日本では2024年8月15日に、79回目の終戦の日を迎えます。戦争というと、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻や、2023年から続くガザでの紛争の激化などが、悲しくも記憶に新しい出来事です。今も世界のどこかで、戦争が行なわれており、日本も他人事と捉えることはできません。
今回は、戦争と平和について考えるための絵本を厳選しました。世界が戦争に揺らぐ中、子どもと一緒に戦争や平和について考える機会を設けてみては。
終戦の日。みんなで戦争と平和について考えよう
2023年のユニセフの発表によると、紛争地帯で暮らしている、または紛争地帯から逃れようとしている子どもは4億人。これは世界中の子どもの5人に1人にあたります。
紛争地帯では、多くの学校や病院が攻撃され、子どもたちも武装勢力として徴兵されて、多くの命が奪われています。戦争は人々の貧困問題にも直結します。家庭の収入が激減することで、生活は苦しくなり、子どもたちは教育を受ける機会を失っているのです。
むごい戦争が起きる中で、私たちに出来ることの一つとして、戦争の現状や歴史について学ぶことがあります。子どもが、戦争を知ることのファーストステップに最適なのは絵本を読むことでしょう。
終戦の日のある8月は、家族みんなでいつもと違った絵本を手に取ってみませんか。
戦争と平和について学べる絵本7選
ここからは戦争と平和について学べる絵本を7冊紹介していきます。子どもだけでなく大人にも読み応えのある絵本が多く、平和に慣れていることにハッと気付かされる絵本です。
『へいわとせんそう』 たにかわしゅんたろう(文)・Noritake(絵)/ブロンズ新社
『へいわとせんそう』は、戦時中に空襲に遭った経験を持つ詩人・谷川俊太郎氏と、モノクロのドローイングが話題のイラストレーター・Noritake氏が作った絵本。絵本を開くと左右のページには「へいわ」と「せんそう」という、状況が全く異なるイラストが描かれています。イラストも言葉もシンプルで、子どもに直接的に訴えかける一冊。対象年齢は3歳からです。
絵本では「へいわのボク」と「せんそうのボク」の違い、「へいわのチチ」と「せんそうのチチ」の違いが見開きで描かれ、様々な状況における平和と戦争の比較ができるようになっています。では、「へいわのかぞく」と「せんそうのかぞく」は? 「へいわのくも」と「せんそうのくも」は? 子どもと一緒に、考えながら絵本をめくってみて。
『おひさまとおつきさまのけんか』 せなけいこ/ポプラ社
『おひさまとおつきさまのけんか』は絵本作家であるせなけいこ氏が、2003年に発行した本作。『ねないこだれだ』などの絵本が人気のせなけいこ氏が「せんそうってなあに」をテーマに絵本を作りました。3歳から5歳の子どもが対象です。
些細なことで喧嘩をし、仲がどんどん悪くなっていくおひさまとおつきさまの物語。2人の喧嘩では収まらず、色々な人を巻き込んで戦いを始めていきます。おひさまとおつきさまを用いて戦争を描いている作品ですが、ストレートに戦争について問いかけているのが特徴です。どうして戦争が起きてしまうのか、小さい子どもでも考えられる内容で、イラストはポップでありながら奥深いストーリー。
ちいちゃんのかげおくり あまんきみこ(文)・上野紀子(絵)/あかね書房
『ちいちゃんのかげおくり』は1982年に発売され、長い間子どもたちに読み継がれている絵本です。対象年齢は小学校低学年以降で、小学校3年生の教科書にも掲載されています。
