話をしたいし、繋がりを持ちたいと思っています。 だからこそ夜パンB&Bカフェでは、誰でも居心地よく過ごせる場所でありたいと思っています。他の人を受け入れ、自分も受け入れてもらい、一緒に時間を共有できるコミュニティが欲しいのです。悩んでいることがあっても、「お茶を飲もうよ」「これを食べね」と声をかけあって繋がり合うことで、人は生きていけるのではないかと思っています。 女性がいきいきと働くことはコミュニティを生み出すきっかけになる ――夜パンではフードロスの問題に取り組まれていますが、女性の働く場所を作ることにも力を入れていらっしゃいますよね。 枝元さん: 夜パンの運営を通して、これからは男性だけでなく女性のできる仕事を増やすことに取り組みたいと思っています。私は幸いなことに仕事をやらせていただいていますが、コロナ禍で女性の貧困や格差の問題が浮き彫りとなり、仕事や住まいをなくした方もたくさんいらっしゃいます。そんななか、コミュニティがあり、その中で「いつでも話せる」関係性が大切だと思っています。例えばシングルマザーでも、コミュニティがあれば子どもの世話も含めて助け合えると思うんです。スタッフには、積極的に「子どもも連れてきてね」と伝えるようにしています。 子どもっているだけで、その場の雰囲気が和らぎますよね。カフェには不登校の男の子が来ていますが、彼はキッチンのサポートを積極的に行っています。アメリカのレモネードスタンド活動のように、子どもがレモネードみたいなものを売ってみても良いですよね。 女性はもちろん、子どもにとっても居場所になれたらいいですね。 「ロス=捨てる」のではなく、命をつなげていくもの 取材時のカフェのメニュー。写真右は里芋の皮を活用し、甘辛く炒めたもの ――カフェのメニューは本来捨てられるものも工夫して調理し、美味しい一皿になっていますよね。食品ロスについてはどうお考えですか? 枝元さん:なにを「ロス」とするかは、人の都合なんですよね。できるだけ「ロス」にするのではなく、命を繋いでいくものとして、どう美味しい料理を作れるかを考えるのはとても楽しいですよ。 料理すると気付くのですが、自分で作ったお弁当よりもコンビニで売っている弁当の方が安いんですよね。でも、自分が作ったものの方が残さず大事に食べられたりします。大量生産、大量廃棄の時代ですが、安さだけでなく、美味しく大事に食べられる方を選んでいくのも大切なのではないでしょうか。 今後も「繋がる」をキーワードに社会を循環させていきたい これからも「繋がり」を築いていきたいと語る枝元さん ――今後はどのようなことに力を入れていきたいですか。 枝元さん:夜のパン屋さんをやってみて思ったのは、「繋がり」が一方通行でなく循環する仕組みが必要だということです。人と人が相互に繋がり、みんなの輪が広がっていく活動をしていきたいです。具体的にはまだわかりませんが、もしかすると繋がりを求めて、食堂を作るということになるかもしれません。 働き方に関しても積極的に新しい取り組みを行っていきたいですね。例えば小さいお子さんがいると働く時間が限られてしまいますが、そのような方も働けるような場所を作っていきたいと思っています。 今回の取材を終えて 今回の取材を通し、不確実な世の中だからこそ悩んでいることを打ち明けるような場が必要であると実感しました。お茶を飲んで一息つける夜パンB&Bカフェは、お金には代えられない安心感が得られ、人と人との繋がりを再確認することができます。このような場所から、誰も取り残されない社会へのヒントが見つかる気がしました。 取材・文 / オダルミコ

  • 【イベント】サステナブルブランドによるデッドストックマルシェが限定開催!

    2023年1月28日~29日、東京・蔵前のカフェでDead Stock Marcheが開催されます。 イベントは、「市場には流通させにくいデッドストック品」をテーマに、サステナブルなこだわりを持つSOLIT!・HIKARI underwear・CACTUS TOKYOの3ブランドが集結。 できる限り環境に負荷かけず、かつ在庫を持たないようにしているサステナブルブランドでも、やむをえず抱えている規格外の製品があります。そんな倉庫で眠っているデッドストック品を、大切に使ってくれる人に届けるための販売会です。 会場は、サーキュラーエコノミーをテーマとする蔵前のカフェ「élab」。ここでしか出会えないアイテムを探しに、ぜひ足を運んでみてくださいね。 【イベント関連ページ】 Keep them AWAKE - Dead Stock Marche (※Peatixリンク) 【イベント日程】 日時:2023年1月28日(土)・1月29日(日) 11時〜18時 場所:élab  所在地:〒111-0054 東京都台東区鳥越2丁目2−7 1階 【出店3ブランド紹介】 SOLIT!障害の有無を超えて自分の体型や好みに合わせて、部位ごとにサイズ・仕様・丈を選択でき、受注生産を行うインクルーシブファッションブランド HIKARI underwearオーガニックコットン100%に天然染料を使用し、締め付けない優しい着心地の下着ブランド CACTUS TOKYOサボテン由来のレザー素材を用いたカバンや財布などのオリジナルアイテムを展開するブランド 関連記事:CACTUS TOKYOの工房見学で触れる、サボテンレザーのポテンシャル

  • フラワーロスを900万本救済。老舗の花屋が私たちの未来に残したいもの

    私たちの人生の節目や日常を豊かに彩ってくれる花。しかし、花が私たちの手元に届くまでに、実はたくさんの花の廃棄「フラワーロス」が存在しているのをご存じでしょうか。今回は、“Leave no flower behind=一輪の花も取り残さない”というモットーで活動を行うスマイルフラワープロジェクトを取材。フラワーロスの問題や、プロジェクトが目指す花のある豊かな社会について話を伺いました。 コロナで明るみに。花の廃棄「フラワーロス」問題 2020年4月、コロナの急速な感染拡大により、緊急事態宣言が発令された。休業要請や行動制限の他、予定されていたイベントがすべて中止になり、社会では多くの「ロス(廃棄)」が発生。その中で大量の生花も行き場を失い、「フラワーロス」という言葉が世の中に広く知れ渡るようになった。 コロナは大きなきっかけだったが、実はそれ以前から農家や花屋の店頭では、たくさんの花が日の目を見ないまま廃棄される現状があった。野菜と同じで花には規格があり、茎の長さが足りない、傷がある、茎が曲がっている、葉っぱが足りないなど、規格に満たないと市場では買い取ってもらえない。さらに、店頭では品揃えを豊富にするため花を多めに仕入れる傾向にあり、すべて売り切れずに鮮度が落ち、廃棄になるものが多くある。 毎年どのくらいの花が廃棄されているかを示すはっきりとしたデータはないものの、規格外により農家で廃棄されてしまう花が6億本以上と総生産数の2~3割、店頭での廃棄は仕入れの3割にのぼり、少なく見積もっても一年に10億本ものフラワーロスがあるとされている。 長年花に携わってきた企業として花のある文化を未来に残したい スマイルフラワープロジェクトは、コロナをきっかけにフラワーロスを救済する活動を本格化。今まで900万本を超える花を救ってきただけでなく、フラワーロスについて知ってもらう活動を精力的に行っている。 このプロジェクトを先導しているのは、東京や富山、大阪を拠点に花屋を展開する業界有数のグループ会社だ。 「花の命を一本も無駄にしないために、農家とお客さんを繋ぐ花屋としてできることをしていきたいと思っています。」プロジェクトを立ち上げた株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーションの大槻さんは言う。「弊社では創業以来、一輪の花も無駄にしないよう、割引などをして売り切り、それでも残ってしまった場合は茎や葉を堆肥にするなどの工夫をしてきましたが、スマイルフラワープロジェクトではさらに踏み込んでフラワーロスの問題にアプローチしています。コロナで行き場を失ってしまった花を救うことを目標にスタートしたプロジェクトですが、今では農家さんの協力をいただきながら、これまで廃棄が当然とされてきた『規格外』の花も価値あるものとして世に送り出しています。」 花農家と一緒にフラワーロスゼロを目指す プロジェクトではロスのない生産流通を確立するために生産者とコミュニケーションを重ね、これまで廃棄されることが業界の通例であった「規格外」の花を買い取ってECサイトで販売をしている。これは業界初の試みだ。 また、花は適正価格で購入することで、農家をサポートできる仕組みになっている。スタート当初、農家では産地のブランドイメージを守るためにロスを公にしたがらないところも多かったが、今は賛同してくれる農家が増えてきているという。 品質、生産量ともに日本一の浜松PCガーベラ。スタート当初からプロジェクトに賛同している 実際にスマイルフラワープロジェクトで販売されている花は、小さな傷がある、少し曲がっている程度で、規格外と言っても自宅で楽しむ分には何の問題もない。購入者からも産地から届く新鮮な花は好評を得ている。 さらに、大槻さんはフラワーロスのアップサイクルを推進するため、花染花馥研究所(はなそめはなふくけんきゅうじょ)を設立。花を使った染色やインクの製造をはじめ、同グループのバラ専門店ROSE GALLERYの香り高いバラからはローズウォーターを抽出。それを配合したルームフレグランス「re:ROSE」を販売するなど、まさに、花一輪、一滴も無駄にしないためにできることを日々研究している。 フラワーロスを知らなかった人に花を届ける スマイルフラワープロジェクトでは、フラワーロスを知ってもらうイベントも積極的に実施している。 上智大学のキャンパスでは、フラワーロスの存在を若い世代に知ってもらいたいと、学生と一緒に規格外の花を配るイベントを開催。当日は用意していた500本の花をあっという間に配り終え、急遽フラワーカーの装飾として使用した500本もブーケとして配り大盛況に終わった。 また、航空会社JALとタッグを組んで、朝採れの「規格外」の花を羽田空港へ空輸し、空港利用者に配布。フラワーロスを知ってもらうのと同時に、日本各地の産地と都会を結び、地方創生につなげたい思いがあった。花を受け取った人からは、「フラワーロスのことを初めて知ったが、とても綺麗で嬉しい」と、多くの喜びの声が聞かれた。 上智大学でのイベントには長蛇の列ができた さらには「フラワーライフ振興協議会」を設立し、世界遺産や国宝を会場にフラワーイベントを実施したり、富山で球根を育てるために切り落とされてしまうチューリップ30万輪を使ってフラワーカーペットを作るなど、全国でフラワーロスや花の魅力を知ってもらう活動を行っている。 “花も人と同じ、一輪も取り残したくない” 「活動を通して、ひとの心に寄り添い笑顔にしてくれるお花の力は思う以上のものがあると何度も勇気づけられてきました。私たちが一人ひとり個性を持っているのと同じように、姿かたちの個性も含めて一輪の花も無駄にすることなく活かしてゆきたいと思っています。」と大槻さんは話す。 花農家は、後継者不足で存続が厳しいところが多く、コロナをはじめ社会の情勢によって花の価格が急落してしまうリスクを常に抱え、課題はフラワーロスの削減だけではない。 もし、世の中から花がなくなってしまったら、私たちの生活から彩りが失われてしまうのではないだろうか。 フラワースマイルプロジェクトはこれからも農家と一緒になって、花のある豊かな文化を未来に残していきたいと考えている。 取材を通して~花の命を無駄にしないために私たちにできること フラワーロスの話を聞いてまず驚いたのが1年に10億本と言われる廃棄される花の数だ。その数から、私たちの手元に届く花は厳しい基準をクリアした完璧な花であることに改めて気が付かされる。私たちにできることはまずフラワーロスという問題を知ること。それだけでも規格外の花をインターネットで探してみたり、数日前に作られ店頭で安くなっているブーケを購入したりするきっかけになるのではないかと思う。 スマイルフラワープロジェクトhttps://jfc.thebase.in/フラワーロスのサブスクリプションhttps://flover-s.jp/

  • キッチンから始めるエコ。おしゃれで繰り返し使える脱プラグッズ

    キッチンで活躍するラップやキッチンペーパー、ジッパー付きの袋。基本的に一回しか使わずに捨ててしまうので、もったいないと感じる人も多いのではないでしょうか。 リユースなどがされず一度しか使われない包装容器や袋などのプラスチックは、「シングルユースプラスチック」と呼ばれ、海岸に漂着するプラスチックごみの多くがこのシングルユースプラスチックと言われています。 日本は世界から見てもプラスチックの消費量が非常に多い国のひとつなのです。 この記事では、シングルユースプラスチックなどキッチンで出るゴミを減らすために、繰り返し使えるラップや保存容器をご紹介します。 脱プラが叶う。オシャレで機能的なキッチン雑貨 ピタっと密着して鮮度が長持ち「ビーワックスラップ」 ビーワックスラップは蜜蝋ラップとも呼ばれ、その名の通り、布に蜜蝋を染み込ませて作られたラップのこと。蜜蝋は、抗菌作用や保湿力が高いとされているので、食品を保存するのにもぴったりです。柄も可愛いものが多く、手作りすることもできます。 手の温度で柔らかくなり、ぴたっとお皿などに密着させることができます。熱に弱いので、レンジを使ったり、温かいお湯で洗うと溶けてしまうのが難点ですが、野菜やチーズを包むのにぴったりです 調理や持ち歩きが可能「密閉型シリコーン容器」 ジッパー付きの袋やビニール袋などの代用になるのが、密閉型のシリコーン容器です。カラフルでサイズが充実しているアメリカ発のブランド、「スタッシャー」が代表的。熱にも強いので、離乳食を持ち歩く際に便利とSNSで話題になりました。また、食品を保存するだけでなく、お菓子や煮込み料理、蒸し料理などの調理ができるのも嬉しいポイントです。 様々な野菜の切り口にぴったり「シリコンカバー」 余った野菜や果物にラップをして保存する方が多いですが、全体を包もうとすると大き目のラップが必要になりますよね。ビーワックスラップも野菜の切り口などにおすすめですが、野菜の切り口に合わせて作られているシリコンカバーも便利。ヨーロッパの主婦が作った「フードハガーズ」は、野菜を差し込むだけで簡単に鮮度を保ちながら保存ができます。また、電子レンジや食洗器にも使用できます。 おしゃれで使いやすいエコ雑貨をキッチンに 出典:pexels.com 「エコ」と聞くと、環境にいいことはわかっていても使いやすさが気になりますが、今回ご紹介したラップや保存容器は、どれも使い勝手がよいものばかり。100%プラスチックフリーは難しくても、たまに使うだけでゴミが少なくなることに気が付きますよ。また、食品を保存する場合も、使い捨てのラップより、フレッシュさをキープできることも。ぜひお気に入りを見つけて使ってみてはいかがでしょうか。

