絶景に溶け込む体験。イタリアで人気のエコホテルが提案する新しい旅【現地レポート】

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中部イタリア、アドリア海に面するマルケ州。
ここにEUのナチュラリストの間でも話題の、エコを極めた宿がある。
自然の恵みを最大限に生かし、環境への負荷を徹底的に抑えることに成功したB&B「LA FORESTALE(ラ・フォレスターレ)」。その宿のエコなスタイルから、私たちの新しい旅のスタイルが見えてくる。

手付かずの大自然が共存するステイ

イタリア人がマルケと聞いて連想するのは、手付かずの大自然。アドリア海随一の美しいビーチ、イタリア半島を縦断するアペニン山脈が作り出す、表情豊かな川、谷、森。
北部のフルロ渓谷自然公園には絶滅危惧種の鳥類が多く生存し、公園内の街道には古代ローマ人が建設したトンネルや遺跡が残る。

エコフレンドリーを極めたB&B「LA FORETALE」

フランス人のエリックも、このエリアに魅せられた一人。
トレッキング愛好家でもある彼が“手付かずの自然の中で暮らしてみたい”という想いを持った始まりだ。
そこから7年の歳月をかけて、かつての森林警備隊の兵舎と土地に、自宅とB&Bを兼ねた「LA FORESTALE(ラ・フォレスターレ)」をオープン。山の斜面と見事に調和している外観が印象的だ。

LA FORESTALEのコンセプトは、エコラグジュアリー。ミニマルな美しいデザインと、環境との共存に、徹底的にこだわった。
エコ建築デザインの分野でも、注目されるホテルだ。

徹底したエネルギーシステムで、電気の100%自給自足を実現

エリックがまずこだわったのが、建物のエネルギーシステム。
電気は、太陽光発電を取り入れることにより、建物で消費するすべての電力をまかなっている。
さらに、デザインの一部にもなっているのが、屋根やバルコニーに敷き詰められた54枚ものソーラーパネルだ。
太陽光発電が「電気」を作る一方で、ソーラーシステム(太陽熱利用システム)は、「熱」を作る仕組みで、温水や温風を作り出している。

ボイラー室の天井を埋め尽くすのは、電気が通るパイプ管。
「この建物で最高のアートかもしれない」というエリックの言葉からは、この発電システムへのプライドと愛着が伝わってくる。

暖房や給湯、照明などで、電力を多く消費する冬は、電力消費量が供給量の半分を下回る日も多い。夏は、冬の約2倍強の電力が作られるそうだ。
発電量を最大化する「パワーオプティマイザー」という装置の導入により、曇りの日でも効率よく発電できるようになっている。
余剰電力は、電力会社に売ることができるので無駄にならない。

電力を生み出すだけでなく、建物の造りも省エネルギーであるよう工夫がなされている。断熱性・換気性に優れた外壁の厚さは42cm。屋内にエアコンはなく、夏場は広いテラスから風を取り込んで、涼を楽しむことができる。

随所に自然への敬愛が込められたゲストルーム

渓谷を見下ろす広いテラスとキッチン付きのアパートメントタイプや、暖炉やバスタブを備えたスイートロイヤルなど、LA FORESTALEのゲストルームは全5室。
どの部屋も自然との一体感を味わえるリラックス空間だ。

バスルームの壁材、断熱性に優れた大きな窓やミニマルなデザインのライト、随所にこだわりと ホスピタリティが感じられる。

そして、部屋にはテレビがない。自然と見事に調和した部屋は、テレビを必要としない、テレビが似合わない空間なのだ。

この夏にはヨガスペースとプールが完成するなど、来年以降はフェーズ2のプロジェクトも携えている。
大自然に溶け込み、心身共に癒されるウェルネスなステイ。自然と一体化してゆっくりと歩み続けるこの宿は、これからの新しい宿泊の形なのかもしれない。

LA FORESTALE
https://www.laforestale.it

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この記事を書いた人

writer

東京で大学卒業後、映像ディレクター職を経て、ヨーロッパやアジアなどを転々と旅する20代を送る。NYへ留学し、その後ミラノに移住。 出産や料理の仕事、ヨガを通して、オーガニック食材や日用品にこだわるようになり、地球環境への意識が高まるきっかけに。

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