2024年7月、フランスのパリにて開幕するパリオリンピック・パラリンピック。
これまでオリンピックやパラリンピックは規模の大きさゆえに環境にかける負荷などが指摘されてきました。
しかし、パリオリンピック・パラリンピックは「史上初の持続可能なオリンピック・パラリンピック」という画期的なビジョンを掲げ、環境負荷低減に向けた様々な取り組みを実施する予定です。
本記事では、パリオリンピック・パラリンピックのサステナブルな取り組みをご紹介します。
パリオリンピック・パラリンピックが開幕
2024年7月26日から8月11日までの期間、フランス・パリにて「Games wide open(広く開かれた大会)」というテーマを掲げ、パリの街全土を競技の舞台としたオリンピック・パラリンピックが開催されます。
パリオリンピック・パラリンピックはジェンダーバランスを意識した種目の再編など、従来の枠組みを超えた多様性と開放性を追求する大会を目指しています。
クライメート・ポジティブなパリオリンピック・パラリンピック
パリオリンピック・パラリンピックでは、気候変動対策にも力を入れたクライメート・ポジティブな大会を目指しています。クライメート・ポジティブとは、温室効果ガスの排出量より、削減量を多くすることです。
今回の大会では、2012年のロンドン大会や2016年のリオデジャネイロ大会と比べて、二酸化炭素の排出量を半減させることを目指しています。これまでの大会の中で最もサステナブルな大会にするために、環境に配慮したさまざまな施策を導入。具体的な取り組みを5つご紹介します。
- 使い捨てプラスチックを使用しない
- プラントベースフード・国内産の食材を積極的に使用
- 競技施設の95%は既存・仮設の施設を利用
- 環境と選手に優しい選手村
- 環境に負荷をかけない移動手段
順番に解説していきます。
使い捨てプラスチックを使用しない
パリのイダルゴ市長は、パリオリンピックの大会にて、使い捨てプラスチックを禁止することを発表しています。深刻化するゴミ問題を憂慮しての取り組みです。
競技会場ではペットボトル飲料の持ち込みは不可に。代わりにマイボトルの持参が奨励されています。大会の大手スポンサーであるコカ・コーラは再利用可能なガラス瓶を利用し、給水器とソーダファウンテンを700か所以上設置して飲料の提供を行います。
さらに、マラソン競技の給水所では、再利用可能なカップを使用するなど、徹底的に使い捨てプラスチックの使用を制限します。
プラントベースフード・国内産の食材を積極的に使用
パリオリンピック・パラリンピック開催中は、選手やボランティア、観客、メディア関係者に向けて、1,300万食以上の食事が提供される見込みです。
そこで環境負荷の高いとされる動物性食品の使用を大幅に減らし、代わりに植物性食品を取り入れることなどを示したフードビジョンが発表されました。
販売される食事の少なくとも60%以上はベジタリアン向けに、ボランティアやスタッフの食事に関しては、50%以上をベジタリアン向け、動物性タンパク質の半数以上が植物性タンパク質に置き換えられる予定です。
食材に関しては、輸送にかかる環境負荷を抑えるため、また地元の農家を支えるために80%をフランス国内から調達します。
またフードビジョンでは、食品ロス量を可能な限り抑え、未消費の食品は100%再利用することが目標とされています。
競技施設の95%は既存・仮設の施設を利用
パリオリンピック・パラリンピックでは、新たな会場をできる限り作らない方向で進めています。競技施設の95%を既存施設や仮設施設を活用することで注目されています。これは、従来のオリンピック大会とは異なる、環境負荷低減への取り組みを示すものです。
また、新たに建築する施設は、競技大会終了後も地域で利用できるようにするなど、環境に配慮した上、大会後の地域にも負担をかけない工夫がなされています。
環境と選手に優しい選手村
パリオリンピック・パラリンピックでは、選手村も環境に優しい設計です。
建物には天然素材を積極的に使用。外壁、構造や床には木材を使っており、屋上には太陽光パネルを設置。選手村は100%再生可能エネルギーで運営されるほか、提供される全ての食事には持続可能であると認証された食材が使用されます。
また、内部もエコであることにこだわり、段ボールで作られたベッドは競技大会後にリサイクルされます。マットレスはリサイクルされた漁網から作られており、これは大会後さらに再利用される予定。
内部には、寄せ木とタイル張りの床、白く塗られた壁、眺めのよい小さなバルコニーを設置。エコで居心地の良い設計は、競技大会中はもちろん、その後の再利用する際にも理想的な造りとなっています。
環境に負荷をかけない移動手段
パリオリンピック・パラリンピックの会場となる、パリ市内・郊外の25ヵ所の競技会場にはすべて、自転車シェアサービスを含めた公共交通機関でアクセスが可能です。
これに伴いパリでは、サイクリングロードの整備やレンタサイクルの増設が進めてきました。
さらに、観客の輸送の一部には、走行時にCO2などの温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車を採用。この取り組みは、環境負荷の低減と持続可能な大会運営を目指すものであり、トヨタなどの企業が電気自動車の提供に積極的に参加しています。この施策は、大会史上初めてのものとなるでしょう。
パリオリンピック・パラリンピックが環境問題解決のきっかけに
今回はパリオリンピック・パラリンピックのサステナブルな取り組みをご紹介しました。今回の大会では今まで以上にサステナブルな大会を目指しており、環境負荷削減に向けた様々な取り組みを実施しています。
オリンピック・パラリンピックのような大規模な大会において、持続可能性を完全に実現することは容易ではありません。しかし、世界中の人々が集まり、注目する大きなイベントは、環境問題への意識を高める絶好の機会です。革新的な取り組みを通じて、選手やボランティア、観客やメディアの環境問題への意識を高め、持続可能な社会の実現に向けた議論を促進することはできます。
パリオリンピック・パラリンピックが示す持続可能性への取り組みは、社会にとって重要な指針となっていくでしょう。