  • 家庭から減らそう。食品ロスの現状と私たちにできること

    近年大きく取り上げられている食品ロスの問題。毎日たくさんの食べ物が無駄になっているなかで、私たちがすぐにできることとは?食材を選ぶときにできることから、レストランの選び方まで、今日から始められるアクションをご紹介します。 深刻な食品ロス問題の現状 出典:pexels.com 食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。海外でも問題にはなっていますが、日本でもその問題は深刻。農林水産省の報告によると、令和元年度の食品ロスの量は570万トンにのぼり、国民一人当たりの量に換算すると、一人当たり1日にお茶碗1杯分の食べ物が廃棄されていると言われています。 フードロスは、大切な食糧資源を無駄にしているだけでなく、ごみとして燃やす際に出るCO2の排出量も増やすことに繋がってしまうのが、大きな問題です。 フードロスと食品ロスの違い フードロスと食品ロスは同じような言葉ですが、厳密には違いがあります。フードロスは、収穫・生産された後、流通の過程で私たち消費者に届く前に捨てられてしまう食品のこと。一方食品ロスは、フードロスに加えて、消費者の手に届いてから捨てられてしまうものを含まれています。意味が異なるフードロスと食品ロスですが、日本では同じような使われ方をしているケースがほとんどです。また、規格外野菜などについては、食品ロスの統計には含まれていませんが、廃棄になることも珍しくないため「隠れ食品ロス」と呼ばれることもあります。 家庭で、レストラン選びで食品ロスを少しでも少なく 出典:pexels.com 食品ロスは、大きく事業系食品ロスと家庭系食品ロスに分けられます。令和元年度、事業系食品ロス量は309万トン、家庭系食品ロス量は261万トンでした。お買い物から調理、食事に至るまで家庭で私たちにできることはたくさんあります。また、外食時は近年増えてきている食品ロスの問題に取り組むレストランを利用することも食品ロスの削減につながります。 食品・食材を購入するときにできること 出典:pexels.com 1.手前取り 最近コンビニなどでも少しずつ見かけるようになった、消費期限や賞味期限が近い食品から購入していく手前取り。食品ロスは消費者である私たちの過度な鮮度志向も影響していると言われています。期限内に食べきれるのであれば、積極的に手前取りを行っていくことが大切です。 2.ロスになりそうな食品を販売するサービスを利用する 食品ロスが出そうなレストランなどの事業者と消費者をつなぐサービスが登場しています。食品ロスの危機にある食品をネット注文できるサイトや、お店に自分で引き取りに行くサービスまで、種類は様々。わかりやすいシステムで、お手頃な価格で購入できるのも嬉しいポイントです。 関連記事:気軽に食品ロス削減に貢献。お得で楽しいショッピングサイト10選 調理するときにできること 出典:pexels.com 1.野菜等の正しい保存法を知る 野菜はその野菜に合った方法で保存するだけで、断然長持ちします。根菜類は常温保存、葉野菜は冷蔵保存など、種類によって適切な温度があります。また、冷蔵庫の野菜室の中で立てて保存した方が良い、などそれぞれポイントがあります。適切な方法を選べば、鮮度を保ったままより長く野菜を使えて、ロスが少なくなります。https://www.honda.co.jp/tiller/yasai/preservation/ 2.「消費期限」と「賞味期限」をきちんと理解する 手前取りとも共通していますが、過度な鮮度志向は食品ロスに繋がります。消費期限は安全に食べられる期限であるのに対し、賞味期限はおいしさなどの品質が保たれる期限です。賞味期限の場合、期限を過ぎたからと言って安全ではなくなる、とは限らないのです。 3.フードロスゼロのレシピをチェック 余りがちな食材や、捨ててしまいがちな野菜の部位。そんな材料を使ったレシピが多く公開されています。食材の栄養をまるごといただけるレシピで、お料理のレパートリーも豊かになります。https://cookpad.com/kitchen/10421939https://www.kagome.co.jp/vegeday/eat/202101/10955/ レストラン選びでできること 出典:pexels.com 家庭で出る食品ロスよりも多いのが事業者から出る食品ロスです。外食するときにレストランを選ぶときも少し工夫すれば、食品ロス削減に貢献できます。お店と消費者とが一緒になって、社会全体で食品ロスを減らしていくことが大切です。レストランの食品ロス削減に貢献できるサービスや、食品ロスを出さない工夫をしているレストランがわかる渋谷区の取り組みをご紹介します。 Tabetta 日時や場所、ジャンルを選択すると最適なレストランを選び予約してくれるサイト。急なキャンセルなどが出たお店や食品のロスなどで困っているレストランを通常よりも30%以上安く利用できる。https://tabetta.jp/ シブラン三ツ星レストラン 渋谷区が、食品ロスの削減、地域環境の美化、ごみの削減に取り組む飲食店を「シブラン三ツ星レストラン」として認証している。食品ロスに関しては、食材の無駄が出ない仕入れの実施や食べ残しが出ないよう、ハーフサイズの提供をしているかなどの認証条件がある。https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/gomi/recycle/shiburan_meibo.html 食品ロス削減のために簡単にできることからはじめよう 出典:pexels.com 資源を無駄にして、廃棄が出ることで環境にも負担をかける食品ロスの問題。食べられるのに捨てられてしまう食品を少しでも減らすために、手前取りや野菜の保存方法を見直すなど、今日からできる簡単なことはたくさんあります。また、食品ロス削減に貢献しながら、お得に食材を購入できるサービスなども充実。どれも簡単なので、できるところからはじめてみませんか。

  • 大切なものだから人や環境を傷つけない選択を。国内のおすすめエシカルジュエリーブランド

    金や宝石などを使ったジュエリーは古くから人々を魅了し続けています。でもその美しいジュエリーの裏側で、人が傷つけられ自然が犠牲になっているとしたら…? ジュエリーは、生産する際の労働の搾取や環境破壊が大きな問題になっています。ずっと身に着けたいものだからこそ、生産過程が分かり、安心してつけられるものを選びたいですよね。 この記事では、エシカルジュエリーの魅力とおすすめのブランドをご紹介します! エシカルジュエリーとは? 出典:pexels.com エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味。つまり、エシカルジュエリーは、生産に携わる人や自然環境に十分に配慮されて作られているアクセサリーのことです。例えば生産する人の労働環境が守られていたり、生産過程における環境負荷が少ないなど、人や自然、動物を傷つけずに作られています。最近ではゴミになるはずだったものをアップサイクルして作られたアクセサリーも多く登場しています。 エシカルジュエリーのブランドでは、その生産の背景を明示して透明性を保っており、私たち消費者も安心して手に取ることができます。この記事では、国内でも増えてきているエシカルジュエリーブランドをご紹介します。 ジュエリーが抱えるたくさんの問題 出典:pexels.com 私たちの手に届くまで、ジュエリーはどのような過程をたどってきているのでしょうか。実は美しいジュエリーの裏側には、深刻な人権侵害や環境汚染などの問題がかくれているケースが珍しくありません。 例えば、金は採掘される際に、毒性の高い水銀が使われ、人々の健康や環境の大きな脅威になっています。鉱山の開発もたくさんの資源を必要とし、多くの二酸化炭素を排出するため、環境にとって優しいものとは言えません。また、ダイヤモンドはコンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)と呼ばれるものがあります。アフリカで内紛が起こっている地域では、ダイヤモンドが武器の調達資源になっていることがあるのです。劣悪な環境での低賃金労働や、児童労働も行われています。 これまでのジュエリーは、作る人の人権が守られていなかったり、環境汚染につながっているなど、多くの問題を抱えてきました。 エシカルジュエリーの特徴 出典:photo-ac.com そんなジュエリーの問題を解決すべく生まれたのが、人権や環境に配慮して作られているエシカルジュエリーです。エシカルジュエリーの特徴には以下のようなものがあります。 児童労働や強制労働などの労働搾取が行われていない 採掘する人の労働環境が危険なものではない フェアトレード(生産者と公正な取引がなされている) 生産者の自立支援が行われている リサイクルやアップサイクルされた素材を使用している 自然環境に配慮している この中のひとつではなく、ブランドによってはいくつか、もしくはすべてに配慮して作られています。 毎日身に着けるもの、また、婚約指輪や結婚指輪など一生大切にしたいものは、誰も傷つけないエシカルジュエリーを選ぶのがおすすめです。 おすすめエシカルジュエリーブランド 国内で購入できるおすすめのエシカルジュエリーブランドを集めました。ぜひジュエリーを買う際の参考にしてみてください。 HASUNA 日本のエシカルジュエリーの中でもトップの人気を誇るHASUNA。創業者がインドで劣悪な環境の鉱山とそこで働く人に衝撃を受け、立ち上がったブランドです。自らの足で環境などを確かめ、素材は産地と採掘工程がわかるものを使っています。金は働く人や環境に配慮されたエシカルゴールドを使用。また、各国で生産者の自立支援も行っています。オンラインショップの他、表参道には路面店があり、他の都市でも取り扱い店舗があるので、手に取って見ることができるのも嬉しいポイントです。https://hasuna.com/ この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 ERATHRISE エシカルジュエリーの人気ブランド。ジュエリーの多くの素材は発展途上国で産出されます。そこで働く人々とフェアに、伝統を受け継ぎながら、プロダクトを作り出しているEARTHRISE。ジュエリーに使われているのは、紛争の資金源とならないダイヤモンドや、フェアトレードのゴールド・シルバーなど。人や環境に配慮された素材と、それを加工する職人の高い技術が、高品質のジュエリーを生み出しています。表参道に路面店があり、各地でポップアップも開催しています。https://earthrise-j.com/ この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 MOTHERHOUSE 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもとバングラディッシュからスタートしたMOTHERHOUSE。今では関東に20店舗以上、近畿に8店舗、その他の地域や海外にも店舗が増え続けている人気バッグブランドです。もともとバングラディッシュで作られるバッグの販売から始まりましたが、現在はスリランカやミャンマー、ネパールのジュエリーも販売しています。石の個性を大切に、現地の職人の技術を生かして作られるネックレスやピアスは、ネーミングから強いメッセージ性を感じるものばかり。給与水準の高さや昇給制度など、現地ではトップクラスで働く環境が整備されています。https://www.mother-house.jp/ この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 GYPPHY どんなファッションやシーンにも合う、ファッショナブルなジュエリーが楽しめるエシカルジュエリーブランド。GYPPHYでダイヤモンドの代わりに使われるのは、人の手によって合成された宝石であるモアサナイト。モアサナイトは、ダイヤモンドにまさると言われる輝きと耐久性が大きな特徴です。鉱山開発もせず紛争の資金源にもならないモアサナイトは、まさにエシカル。最近は世界でファッション感度の高い人たちからの支持を集めている、新しい時代のジュエリーです。また、ゴールドやシルバーは、採掘の際に環境負荷を低減し、働く人の環境など、厳しく基準を設け、それをクリアしたものを使用。手に入れやすい価格も人気の理由の一つです。https://gypphy-shop.com/ この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 sobolon 環境に配慮した素材を使ったりアップサイクルされた素材を使うのも、エシカルジュエリーの特徴のひとつ。sobolonでは、海岸に漂着したプラスチックを使用してアクセサリーを作っています。クリエイターが海に出向き、海洋プラスチックを回収。その海洋プラスチックは、ひとつひとつデザインされ、思いのこもった加工を経て、かわいいアートのようなアクセサリーへと変身します。ひとつとして同じものがないアクセサリーは、身に着けるたびに海の大切さを思い出させてくれます。https://sobolon3695.thebase.in/ この投稿をInstagramで見る 海洋プラスチックジュエリーsobolon(そぼろん)(@sobolon3695)がシェアした投稿 大切なジュエリーだから他の人や環境を傷つけないエシカルなものを 出典:pexels.com 今回は、おすすめのエシカルジュエリーブランドをご紹介しました。毎日身に着けるもの、特別な日にプレゼントしたいもの、一生大切にしたいものだから、背景を知り、きちんと選びたいもの。美しいと思って購入しても、その裏で環境や人を傷つけていたら悲しいですよね。 私たち一人ひとりが、ジュエリーの素材がどこからきてどのように作られているかを知り、人にとっても自然にとっても優しいエシカルジュエリーを選ぶこと。そのことが、ジュエリーの裏にひそむ問題の解決への一歩となっていくのではないでしょうか。

  • 環境に優しいおいしさ。東京でプラントベースを楽しめるレストラン&カフェを紹介

    お肉などの畜産物に代わり、環境負荷の少ない食品として関心を集めるプラントベースをご存知でしょうか。プラントベースとは、植物由来の原料を使用した食品のこと。代表的な例を挙げると、大豆ミートなどの代替肉やアーモンドミルクなどの植物性ミルクが挙げられます。 健康意識の高まりからだけではなく、環境のことを考えて、欧米諸国や日本ではプラントベースに注目が集まっています。以前からベジタリアンなどの一部の人には食べられていましたが、ここ数年で急激に認知され、市場が年々大きくなっています。また味やクオリティもどんどん進化を見せるプラントベース。 この記事では、東京でプラントベースを楽しめるレストランやカフェをご紹介します。 プラントベースが注目される理由 出典:pexels.com プラントベースにはいくつか注目される理由があります。なかには健康増進のために取り入れている人もいますが、関心を集める大きな理由は環境への配慮から。 今世界では、増え続ける人口に肉などのタンパク質の生産が追いつかなくなってきています。このまま人口にあわせて肉を増産していけば、水不足や水質汚染に繋がり、地球温暖化にも拍車をかけると言われています。また、飼料となる穀物の増産も、農地を確保するために森林伐採を行う必要が出てくるなど、環境に大きな負荷をかけることに。 そこでお肉や動物性の食品にかわって、タンパク質の供給源として代替肉などのプラントベースが選ばれているのです。 関連記事:新たな食の選択肢、プラントベースとは?進化した代替肉や植物性ミルクが続々登場 東京都内でプラントベースが食べられるレストラン ここ数年で、東京都内にもプラントベースが楽しめるお店がどんどん増えています。プラントベースと言っても味気ないものばかりではなく、ファストフードのように手軽なものややスイーツがいただけるところ、お酒が飲めるところなど、普通のレストランと同じように、しっかりと満足感を味わえます。時間帯や一緒に訪れる人に合わせて、プラントベースのレストランを選んでみては。 ベジタリアンブッチャー(池袋) ヨーロッパ各国にも代替肉を卸すオランダの大手代替肉メーカーが手掛ける、プラントミートのお店。メニューは全品プラントベースで、前菜からサラダ、メイン、パスタ、デザートなどを楽しめるコースも提供。量り売りでプラントベースミートの購入も可能です。また、フードロス削減のためにお持ち帰りを推奨したり、余った食材を提供するフードシェアリングなど新しいアイディアを導入する、最先端のサステナブルレストラン。 https://www.thevegetarian-butcher-jap.com/store/ この投稿をInstagramで見る The Vegetarian Butcher🇯🇵(@thevegetarianbutcher_jp)がシェアした投稿 PLANT BASED TOKYO(代々木) 環境負荷の低い大豆のおいしさを最大限に引き出した料理が楽しめるカフェ。最新技術によって作られた大豆ミートやチーズのような豆乳クリームなど、驚きの大豆料理が楽しめます。メニューは肉・魚介類・卵・乳製品等の動物性食材は一切不使用。主菜と副菜がセットになったプレートは野菜たっぷりで見た目にも鮮やか。テイクアウトのメニューもあり。 https://www.plantbasedtokyo.jp/ この投稿をInstagramで見る プラントベースド東京(@plantbased.tokyo)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る プラントベースド東京(@plantbased.tokyo)がシェアした投稿 2foods(八重洲、銀座、渋谷、六本木、麻布、人形町) 「ヘルシーなジャンクフード」が楽しめるプラントベースレストラン。メニューは、ドーナツから丼もの、麺類、カレー、サラダと実に豊富。プラントベースエッグを使用したオムライスは、定番メニューのひとつ。コールドプレスジュースやコーヒーなどドリンク類も充実し、子ども向けのメニューがあるのも特徴です。メニューは動物性の原料を使っていないのはもちろん、白砂糖や合成着色料なども不使用。グルテンフリーのものもあり、どんな人でも使いやすいカフェ。 関連記事:プラントベースの2foods。ヘルシージャンクフードの気になるお味は? https://2foods.jp/ この投稿をInstagramで見る 2foods(@2foods.official)がシェアした投稿 CITYSHOP(渋谷、東京駅) 野菜をふんだんに使ったメニューがいただけるCITYSHOP。メインを選べるデリプレートのほか、サラダやスイーツも充実しています。ソイミートパティを使ったヴィーガンバーガーなどミートフリーのメニューもあります。プラントベースに特化したカフェではないので、お肉やお魚を使ったメニューもあり、その日の気分で選べるのが嬉しいポイントです。 https://cityshop.flavorworks.co.jp/ この投稿をInstagramで見る cityshop_food(@cityshop_food)がシェアした投稿 AIN SOPH.(銀座、池袋、新宿) 肉、魚、乳製品、卵など動物性食材を一切使っていない料理が楽しめるカフェ、AIN SOPH.(アインソフ)。野菜本来の味が楽しめ、お肉が入っていないことを忘れてしまうくらい、満足感の高いお料理がいただけます。乳製品や卵不使用のヴィーガンスイーツもクオリティが高く、中には植物性チーズを使ったメニューも。店舗によって違うメニューがあるので、それぞれの店舗に訪れる楽しみがあります。 https://www.ain-soph.jp/ この投稿をInstagramで見る AIN SOPH. (アインソフ) 公式|ヴィーガン(@ainsoph_jp)がシェアした投稿 菜道(自由が丘) 「美食同源」をモットーにした、フルヴィーガンの和食がいただけるレストラン。肉、魚、牛乳、砂糖、化学調味料などは使っていないのに、質素な精進料理のようなものではなく、麺類や丼もの、居酒屋メニューなどのジャンクなお料理がいただけます。ヴィーガンのお酒も揃えているので、ヘルシーに飲みたいときに。ランチからカフェタイム、ディナータイムまで時間帯問わず、プラントベースの食事とスイーツが楽しめます。 https://saido.tokyo/ この投稿をInstagramで見る 菜道(@saido_tokyo)がシェアした投稿 Ballon TOKYO(中目黒) サステナブルなファストフードを掲げるファラフェルスタンド。ファラフェルとは、中東で食べられているコロッケのような料理で、ひよこ豆をすりつぶしたものを揚げたもの。こちらではファラフェルと野菜をピタパンにサンドしたファラフェルサンドをいただけます。他にも卵、乳製品、砂糖を使わず100%植物性の原料で作られたソフトクリームもおすすめ。しっかりとした食べ応えは、サンドイッチもソフトクリームも植物性の原料しか使われていないことが信じられないほど。気軽に立ち寄れるのも嬉しいポイントです。 https://www.ballontokyo.com/ この投稿をInstagramで見る Ballon / バロン(@ballontokyo)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る Ballon / バロン(@ballontokyo)がシェアした投稿 Terra Burger & Bowl(代官山) 今話題のブッダボウルが食べられるお店。野菜を中心にフルーツやきのこ、穀物やナッツなどをバランスよく盛り付けたブッダボウルは、色鮮やかで、とてもヘルシー。しっかり野菜が摂れて満足感の高い一皿です。ヴィーガンバーガーもお店の人気メニュー。肉厚で肉汁さえも感じられるパティは、もちろん100%プラントベース。バンズはグルテンフリーのものに変更可能です。 https://www.terrabb.com/ この投稿をInstagramで見る Terra Burger & Bowl(@terraburgerandbowl)がシェアした投稿 最先端プラントベースレストランを外食の選択肢に 出典:pexels.com 東京都内には、プラントベースのカフェやレストランが次々とオープンしています。最先端の技術で進化し続けているプラントベースフードは、今までのプラントベースの常識を覆すかもしれません。おいしいのにヘルシーで、環境負荷も低い。レストランを選ぶ際は、健康と持続可能な食のために、プラントベースのレストランを選んでみてはいかがでしょうか。

