「お買い物とは、どんな社会に一票を投じるかということ。」
そんなスローガンを掲げたフェアトレードショップ「シサム工房」で、「フェアトレード店内ツアー」というイベントが開催されています。
スタッフの説明を受けながら店内を巡り、フェアトレードについて学ぶことができるこちらのイベント。今回は、フェアトレードについて全く知らない人から、知っているけれど学びを深めたい人まで楽しめる、シサム工房のフェアトレード店内ツアーに参加。
終わるころには、買い物の意識が変わる?注目のイベントをレポートします。
シサム工房 ― フェアトレードを“事業”として届ける京都発のブランド

シサム工房は、1999年に京都で誕生しました。アジアの生産者と直接取引を行いながら、フェアトレードの明確な基準を大切に守り、日本各地に現在8つある実店舗やオンラインストアでオリジナル商品を販売。全国への卸販売も手がけるなど、フェアトレードの輪を広げ続けています。
創業のきっかけは、代表・水野泰平さんの学生時代にさかのぼります。大学1年生だった1989年、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を扱ったドキュメンタリー映画に衝撃を受け、不条理な社会への怒りが芽生えたのをきっかけに、反アパルトヘイト運動に参加。アジア・アフリカを一人で旅する中で、現地の人々のたくましい暮らしに心を動かされ、「いつか彼らと深く関わる仕事がしたい」と強く思うようになります。
大学院を修了後は、実践的な経験を積むため、エスニック雑貨店とタイレストランを運営する企業で仕入れや販売に約4年間携わったのち、「現地で活動するか、日本で伝えるか」を真剣に考え、京都でシサム工房を立ち上げる決意を固めました。
ブランド名の「シサム」は、アイヌ語で「よき隣人」という意味があります。「同じだからつながる」のではなく、「違いを認め合い、無関係ではいられない隣人として尊重し合いながら生きる」――そんな想いが込められています。
シサムコウボウ京都本店

今回フェアトレード店内ツアーに訪れたのは京都の百万遍にあるシサムコウボウ京都本店。シサム工房が始まった場所でもあります。そばには京都大学キャンパスがあり、アカデミックな雰囲気の立地です。

内装は京都の古民家やお寺から譲り受けたという床板や土壁などを使い、どこか懐かしく温もりのある空気感が漂います。

店内には洋服だけでなく食品や生活雑貨など幅広いフェアトレード商品が販売されています。
フェアトレードについて学びが深まる店内ツアー

ツアーはスタッフさんの説明を受けながらスタート。まずフェアトレードとは「お買い物が途上国に暮らす人たちの自立支援につながる仕組みの貿易のこと」という分かりやすい説明がありました。

フェアトレードの消費は利益を第一の目的としているのではなく、その裏にある貧困や環境破壊などの社会課題の解決を目的としているのです。

フェアトレードで重要なのは生産者・現地のNGO・シサム工房・消費者が横並びで対等な関係であること、とスタッフさんがおっしゃっていました。購入した人は製品とのつながりが分かり、生産者の顔が見える透明性があることがフェアトレードの良さと言えます。

シサム工房がパートナーとしている現地のNGOは現在5か国12団体あるとのこと。洋服などは京都の事務所でデザインしていますが、現地のNGOと相談し、生産地の伝統技術や文化を積極的に取り入れているそうです。

店内には12団体が製作した商品の横に団体の紹介ポップが置いてあり、まさに顔の見えるお買い物ができるようになっています。

ツアーではフェアトレードの大枠の説明のあと、オーガニックコットンとコーヒーの2つのテーマからツアー内容を選択するようになっています。今回はオーガニックコットンについての説明を受けました。
やさしい農業から生まれるオーガニックコットン ― インド・チェトナオーガニックの取り組み

シサム工房のオーガニックコットンの多くはインドのNGO「チェトナオーガニック」で作られています。
2004年に設立されたチェトナオーガニック。きっかけは、その前年に起こった悲しい出来事にありました。遺伝子組み換え種子と農薬に依存した農業によって不作が続いたことにより、多くのインドの農家が苦しみ、自ら命を絶つ方が大勢いたのです。その中で「違う道を選ぼう」と立ち上がったNGO団体です。
現在は、3万5千件もの零細農家がチェトナオーガニックに所属。種まきから収穫まですべてを手作業で行い、農薬や枯れ葉剤を使わず、インド在来のコットンの種を守りながら自然と共存する農法を実践しています。
横の畑にはバナナや芋、人参などさまざまな作物が育ち、コットンが不作の年でも暮らしが成り立つよう工夫されています。
この取り組みは、ただの「オーガニック」ではなく「持続可能な有機複合農家」としての姿勢を貫いています。誰も飢えない農業、競争ではなく助け合いの農業。持てる者がさらに豊かになる経済の仕組みではなく、すべての人にやさしい仕組みを目指しています。
たとえば、一枚の洋服をつくるのに必要なコットンは、種付きの状態で約1~2kg。これは、コットン畑約2畳分に相当します。つまり、オーガニックコットンの服を1枚買うことは、インドの有機農地2畳分を守るということにつながるのです。

シサム工房で写真のようなタグが付けられているのがチェトナオーガニックで作られたオーガニックコットンを使った製品です。
世界で流通しているコットンのうち、オーガニックコットンが占める割合はわずか1%。それでも、誰かの暮らしと地球の未来を守る力がその1%にはあるのです。

ツアーの最後にはその日限定で使用できるお買い物券がもらえます。
ツアーで学んだ生産者やNGOの方に想いを馳せながら、人に地球にやさしいお買いものを楽しむことができます。
「ものの背景に気づく」きっかけを届ける

シサム工房のフェアトレード店内ツアーは、行政から全国より訪れる修学旅行生にSDGsについて学べる機会を作ってほしいという要望があったことをきっかけに、3~4年ほど前に始まりました。
一枚の洋服の裏にも作り手がいて、生産には自然環境が密接に関わっています。
ものを通して社会課題について考え、フェアトレードに出会えるシサム工房のフェアトレード店内ツアー。
普段の買い物の中で、洋服や食品の裏側にいる生産者や自然環境への影響を考えるきっかけとなった、学び多きイベントでした。
シサムコウボウ京都本店
住所:京都市左京区北白川追分町80-1
電話:075-724-5688
公式HP:シサム工房 フェアトレードとエシカルファッション・手仕事のお店(京都/大阪/神戸/東京)
【シサム工房店内ツアー】
- 参加費 一人1500円
- 所要時間 30分
- すべてのシサムコウボウ、vote for全8店舗で実施
- 1000円分のお買いもの補助券をプレゼント
- ツアー概要
- シサム工房 フェアトレード店内ツアー30分コース お申込みフォーム