サステナブルツーリズムとは?エコツーリズムとの違いや取り組みを紹介

サステナブルな取り組みがグローバルスタンダードになりつつある今、観光地の持続可能性に配慮したサステナブルツーリズムが、旅のスタイルとして新たな広がりをみせています。

サステナブルツーリズムとは何か、どんなことに配慮をしているものかを、国内外の取り組みと共に紹介します。

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サステナブルツーリズムとは

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サステナブルツーリズム(持続可能な観光)とは、旅行者・観光関係事業者・受け入れ地域のニーズに適合しながら、現在と未来の「経済」「社会」「環境」を持続可能で発展性のあるものにすることを目標とした、観光の在りかたを表す概念です。

サステナブルデベロップメント(持続可能な開発)の概念を背景に、1988年、国連世界観光機構(UNWTO)によって「現在と未来の経済、社会、環境への影響に配慮をしながら、旅行者、産業、環境、受け入れ地域のニーズに応える観光」と定義され、3つの目標が掲げられました。

日本政府観光局はUNWTOと歩調をあわせ、『旅行者、観光関係事業者、受け入れ地域にとって、観光・文化・経済の観点で、持続可能かつ発展性のある観光を目指す』として、三つの目標を以下のように示しています。

  1. 地域の環境を守る・育む

環境負荷に配慮した観光コンテンツなど、環境資源を最適な形で観光に活用している事例について情報発信し、自然や生物多様性の保全等に貢献する

  1. 地域の文化を守る・育む

日本が古来育んできた地域の有形無形の伝統・文化資産等を、魅力ある形で海外に発信し、外国人旅行者による体験等を通じて、その保存・継承に貢献する

  1. 地域の経済を守る・育む

特定の地域や時期に偏ることなく、日本全国各地への外国旅行者の安定した誘客・滞在をめざすと共に、地域ならではの体験や特産品等の購入を促進することで、地域経済の活性化と安定的かつ長期的な雇用を創出し、住んで良し、訪れて良しの地域づくりに貢献する

また、アメリカ合衆国の非営利団体グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)によって、持続可能な観光のためのグローバル基準を満たしている観光関係事業者などを認証する制度が設けられ、サステナブルツーリズムを世界に広める動きが進んでいます。

なぜ今サステナブルツーリズム?

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なぜ今、サステナブルツーリズムが注目されているのでしょうか。

その主な理由として、オーバーツーリズムがあげられます。多くの旅行者が同じエリアに集中することで、経済的な効果はあるものの、その地域の自然や人々の生活にとってマイナスな影響が発生することも指摘されてきました。

関連記事:旅行を再開する今こそ知っておきたい。オーバーツーリズムとは?

経済的な効果があっても、社会的、環境的なバランスが乱れると持続可能ではなくなってしまいます。

そのため、受け入れ地域のより良い経済・社会・環境の地域づくりに貢献することを目標とした、サステナブルツーリズムに期待が寄せられるようになりました。

また近年、旅行先の文化や経済、環境に良い影響を与える旅をしたい、環境負荷をなるべく抑えた移動手段を選択したいと考える旅行者が増えていることも、サステナブルツーリズムの注目を後押ししています。

エコツーリズムとの違い

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エコツーリズムとサステナブルツーリズムでは、主体的に取り組む人が異なります。

エコツーリズムは受け入れ地域が、地域ぐるみで自然環境や文化、歴史などの魅力を旅行者に伝え、その価値が理解されることで保全に繋がることを目指すもの。受け入れ地域が主体となって取り組みます。

一方サステナブルツーリズムは、持続可能な観光の定義に沿って、経済・社会・環境に配慮した行動を、受け入れ地域や旅行者、観光関係事業者が各々心がけるもの。主体的に取り組む人や、ステークホルダーの幅も広くなります。

サステナブルツーリズムの事例

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昨今、国内外において取り組みが進んでいるサステナブルツーリズムの事例はたくさんあります。代表的なものとして知られている例を、いくつか紹介します。

【熊本県天草市】イルカと暮らすサステナブルツアー

有明海・八代海・東シナ海に囲まれ、大小120の島からなる熊本県天草市は、豊かな自然と生態系が広がっており、イルカとの遭遇率が高いことで知られています。

その恵まれた環境と、古くから受け継がれてきた産業や文化の価値を伝え、地元企業と住民、旅行者が共にそれらを守り未来につなぐことを目的に、さまざまなツアーが企画されています。

https://a-sus.jp/

【山形県鶴岡市】文化的価値を守り伝える宿坊と巡礼体験

1400年以上の歴史をもつ出羽三山の門前町、山形県鶴岡市羽黒の手向(とうげ)地区。現在も独自の精神文化が受け継がれ、豊かな伝統が日常に息づいている地域です。

伝統ある宿坊に泊まり、精進料理で身を清め、行衣や注連を身にまとって山伏と共に羽黒山を歩く。伝統を身をもって感じ、歴史的・文化的価値への理解を深めるプログラムが人気です。

https://www.toge.bz

【コペンハーゲン】住民も旅行者も楽しめる街中アクティビティ

海峡と湾に面したデンマークの港湾都市コペンハーゲン。一味違う体験として、周辺の港を巡りながら交流を楽しむセーリングや、港でのコンサート、港のごみを拾うイベントなどが企画されてきました。

古くから港湾として発展してきた歴史と文化、社会資源を活用しながら、住民も旅行者も楽むことができ、地元の企業と環境にとってもよい観光のスタイルが確立されています。

https://goboatpartner.com/en/articles/sustainable-tourism-the-copenhagen-case-study

私たちにできることは?

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サステナブルツーリズムのために、私たちができることはたくさんあります。

  • 文化や自然にふれることのできる地域を選ぶ
  • 受け入れ地域の自然や生活環境の保護・維持を意識して行動する
  • 受け入れ地域の人たちに配慮し、混雑する時期や場所を避ける
  • アメニティやエコバッグ、マイボトルなどを持参しごみの削減に努める
  • 公共交通機関やレンタサイクルなど、環境負荷の低い移動手段を選ぶ
  • 受け入れ地域の歴史や文化、産業を尊重し、地産地消を心がける
  • サステナビリティに力を入れている地域、旅行会社などを選ぶ

地元の専門家がインストラクターを務める伝統工芸体験を選ぶことや、電車で移動すること、その地の食材を食べることも、サステナブルツーリズムの一つです。

サステナブルツーリズムはグローバルスタンダードに

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持続可能な開発の概念を背景に定義されて以降、サステナブルツーリズムはグローバルスタンダードになりつつあります。それと共に、旅行者や観光関係事業者、受け入れ地域の人々の意識も変わりつつあります。

一人ひとりが地域の経済・社会・環境を意識して行動することは、オーバーツーリズムの低減だけでなく、旅行者自身にとっても意義のある旅行となるでしょう。

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この記事を書いた人

誰もが心豊かに生きられる未来を創造する経営コンサルタント。
建築設計⇒HR広告営業⇒障害者支援事業運営⇒行政事業執行⇒経営コンサルへ。
これまでの経験を通して知った日本文化の奥深さを、衣食住にまつわるストーリーにのせ海外に向けて発信中。

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