旅行を再開する今こそ知っておきたい。オーバーツーリズムとは?

コロナ対策が緩和されたことにより、旅行をする人が増えてきています。2023年のゴールデンウィークの羽田空港にはコロナ前の活気が戻ってきており、今年の夏も旅行者の増加が予想されます。一方で多くの観光客が一カ所に集中すると、地域に住む人の日常生活に支障が出る、自然環境が傷つけられるといったオーバーツーリズム(観光公害)が起こる場合があります。旅行をするときに私たちが考えなければならないことは何でしょうか。
今回は、オーバーツーリズムの概要とサステナブルな旅行のポイントをまとめました。

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オーバーツーリズムとは?

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オーバーツーリズムとは、「Over(過剰)」と「Tourism(観光)」を組み合わせた英語の造語です。日本語にすると「観光公害」と表現されます。

観光は、地域経済の活性化に繋がり、地元の雇用を生み出すなどのメリットも多くありますが、一方で、特定の観光地にキャパシティを上回る観光客が訪れることで、混雑が起こり地域住民の生活に影響が出るほか、ゴミ問題などにより自然環境の破壊が起こるなどオーバーツーリズムの問題が顕著になっています。

世界各国でオーバーツーリズムが深刻な問題を引き起こしていますが、日本も例外ではなく、京都や鎌倉などの観光地では、歩道に人が溢れかえり、渋滞やマナー違反などが起こっています。
また、SNSの普及により、これまで有名観光地ではなかった場所にも人が押し寄せる現象も起きています。
日本では2018年、観光庁に「持続可能な観光推進本部」を設置。観光と地域住民の生活環境の共存を図るため、調査やヒアリング、ガイドラインの作成などを行っています。

コロナ禍で一時は観光客が減り、オーバーツーリズムの問題も落ち着きを見せていましたが、再び旅行ができるようになった今、地域住民や自然環境に大きな負担がかかるような旅行ではなく、バランスのとれた持続可能な旅行の在り方が見直されています。

オーバーツーリズムの具体例

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オーバーツーリズムにはどのような問題点があるのでしょうか。主な具体例を見ていきましょう。

混雑・渋滞

観光客が増えると、観光スポットや公共の交通機関だけでなく、駐車場や飲食店なども混雑します。地域や時間帯によっては道路の渋滞や施設の入場規制なども発生し、地域に住む人の暮らしや労働に大きな影響を与えます。

マナー違反

観光客のマナー違反は、ニュースでも何度も取り上げられてきました。特に、ゴミのポイ捨てや立ち入りが禁じられているスポットでの記念撮影、深夜の屋外での騒音などの問題があります。
他にも重要文化財や遺跡などの先人たちが守ってきた場所への落書、建造物の損壊などといった事態も発生しており、これもオーバーツーリズムの影響の一つといえるでしょう。

環境汚染や景観の悪化

山や海など自然が豊かな場所に観光客が殺到すると、自然の破壊や景観の悪化が懸念されます。例えば、タイ・ピピ島のマヤビーチは映画で有名になり、観光客が増加。そのことにより環境が悪化しました。サンゴ礁や生物の保護などを理由に定期的にビーチへの立ち入りを禁止しています。

CO2の排出

観光地に人が集まると使い捨ての食器やペットボトルなどのゴミが増え、それを焼却する際にCO2排出量が発生します。ほかにも飛行機や車での移動もCO2を排出します。

オーバーツーリズムに関する地域の取り組み事例

次に、国内外のオーバーツーリズム対策について紹介します。

北海道・美瑛町/畑看板プロジェクトで問題解決に踏み込む

北海道美瑛町では、美しく広大な農地をバックにした観光客の撮影が問題となっていました。観光客が撮影のベストスポットを探す際に、農地へ無断侵入してしまう迷惑行為が急増したのです。それを解決するために始まったのが、“畑看板プロジェクト”です。
畑看板プロジェクトでは、立ち入り禁止の看板の代わりに、道と農地の間に撮影スポットの目印となる看板を設置。看板に掲載されたQRコードからは、農地を所有する農家のSNSや、オンライン販売サイトが見ることができるなど、農家の顔が見える工夫が施されています。
このような取り組みは、農家と観光客とのより良い関係性を築く一つの手段となっています。

フランス・パリ/街ぐるみで環境を考えた自転車移動の推進

2024年夏季オリンピックの開催地パリでは、人気の観光施設ベルサイユ宮殿やルーヴル美術館などで、オンラインによるチケット予約システムを採用しています。このようなシステムを用いることで混雑を避けることが期待されています。
また行政は、2026年までに自転車利用者に優しい街にする計画を実行しています。市内どこでも自転車で移動ができるよう、自転車専用道路や駐輪場を整備しているのです。
自転車移動はCO2を排出しないだけでなく、道路渋滞の緩和にも役立ちます。

イタリア・ミラノでも自転車の利用を促進する取り組みがすでに始まっており、世界中から注目されています。

関連記事:自転車が主役。世界が注目するミラノの都市デザイン【現地レポート】

私たちができる、旅行をする際の心構え

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意図せずに旅行先に迷惑をかけてしまわないよう、旅行をする際に考えたいことは何でしょうか。前提である観光地のルールを守るということ以外に、持続可能な旅行のためのアイデアをご紹介します。

レスポンシブルツーリズムを知る

レスポンシブルツーリズムとは、「責任ある観光」のこと。旅行先の住民や自然環境に十分配慮し、責任を持って行動することです。自身の行動が地域にどのような影響を与えるのかを考え、人々や自然を尊重しながら観光をする意識を持つことが大切です。

エコツアーに参加する

環境に十分配慮しながら、大自然を満喫できるエコツアーを推し進めている自治体が多く存在します。旅行先にそのような場所を選んでみてはいかがでしょうか。エコツアーにはその土地のことを知り尽くしたネイチャーガイドが付いていることが多いので、より深く旅行を楽しめるでしょう。

関連記事:旅行好きの方必見。新しい旅のかたち「エコツーリズム」のすすめ

現地の移動にはCO2の排出量が少ないものを活用する

観光地によっては自転車移動を推奨している場所があります。事前に自転車など燃料を使わない乗り物を借りられる場所を確認し、移動の際には積極的に使ってみてはいかがでしょうか。

観光する時間帯を工夫する

例えば早朝に観光するなど、混雑する時間を避けるのも一つの方法です。地域住民のためだけでなく、自分自身もストレスなく観光ができます。

混雑状況がわかるアプリやサイトを確認する

自治体によっては、観光地の混雑状況を公開している場所があります。また、VACANのようなサービスでも空き状況を確認できるので、混みそうな場所を訪れる際は行く前にチェックしましょう。

宿泊施設のアメニティを持参する

使い捨ての場合も多い宿泊施設のアメニティ。最近の宿泊施設では必要な人のみに提供するという流れになってきていますが、歯磨きやシャンプーは家から詰め替えて持参し、シェーバーなどは普段使っているものを持って行きましょう。それを持ち帰るというのも大切です。アメニティが置いてあっても使わずに返すといったアクションが、ゴミ削減に繋がります。

アフターコロナは思いやりを持った観光を

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これからの観光には、自分たちの満足だけを考えるのではなく、地元の方と環境への思いやりの気持ちを持つことが求められています。観光客を受け入れる自治体や地域もオーバーツーリズム対策を行っていますが、観光客の意識を変えていくことも重要なのです。レスポンシブルツーリズムをキーワードに、旅行先の選定や観光方法などを考えてみてはいかがでしょうか。

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