「イクメン」や「女子力」も。ジェンダーバイアスとは?身近な例から考えてみよう

「ジェンダーバイアス」という言葉を聞いたことはありますか。
人が無意識に持つ固定観念のなかには、ときに差別や偏見につながるものも存在しています。性差への差別につながるジェンダーバイアスも、固定観念のひとつです。

この記事では、私たちの身近な例をあげながら、ジェンダーバイアスについて解説します。

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ジェンダーバイアスとは

出典:unsplash.com

ジェンダーバイアスとは、「性」を意味する「ジェンダー」と「偏見・先入観」を意味する「バイアス」からなる言葉です。男女の役割を固定的に考え、社会的・文化的に性差や男女の役割、性的マイノリティについて偏見を持つことです。

例えば、「男の子は青が好き」「女の子はピンクが好き」などの決めつけもジェンダーバイアスに該当します。

無意識に使われることが多いので気が付きにくいかもしれませんが、よく注意してみると、私たちの日常生活のなかにはジェンダーバイアスが多く存在します。

身近な例から、ジェンダーバイアスについて考えていきましょう。

身近にひそむジェンダーバイアス

学校や職場、社会での例

例えば、「男性は理系」「女性は文系」など、個人的な能力ではなく、性差によって得意分野が変わる、という考えもジェンダーバイアスに該当します。

男女の性差により職業に違いが生じる場合もあり、このことが男女の賃金格差を生むことも長年の問題になっています。

 令和4年度に内閣府男女共同参画局によって行われた「性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」では、全国20代~60代の男女10,906人を対象にアンケートを実施。

「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と答えた人は男女ともに40%を超え、「育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきではない」は男女ともに30%を超えています。

古い考え方だと思われがちですが、現在もジェンダーバイアスを含んだ考え方は深く根付いていることがわかります。

家庭内での例

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学校や職場だけではなく、家庭内にもジェンダーバイアスは存在しています。

例をあげると、多くの方が「男性は経済的に女性を支えなければならない」「女性は家事や育児などを担当しなくてはならない」といった価値観に直面したことがあるかもしれません。

また、「女の子だからお手伝いしなさい」「男の子だから外で遊んできなさい」など、子どもに対する声かけのなかにも、ジェンダーバイアスを想起させるものがあります。

近年よく耳にする言葉のなかにも、ジェンダーバイアスに関するものが存在しています。

・育児をする男性をさす「イクメン」
…男性は育児よりも仕事をするべきという考えから、男性にのみこのような言葉が使われる

・女性の容姿や身だしなみ、気遣いの高い女性をさす「女子力」
…女性はオシャレで家庭的であるという認識が含まれている

仕事や育児は性別に関わらずおこなうものであり、男性の中にオシャレが好きで家庭的な人はたくさんいます。

ポジティブな意味合いや誉め言葉などで使われることも多く、会話の中で何気なく使う方も多いでしょう。使用することが直接的に偏見に繋がる訳ではありませんが、ジェンダーバイアスの要素を含む言葉は、無意識的に、しかし非常に多く使われているのです。

個人の能力についての例

「男性だから弱音を吐いてはいけない」「女性だから優しくなければならない」など、個人の性格や考え方に関係なく性差で区別するような価値観も、ジェンダーバイアスに該当します。

さらに、「男性は女性に比べて体力がある」「女性は男性よりも細やかな気配りができる」など、個人の能力についてのジェンダーバイアスは、実際にはそうでない場合でも、思い込みによって、精神面だけでなく、身体的な能力についても強い影響をもたらしています。


複数の性的アイデンティティーについての例

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「男性」「女性」に限らず、複数の性的アイデンティティーを持つ人に対しても、いまだ偏った考え方が存在します。

「LGBTQ+」などの性的アイデンティティーを持つ当事者への差別や偏見などもジェンダーバイアスに該当します。

思春期にいじめやからかいの対象になった、就職活動の際に自身の性的アイデンティティーをカミングアウトしたことで内定を取り消されたなど、ジェンダーバイアスによる偏見で不当な扱いを受けるというケースもあります。

ジェンダーバイアスの問題点

これまで見てきたように、ジェンダーバイアスを含んだ考え方は、個人や社会にとって不利益を引き起こしてしまいます。。性差に対して固定観念を持つことで、以下のような問題が起こることが懸念されます。

・思い込みにより、個人の能力や個性が性差によって制限される
・性差によって職業に違いが生まれることで、雇用や賃金の格差が生じる
・暴力や虐待などが発生するきっかけになる

以上の問題に該当しなくとも、ジェンダーバイアスによって生きづらさを感じている人や、不快な思いをしたことのある人は多いのではないでしょうか。

また、国によっては「LGBTQ+」などの性的アイデンティティーを持つことが罪に問われるケースもあり、深刻な人権侵害につながっています。

日本のジェンダーギャップの低さもジェンダーバイアスが影響?

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男女格差の現状を各国の統計をもとに評価した「Global Gender Gap Report」(グローバル・ジェンダーギャップ・レポート、世界男女格差報告書)の2024年版では、日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位でした。

これは「ジェンダーギャップ指数世界経済フォーラム(WEF)」によって発表されるもので、各国の男女格差は「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価されます。

24年版では、日本は特に「政治」「経済」面での指数が低いと指摘されました。

具体的には、女性の首相が一人も輩出されていないこと、衆議院の女性議員の比率が約1割にとどまるなどのほか、労働参加率の男女比や、男女間の賃金格差、女性管理職の少なさなどが低水準となっています。

そのほか、研究職の仕事に就く女性は全体の16.9%(令和2年時点)、看護師として働く男性は全体の8.6%(令和4年時点)など、男女比が極端に偏る職種も少なくありません。これもジェンダーバイアスの影響が関係しているのかもしれません。

ジェンダーバイアスをなくすためにできることは

私たちがジェンダーバイアスをなくすためにできることはなんでしょうか。まずは、自分が無意識に持っている「ジェンダーバイアス」について考えてみましょう。
そして、身近にあるジェンダーバイアスについて見つめ直し、偏見をなくすにはどうすればいいのか考えたり、使う言葉を見直したりすることも一つの方法といえるでしょう。

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この記事を書いた人

元舞台俳優からライターへ転身した1児の母。
日本舞踊や三味線を学んでいた経験から日本文化の魅力と大切さに気付き、世界に誇る日本文化や日本の古典文学、芸能の魅力を発信する。
趣味は読書と寺社仏閣巡り。

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