  • 新たな食の選択肢、プラントベースとは?進化した代替肉や植物性ミルクが続々登場

    今、代替肉などの食品がベジタリアンなど一部の人にとどまらず、大きな広まりを見せています。動物性の原料をなるべく減らし、その代わりに植物性の原料へとシフトしていくことには様々なメリットがあります。健康の向上だけでなく、環境問題や食糧危機の解決方法になるとされている「プラントベース」とはどういうものか、私たちや地球環境にとってどんなメリットがあるのかをご紹介します。 プラントベースとは? 出典:pexels.com プラントベースとは、プラント(=植物)がベース(=基本)になっているという意味で、動物由来の原料を完全に使用しない、または極力使用しない食事のことです。ベジタリアンやビーガンと呼ばれる菜食主義の食事と違い、すべての食事で動物性の食品を摂らないというわけではありません。また、動物愛護の観点からベジタリアンやビーガンになる人も多い中、プラントベースは環境保護などを目的にしているため、それらとは区別されています。 代表的なプラントベースフード 植物性の原料が使われるプラントベースの食品のことは、「プラントベースフード」と呼ばれています。私たちが身近に購入できたり、レストランで選べるプラントベースフードにはどんなものがあるのでしょうか。代表的な例をご紹介します。 代替肉 出典:pexels.com 大豆ミートやフェイクミート、プラントベースミートとも呼ばれる代替肉は、プラントベースフードの代表的な食品です。大豆やエンドウ豆を使用し、お肉そっくりの味や食感に作られた代替肉は、ここ数年で市場が急拡大し、クオリティがどんどん上がってきています。スーパーに並ぶのは、ブロック状になっているものやミンチ状になっているもの、さらには、ハムやハンバーグ、ソーセージ、肉団子、からあげ、ナゲット、メンチカツ、サラダチキンタイプなど調理されている加工品の種類も豊富です。 プラントベースミルク 出典:pexels.com 牛乳にかわる代替ミルクとして人気が高まっているのが、豆類やナッツなどを原料にしたプラントベースミルク。豆乳をはじめ、アーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルクなどが有名ですが、カシューナッツミルク、ピーナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、マカダミアミルク、くるみミルクなど、種類が豊富です。料理に使えるものや、お砂糖などで飲みやすく加工されているものもあります。 ※ミルクによっては環境に高い負荷をかけているものがあります。生産方法を確認することが大切です。 植物性チーズ 生乳が原料のチーズですが、豆乳や豆腐などの大豆やココナッツオイルを原料に、チーズに似せて作られたチーズ風食品が出てきています。大きなブロックになっているものや、シュレッドタイプ、スライスになっているものもあり、料理によって使い分けがしやすくなっています。味だけでなく、見かけも生乳から作られたチーズとそん色ありません。 植物性ヨーグルト チーズと同じく生乳が使われるヨーグルト。このヨーグルトも植物性の原料が使われ、植物性のヨーグルトとして種類を増やしています。大豆やアーモンドミルク、ココナッツなどから作られており、生乳からできるヨーグルトの様に、とろっとした食感が楽しめます。さらには飲むタイプも発売されています。 植物性バター 植物性のチーズとヨーグルトにくわえ、植物性のバターも登場しています。ココナッツオイルなどが使われており、マーガリンよりも濃厚で硬さなども本来のバターに寄せて作られています。そのため、パンに塗るだけでなく、料理やお菓子作りにも適しています。 外食産業や食品メーカーが注目するプラントベース 出典:pexels.com 2020年度、植物性の食材を使った代替食品の市場はおよそ246億円。2010年度の48億円と比べると、10年間で約5倍以上の拡大を見せています。消費者の関心が年々高まっており、外食産業や食品メーカーが注目している食品であることが伺えます。 大手企業も参入を始めており、モスバーガー、ロッテリアなどのハンバーガーチェーンやファミリーレストランではソイミートなどが使われたプラントベースのメニューが提供されています。 伊藤ハムやセブンプレミアム、トップバリュなどでは、代替肉を使用した加工品が充実。ハンバーグやハムなどたくさんの種類が開発されています。 また、スターバックスなど大手のコーヒーショップでは、牛乳の代わりとして、ソイミルクやアーモンドミルク、オーツミルクに変更することができます。 関連記事:環境に優しいおいしさ。東京でプラントベースを楽しめるレストラン&カフェを紹介 海外のプラントベース事情 プラントベースは海外でも消費者の支持を集めています。「フレキシタリアン」とは、菜食主義のビーガンやベジタリアンに対して、準菜食主義者のこと。環境への配慮や、アニマルウェルフェアの観点から、このフレキシタリアンが欧米では増加しています。 関連記事:動物の権利も尊重する。アニマルウェルフェアとは アメリカでは、2021年のプラントベースの市場は70億ドルにのぼり、前年からの1年で27%も増加。味や品質もどんどん進化し、企業同士の競争も激しくなっています。[1] また、EUでは欧州委員会が進める「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略で植物性の食事への移行を支持しており、アメリカ同様、プラントベースの市場は拡大しています。 世界全体で見ると、2019年に食肉産業における代替肉食品は1%でしたが、2029年には10%にまで増えると予測されています。[2] あと数年で訪れる「タンパク質危機」 レストランだけでなく、スーパーでも様々な種類が買えるようになってきているプラントベースフード。プラントベースが注目されるのには、いくつか理由があります。 急増の一途をたどる世界の人口。鶏や豚、牛など、今の畜産によるタンパク質だけでは、その人口を支えることができず、早ければ2025~2030年に需要と供給のバランスが崩れると言われています。タンパク質の需要と供給が逆転する現象は、「タンパク質危機」と呼ばれ、今のタンパク質の量では人口をまかないきれなくなるのです。それまでに十分な量のタンパク質を確保することが大きな課題になっています。 牛肉1kgに対して11kgもの穀物が必要に 出典:unsplash.com しかし、タンパク質危機回避のために、単純に畜産物の量を増やしていけばいいかというと、そうではありません。増産のためにはより多くの水と土地を使用します。 さらに、飼料となる穀物も増産する必要があります。お肉1kgを生産するのに必要な飼料をとうもろこしで換算すると、牛肉は11kg、豚肉では6kg、鶏肉では4kgと言われています。穀物を育てるのに大量の水と広い土地が必要になり、それは水不足や森林伐採の問題にも繋がっていくのです。[3] また、同量のタンパク質を摂るとき、大豆1に対して、牛に与える大豆などの飼料はその32倍必要になると言われています。お肉をプラントベースフードに置き換えることは、世界が直面するタンパク質危機に向けた一つの解決策と言えるでしょう。 畜産がもたらす環境への負荷 出典:pexels.com 土地や水を多く使用するという問題の他にも、畜産がもたらす環境への負荷は非常に大きいとされています。 CO2の約25倍の温室効果があるとされるメタンガス。牛のげっぷはそのメタンガスを多く含んでいます。CO2に換算すると、家畜のげっぷは全世界で発生している温室効果ガスの4%にも上るほど大きな割合を占めており、地球温暖化の理由のひとつになっていると言われています。[4] また排せつ物が増えることも問題の一つです。家畜の排せつ物は河川や地下水へ流れ込むことで水質汚染を招くとされています。 持続可能な食のために選びたいプラントベース 出典:pexels.com 健康のためや動物愛護のためだけでなく、環境のためにも選びたいプラントベースフード。日本は昔から大豆になじみが深く、調理方法もたくさんあるので、植物性の食品を選ぶのにも困りません。そして今さらに多くのプラントベースフードが登場しています。完全に置き換えることは難しくても、一部お肉に置き換えて利用していくことが持続可能な食に繋がっていくのではないでしょうか。 【参考】[1] Good Food Institute https://gfi.org/marketresearch/[2] ジェトロHP https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/806084bfd0d121f7.html[3] 農林水産省HP https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html[4] 農研機構HP https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nilgs/144910.html

  • 未来に残したい世界の絶景写真「オーロラ/イエローナイフ」

    今回が二回目の連載となる「未来に残したい世界の絶景写真」。 この連載では世界各国を回る旅人やツアーコンダクターが旅先で出会った景色をお届けします。世界から届く絶景写真から、人と自然が共存する豊かな社会の在り方を考えてみませんか。今回は、カナダのイエローナイフに出現するオーロラです。イエローナイフは、カナダ北西部ノースウェスト準州の州都。オーロラベルト上にあり、晴天率が高いことから、オーロラを鑑賞できる確率が高いことで有名です。“オーロラのメッカ”との呼び声も高く、その神秘的な光景を求めて、世界中から観光客が集まります。 オーロラ鑑賞に適している冬はマイナス30度まで下がる極寒の世界で、気が付けばまつ毛が凍っていることもしばしば。しかし、ひとたび空いっぱいに光のカーテンが出現すると、その美しさから、寒さを忘れるほどの感動が押し寄せます。秋には湖に写る逆さオーロラを望めるチャンスもあります。太陽と地球が見せてくれる光の天体ショー。私たちは奇跡的な条件の上に生かされているということを感じずにはいられません。未来に向けて守っていきたい地球の絶景の一つです。 ※画像をクリックすると拡大します photo by @tsugraphy_319

  • 世界幸福度ランキング2023。6年連続1位のフィンランドは日本よりも幸せ?

    2023年版の世界幸福度ランキングが発表されました。トップ20の国と日本のランキングを紹介するとともに、世界幸福度ランキングの概要やランキングの決まり方について説明していきます。 世界幸福度ランキングとは? 世界幸福度ランキングとは国連の関連団体であるSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が2012年から発行している「World Hapiness Report」に記載されているランキングです。同年3月20日に宣言された「国際幸福デー」に合わせて毎年ランキングが発表されています。背景に2011年の国連総会で、幸せの国としても知られるブータンのティンレイ首相(当時)が「幸福度を国際社会全体の開発目標に据えよう」と問題提起し、全会一致で採択されたことがあります。世界的な金融危機や環境破壊の経験を踏まえ、GDPなどの経済指標だけでは豊かさや幸福度を測れないことから、世界的に幸福度を重視するような機運が高まっています。 ランキングはどうやって決まる? 出典:unsplash.com 世界幸福度ランキングはどのように決まるのでしょうか。幸福度の調査はカントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる方法を用いた世論調査によって行われます。具体的には、可能な限り最高の人生を10、最悪の人生を0とし、回答者に自分の人生が0から10のどの段階にあるかを評価してもらいます。得られた回答の過去3年間の平均値をスコアとし、ランク付けをしています。 また、報告書においては得られたスコアがどのような要因で説明できるか、統計学的な観点から分析しています。説明に使われる要因は以下の6つの項目です。 ・一人当たり国内総生産(GDP)・社会的支援(社会保障制度など)・健康寿命・人生選択の自由度・他人への寛容さ(寄付活動など)・腐敗認識度(国・政治への信頼) ここで注意が必要なのが、6つの項目は結果を後から分析するために用いられるものであって、幸福度のスコアやランキングには影響していないということです。World Hapiness Reportのホームページには以下の記述があります。 “Our happiness rankings are not based on any index of these six factors – the scores are instead based on individuals’ own assessments of their lives, in particular, their answers to the single-item Cantril ladder life-evaluation question”(我々の幸福度ランキングは6つの指標に基づきません。代わりに、スコアは個人の生活の評価、特に単一項目のカントリルラダー生活評価質問への回答に基づいています) https://worldhappiness.report/about/ ランキングはあくまでも、個人の主観的な生活評価に基づいているのです。 最新の世界幸福度ランキング 3月20日に最新の世界幸福度ランキングが発表されました。 World Happiness Report 2023 より再編 図には分析された6つの項目を色別で記載しています。6つの項目とは前述したとおりですが、紺色の「基準値 + 残差」の「基準値」は、全ての国に対して基準となる共通の値を与え、「残差」は6つの項目で分析しきれない部分を表すことを目的として導入されています。 上位3国は昨年と変わらない結果となりました。また、日本は47位で、昨年よりも順位があがっています。 ここからは、上位3国において、国民の幸福度の高さの所以はどこにあるのかと日本の順位が低い理由を考えていきます。 世界幸福度ランキング1位 <フィンランド> 出典:unsplash.com 6年連続で幸福度ランキング1位となったフィンランド。透明性の高い政治で国民からの信頼が厚いと言われており、社会保障制度が充実していることで知られています。また、フィンランドでは、教育や子育てにも力を入れています。 教育の質の高さ・学力を競うのではなく、自分のために勉強するという価値観・生徒一人ひとりの状況を把握できるよう少人数教育を実施・教員は修士号取得など、厳しい条件をクリアしている・子どもの頃から自然の中で身体を動かすことを楽しめる環境が整っている 子育て環境・就学前教育から高等教育まで学費や給食費が無料・親の就労の有無にかかわらず、すべての子どもが保育園に入ることができる・16時ごろまでに仕事を終わらせる文化があり、残業はほとんどしない・妊娠期から就学するまで「ネウボラ制度」により家庭をサポートする担当者がつく・男性が育休を取得しやすい 世界幸福度ランキング2位 <デンマーク> 出典:pixabay.com デンマークは幸福度の高さと国際競争力を両立している国として知られています。社会保険料の代わりに高い税金により手厚い社会保障制度が整っていることが特徴です。その中でも、特に注目されている高齢者福祉について詳しく見ていきましょう。 高齢者福祉・年金の財源は税金のため、未加入や無年金にはならない・充実した年金制度で、生命保険に入る必要がない・自立を促す在宅介護が中心で、手厚いケアにより一人でも安心して暮らすことができる・すべての地方自治体が介護サービスを提供しており、無料で利用できる 世界幸福度ランキング3位 <アイスランド> 出典:unsplash.com アイスランドは、国土面積は北海道と四国を合わせたほどの小国ながら、1人当たりのGDPが高水準である裕福な国です。 社会保障が充実していることから、子どもからお年寄りまで安心して暮らせる環境が整っている上に、ジェンダー平等を推進している点も特徴的です。 ジェンダー平等・男女の同一労働・同一賃金を義務付ける法律を世界で初めて制定・クオータ制により、企業役員や議員などはメンバーの40%以上を女性とすることが定められている・育児休暇期間は、母親が6か月、父親が6か月に加え、どちらがとるか自由に決められる期間が6週間ある 日本の世界幸福度ランキング - 順位が低い理由は? 2023年の世界幸福度ランキングで日本は47位となり、昨年の54位から順位を上げました。また、スコアも昨年より上がっています。6つの分析項目でランキング1位のフィンランドと比較すると、人生選択の自由度、他人への寛容度、腐敗認識度が低いようです。 しかし、何よりも差が大きいのは「残差」の部分です。宗教や文化の違いから東アジアの人はカントリルラダーを控えめに回答する傾向にあることが知られています。残差の部分にその結果が表れ、ランキングに影響していると考えられます。 日本の幸福度を高めるためには? 実は6つの項目による分析結果だけをみると日本は20位のリトアニアよりもスコアが高いです。 主観的な回答に基づいて決まる世界幸福度ランキングは分析しきれない部分が大きく、高順位の国を見て日本の幸福度が低いと考えるのは安直です。幸福度を高めるために大切なことは順位を上げることではなく、分析結果から学ぶことだと言えます。 もし比較するのであれば、順位を見るのではなく、分析結果から日本の良いところや日本に足りないものを考える、過去の日本のスコアと比較して今の日本がどうかを評価する、などが良いでしょう。 世界幸福度ランキングの楽しみ方 出典:pexels.com 一見すると政治への信頼度や社会保障制度の充実度など、ランキング上位国は理想郷そのものに見えますが、その全てが完璧な訳ではありません。例えば、ランキング1位のフィンランドでは日本同様少子化の問題を抱えていますし、他にも、人道的な理由から多くの難民を受け入れたことが、社会保障制度の負担になるという声も上がっています。どれほど幸福度が高い国でも問題は抱えているものです。それでも多くのフィンランド国民は自分たちのことを幸せだと思っているということが幸福度ランキングからはわかります。 GDPや社会の制度そのものではなく「主観的に幸せだと思えること」が大切なことであり、幸福度ランキングが私たちに伝えてくれているものです。どのような宗教や文化、価値観を持つ国の人でも、自信を持って自分は幸せだと言える世界であってほしいですね。

