他とちょっと違うロンドンの古着屋。支援の輪に対する利用者の反応は?

古着屋といえば、 不要になった洋服を売ったり掘り出し物を見つけたりする場所。しかし、ロンドンの古着屋「Give Your Best(ギブ・ユア・ベスト)」は、そうした個人の楽しみに留まりません。

Give Your Bestは、一着の古着が購入されるごとに、支援を必要としている人に古着を一着無償で提供する「ペイフォワード」の取り組みを行っています。その仕組みと人々への影響を紹介します。

ペイフォワードとは

ペイフォワードとは、自分が受けた優しさや恩恵をほかの人に繋いでいくということ。例えば、誰かに嬉しい言葉を掛けてもらったとき、今度は自分が他の人に対してどんなことを言われたら嬉しいのか考えながら言葉を贈るなどです。

このように恩を外側へと送っていくことで、思いやりの輪を広げていけると考えられています。

古着屋でペイフォワードできる仕組み

photo by Give Your Best

Give Your Bestでは、商品の仕入れ・販売・寄付に至るプロセスにペイフォワードの考えが反映されています。

一般的な古着屋は、買い取った洋服を販売するため、その差額から売り上げが生まれます。しかし、Give Your Bestが提供する洋服は、寄付によって集められています。個人から、もしくはアパレル会社が抱える在庫から洋服が無償で送られてくるため、運送費などを除いて仕入れ費が発生しません。

経費が削減される分、客にはより手頃な価格で洋服を提供できます。個人が愛用していた洋服だけでなく、過剰在庫や規格外商品として販売されなかった新品の洋服も販売。古着が苦手な人や定価ではなかなか手が出せない人にとっても、うれしい点です。

客が洋服を一着購入すると、ほかの一着が難民やDV被害者など支援が必要な人に無償で提供されます。2020年の開店以降、15,000着以上の洋服が、購入または支援を必要とする人に届けられてきました。

一着の購入が、誰かの自信を生む

支援活動において、誰でも好きな洋服を選べる環境は、食事・飲料水・住居ほど緊急性はないかもしれません。しかし、何を身につけるかを選択できる権利を保障することは、その人の尊厳を守ることと同等の価値があります。

ナイジェリアからの難民で、現在Give Your Bestに勤めるカミ・オグンラナさんは、面接に着る服を探す際、初めてこの古着屋に出会ったそう。

BBCのインタビューでは、好みやサイズを聞きながら面接用の服を提案してもらった経験を振り返り、こう語りました。

「自分に合わない服を着ているとき、自分が自分ではないように感じます。周りにどう見られたいかを意識した洋服を着れると、自分を誇りに思えるようになります。つまり、尊厳が守られているということです。より自信が湧き、自分を愛せるようになるのです」

緊急性はなくとも重要性はある

出典:unsplash.com

お気に入りの洋服に身を包むとき、違和感や他人からの視線への不安が和らぎ、心地よい自分でいられると共に自信が湧いてくる経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。

快適さや自信は、安全性を確保するための支援より優先度は低いかもしれません。しかし、個人が社会で堂々と生きていくためには重要です。

Give Your Bestは、洋服を購入する余裕がある人にもない人にも、同等の機会を提供できるようにペイフォワードの取り組みを続けてきました。

その背景には、Give Your Bestが寄付者やアパレル会社から無償で商品を仕入れ、消費者が低価格で服を購入しながらも他の人にも洋服を選べるチャンスを提供できるという三方良しの構造があります。

お気に入りの一着を見つけるとき、その購入がどのようなサイクルのなかにあるのか、一度振り返ってみてもいいのかもしれません。

参考:
https://giveyourbest.uk/thrift-gift-store
https://www.bbc.com/news/articles/cx2nl7pk0m6o
https://www.theguardian.com/society/2022/sep/14/those-clothes-were-like-gold-fashion-donors-give-refugees-dignity-of-choice

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この記事を書いた人

京都在住。お寺とアートと観劇が大好きなライター。
「今日より明日、ちょっと優しく」をテーマに、メンタルヘルス・日本文化・サステナの記事を中心に執筆。英日翻訳や寺院の英訳監修にも携わり、国内外の価値観を届け人々の選択肢が広がるように活動中。