物語では、第二次世界大戦の悲惨さを描いています。主人公のちいちゃん一家が「かげおくり」の遊びをしていたのは、お父さんが軍隊の一員として戦地へ行く前日のことです。お父さんが出征してしばらくすると、ちいちゃん一家は空襲に遭います。ちいちゃんは焼け野原に一人ぼっちで空腹に耐え、生きながらえようとします。多くの戦争孤児たちの姿を描く作品です。
『ぼくがラーメンたべてるとき』 長谷川義史/教育画劇
『ぼくがラーメンたべてるとき』は絵本作家・画家である長谷川義史氏の作品で、日本絵本賞や読書感想文全国コンクールの課題図書などに選ばれた絵本です。対象年齢は3歳以上で、小学校高学年の子どもにもぴったりです。
絵本では、ぼくがラーメンをたべてるとき、同じときに、隣に住むみっちゃんは何をしているのか、その隣に住む男の子は何をしているのかが描かれます。
そして国境を越え、世界の子どもは働いていたり、倒れていたり…。
笑っている子も、泣いている子もいる中で「どのような状況でも立っていて欲しい」という世界の子どもたちへの平和への願いを作者は伝えています。絵本の表紙やタイトルのポップな印象とは異なり、子どもたちに強いメッセージを伝えている一冊。
『そらいろ男爵』 ジル・ボム (文)・ティエリー・デデュー (絵)・中島さおり(訳)/主婦の友社
『そらいろ男爵』は2014年第一次大戦開始100年を記念して刊行され、フランスで児童書に贈られるサンテグジュペリ賞を受賞した絵本。日本でも第二次世界大戦の終戦70年となる2015年に刊行し、平和をもたらす「本の力」「ことばの力」を分かりやすく伝える貴重な一冊です。子どもに読み聞かせる大人も楽しめると、好評です。
お手製の青い飛行機に乗り、バードウォッチングを楽しんでいた「そらいろ男爵」。しかし戦争が始まり、お気に入りの飛行機を迷彩色に塗り替えて、戦いに参加することになります。爆弾の代わりに様々な本を効果的に投下し、将軍や兵士たちが本に夢中になります。徐々に平和に導いていく中、本がなくなり最後に投下したものは何だったのか…注目です。
『へいわってどんなこと?』 浜中桂子/童心社
『へいわってどんなこと?』は日本の絵本作家が、中国と韓国の絵本作家に呼びかけ、3ヶ国12人の協力で実現した絵本。3年以上の月日をかけ、各国の歴史を踏まえ、国を超えた意見交換を積み重ねて実現した取り組みとして注目されています。また小学校低学年の課題図書に選ばれている絵本でもあります。
作品は日本人だけでなく、世界の人達を含めて、客観的な立場で描かれている点が魅力。子どもの視点で日々の暮らしから平和について考え、平和の意味を問います。「子どもたち自身の意志で平和な世界を作っていける」というメッセージを込めて戦争のシーンがダイナミックに描かれた本作。子ども向けでありながら大人の心にも響くと反響がある絵本です。
『へいわってすてきだね』 安里有生(文)・長谷川義史(絵)/ブロンズ新社
『へいわってすてきだね』は、沖縄市生まれ・与那国島育ちの安里有生氏による絵本。2013年、沖縄で行われる慰霊の日の式典にて、6歳の安里少年が詩を朗読する凛々しい姿が報道され、全国で大きな反響を呼びました。男の子の思いを丸ごと受け止めたいと、絵本作家の長谷川義史氏が挿絵を担当しました。
詩を書いた当時、安里氏は小学1年生。平和の素晴らしさ、戦争の恐ろしさについてストレートに書いた詩が、大人の心にも深く響きます。世界で戦争が起こる今、ひとりでも多くの人に読んで欲しい絵本です。
大人も子どもも絵本で戦争と平和を学ぼう
戦争についての絵本を読み聞かせしたくても「子どもに分かるのかな」「怖がってしまわないのかな」と不安を抱える方もいるかもしれません。しかし、イラストを効果的に使用した絵本や、子どもたちの心の負担にならない絵本、教科書に採用された絵本など幅広い種類があります。色々な絵本を手に取って、ぜひお子さんに合うものを見つけてみてください。