  • 悲劇から10年。エシカルファッションの原点、ラナ・プラザ崩壊事故とは

    グローバル化が進み、原料や生産コストを抑えられるようになったことで、私たちは安く服を手に入れられるようになりました。しかしその一方で、衣服の大量生産・大量廃棄による環境への負荷や、生産者の労働環境などが問題になっているのも事実です。 今、様々なブランドで、人権や環境を尊重したファッションに移行する動きが高まっています。この記事では、世界がファッションの在り方や楽しみ方を考え直し、エシカルファッションということばが広まるきっかけになった「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」について見ていきます。 人や動物、環境に配慮する「エシカルファッション時代」の到来 出典:unsplash.com エシカルファッションとは、素材の調達から販売に至るまで、生産・販売に関わる人や動物、自然環境を尊重し、配慮されて作られたファッションのことです。 労働者に適切な支払いを行う、労働環境を整える、動物性の毛皮などを使用しない、なるべく水を使わずCO2の排出を最低限に抑えるなどといった取り組みを行っているものを指します。環境に配慮しているという点では、持続可能なアパレルの生産を目指すサステナブルファッションと被るところも多くあります。今でこそ企業や消費者のファッションに対する向き合い方は少しずつ変わってきましたが、グローバル化が進み、安価な労働力を海外に求めるようになってからは、生産の背景を透明化することは難しいことでした。私たちが着ている洋服はどのような場所でどのように作られたものかを知らずに購入するケースが多かったのではないでしょうか。そんな中、企業や消費者が、生産者の人権を尊重するファッションについて考えるようになった大きな事故があります。それが「ラナ・プラザ崩壊事故(ダッカ近郊ビル崩落事故)」です。 世界に大きな衝撃を与えた「ラナ・プラザ崩壊事故」 出典:unsplash.com ラナ・プラザ崩壊事故、別名ダッカ近郊ビル崩落事故は、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカから北西約20kmにあるシャバールで起きたビルの崩壊事故です。縫製工場、銀行、商店などが入っていた8階建ての商業ビル「ラナ・プラザ」の崩落により、死者は1134人、負傷者は2500人以上にのぼりました。犠牲者の多くが縫製工場で働いていた若い女性たちであったとされています。ビルは以前から耐震性を無視した違法な増築を繰り返し、事故の前日にも、ひび割れが発見されましたが、建物の所有者はその指摘を無視していました。その杜撰な安全管理の末、ビル内に設置された4基の大型発電機の振動や数千台のミシンの振動が引き金となり、崩落したとされています。 事故後ラナ・プラザの縫製工場は、粗末な安全管理が明るみになっただけではなく、低賃金で長時間労働が行われている「スウェットショップ(搾取工場)」であり、労働組合を作ることを認められていなかった等の不平等な労働環境も広く知れ渡ることになりました。このビルの崩壊により、消費者やファッション業界が求めてきた安価な洋服の先にあった、劣悪な労働環境が浮き彫りとなったのです。 崩壊事故を受けた世界の反応 ラナ・プラザには、世界でも有名なアパレルブランドの下請けを工場が入っていました。ベネトンや、ウォルマート、マンゴーなど、日本でも馴染みのある世界的なブランドの下請け工場もラナ・プラザにありました。各ブランド・メーカーはこの労働環境について知らなかったと発表していますが、事故後これらのブランドには多くの批判的な意見が寄せられています。 崩落事故から、約1か月後には「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が作られ、欧州を主としたブランドや小売企業とバングラデシュの労働組合等との間で、その協定の締結がなされるようになりました。この協定にはユニクロやH&M など多数の主要アパレルが署名しています。輸出先の国や地域によってその対応は変わりますが、他にも、労働法の順守、従業員への給与支払いおよび休日の付与などをチェックする機能なども新たに作られるようになり、バングラデシュの縫製工場を取り巻く環境は少しずつ変化しつつありますが、まだまだ課題が残っているのが現状です。 ファッションレボリューションデーの設立 出典:unsplash.com 事故後、市民の間でもムーブメントが起きています。ラナ・プラザ崩壊事故を受けて、イギリスではファッションレボリューションが設立されました。環境や人権に配慮したファッション産業を広めるキャンペーンとして、世界中に広まっています。ファッションレボリューションではラナ・プラザ崩壊事故に合わせて、毎年4月24日を「ファッションレボリューションデー」と制定。その前後1週間のファッションレボリューションウィークは、世界中で様々なイベントが行われます。2022年、日本では「服を長く愛するために」をテーマに多方面から服の“お直し”をするクリエーターや団体による展示が行われました。 複雑なサプライチェーンとグローバルサウス・グローバルノース グローバル化が進み、あらゆる素材を調達し生産するファッションは、サプライチェーンの透明化が非常に難しいとされています。しかし、ファストファッションを生み出す縫製工場の多くは、新興国にあるのが事実です。残念ながら、安価な労働力を求められる生産地の新興国では、現地の労働環境に光が当たることは、今まであまりありませんでした。アパレル産業に関わらず、ヨーロッパやアメリカ、日本といったグローバルノースと呼ばれる国々がグローバル化の恩恵を受ける一方で、バングラデシュをはじめとしたグローバルサウスと呼ばれる国々にその負担がかかっていることがあるのです。このことをグローバルノースに住む私たちは知っておく必要があります。 関連記事:日本に住むなら絶対に知っておきたい、グローバルサウス・グローバルノースとは ラナ・プラザ崩壊事故への理解が深まるドキュメンタリー映画 最後に、ラナ・プラザ崩壊事故やバングラデシュの下請け縫製工場について描かれた映画をご紹介します。 『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』 ラナ・プラザ崩壊事故をきっかけに作られたファッション業界の裏側に迫るドキュメンタリー。服の価格が低下する一方、人や環境が支払う代償が劇的に上昇してきた現代で、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起した話題作。 『メイド・イン・バングラデシュ』 10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話をもとに作られた、バングラデシュの縫製工場で働く女性たちが主人公の物語。バングラデシュ・ダッカ生まれの女性監督ルバイヤット・ホセインがメガホンをとった。 悲劇を繰り返さないために、私たちにできること 出典:unsplash.com 買い物をするということは投票することと同じことです。買い物をするときには、その洋服がどのように作られているのか背景を知ろうとすることや、グローバルサウスの国々でどんなことが起きているのかを知ること。そしてより良い選択を行っていくことが、ラナ・プラザのような事故を起こさないために、私たち消費者ができるアクションです。

  • 「相手の目線に立つことが強い社会への第一歩」福祉団体ビーンズが目指すもの

    エシカルやサステナブルなライフワークを持つ人へのインタビューを通じて、“本当の豊かさ”を見つめ直すrootusの本企画。今回は、障害のあるスタッフが活躍するロースタリーカフェ併設の福祉施設「ソーシャルグッドロースターズ」などを手掛け、多方面で障がい者の支援を行ってきた一般社団法人ビーンズの代表坂野拓海さんをお迎えします。坂野さんの言葉には、「誰一人として取り残さない」社会の本質とその実現に向けたヒントが散りばめられています。 坂野拓海さんプロフィール 経営コンサルタントとして働いた後、“密に個人と向き合う仕事がしたい”と障がい者専門の就職支援会社に入社。そこでの仕事や様々なボランティア経験を積むうちに、知的障がいや精神障がいなど目に見えづらい障がいがある方への支援の必要性を感じ、ビーンズを設立。2018年には就労支援施設であるコーヒーショップ「ソーシャルグッドロースターズ」をオープン。2022年には、クラフトビールの醸造所「方南ローカルグッドブリュワーズ」をオープンし、これまでにない形で施設利用者と社会が繋がれるソーシャルグッドな場所を作り出している。 時間をかけながら、やりがいある現場を作っていく ――rootusは以前「ソーシャルグッドロースターズ」を取材しましたが、坂野さんが代表を務めるビーンズでは、障がい者の方を中心に支援されていますよね。 「私たちは障がいのあるなしに関わらず、何かしらの困難を抱えている人のサポートをしたいと思っています。身体障がいや知的障がいなど、障がいと一言に言っても様々な障がいがありますが、障がいの中には、虐待や社会生活の中で生じてしまったものも少なからずあるのです。そのような困難の中にいる方の立場に立って、総合的にサポートしていく場を作っていこうと動いています。 ここ数年力を入れてきた「ソーシャルグッドロースターズ」や「方南ローカルグッドブリュワーズ」では、障がい者が、従来のような単純作業ではなく、一人ひとりがスキルを身に着け、生き生きと働けるような就労支援施設を目指しています。 障がいも困難も人それぞれですが、今の時代に合った選択肢をできるだけ多く増やし、個人に合った支援を提供していきたいと思っています。」 本格的なスペシャリティコーヒーを提供する千代田区のソーシャルグッドロースターズ ――多角的に支援事業をされていますが、活動や運営の中で大切にしていることはありますか。 「“場を作る人を育てること”というのは大切にしています。代表として、意見を言いたくなるときもあるのですが、それだけでは現場が育たず、施設利用者やスタッフも委縮してしまいます。時間がかかることがほとんどですが、みんなで意見を出し合って、みんなで課題を解決していく。それを繰り返していくうちに、現場がどんどんブラッシュアップされていき、ノウハウがたまっていく。そんな場所であったら、全員が生き生きとやりがいを持って働けるようになるのだと、ソーシャルグッドロースターズの運営を通し、身を持って感じています。」 対等に生きていくために、一緒に楽しみを見つけ成長していく現場を ――福祉に携わる方の働きかたの見直しが求められている中で、職員にとってもビーンズの運営方針は革新的なものですよね。 「長年福祉の現場に携わってきましたが、障がい者を支援する仕事は、肉体的にも精神的にもきついことが多く、正直、心から楽しさを感じ、喜びを持って働こうという雰囲気ではありませんでした。それは、慢性的な人手不足や人材が育たないことからも顕著ですね。でも、障がい者の方を支援するということは、お世話をすることとイコールではないと思うんです。一緒にどう楽しみながら、一緒にどう成長していけるか、ともに対等に生きていくためには、視点の転換が大切だと感じます。」 方南ローカルグッドブリュワーズのクラフトビールは商店街の新名物に 誰一人取り残されないために必要なのは、批判ではなく、困っている人と同じ目線に立つこと ――近年はSDGsの広がりもあり、「誰一人取り残さない社会」というキーワードが注目されるようになっていますよね。福祉を取り巻く環境にも変化は見られますか。 「変化はかなり感じますね。日本を含む先進国では中間層が薄くなってきているとよく言われますが、取り残される側になる人も増えてきていると感じます。そのため、みんなが取り残される当事者になる可能性が増し、取り残されることへの危機感も持っているのではないかと思います。私たちのような活動に目を向けていただける機会も増えました。ともに生きていける社会の実現に向けて、一人ひとりの意識が変わってきている証拠なのではないでしょうか。 そんな社会で大切なのは、分断や批判ではなく、困っている人と同じ目線に立って、必要な支え方を模索すること、支援の選択肢を増やすことではないかと思います。幸運なことに、日本は生活困窮者などに向けての行政の支援は充実しており、システムは十分に機能しています。そこに困っている人の気持ちに寄り添う人々や、団体が増えていけば、さらに助け合いの輪が広がっていくのではないでしょうか。」 ――これまでにない方法で福祉のあり方を追求してきたビーンズですが、これからの展望を教えてください。 「ソーシャルグッドロースターズや方南ローカルグッドブリュワーズは、障がい者など生活が困難な人たちへ向けた支援の“出口”だと思っています。ここで社会とつながりを持ち、積み上げた経験やスキルを活かして、他の場所に飛び立っていく人もいます。これからは、そのような“出口”の支援だけでなく、支援の“入口”になる場所も作っていきたいと思っています。社会には、様々な理由で頼れる人がおらず、身動きが取れない人がたくさんいらっしゃいます。そのような方を受け入れるのが支援の入口だと思っています。生活がままならない方の受け入れ先となり、スキルや経験を積んで社会で活躍できるようになるまで総合的、継続的に支援できるような団体になっていきたいです。」 本当に強い社会とは、ポジティブな循環が生まれる社会のこと ――最後に、坂野さんにとっての「豊かさ」とはなにか教えて下さい。 「豊かさとは、“自分も相手も気分がいいこと”だと思っています。これは職場や家庭でもそうですが、関わるみんながお互いを知ろうと努力し、相手を尊重し合うことで、一日を心地よく過ごすことができる、そんな関わり方が理想ですよね。ともに時間を過ごす人やチームがあることは、何事にも代えがたいことです。それこそ、取り残されない社会の実現に向けて大切なことの一つではないかと思います。信頼できるコミュニティやバックグラウンドがあるからまた新たなことに挑戦できるんですよね。そのような良い循環が生まれる社会は、とても強いものであると思います。」 取材中に何度も、「私よりも施設利用者や職員が主役です」という言葉が出てきた坂野さん。ビーンズでは、活動に関わる利用者やスタッフ中心の運営であることが垣間見えました。 障がいがあるかどうかにかかわらず、一人ひとりが個性を生かし、尊重し合うことの大切さが求められる今。お互いの目線に立ち理解しようとする姿勢こそが、誰一人として取り残さない、強く豊かな社会の実現に向けた第一歩なのではないでしょうか。 ソーシャルグッドロースターズ 公式ホームページ方南ローカルグッドブリュワーズ 公式ホームページ 取材・文 / rootus編集部

