ミラノのハーブ店が地域を巻き込み完全プラフリーにするまで【現地取材】

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私たちの生活に溢れている、プラスチック製品。機能的で安価な一方で、回収・処理が最も難しい素材の一つだ。
自然に分解されないプラスチックゴミ約800万トンが毎年海へと溜まり、2050年には世界の魚の容量を超えると言われている。

知ってはいても、私たちの日常生活やビジネスで、完全プラスチックフリーを実現するのは簡単ではない、このプラスチック問題。
しかし、不可能ではないことを実証したショップがミラノにある。どのようなきっかけで完全プラスチックフリーを目指し、それを成し遂げたのか、オーナーにその想いを聞いた。

地元の人と一緒に実現するプラスチックフリー生活

ヨーロッパの伝統的なハーブ療法、フィトセラピーは、古くからヨーロッパ人の生活に根付いている自然療法だ。イタリアにも「エルボリステリア」と呼ばれるハーブ薬局が数多くある。

ハーバリストのオルネッラさんが経営する「QUINTESSENZA(クインテッセンツァ)」は、他のエルボリステリアと同じように、ハーブ、そして自然原料やオーガニックの製品を取り扱ってきた。3年前、マイクロプラスチックの海洋汚染が喫緊の課題だと知り、一人一人の意識から変えていくことが大切であることを認識。それ以来、店内から全てのプラスチック製品を排除した。 地域密着型のこのお店がプラスチックフリーにすることで、地元の人々と一緒に少しでもプラスチックを出さない生活を実現しようとしたのだ。

品質が良いものも、売れ筋の商品も、一部でもプラスチックを使っていれば入荷を中止。店頭や倉庫にあったプラスチック製品は、全て半額にして売り出した。オルネッラさんは娘のキアラさんと二人三脚で、日々プラスチックゴミを出すことへの罪悪感と疲労感を、プラスチックフリー実現へのエネルギーに変えたのだ。
まわりの反応はというと、若い客層からはすぐに受け入れられたが、 高齢の常連客からは、最初は否定的な意見もあったという。
しかし人々の中で環境問題への関心が高まっていることもあり、今では多くの人の賛同を得ている。

高品質なプラスチックフリー製品との出会い

店内の在庫を処分するのと同時に始めたのは、ヨーロッパ各国で作られているプラスチックフリー製品のリサーチだ。環境に負担の少ないものを探し出し、取り扱いを始めた。

当初は難航することを覚悟していた買い付け。しかし探してみると、イタリアやヨーロッパの小さな村でプラスチックを使わず丁寧に作られている高品質なコスメや日用品、アイテムが次々と見つかった。プラスチックフィルムの代替品や、紙ゴミさえ出さずに土に帰すことのできる素材があるなど、技術も進んでいることもわかった。

二人が想像していた以上にマーケットは厚かったのだ。
そして、それらの製品をショップで扱うことが、小さな製造元を応援することにつながるという好循環が生まれた。
プラスチックフリーのお店を作ると決めた二人を待っていたのは、プラスチックフリー製品を作るということに本気で取り組み、情熱を注ぐ人々との素晴らしい出会いだった。

プラスチックフリー生活のヒントになる情報も発信

QUINTESSENZA(クインテッセンツァ)のブログでは、エコロジカルな生活を送るためのアドバイスも発信している。

オルネッラさんオススメの、誰でも取り入れやすく効果的なプラスチックフリーアイテムは、スチール製ウォーターボトル。
今やマイボトルを持つことは当たり前、モードとさえ見なされる風潮もあり、様々なデザインやサイズから選べるようになった。ペットボトルゴミが毎分33,000本以上地中海に流れている現状を食い止める、効果的なダイレクトアクションだ。

2つ目は、固形シャンプー。

こちらも様々なタイプが揃い、髪や頭皮への効果を選ぶことができる。シリコンなどの非分解成分を含まず、パッケージは詰め替えでゼロウェイストを実現しやすい。軽量でコンパクトなのに従来のシャンプーの2倍長持ちするなど、メリットが目白押しだ。

家庭でも不可能ではないプラスチックフリー生活

この3年間で世の中の風向きも追い風となり、転換期の経営的な負担を乗り越え、現在は安定したショップの運営ができているという。

最後に、店舗よりも難しいと思われる家庭でのプラスチック削減への取り組みを聞いた。

「日用品は容器をお店に持ち込んでリフィル。プラスチックを使用したスーパーの商品は買わず野菜やフルーツは農家から直接買っています。たとえばプラスチックの容器があっても、それを捨てずに使い続けるのも大切です。ショッピングバッグ以外にどうしても袋が必要になるときは紙袋を利用しています。」とのこと。
「生活を大きく変えなくても意識を変えるだけで実際に環境負荷の少ない生活が送れていますよ。」と頼もしい答えが返ってきた。

【ショップ情報】
QUINTESSENZA
Via Tolstoi 40  Milano Italy
https://www.quint-essenza.it

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この記事を書いた人

writer

東京で大学卒業後、映像ディレクター職を経て、ヨーロッパやアジアなどを転々と旅する20代を送る。NYへ留学し、その後ミラノに移住。 出産や料理の仕事、ヨガを通して、オーガニック食材や日用品にこだわるようになり、地球環境への意識が高まるきっかけに。

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