5月5日に菖蒲湯に入る理由は?気軽に楽しむ日本の風習と歴史を紹介

5月になると、店先に「菖蒲の葉」が並ぶ光景を見たことがある方は多いでしょう。

こどもの日として知られる5月5日の「端午の節句」には、菖蒲の葉を入れたお風呂に入る「菖蒲湯」という伝統があります。

この広く親しまれている日本の風習は、どのような由来を持つのでしょうか。本記事では、菖蒲の歴史的背景や健康効果について解説し、菖蒲湯の正しい入れ方や実践する際の留意点も紹介します。

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端午の節句の入浴文化、菖蒲湯とは?

菖蒲(しょうぶ)とはサトイモ科の多年草で、初夏になると小さな淡黄色の花をつける植物で、主にアジアや北アメリカに自生しています。

その菖蒲の葉を使って入浴するのが菖蒲湯で、これは5月5日の「端午の節句」に行われる習慣の一つです。人々は健康や厄除けの願いを込め、菖蒲湯に親しんできました。

「端午の節句」には菖蒲湯のほかにも、鯉のぼりを飾り、粽(ちまき)や柏餅を食べる風習も。現在は「子どもの日」としても広く知られています。

なお、菖蒲湯と聞くと同じ漢字で「菖蒲(あやめ)」と呼ばれる紫色の花をイメージする方もいると思いますが、これは菖蒲湯に使用される植物とは別物です。

菖蒲湯にはどんな効果がある?

菖蒲には「テルペン」と呼ばれる香り成分が多く含まれています。さらに「アザロン」や「オイゲノール」など、血行促進や疲労回復に効くとされる成分が含まれており、リラックス効果や殺菌・解毒作用など多くの効能が期待できます。

これらの効果から、昔から厄除けや健康を願って菖蒲湯に入ることも、理にかなっていることがわかります。

好みに合わせて選ぼう。菖蒲湯のやり方を徹底解説

出典:pexels.com

菖蒲湯にはさまざまな楽しみ方があり、忙しい現代人にとって気軽に取り入れやすいものもあります。入浴時間にも決まりはないため、ご自身に合った方法を選んでみてください。

手軽に楽しみたいなら|菖蒲の葉をそのままお湯に入れる

最も簡単なのは、菖蒲の葉をそのままお湯に入れることです。

菖蒲の葉は、そのままお風呂に入れてもしっかりと効能が得られます。この方法は、手軽かつ菖蒲の持つさわやかな香りを楽しめるのが魅力です。

菖蒲の葉をバラバラと入れるのではなく、束のままお風呂に入れるのがおすすめです。

香りを重視したいなら|菖蒲の葉を刻んで入れる

葉を細かく刻むことで、菖蒲の持つ香りをさらに引き出すことができます。刻んだ葉は直接浴槽に入れるのではなく、袋に入れて熱湯をかけ、数分~10分ほど待ちましょう。

その際、菖蒲に含まれる成分が染みた抽出液と、袋に入れた菖蒲の両方を入れることで、すっきりとした香りを楽しめます。

効能をより実感したいなら|乾燥させた菖蒲の根を煮立てて入れる

菖蒲の根を乾燥させることで「菖蒲根」と呼ばれる漢方になります。この漢方は、健胃や鎮痛、鎮静の効果が期待されるため、より効果を得たいなら菖蒲の根を乾燥させて入浴するのが良いでしょう。

乾燥させておいた菖蒲の根を袋に入れ、一度煮立たせてから浴槽に入れると、自宅で漢方のお風呂が楽しめます。

菖蒲は刺激の強い植物。入浴の際には注意も

菖蒲は、葉先の尖った形状をした植物ですので、けがをしないよう注意して入浴しましょう。

また、小さな赤ちゃんや肌の敏感な方は、注意する必要があります。いきなり入浴するのではなく、まずは手浴(手だけをお湯につける方法)などで試してから入浴するとよいでしょう。

菖蒲湯はなぜ5月5日?その歴史は?

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菖蒲湯に入るのは、なぜ5月5日なのでしょうか。そこには、古代中国から伝来した風習と武家社会が関係していました。

始まりは飛鳥時代。中国からの薬草文化から

元々は、飛鳥時代に中国から伝来した風習「端午の節句」がきっかけだったと言われています。

菖蒲には強い香りがあり、また葉先が鋭く尖っていることから、魔除けに最適と考えられていました。菖蒲は古くから邪気を払う薬草として知られていたのです。

古代中国では、旧暦の5月5日に「薬草狩り」が行われていました。当時、旧暦の5月(現在の梅雨入りの頃)は特に病気が広まりやすい時期だと知られており、厄除けや健康のために菖蒲を使う習慣があったと言われています。

菖蒲湯の始まり|武家社会の精神が結びついた風習

元々は厄除け・健康を願うために使われた菖蒲に、新たな意味が加わったのは鎌倉時代のことです。

当時の日本は、それまでの公家を中心とした社会から、武士を中心とした社会に変化を遂げていました。
菖蒲(しょうぶ)という言葉が、武道や武勇を重んじる考え方である「尚武(しょうぶ)」と同じ読み方であることから、「端午の節句」が男の子の成長を祝う日へと変化していったのです。

それに伴い、5月5日に菖蒲湯に入る風習が生まれました。

江戸時代に庶民の文化へ|菖蒲の幅広い活用法

江戸時代には、菖蒲湯に入る文化は庶民の生活にまで広まっていきました。

江戸の人びとは、5月5日に菖蒲湯に入るだけではなく、軒先に菖蒲を挿して「防火」のおまじないにしていました。江戸時代には「火事とけんかは江戸の花」と言われるほどに火事が頻発していたため重宝されたのです。
この時代にも、菖蒲が厄除けの役目を果たしていたことがわかります。

さらに、菖蒲を編んだ縄を子どもたちの遊び道具にするなど、菖蒲は庶民の生活に浸透していたようです。

疲れが出やすい5月だからこそ取り入れたい、季節の風習

「五月病」という言葉があるように、5月は過ごしやすい気候でありながら、環境の変化に疲れが出やすい時期でもあります。忙しい毎日のなかで手軽に楽しめる菖蒲湯は、リラックス効果や血行促進など、心身のリフレッシュにぴったりです。

日本の季節を感じながら、自分自身をいたわる特別な時間を過ごしてみませんか?

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この記事を書いた人

元舞台俳優からライターへ転身した1児の母。
日本舞踊や三味線を学んでいた経験から日本文化の魅力と大切さに気付き、世界に誇る日本文化や日本の古典文学、芸能の魅力を発信する。
趣味は読書と寺社仏閣巡り。

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