  • 子どもたちに慶事ボランティアを行うイチゴイニシアチブがトークイベント開催

    あなたが出来ること、一緒に考えませんか? 虐待や貧困などにより、生みの親と離れて暮らすこどもは全国で約42,000人。そこには、生みの親に代わり、彼らを育てる里親や児童養護施設の職員がいます。 今回は、里親・施設・ボランティア団体の3名が、それぞれの立場から「生みの親と離れて暮らすこども達の暮らし」をテーマに子どもの支援についてお話しします。 現状や制度はどうなっているの? 血が繋がらなくても家族になれる? 児童養護施設ってどんな所? 私が出来ることは? イベントは、“日々の暮らし”を大事にする無印良品が運営するカフェ「Cafe MUJI 二子玉川」での開催。 あなたができることを一緒に考えませんか。 【里親・施設での、子どもの暮らし イベント日程】 日時:2023年3月10日(金) 15時〜16時半 場所:無印良品 Cafe MUJI 二子玉川(玉川高島屋S・Cマロニエコート) 東京都世田谷区玉川2-27-5 入場:無料 ※要事前申し込み 【お申込みはこちら ※直接予約フォームに飛びます】 https://docs.google.com/forms/d/1UJ9UiwfPXv7LCqwn32yw3sRbZKf6Y9XWIV0B0uGy8jI/viewform 【登壇者】 ・児童養護施設 東京育成園 東京都世田谷区下馬にある明治時代に開設された児童養護施設。2020年に世田谷区より里親支援事業(フォスタリング事業)の業務委託を受け、「フォスターサポートセンターともがき」を開設。 ・一般社団法人いちご言祝ぎの杜 イチゴイニシアチブ 日本の児童養護施設を中心に、その子のためだけを思い、祝う特別なバースデープログラムと、子どもたちの成長を喜ぶ伝統的なお祝いの儀式を一流のプロフェッショナルたちの手で贈るプロジェクトチーム。

  • 未来に残したい世界の絶景「バオバブの木/マダガスカル」

    今回が1回目の連載「未来に残したい世界の絶景」。 この連載では世界各国を回る旅人やツアーコンダクターが旅先で出会った景色をお届け。この先ずっと守っていきたい豊かな自然や文化から、持続可能な社会の大切さを感じてみませんか。 第一回目は、マダガスカルのモロンダバ郊外にあるバオバブの並木道。 マダガスカルは、アフリカの南東に浮かぶ島国です。バオバブは、アフリカ原産の木で、巨大な幹が特徴。古いものだと樹齢2000年を超えるものもあると言われています。 マダガスカルでは古くから市民の間で親しまれ、その大きさと個性的なフォルムは世界中の旅行者を魅了し続けています。 バオバブの木を目にして驚くのがその圧倒的な存在感。バオバブが立ち並ぶこの場所は、昼間の姿と夕景の姿の違いがまた美しく、時間の経過を忘れて見入ってしまうほど、印象的な場所です。 何千年も生きると言われるバオバブですが、実は近年枯れるペースが速くなっていることが発見されました。原因の特定には至っていませんが、気候変動が原因になっているとする研究者もいます。 私たちが生まれるずっと前からそこに生きるバオバブの木。未来に向けて守っていきたい地球の絶景の一つです。 ※画像をクリックすると拡大します photo by @tsugraphy_319

  • 洋服の大量廃棄問題に挑む。環境配慮型ファイバーボード「PANECO®」

    世界中で衣服の大量消費・大量廃棄の問題が取りざたされる中、不要になった衣類を捨てるのではなく、新しい素材として再利用する動きが進んでいます。今回は、不要な衣服を原料とするファイバーボード「PANECO(パネコ)」を開発した株式会社ワークスタジオを取材。パネコ開発の背景にある、廃棄衣服の問題意識やサーキュラーエコノミーの考え方について話を伺いました。 インテリアとして生まれ変わる廃棄衣服 誰もがファッションを手軽に楽しめる時代。その一方で、衣服のライフサイクルが早まり、それが大量廃棄に繋がっているとされている。環境への負荷を最小限にとどめ、持続可能な社会を作っていくために、衣服の大量廃棄は私たちが今すぐに向き合わなければならない問題のひとつだ。 そんな中、一つの新しい技術が今注目されている。廃棄になるはずだった衣服が原料になっているファイバーボード「PANECO(パネコ)」だ。パネコは、衣服を細かく粉砕し、特殊な技術を用いて作られている。現在は主に、大手アパレルブランドの内装や什器、企業の受付カウンターとして使用されることが多い。 パネコが什器として使用されているFREAK'S STORE(株式会社デイトナ・インターナショナル)。写真は、アミュプラザ博多店 また、パネコの大きな特徴の一つとして、木製のボードのように加工がしやすいという点が挙げられ、コースターやハンガーなど、デザインや使い方次第で様々な製品を生み出すことができる。 衣服由来ということもあり、パネコの質感やカラーも特徴的だ。使用する衣服次第では様々な色のボードを作ることができ、子ども部屋のインテリアにもなりそうなカラフルで可愛らしいものもある。 サーキュラーエコノミーを取り入れたミニマムなデザイン パネコのボードがサステナブルであるのは、不要になった衣服を原料としている点だけではない。「パネコは繰り返しボードとして再利用することが可能で、役目が終わった時のことまで考えて生産されています。」そう語るのは、株式会社ワークスタジオの篠嵜さんだ。「使用後のボードは再度、粉砕し原料として使用できます。パネコを使用することにより、廃棄物を減らすことが可能となります。」手放すときのことも考えて生産するサーキュラーエコノミーの考え方が取り入れられているのだ。 例えば今までは、什器が大掛かりに入れ替えられていた店舗の内装リニューアルも、パネコのような環境配慮型の素材選定や設計により廃棄物を出さず、ミニマルでシンプルな入れ替えが実現する。 パネコは衣類だけでなく、スニーカーや木材を原料に混ぜ込んで作ることもできる 洋服が行きつく先を視察することでより深くファッションロスを考える ワークスタジオは、もともとは什器のデザインなどを行っており、アパレル業界ともかかわりの深い会社だった。衣類からもボードを作れるのではないかという話から、洋服の大量廃棄問題を知ることとなり、約3年の研究を経て、リサイクルボードであるパネコの開発に成功した。 ワークスタジオでは、洋服の廃棄問題に本格的に取り組みたいとの思いから、代表と社員が世界中から古着が集まるアフリカのガーナを訪問。先進国で不要となった衣服の行く末を実際にその目で見てきた。 ガーナでは、マーケットに各国から届いた古着が届けられ、商人は売れそうな洋服を見極めて持ち帰るが、売れないと判断された洋服は捨てられてしまいゴミとなる。ガーナに届けられた衣類の多くが廃棄になってしまうというのが現実だ。さらに、不要とされた洋服はゴミになるといっても焼却処分されるわけではない。衣類はゴミ置き場に運ばれると、そのまま積み上げられ、見上げるほど巨大なゴミの山の一部となる。ゴミの山のすぐ近くには住宅もあり、人々の生活がある。隣接する海にも、ゴミの一部が流れ出て、洋服が波の打ち付ける砂浜に埋まってしまい、どんなに引っ張っても回収できない状態になっているという。 状況は違うにせよ、日本でも毎日大量の洋服が捨てられていく。私たちも他人ごとではなく、一人ひとりが考えていかなくてはいけない大きな問題だ。 展示会では廃棄になった服の山を表現。来場者の目をひいた 「都市森林」から価値あるものを作り出す 「都市鉱山ということばがあるように、私たちは都市森林があると思っています。都市森林とはクローゼットに眠っている衣服のことで、それも立派な資源のひとつと考えています。」篠嵜さんは話す。「1つの考えとして、我々、消費者自身が何かを購入する時に、モノのライフサイクルを考えることが大切だと思います。」 輸送時の環境負荷なども考えてアップサイクルやリサイクルはその土地で行う「地産地消」のかたちをとるパネコ。次は、海外でも、その国や土地で出た廃棄衣類を原料に、ファイバーボードを製造する技術を広めていく予定だ。 持続可能なファッションを目指すために 国内で毎日何万トンもあるといわれる洋服の廃棄。今私たち消費者には大きな意識の変革が求められている。必要以上に購入せず、一枚の洋服を大切に長持ちさせること。それでも不要になった衣服はパネコのような選択肢があるということを知っておきたい。今後店舗でパネコを見かけたときは、未来に向けて持続可能なファッションとはなにか、今一度考えてみてほしい。 PANECO®公式HP https://paneco.tokyo/

  • ソーシャルグッドロースターズに聞く、人と社会に寄り添うコーヒーができるまで

    東京、神田に画期的なコーヒーショップがあるのをご存知でしょうか。ソーシャルグッドロースターズ千代田は、福祉施設でありながら、こだわりのコーヒーを提供するコーヒーショップです。今世界が未来に向けて目指す、「誰一人取り残さない社会」はどのように作られるのか?そのヒントを探すため、商品のクオリティだけでなく、コーヒーに関わる人たちに重きを置くソーシャルグッドロースターズを取材しました。 新しいかたちの福祉施設 平日の昼下がり。ソーシャルグッドロースターズには、近隣に住む人や、オフィスで働く人々が一杯のコーヒーを求めて次々と来店する。 コーヒーの香ばしい香りが充満する店内は、生豆の選別や焙煎、接客、コーヒーのドリップなど、それぞれの仕事に取り組むスタッフで活気づいている。 ソーシャルグッドロースターズが他のコーヒーショップと違う点は、焙煎所を兼ねるロースタリーカフェでありながら、障がいがある人が働く福祉施設でもあるという点だ。ここでは様々な障がいのある人たちが、コーヒーづくりから接客に至るまで、それぞれ得意な分野を担当しながら専門的な経験を積める就労の場として活用している。 はじまりは障がい者の働き方の現状を知ったこと ソーシャルグッドロースターズを運営する一般社団法人ビーンズ代表の坂野さんは、障がい者の方と一緒に外出するボランティアをしていた際、本人やその母親から働き先がない、と聞くことがよくあったと言う。 「実際に障がい者の人と一緒に仕事を探してみると、働き先の数はあるものの、職種が極端に少ない状況でした。どうしても単純作業が多く、やりがいやスキルアップの機会を見いだせない仕事が多かったのです。それは高い離職率からも顕著でした。そこで、障がい者の人も、社会で働く他の人々と同じように、技術を習得でき、自分の仕事に誇りを持って働けるような福祉施設を作りたいと思い、このような場所を立ち上げることになりました。」 “障がい者でもできる仕事”ではなく、“みんながやりたいと思えるような仕事”で、スキルも身に着けられるような仕事を、と選んだのがコーヒーショップだった。 一人ひとりの個性が生かされたコーヒーづくり ここでのコーヒーづくりは、人の手で生豆をひとつひとつ選別するハンドソーティングから始まる。農産物である生豆の中には虫が食っているものや欠けている豆があり、それが入ってしまうと雑味に繋がるとされるため、取り除く必要があるのだ。簡単なようで、意外と難しいハンドソーティングは、集中力と根気がいる作業だ。 選別された豆は、世界でもトップクラスの焙煎機「GIESEN」で焙煎。ブレンドの作業では、一人ではなく味覚の鋭い障がい者を含めたスタッフ数人で行い、調整して本当に美味しいと思えるものに仕上げている。そして最後にコーヒーは、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れていくか、バリスタの手によってエスプレッソマシンで淹れられ提供される。 このように、ハンドソーティングからはじまり、焙煎、ブレンド、ドリップ、接客に至るまで、たくさんの役割がある中、スタッフは、それぞれが自分の能力を発揮できる持ち場についている。美味しいコーヒーをつくり提供するという共通のゴールを持ちながら、個性を生かし、尊重し合いながら働いているのだ。 社会の一員として誇りを持って働ける現場を ソーシャルグッドロースターズでは、立ち上げの際の設備投資を惜しまなかったと坂野さんは話す。「みんながチャレンジしていける場を作りたかったんです。そのためには世界レベルの焙煎機やエスプレッソマシンが必要だと思いました。最初は誰一人として機械の使い方がわからなかったんですよ(笑)でも今は、使いこなせるスタッフが数名います。」実際にここで働くことで一人ひとりの知識や経験値、技術が向上しているのだ。 「スタッフには、福祉施設だということをアピールしないで下さいよ、と言われます。障がいのあるなしに関わらず、全員が社会で働く一人として、プライドを持って働いてくれているんです。」お店でコーヒーが作られていく過程を見ると、どの工程も訓練やスキルがないと難しい。そして出来上がったコーヒーも一流のコーヒーショップと遜色がない。声を掛け合う和やかな空気が流れる中、スタッフがそれぞれの仕事に熱中する様子からは、美味しいコーヒーを作りたいという意気込みが伝わってくる。 どこまでも平等であることを追求する ソーシャルグッドロースターズで仕入れる豆は、インドのコーヒー農園からフェアトレードで購入している。持続可能なコーヒーの生産を目指すコーヒーサプライヤーであるオリジンコーヒーグループと「人に優しいコーヒーを」という思いを一緒に、できるだけコーヒー生産者に売り上げを還元できるような仕組みを整えた。 豆が生産されてからお店に届くまで、どこにどのくらいコストがかかっているか、徹底的に透明化。ソーシャルグッドロースターズでは、その詳細を毎回仕入れごとに確認している。 社会にとって平等であるか、ということをどこまでも追及しているのだ。 一杯のコーヒーを通して見えてくるこれからの社会 名前の通り、「ソーシャルグッド」な流れを生み出すソーシャルグッドロースターズ。ここにいると、「誰一人取り残さない社会」とはどんなものなのか、一杯のコーヒーを通して見えてくる。障がいのあるなしに関わらず、一人ひとりの多様性を認め合い、みんなが平等に社会の一員として活躍できること。そしてそれが社会にとって良い循環を生み出していくこと。美味しいコーヒーとともに、誰もが大切に思われる社会の重要性を考えさせてくれる貴重なコーヒーショップだ。 ソーシャルグッドロースターズ千代田東京都千代田区神田錦町1-14-13 LANDPOOL KANDA TERRACE 2F10:00~18:00日曜定休・都営新宿線/三田線/東京メトロ 半蔵門線「神保町駅」徒歩6分・都営新宿線「小川町駅」徒歩2分・東京メトロ 丸ノ内線「淡路町駅」徒歩2分・東京メトロ 千代田線「新御茶ノ水駅」徒歩2分・JR/つくばエキスプレス/東京メトロ 日比谷線「秋葉原駅」徒歩12分https://sgroasters.jp/

  • 夜パンB&Bカフェが新オープン。枝元なほみさんが目指す「繋がる社会」とは

    協力パン屋から売れ残りそうなパンを引き取って販売する「夜のパン屋さん」。今回、夜のパン屋さんが新しいプロジェクトとして、築150年の古民家「けやきの森の季楽堂」で「夜パンB&Bカフェ」をスタート。 運営を行う、THE BIG ISSUE JapanとMINI JAPANのスローガン「BIG LOVE」からBをとってB&Bと名付けられました。毎月第二土曜日に開催し、カフェに加えて、夜のパン屋さんやマルシェなども出店。「次に来る誰か」のためにランチ代などを先払いできる「お福分け券」の仕組みを整えるなど、金銭的に余裕がない人でも利用しやすいアイデアが取り入れられています。 今回は、夜のパン屋さんを立ち上げた枝元なほみさんに、夜のパン屋さんが目指す「人と人が繋がる社会」についてお話を伺いました。 枝元なほみさんProfile 横浜市生まれ。料理研究家としてテレビや雑誌などで活躍。農業支援活動団体「チームむかご」を立ち上げ、NPO法人「ビッグイシュー基金」の共同代表を務めながら、雑誌「ビッグイシュー日本版」では連載を持つ。2020年にはパン屋さんで廃棄になりそうなパンを救う「夜のパン屋さん」をオープンし話題に。これまで多数の執筆を手掛けており、近著として『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしくフードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)がある。 枝元なほみさん 公式TwitterNPO法人ビッグイシュー基金公式ホームページ 循環させる大切さを届けたい思いで、夜のパン屋さんをオープン ――はじめに、今回のカフェの元となっている「夜のパン屋さん」をスタートしたいきさつを教えてください。 枝元さん:2019年に私が連載をしている『ビッグイシュー日本版』を発行する「有限会社ビッグイシュー日本」(ホームレスの人の仕事をつくり、生活再建を応援する社会的企業)に篤志家の方から寄付のお申し出があったのですが、「皆さんに配って終わりではなく、何らかの形で循環できるよう使っていただきたい」との要望でした。「新たな仕事の場づくりができないか?」とビッグイシューのスタッフから相談を受けて、夕方まで売り切れなかったパンを街のパン屋さんからお預かりし、それを夜の時間帯に販売することを思いついたのです。破棄になるかもしれなかったパンを、必要としている人に届けるのです。一見あまり関連のないように感じる夜のパン屋さんとビッグイシューですが、ふたつとも「最後のつなぎ役」という役割でリンクしています。 ――夜のパン屋さんの活動は、SDGsの考え方とも深くかかわっていますよね 枝元さん:最近は社会の流れも変わってきて、みなさんが「自分たちもやらなくては」という雰囲気になり、一緒にやりたいと声をかけて下さる方が増えてきました。テレビで夜のパン屋さんを観て協力してくださるパン屋さんもいます。賛同してくださる方が増え、同じ想いを持ってできるのが嬉しいですね。 みんなで環境問題や社会問題解決の意識を持っていけたらと思っています。食べ物が満足に行き渡らない人たちのことや、自然環境のことを、子どもたちと一緒に学び考えながら食べ物をいただくことが大事ではないでしょうか。 「夜パンB&Bカフェ」はお互いを受け入れ合い、交流する場所にしたい ――今回、夜のパン屋さんから発展して「夜パンB&Bカフェ」をオープンするに至った経緯を教えてください。 枝元さん:夜のパン屋さん(以下、夜パン)は東京で2020年10月に始まり、オープンから2年が経ちました。つい最近、札幌にもオープンしたところです。夜パンの運営が軌道に乗り始め、次のステップに進めると感じたときに、色々な人とゆっくり話ができ、交流し合うカフェが出来たらいいなと思いました。そこでできたのが、練馬のけやきの森の季楽堂での「夜パンB&Bカフェ」の構想です。 自動車のMINIが企画する「BIG LOVE ACTION powered by MINI.※1」で支援先に選んでいただいたことで、場所を1年間借りるサポートを受けることができ、実施が可能になりました。カフェの運営パートナーとして、その他のサポートもして下さっています。 (※1)BIG LOVE ACTION powered by MINI. 性別・年齢・国籍にかかわらず、誰もが個性を発揮できる未来の実現を目的としたソーシャル・アントレプレナー支援の企画。世の中を良くするアイデアの中から、サポーターの投票により支援プロジェクトを選定。選ばれた活動に対し、MINI Japanが継続的なサポートを行なう。 カフェは、開放的でありながら温かみのある空間 ――令和の時代とは思えないほど、「夜パンB&Bカフェ」は昭和の古き良き空気を感じます。懐かしい気分になりますね。 枝元さん:古民家だからというのもあると思いますが、誰でも受け入れる雰囲気がありますよね。このカフェは滞在時間に制限はなく、縁側でお茶を飲みながら何時間過ごしても大丈夫です。 イベントでは新鮮な野菜なども販売されている ビッグイシューも協力して年末年始に実施している、生活に困っている人が無料で食事ができる場「年越し大人食堂」では、生活相談を受けたり、炊き出しをしたりしていますが、元気のない男性が多く、女性や小さなお子さん連れの方は食料をもらったらすぐ帰ってしまうことも多いんですよ。でも私はそういう人たちともお話をしたいし、繋がりを持ちたいと思っています。 だからこそ夜パンB&Bカフェでは、誰でも居心地よく過ごせる場所でありたいと思っています。他の人を受け入れ、自分も受け入れてもらい、一緒に時間を共有できるコミュニティが欲しいのです。悩んでいることがあっても、「お茶を飲もうよ」「これを食べね」と声をかけあって繋がり合うことで、人は生きていけるのではないかと思っています。 女性がいきいきと働くことはコミュニティを生み出すきっかけになる ――夜パンではフードロスの問題に取り組まれていますが、女性の働く場所を作ることにも力を入れていらっしゃいますよね。 枝元さん: 夜パンの運営を通して、これからは男性だけでなく女性のできる仕事を増やすことに取り組みたいと思っています。私は幸いなことに仕事をやらせていただいていますが、コロナ禍で女性の貧困や格差の問題が浮き彫りとなり、仕事や住まいをなくした方もたくさんいらっしゃいます。そんななか、コミュニティがあり、その中で「いつでも話せる」関係性が大切だと思っています。例えばシングルマザーでも、コミュニティがあれば子どもの世話も含めて助け合えると思うんです。スタッフには、積極的に「子どもも連れてきてね」と伝えるようにしています。 子どもっているだけで、その場の雰囲気が和らぎますよね。カフェには不登校の男の子が来ていますが、彼はキッチンのサポートを積極的に行っています。アメリカのレモネードスタンド活動のように、子どもがレモネードみたいなものを売ってみても良いですよね。 女性はもちろん、子どもにとっても居場所になれたらいいですね。 「ロス=捨てる」のではなく、命をつなげていくもの 取材時のカフェのメニュー。写真右は里芋の皮を活用し、甘辛く炒めたもの ――カフェのメニューは本来捨てられるものも工夫して調理し、美味しい一皿になっていますよね。食品ロスについてはどうお考えですか? 枝元さん:なにを「ロス」とするかは、人の都合なんですよね。できるだけ「ロス」にするのではなく、命を繋いでいくものとして、どう美味しい料理を作れるかを考えるのはとても楽しいですよ。 料理すると気付くのですが、自分で作ったお弁当よりもコンビニで売っている弁当の方が安いんですよね。でも、自分が作ったものの方が残さず大事に食べられたりします。大量生産、大量廃棄の時代ですが、安さだけでなく、美味しく大事に食べられる方を選んでいくのも大切なのではないでしょうか。 今後も「繋がる」をキーワードに社会を循環させていきたい これからも「繋がり」を築いていきたいと語る枝元さん ――今後はどのようなことに力を入れていきたいですか。 枝元さん:夜のパン屋さんをやってみて思ったのは、「繋がり」が一方通行でなく循環する仕組みが必要だということです。人と人が相互に繋がり、みんなの輪が広がっていく活動をしていきたいです。具体的にはまだわかりませんが、もしかすると繋がりを求めて、食堂を作るということになるかもしれません。 働き方に関しても積極的に新しい取り組みを行っていきたいですね。例えば小さいお子さんがいると働く時間が限られてしまいますが、そのような方も働けるような場所を作っていきたいと思っています。 今回の取材を終えて 今回の取材を通し、不確実な世の中だからこそ悩んでいることを打ち明けるような場が必要であると実感しました。お茶を飲んで一息つける夜パンB&Bカフェは、お金には代えられない安心感が得られ、人と人との繋がりを再確認することができます。このような場所から、誰も取り残されない社会へのヒントが見つかる気がしました。 取材・文 / オダルミコ

  • 【イベント】サステナブルブランドによるデッドストックマルシェが限定開催!

    2023年1月28日~29日、東京・蔵前のカフェでDead Stock Marcheが開催されます。 イベントは、「市場には流通させにくいデッドストック品」をテーマに、サステナブルなこだわりを持つSOLIT!・HIKARI underwear・CACTUS TOKYOの3ブランドが集結。 できる限り環境に負荷かけず、かつ在庫を持たないようにしているサステナブルブランドでも、やむをえず抱えている規格外の製品があります。そんな倉庫で眠っているデッドストック品を、大切に使ってくれる人に届けるための販売会です。 会場は、サーキュラーエコノミーをテーマとする蔵前のカフェ「élab」。ここでしか出会えないアイテムを探しに、ぜひ足を運んでみてくださいね。 【イベント関連ページ】 Keep them AWAKE - Dead Stock Marche (※Peatixリンク) 【イベント日程】 日時:2023年1月28日(土)・1月29日(日) 11時〜18時 場所:élab  所在地:〒111-0054 東京都台東区鳥越2丁目2−7 1階 【出店3ブランド紹介】 SOLIT!障害の有無を超えて自分の体型や好みに合わせて、部位ごとにサイズ・仕様・丈を選択でき、受注生産を行うインクルーシブファッションブランド HIKARI underwearオーガニックコットン100%に天然染料を使用し、締め付けない優しい着心地の下着ブランド CACTUS TOKYOサボテン由来のレザー素材を用いたカバンや財布などのオリジナルアイテムを展開するブランド 関連記事:CACTUS TOKYOの工房見学で触れる、サボテンレザーのポテンシャル

  • フラワーロスを900万本救済。老舗の花屋が私たちの未来に残したいもの

    私たちの人生の節目や日常を豊かに彩ってくれる花。しかし、花が私たちの手元に届くまでに、実はたくさんの花の廃棄「フラワーロス」が存在しているのをご存じでしょうか。今回は、“Leave no flower behind=一輪の花も取り残さない”というモットーで活動を行うスマイルフラワープロジェクトを取材。フラワーロスの問題や、プロジェクトが目指す花のある豊かな社会について話を伺いました。 コロナで明るみに。花の廃棄「フラワーロス」問題 2020年4月、コロナの急速な感染拡大により、緊急事態宣言が発令された。休業要請や行動制限の他、予定されていたイベントがすべて中止になり、社会では多くの「ロス(廃棄)」が発生。その中で大量の生花も行き場を失い、「フラワーロス」という言葉が世の中に広く知れ渡るようになった。 コロナは大きなきっかけだったが、実はそれ以前から農家や花屋の店頭では、たくさんの花が日の目を見ないまま廃棄される現状があった。野菜と同じで花には規格があり、茎の長さが足りない、傷がある、茎が曲がっている、葉っぱが足りないなど、規格に満たないと市場では買い取ってもらえない。さらに、店頭では品揃えを豊富にするため花を多めに仕入れる傾向にあり、すべて売り切れずに鮮度が落ち、廃棄になるものが多くある。 毎年どのくらいの花が廃棄されているかを示すはっきりとしたデータはないものの、規格外により農家で廃棄されてしまう花が6億本以上と総生産数の2~3割、店頭での廃棄は仕入れの3割にのぼり、少なく見積もっても一年に10億本ものフラワーロスがあるとされている。 長年花に携わってきた企業として花のある文化を未来に残したい スマイルフラワープロジェクトは、コロナをきっかけにフラワーロスを救済する活動を本格化。今まで900万本を超える花を救ってきただけでなく、フラワーロスについて知ってもらう活動を精力的に行っている。 このプロジェクトを先導しているのは、東京や富山、大阪を拠点に花屋を展開する業界有数のグループ会社だ。 「花の命を一本も無駄にしないために、農家とお客さんを繋ぐ花屋としてできることをしていきたいと思っています。」プロジェクトを立ち上げた株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーションの大槻さんは言う。「弊社では創業以来、一輪の花も無駄にしないよう、割引などをして売り切り、それでも残ってしまった場合は茎や葉を堆肥にするなどの工夫をしてきましたが、スマイルフラワープロジェクトではさらに踏み込んでフラワーロスの問題にアプローチしています。コロナで行き場を失ってしまった花を救うことを目標にスタートしたプロジェクトですが、今では農家さんの協力をいただきながら、これまで廃棄が当然とされてきた『規格外』の花も価値あるものとして世に送り出しています。」 花農家と一緒にフラワーロスゼロを目指す プロジェクトではロスのない生産流通を確立するために生産者とコミュニケーションを重ね、これまで廃棄されることが業界の通例であった「規格外」の花を買い取ってECサイトで販売をしている。これは業界初の試みだ。 また、花は適正価格で購入することで、農家をサポートできる仕組みになっている。スタート当初、農家では産地のブランドイメージを守るためにロスを公にしたがらないところも多かったが、今は賛同してくれる農家が増えてきているという。 品質、生産量ともに日本一の浜松PCガーベラ。スタート当初からプロジェクトに賛同している 実際にスマイルフラワープロジェクトで販売されている花は、小さな傷がある、少し曲がっている程度で、規格外と言っても自宅で楽しむ分には何の問題もない。購入者からも産地から届く新鮮な花は好評を得ている。 さらに、大槻さんはフラワーロスのアップサイクルを推進するため、花染花馥研究所(はなそめはなふくけんきゅうじょ)を設立。花を使った染色やインクの製造をはじめ、同グループのバラ専門店ROSE GALLERYの香り高いバラからはローズウォーターを抽出。それを配合したルームフレグランス「re:ROSE」を販売するなど、まさに、花一輪、一滴も無駄にしないためにできることを日々研究している。 フラワーロスを知らなかった人に花を届ける スマイルフラワープロジェクトでは、フラワーロスを知ってもらうイベントも積極的に実施している。 上智大学のキャンパスでは、フラワーロスの存在を若い世代に知ってもらいたいと、学生と一緒に規格外の花を配るイベントを開催。当日は用意していた500本の花をあっという間に配り終え、急遽フラワーカーの装飾として使用した500本もブーケとして配り大盛況に終わった。 また、航空会社JALとタッグを組んで、朝採れの「規格外」の花を羽田空港へ空輸し、空港利用者に配布。フラワーロスを知ってもらうのと同時に、日本各地の産地と都会を結び、地方創生につなげたい思いがあった。花を受け取った人からは、「フラワーロスのことを初めて知ったが、とても綺麗で嬉しい」と、多くの喜びの声が聞かれた。 上智大学でのイベントには長蛇の列ができた さらには「フラワーライフ振興協議会」を設立し、世界遺産や国宝を会場にフラワーイベントを実施したり、富山で球根を育てるために切り落とされてしまうチューリップ30万輪を使ってフラワーカーペットを作るなど、全国でフラワーロスや花の魅力を知ってもらう活動を行っている。 “花も人と同じ、一輪も取り残したくない” 「活動を通して、ひとの心に寄り添い笑顔にしてくれるお花の力は思う以上のものがあると何度も勇気づけられてきました。私たちが一人ひとり個性を持っているのと同じように、姿かたちの個性も含めて一輪の花も無駄にすることなく活かしてゆきたいと思っています。」と大槻さんは話す。 花農家は、後継者不足で存続が厳しいところが多く、コロナをはじめ社会の情勢によって花の価格が急落してしまうリスクを常に抱え、課題はフラワーロスの削減だけではない。 もし、世の中から花がなくなってしまったら、私たちの生活から彩りが失われてしまうのではないだろうか。 フラワースマイルプロジェクトはこれからも農家と一緒になって、花のある豊かな文化を未来に残していきたいと考えている。 取材を通して~花の命を無駄にしないために私たちにできること フラワーロスの話を聞いてまず驚いたのが1年に10億本と言われる廃棄される花の数だ。その数から、私たちの手元に届く花は厳しい基準をクリアした完璧な花であることに改めて気が付かされる。私たちにできることはまずフラワーロスという問題を知ること。それだけでも規格外の花をインターネットで探してみたり、数日前に作られ店頭で安くなっているブーケを購入したりするきっかけになるのではないかと思う。 スマイルフラワープロジェクトhttps://jfc.thebase.in/フラワーロスのサブスクリプションhttps://flover-s.jp/

  • キッチンから始めるエコ。おしゃれで繰り返し使える脱プラグッズ

    キッチンで活躍するラップやキッチンペーパー、ジッパー付きの袋。基本的に一回しか使わずに捨ててしまうので、もったいないと感じる人も多いのではないでしょうか。 リユースなどがされず一度しか使われない包装容器や袋などのプラスチックは、「シングルユースプラスチック」と呼ばれ、海岸に漂着するプラスチックごみの多くがこのシングルユースプラスチックと言われています。 日本は世界から見てもプラスチックの消費量が非常に多い国のひとつなのです。 この記事では、シングルユースプラスチックなどキッチンで出るゴミを減らすために、繰り返し使えるラップや保存容器をご紹介します。 脱プラが叶う。オシャレで機能的なキッチン雑貨 ピタっと密着して鮮度が長持ち「ビーワックスラップ」 ビーワックスラップは蜜蝋ラップとも呼ばれ、その名の通り、布に蜜蝋を染み込ませて作られたラップのこと。蜜蝋は、抗菌作用や保湿力が高いとされているので、食品を保存するのにもぴったりです。柄も可愛いものが多く、手作りすることもできます。 手の温度で柔らかくなり、ぴたっとお皿などに密着させることができます。熱に弱いので、レンジを使ったり、温かいお湯で洗うと溶けてしまうのが難点ですが、野菜やチーズを包むのにぴったりです 調理や持ち歩きが可能「密閉型シリコーン容器」 ジッパー付きの袋やビニール袋などの代用になるのが、密閉型のシリコーン容器です。カラフルでサイズが充実しているアメリカ発のブランド、「スタッシャー」が代表的。熱にも強いので、離乳食を持ち歩く際に便利とSNSで話題になりました。また、食品を保存するだけでなく、お菓子や煮込み料理、蒸し料理などの調理ができるのも嬉しいポイントです。 様々な野菜の切り口にぴったり「シリコンカバー」 余った野菜や果物にラップをして保存する方が多いですが、全体を包もうとすると大き目のラップが必要になりますよね。ビーワックスラップも野菜の切り口などにおすすめですが、野菜の切り口に合わせて作られているシリコンカバーも便利。ヨーロッパの主婦が作った「フードハガーズ」は、野菜を差し込むだけで簡単に鮮度を保ちながら保存ができます。また、電子レンジや食洗器にも使用できます。 おしゃれで使いやすいエコ雑貨をキッチンに 出典:pexels.com 「エコ」と聞くと、環境にいいことはわかっていても使いやすさが気になりますが、今回ご紹介したラップや保存容器は、どれも使い勝手がよいものばかり。100%プラスチックフリーは難しくても、たまに使うだけでゴミが少なくなることに気が付きますよ。また、食品を保存する場合も、使い捨てのラップより、フレッシュさをキープできることも。ぜひお気に入りを見つけて使ってみてはいかがでしょうか。

  • 家庭から減らそう。食品ロスの現状と私たちにできること

    近年大きく取り上げられている食品ロスの問題。毎日たくさんの食べ物が無駄になっているなかで、私たちがすぐにできることとは?食材を選ぶときにできることから、レストランの選び方まで、今日から始められるアクションをご紹介します。 深刻な食品ロス問題の現状 出典:pexels.com 食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。海外でも問題にはなっていますが、日本でもその問題は深刻。農林水産省の報告によると、令和元年度の食品ロスの量は570万トンにのぼり、国民一人当たりの量に換算すると、一人当たり1日にお茶碗1杯分の食べ物が廃棄されていると言われています。 フードロスは、大切な食糧資源を無駄にしているだけでなく、ごみとして燃やす際に出るCO2の排出量も増やすことに繋がってしまうのが、大きな問題です。 フードロスと食品ロスの違い フードロスと食品ロスは同じような言葉ですが、厳密には違いがあります。フードロスは、収穫・生産された後、流通の過程で私たち消費者に届く前に捨てられてしまう食品のこと。一方食品ロスは、フードロスに加えて、消費者の手に届いてから捨てられてしまうものを含まれています。意味が異なるフードロスと食品ロスですが、日本では同じような使われ方をしているケースがほとんどです。また、規格外野菜などについては、食品ロスの統計には含まれていませんが、廃棄になることも珍しくないため「隠れ食品ロス」と呼ばれることもあります。 家庭で、レストラン選びで食品ロスを少しでも少なく 出典:pexels.com 食品ロスは、大きく事業系食品ロスと家庭系食品ロスに分けられます。令和元年度、事業系食品ロス量は309万トン、家庭系食品ロス量は261万トンでした。お買い物から調理、食事に至るまで家庭で私たちにできることはたくさんあります。また、外食時は近年増えてきている食品ロスの問題に取り組むレストランを利用することも食品ロスの削減につながります。 食品・食材を購入するときにできること 出典:pexels.com 1.手前取り 最近コンビニなどでも少しずつ見かけるようになった、消費期限や賞味期限が近い食品から購入していく手前取り。食品ロスは消費者である私たちの過度な鮮度志向も影響していると言われています。期限内に食べきれるのであれば、積極的に手前取りを行っていくことが大切です。 2.ロスになりそうな食品を販売するサービスを利用する 食品ロスが出そうなレストランなどの事業者と消費者をつなぐサービスが登場しています。食品ロスの危機にある食品をネット注文できるサイトや、お店に自分で引き取りに行くサービスまで、種類は様々。わかりやすいシステムで、お手頃な価格で購入できるのも嬉しいポイントです。 関連記事:気軽に食品ロス削減に貢献。お得で楽しいショッピングサイト10選 調理するときにできること 出典:pexels.com 1.野菜等の正しい保存法を知る 野菜はその野菜に合った方法で保存するだけで、断然長持ちします。根菜類は常温保存、葉野菜は冷蔵保存など、種類によって適切な温度があります。また、冷蔵庫の野菜室の中で立てて保存した方が良い、などそれぞれポイントがあります。適切な方法を選べば、鮮度を保ったままより長く野菜を使えて、ロスが少なくなります。https://www.honda.co.jp/tiller/yasai/preservation/ 2.「消費期限」と「賞味期限」をきちんと理解する 手前取りとも共通していますが、過度な鮮度志向は食品ロスに繋がります。消費期限は安全に食べられる期限であるのに対し、賞味期限はおいしさなどの品質が保たれる期限です。賞味期限の場合、期限を過ぎたからと言って安全ではなくなる、とは限らないのです。 3.フードロスゼロのレシピをチェック 余りがちな食材や、捨ててしまいがちな野菜の部位。そんな材料を使ったレシピが多く公開されています。食材の栄養をまるごといただけるレシピで、お料理のレパートリーも豊かになります。https://cookpad.com/kitchen/10421939https://www.kagome.co.jp/vegeday/eat/202101/10955/ レストラン選びでできること 出典:pexels.com 家庭で出る食品ロスよりも多いのが事業者から出る食品ロスです。外食するときにレストランを選ぶときも少し工夫すれば、食品ロス削減に貢献できます。お店と消費者とが一緒になって、社会全体で食品ロスを減らしていくことが大切です。レストランの食品ロス削減に貢献できるサービスや、食品ロスを出さない工夫をしているレストランがわかる渋谷区の取り組みをご紹介します。 Tabetta 日時や場所、ジャンルを選択すると最適なレストランを選び予約してくれるサイト。急なキャンセルなどが出たお店や食品のロスなどで困っているレストランを通常よりも30%以上安く利用できる。https://tabetta.jp/ シブラン三ツ星レストラン 渋谷区が、食品ロスの削減、地域環境の美化、ごみの削減に取り組む飲食店を「シブラン三ツ星レストラン」として認証している。食品ロスに関しては、食材の無駄が出ない仕入れの実施や食べ残しが出ないよう、ハーフサイズの提供をしているかなどの認証条件がある。https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/gomi/recycle/shiburan_meibo.html 食品ロス削減のために簡単にできることからはじめよう 出典:pexels.com 資源を無駄にして、廃棄が出ることで環境にも負担をかける食品ロスの問題。食べられるのに捨てられてしまう食品を少しでも減らすために、手前取りや野菜の保存方法を見直すなど、今日からできる簡単なことはたくさんあります。また、食品ロス削減に貢献しながら、お得に食材を購入できるサービスなども充実。どれも簡単なので、できるところからはじめてみませんか。

  • 大切なものだから人や環境を傷つけない選択を。国内のおすすめエシカルジュエリーブランド

    金や宝石などを使ったジュエリーは古くから人々を魅了し続けています。でもその美しいジュエリーの裏側で、人が傷つけられ自然が犠牲になっているとしたら…? ジュエリーは、生産する際の労働の搾取や環境破壊が大きな問題になっています。ずっと身に着けたいものだからこそ、生産過程が分かり、安心してつけられるものを選びたいですよね。 この記事では、エシカルジュエリーの魅力とおすすめのブランドをご紹介します! エシカルジュエリーとは? 出典:pexels.com エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味。つまり、エシカルジュエリーは、生産に携わる人や自然環境に十分に配慮されて作られているアクセサリーのことです。例えば生産する人の労働環境が守られていたり、生産過程における環境負荷が少ないなど、人や自然、動物を傷つけずに作られています。最近ではゴミになるはずだったものをアップサイクルして作られたアクセサリーも多く登場しています。 エシカルジュエリーのブランドでは、その生産の背景を明示して透明性を保っており、私たち消費者も安心して手に取ることができます。この記事では、国内でも増えてきているエシカルジュエリーブランドをご紹介します。 ジュエリーが抱えるたくさんの問題 出典:pexels.com 私たちの手に届くまで、ジュエリーはどのような過程をたどってきているのでしょうか。実は美しいジュエリーの裏側には、深刻な人権侵害や環境汚染などの問題がかくれているケースが珍しくありません。 例えば、金は採掘される際に、毒性の高い水銀が使われ、人々の健康や環境の大きな脅威になっています。鉱山の開発もたくさんの資源を必要とし、多くの二酸化炭素を排出するため、環境にとって優しいものとは言えません。また、ダイヤモンドはコンフリクトダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)と呼ばれるものがあります。アフリカで内紛が起こっている地域では、ダイヤモンドが武器の調達資源になっていることがあるのです。劣悪な環境での低賃金労働や、児童労働も行われています。 これまでのジュエリーは、作る人の人権が守られていなかったり、環境汚染につながっているなど、多くの問題を抱えてきました。 エシカルジュエリーの特徴 出典:photo-ac.com そんなジュエリーの問題を解決すべく生まれたのが、人権や環境に配慮して作られているエシカルジュエリーです。エシカルジュエリーの特徴には以下のようなものがあります。 児童労働や強制労働などの労働搾取が行われていない 採掘する人の労働環境が危険なものではない フェアトレード(生産者と公正な取引がなされている) 生産者の自立支援が行われている リサイクルやアップサイクルされた素材を使用している 自然環境に配慮している この中のひとつではなく、ブランドによってはいくつか、もしくはすべてに配慮して作られています。 毎日身に着けるもの、また、婚約指輪や結婚指輪など一生大切にしたいものは、誰も傷つけないエシカルジュエリーを選ぶのがおすすめです。 おすすめエシカルジュエリーブランド 国内で購入できるおすすめのエシカルジュエリーブランドを集めました。ぜひジュエリーを買う際の参考にしてみてください。 HASUNA 日本のエシカルジュエリーの中でもトップの人気を誇るHASUNA。創業者がインドで劣悪な環境の鉱山とそこで働く人に衝撃を受け、立ち上がったブランドです。自らの足で環境などを確かめ、素材は産地と採掘工程がわかるものを使っています。金は働く人や環境に配慮されたエシカルゴールドを使用。また、各国で生産者の自立支援も行っています。オンラインショップの他、表参道には路面店があり、他の都市でも取り扱い店舗があるので、手に取って見ることができるのも嬉しいポイントです。https://hasuna.com/ この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る HASUNA | Perpetual Jewelry(@hasuna_official)がシェアした投稿 ERATHRISE エシカルジュエリーの人気ブランド。ジュエリーの多くの素材は発展途上国で産出されます。そこで働く人々とフェアに、伝統を受け継ぎながら、プロダクトを作り出しているEARTHRISE。ジュエリーに使われているのは、紛争の資金源とならないダイヤモンドや、フェアトレードのゴールド・シルバーなど。人や環境に配慮された素材と、それを加工する職人の高い技術が、高品質のジュエリーを生み出しています。表参道に路面店があり、各地でポップアップも開催しています。https://earthrise-j.com/ この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る エシカルジュエリーEARTHRISE Official(@earthrise_j)がシェアした投稿 MOTHERHOUSE 「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもとバングラディッシュからスタートしたMOTHERHOUSE。今では関東に20店舗以上、近畿に8店舗、その他の地域や海外にも店舗が増え続けている人気バッグブランドです。もともとバングラディッシュで作られるバッグの販売から始まりましたが、現在はスリランカやミャンマー、ネパールのジュエリーも販売しています。石の個性を大切に、現地の職人の技術を生かして作られるネックレスやピアスは、ネーミングから強いメッセージ性を感じるものばかり。給与水準の高さや昇給制度など、現地ではトップクラスで働く環境が整備されています。https://www.mother-house.jp/ この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る マザーハウス(@motherhouse_official)がシェアした投稿 GYPPHY どんなファッションやシーンにも合う、ファッショナブルなジュエリーが楽しめるエシカルジュエリーブランド。GYPPHYでダイヤモンドの代わりに使われるのは、人の手によって合成された宝石であるモアサナイト。モアサナイトは、ダイヤモンドにまさると言われる輝きと耐久性が大きな特徴です。鉱山開発もせず紛争の資金源にもならないモアサナイトは、まさにエシカル。最近は世界でファッション感度の高い人たちからの支持を集めている、新しい時代のジュエリーです。また、ゴールドやシルバーは、採掘の際に環境負荷を低減し、働く人の環境など、厳しく基準を設け、それをクリアしたものを使用。手に入れやすい価格も人気の理由の一つです。https://gypphy-shop.com/ この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る GYPPHY/ジプフィー モアサナイト(@gypphy)がシェアした投稿 sobolon 環境に配慮した素材を使ったりアップサイクルされた素材を使うのも、エシカルジュエリーの特徴のひとつ。sobolonでは、海岸に漂着したプラスチックを使用してアクセサリーを作っています。クリエイターが海に出向き、海洋プラスチックを回収。その海洋プラスチックは、ひとつひとつデザインされ、思いのこもった加工を経て、かわいいアートのようなアクセサリーへと変身します。ひとつとして同じものがないアクセサリーは、身に着けるたびに海の大切さを思い出させてくれます。https://sobolon3695.thebase.in/ この投稿をInstagramで見る 海洋プラスチックジュエリーsobolon(そぼろん)(@sobolon3695)がシェアした投稿 大切なジュエリーだから他の人や環境を傷つけないエシカルなものを 出典:pexels.com 今回は、おすすめのエシカルジュエリーブランドをご紹介しました。毎日身に着けるもの、特別な日にプレゼントしたいもの、一生大切にしたいものだから、背景を知り、きちんと選びたいもの。美しいと思って購入しても、その裏で環境や人を傷つけていたら悲しいですよね。 私たち一人ひとりが、ジュエリーの素材がどこからきてどのように作られているかを知り、人にとっても自然にとっても優しいエシカルジュエリーを選ぶこと。そのことが、ジュエリーの裏にひそむ問題の解決への一歩となっていくのではないでしょうか。

  • 環境に優しいおいしさ。東京でプラントベースを楽しめるレストラン&カフェを紹介

    お肉などの畜産物に代わり、環境負荷の少ない食品として関心を集めるプラントベースをご存知でしょうか。プラントベースとは、植物由来の原料を使用した食品のこと。代表的な例を挙げると、大豆ミートなどの代替肉やアーモンドミルクなどの植物性ミルクが挙げられます。 健康意識の高まりからだけではなく、環境のことを考えて、欧米諸国や日本ではプラントベースに注目が集まっています。以前からベジタリアンなどの一部の人には食べられていましたが、ここ数年で急激に認知され、市場が年々大きくなっています。また味やクオリティもどんどん進化を見せるプラントベース。 この記事では、東京でプラントベースを楽しめるレストランやカフェをご紹介します。 プラントベースが注目される理由 出典:pexels.com プラントベースにはいくつか注目される理由があります。なかには健康増進のために取り入れている人もいますが、関心を集める大きな理由は環境への配慮から。 今世界では、増え続ける人口に肉などのタンパク質の生産が追いつかなくなってきています。このまま人口にあわせて肉を増産していけば、水不足や水質汚染に繋がり、地球温暖化にも拍車をかけると言われています。また、飼料となる穀物の増産も、農地を確保するために森林伐採を行う必要が出てくるなど、環境に大きな負荷をかけることに。 そこでお肉や動物性の食品にかわって、タンパク質の供給源として代替肉などのプラントベースが選ばれているのです。 関連記事:新たな食の選択肢、プラントベースとは?進化した代替肉や植物性ミルクが続々登場 東京都内でプラントベースが食べられるレストラン ここ数年で、東京都内にもプラントベースが楽しめるお店がどんどん増えています。プラントベースと言っても味気ないものばかりではなく、ファストフードのように手軽なものややスイーツがいただけるところ、お酒が飲めるところなど、普通のレストランと同じように、しっかりと満足感を味わえます。時間帯や一緒に訪れる人に合わせて、プラントベースのレストランを選んでみては。 ベジタリアンブッチャー(池袋) ヨーロッパ各国にも代替肉を卸すオランダの大手代替肉メーカーが手掛ける、プラントミートのお店。メニューは全品プラントベースで、前菜からサラダ、メイン、パスタ、デザートなどを楽しめるコースも提供。量り売りでプラントベースミートの購入も可能です。また、フードロス削減のためにお持ち帰りを推奨したり、余った食材を提供するフードシェアリングなど新しいアイディアを導入する、最先端のサステナブルレストラン。 https://www.thevegetarian-butcher-jap.com/store/ この投稿をInstagramで見る The Vegetarian Butcher🇯🇵(@thevegetarianbutcher_jp)がシェアした投稿 PLANT BASED TOKYO(代々木) 環境負荷の低い大豆のおいしさを最大限に引き出した料理が楽しめるカフェ。最新技術によって作られた大豆ミートやチーズのような豆乳クリームなど、驚きの大豆料理が楽しめます。メニューは肉・魚介類・卵・乳製品等の動物性食材は一切不使用。主菜と副菜がセットになったプレートは野菜たっぷりで見た目にも鮮やか。テイクアウトのメニューもあり。 https://www.plantbasedtokyo.jp/ この投稿をInstagramで見る プラントベースド東京(@plantbased.tokyo)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る プラントベースド東京(@plantbased.tokyo)がシェアした投稿 2foods(八重洲、銀座、渋谷、六本木、麻布、人形町) 「ヘルシーなジャンクフード」が楽しめるプラントベースレストラン。メニューは、ドーナツから丼もの、麺類、カレー、サラダと実に豊富。プラントベースエッグを使用したオムライスは、定番メニューのひとつ。コールドプレスジュースやコーヒーなどドリンク類も充実し、子ども向けのメニューがあるのも特徴です。メニューは動物性の原料を使っていないのはもちろん、白砂糖や合成着色料なども不使用。グルテンフリーのものもあり、どんな人でも使いやすいカフェ。 関連記事:プラントベースの2foods。ヘルシージャンクフードの気になるお味は? https://2foods.jp/ この投稿をInstagramで見る 2foods(@2foods.official)がシェアした投稿 CITYSHOP(渋谷、東京駅) 野菜をふんだんに使ったメニューがいただけるCITYSHOP。メインを選べるデリプレートのほか、サラダやスイーツも充実しています。ソイミートパティを使ったヴィーガンバーガーなどミートフリーのメニューもあります。プラントベースに特化したカフェではないので、お肉やお魚を使ったメニューもあり、その日の気分で選べるのが嬉しいポイントです。 https://cityshop.flavorworks.co.jp/ この投稿をInstagramで見る cityshop_food(@cityshop_food)がシェアした投稿 AIN SOPH.(銀座、池袋、新宿) 肉、魚、乳製品、卵など動物性食材を一切使っていない料理が楽しめるカフェ、AIN SOPH.(アインソフ)。野菜本来の味が楽しめ、お肉が入っていないことを忘れてしまうくらい、満足感の高いお料理がいただけます。乳製品や卵不使用のヴィーガンスイーツもクオリティが高く、中には植物性チーズを使ったメニューも。店舗によって違うメニューがあるので、それぞれの店舗に訪れる楽しみがあります。 https://www.ain-soph.jp/ この投稿をInstagramで見る AIN SOPH. (アインソフ) 公式|ヴィーガン(@ainsoph_jp)がシェアした投稿 菜道(自由が丘) 「美食同源」をモットーにした、フルヴィーガンの和食がいただけるレストラン。肉、魚、牛乳、砂糖、化学調味料などは使っていないのに、質素な精進料理のようなものではなく、麺類や丼もの、居酒屋メニューなどのジャンクなお料理がいただけます。ヴィーガンのお酒も揃えているので、ヘルシーに飲みたいときに。ランチからカフェタイム、ディナータイムまで時間帯問わず、プラントベースの食事とスイーツが楽しめます。 https://saido.tokyo/ この投稿をInstagramで見る 菜道(@saido_tokyo)がシェアした投稿 Ballon TOKYO(中目黒) サステナブルなファストフードを掲げるファラフェルスタンド。ファラフェルとは、中東で食べられているコロッケのような料理で、ひよこ豆をすりつぶしたものを揚げたもの。こちらではファラフェルと野菜をピタパンにサンドしたファラフェルサンドをいただけます。他にも卵、乳製品、砂糖を使わず100%植物性の原料で作られたソフトクリームもおすすめ。しっかりとした食べ応えは、サンドイッチもソフトクリームも植物性の原料しか使われていないことが信じられないほど。気軽に立ち寄れるのも嬉しいポイントです。 https://www.ballontokyo.com/ この投稿をInstagramで見る Ballon / バロン(@ballontokyo)がシェアした投稿 この投稿をInstagramで見る Ballon / バロン(@ballontokyo)がシェアした投稿 Terra Burger & Bowl(代官山) 今話題のブッダボウルが食べられるお店。野菜を中心にフルーツやきのこ、穀物やナッツなどをバランスよく盛り付けたブッダボウルは、色鮮やかで、とてもヘルシー。しっかり野菜が摂れて満足感の高い一皿です。ヴィーガンバーガーもお店の人気メニュー。肉厚で肉汁さえも感じられるパティは、もちろん100%プラントベース。バンズはグルテンフリーのものに変更可能です。 https://www.terrabb.com/ この投稿をInstagramで見る Terra Burger & Bowl(@terraburgerandbowl)がシェアした投稿 最先端プラントベースレストランを外食の選択肢に 出典:pexels.com 東京都内には、プラントベースのカフェやレストランが次々とオープンしています。最先端の技術で進化し続けているプラントベースフードは、今までのプラントベースの常識を覆すかもしれません。おいしいのにヘルシーで、環境負荷も低い。レストランを選ぶ際は、健康と持続可能な食のために、プラントベースのレストランを選んでみてはいかがでしょうか。

  • 新たな食の選択肢、プラントベースとは?進化した代替肉や植物性ミルクが続々登場

    今、代替肉などの食品がベジタリアンなど一部の人にとどまらず、大きな広まりを見せています。動物性の原料をなるべく減らし、その代わりに植物性の原料へとシフトしていくことには様々なメリットがあります。健康の向上だけでなく、環境問題や食糧危機の解決方法になるとされている「プラントベース」とはどういうものか、私たちや地球環境にとってどんなメリットがあるのかをご紹介します。 プラントベースとは? 出典:pexels.com プラントベースとは、プラント(=植物)がベース(=基本)になっているという意味で、動物由来の原料を完全に使用しない、または極力使用しない食事のことです。ベジタリアンやビーガンと呼ばれる菜食主義の食事と違い、すべての食事で動物性の食品を摂らないというわけではありません。また、動物愛護の観点からベジタリアンやビーガンになる人も多い中、プラントベースは環境保護などを目的にしているため、それらとは区別されています。 代表的なプラントベースフード 植物性の原料が使われるプラントベースの食品のことは、「プラントベースフード」と呼ばれています。私たちが身近に購入できたり、レストランで選べるプラントベースフードにはどんなものがあるのでしょうか。代表的な例をご紹介します。 代替肉 出典:pexels.com 大豆ミートやフェイクミート、プラントベースミートとも呼ばれる代替肉は、プラントベースフードの代表的な食品です。大豆やエンドウ豆を使用し、お肉そっくりの味や食感に作られた代替肉は、ここ数年で市場が急拡大し、クオリティがどんどん上がってきています。スーパーに並ぶのは、ブロック状になっているものやミンチ状になっているもの、さらには、ハムやハンバーグ、ソーセージ、肉団子、からあげ、ナゲット、メンチカツ、サラダチキンタイプなど調理されている加工品の種類も豊富です。 プラントベースミルク 出典:pexels.com 牛乳にかわる代替ミルクとして人気が高まっているのが、豆類やナッツなどを原料にしたプラントベースミルク。豆乳をはじめ、アーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルクなどが有名ですが、カシューナッツミルク、ピーナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、マカダミアミルク、くるみミルクなど、種類が豊富です。料理に使えるものや、お砂糖などで飲みやすく加工されているものもあります。 ※ミルクによっては環境に高い負荷をかけているものがあります。生産方法を確認することが大切です。 植物性チーズ 生乳が原料のチーズですが、豆乳や豆腐などの大豆やココナッツオイルを原料に、チーズに似せて作られたチーズ風食品が出てきています。大きなブロックになっているものや、シュレッドタイプ、スライスになっているものもあり、料理によって使い分けがしやすくなっています。味だけでなく、見かけも生乳から作られたチーズとそん色ありません。 植物性ヨーグルト チーズと同じく生乳が使われるヨーグルト。このヨーグルトも植物性の原料が使われ、植物性のヨーグルトとして種類を増やしています。大豆やアーモンドミルク、ココナッツなどから作られており、生乳からできるヨーグルトの様に、とろっとした食感が楽しめます。さらには飲むタイプも発売されています。 植物性バター 植物性のチーズとヨーグルトにくわえ、植物性のバターも登場しています。ココナッツオイルなどが使われており、マーガリンよりも濃厚で硬さなども本来のバターに寄せて作られています。そのため、パンに塗るだけでなく、料理やお菓子作りにも適しています。 外食産業や食品メーカーが注目するプラントベース 出典:pexels.com 2020年度、植物性の食材を使った代替食品の市場はおよそ246億円。2010年度の48億円と比べると、10年間で約5倍以上の拡大を見せています。消費者の関心が年々高まっており、外食産業や食品メーカーが注目している食品であることが伺えます。 大手企業も参入を始めており、モスバーガー、ロッテリアなどのハンバーガーチェーンやファミリーレストランではソイミートなどが使われたプラントベースのメニューが提供されています。 伊藤ハムやセブンプレミアム、トップバリュなどでは、代替肉を使用した加工品が充実。ハンバーグやハムなどたくさんの種類が開発されています。 また、スターバックスなど大手のコーヒーショップでは、牛乳の代わりとして、ソイミルクやアーモンドミルク、オーツミルクに変更することができます。 関連記事:環境に優しいおいしさ。東京でプラントベースを楽しめるレストラン&カフェを紹介 海外のプラントベース事情 プラントベースは海外でも消費者の支持を集めています。「フレキシタリアン」とは、菜食主義のビーガンやベジタリアンに対して、準菜食主義者のこと。環境への配慮や、アニマルウェルフェアの観点から、このフレキシタリアンが欧米では増加しています。 関連記事:動物の権利も尊重する。アニマルウェルフェアとは アメリカでは、2021年のプラントベースの市場は70億ドルにのぼり、前年からの1年で27%も増加。味や品質もどんどん進化し、企業同士の競争も激しくなっています。[1] また、EUでは欧州委員会が進める「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略で植物性の食事への移行を支持しており、アメリカ同様、プラントベースの市場は拡大しています。 世界全体で見ると、2019年に食肉産業における代替肉食品は1%でしたが、2029年には10%にまで増えると予測されています。[2] あと数年で訪れる「タンパク質危機」 レストランだけでなく、スーパーでも様々な種類が買えるようになってきているプラントベースフード。プラントベースが注目されるのには、いくつか理由があります。 急増の一途をたどる世界の人口。鶏や豚、牛など、今の畜産によるタンパク質だけでは、その人口を支えることができず、早ければ2025~2030年に需要と供給のバランスが崩れると言われています。タンパク質の需要と供給が逆転する現象は、「タンパク質危機」と呼ばれ、今のタンパク質の量では人口をまかないきれなくなるのです。それまでに十分な量のタンパク質を確保することが大きな課題になっています。 牛肉1kgに対して11kgもの穀物が必要に 出典:unsplash.com しかし、タンパク質危機回避のために、単純に畜産物の量を増やしていけばいいかというと、そうではありません。増産のためにはより多くの水と土地を使用します。 さらに、飼料となる穀物も増産する必要があります。お肉1kgを生産するのに必要な飼料をとうもろこしで換算すると、牛肉は11kg、豚肉では6kg、鶏肉では4kgと言われています。穀物を育てるのに大量の水と広い土地が必要になり、それは水不足や森林伐採の問題にも繋がっていくのです。[3] また、同量のタンパク質を摂るとき、大豆1に対して、牛に与える大豆などの飼料はその32倍必要になると言われています。お肉をプラントベースフードに置き換えることは、世界が直面するタンパク質危機に向けた一つの解決策と言えるでしょう。 畜産がもたらす環境への負荷 出典:pexels.com 土地や水を多く使用するという問題の他にも、畜産がもたらす環境への負荷は非常に大きいとされています。 CO2の約25倍の温室効果があるとされるメタンガス。牛のげっぷはそのメタンガスを多く含んでいます。CO2に換算すると、家畜のげっぷは全世界で発生している温室効果ガスの4%にも上るほど大きな割合を占めており、地球温暖化の理由のひとつになっていると言われています。[4] また排せつ物が増えることも問題の一つです。家畜の排せつ物は河川や地下水へ流れ込むことで水質汚染を招くとされています。 持続可能な食のために選びたいプラントベース 出典:pexels.com 健康のためや動物愛護のためだけでなく、環境のためにも選びたいプラントベースフード。日本は昔から大豆になじみが深く、調理方法もたくさんあるので、植物性の食品を選ぶのにも困りません。そして今さらに多くのプラントベースフードが登場しています。完全に置き換えることは難しくても、一部お肉に置き換えて利用していくことが持続可能な食に繋がっていくのではないでしょうか。 【参考】[1] Good Food Institute https://gfi.org/marketresearch/[2] ジェトロHP https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/806084bfd0d121f7.html[3] 農林水産省HP https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html[4] 農研機構HP https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nilgs/144910.html