便利な世の中になった一方で、大量生産・消費から生まれるたくさんのごみ。環境省の調査によると、令和元年度、日本のごみ総排出量は4,274万トン(東京ドーム約115杯分)、1人1日当たりのごみ排出量は918グラムに上るとされています。
この記事では、ゼロウェイストとはなにか、具体的な取り組みを行う日本の自治体と、個人でできるアクションについてご紹介します。
ゼロウェイストとは
ゼロウェイストとは、ウェイスト(ごみ)をゼロにするという意味で、資源の無駄や浪費を最小限に抑えたり、資源を再利用することで、ごみを出さないことを目指す取り組みです。
ごみを出さない方法は代表的なものとして、3R(リサイクル、リデュース、リユース)がありますが、それに加え、量り売りなど、なるべくごみの出ない方法を選ぶことや、企業側も開発・製造する段階から、その商品はどのように処理されるのかということを考えて商品を生産することなど、さらに社会全体で一歩踏み込んだ取り組みが求められています。
最近では、家庭から出るプラスチックごみの重さを量る様子をSNSなどに投稿し、ゼロウェイストを啓蒙するインフルエンサーも出てくるなど、ゼロウェイストの活動は広がりを見せています。
ゼロウェイストに取り組む日本の自治体
1996年にオーストラリアの首都・キャンベラで世界初の「ゼロウェイスト宣言」が出されたことをきっかけに世界中にその波が広がっています。
日本国内にも2022年6月の段階で、ゼロウェイストの推進に積極的に取り組んでいる「ゼロウェイスト宣言都市」が5つあり、他にもゼロウェイスト宣言は出していないものの、ごみを減らす取り組みを行っている町もあります。
1. 徳島県 上勝町
上勝町は全国に先駆けて2003年にゼロウェイスト宣言を出した自治体です。
宣言は、2020年までにごみの焼却・埋め立て処分をなくすことが柱となっています。
ゼロウェイスト宣言のきっかけは、大量消費に伴いたくさんのごみが農村部でも出るようになったことでした。ごみは自宅で燃やしたり埋めたりされていたため、県から処理施設を新たに建設するよう指導があったものの、町には金銭的な余裕がありませんでした。
そこで始めたのが、ごみ分別の細分化です。ゴミ収集車ではなく、町民に町唯一の収集場までごみを運んできてもらい、分別を徹底。現在は45分別を行っています。また、助成金制度を整備することにより、家庭で生ごみ処理機を購入が可能に。そのような取り組みにより、2020年には町のリサイクル率80%台を達成しました。
現在は、飲食店向けに「ゼロウェイスト認証制度」をスタート。独自の基準を設けて、ゼロウェイストに取り組む事業者を公的に認証しています。さらには、町のほとんどの商店で持参した容器で商品を買えるなど、捨てるときだけでなく、購入するときからゼロウェイストを意識した生活が町民の日常になっています。
上勝町ゼロ・ウェイストポータルサイト ZERO WASTE TOWN Kamikatsu
2. 福岡県 大木町
大木町は2008年に「大木町もったいない宣言」を発表。
宣言では、2016年までにごみの再資源化を進め、焼却・埋め立て処分をなくすことなどを掲げています。
2006年に町に設置されたおおき循環センター「くるるん」は、従来のゴミ処理場ではなく、生ごみなどからバイオガスを発生させ、発電や温水などのエネルギーを作り出すバイオガスプラントと呼ばれる技術を取り入れた施設です。
くるるんは、液体有機肥料も作り出すことができ、施設からできた「くるっ肥」を用いて、町ではブランド米「環のめぐみ(大木町元気つくし)」が生産されています。お米は減農薬・減化学肥料で人にも環境にも優しく、循環の輪を生み出しています。
2019年からは新たに気候非常事態宣言を出し、さらに力を入れて、ゼロウェイストや温暖化への対策を行っています。
3. 熊本県 水俣市
2009年に水俣市はゼロウェイストのまちづくり水俣宣言を行いました。
宣言の背景には、高度経済成長期に経験した日本4大公害病のひとつである水俣病が深く関係しています。
当時、工場から水銀を含んだ排水が海に流れ込んだことにより、地域の人々や生き物、自然環境に凄惨な被害をもたらした水俣病。
宣言の中には、水俣病の歴史を繰り返さないためにも、自然とともに生きる社会を次の世代へ引き継いでゆくことが盛り込まれています。
2020年からは、23品目の分別を実施しており、ゼロウェイストへの取り組みを町全体で行っています。
4. 奈良県 斑鳩町
斑鳩(まほろば)町は世界最古の木造建築物「法隆寺」があることや、聖徳太子ゆかりの町として知られています。
2017年に斑鳩町ゼロウェイスト宣言を出しており、2027年を目標にごみの脱焼却・埋め立てをめざすとしています。
和の精神を重んじながら、次世代へゼロウェイストの輪を広めてゆくことなどが宣言で示されています。
家庭用生ごみ処理機の補助金制度を導入し、ポイントがたまるとエコ商品と交換ができる空き缶回収機を設置する取り組みを行っています。
斑鳩町ホームページ – 斑鳩町ゼロ・ウェイスト宣言(斑鳩まほろば宣言・斑鳩まほろば行動宣言)の制定について
5. 福岡県 みやま市
みやま市は2020年にみやま市資源循環のまち宣言を採択。
従来から取り組んできた下記2つの取り組みを、宣言発令により世界へ広めてゆくことも目的としています。
・バイオマスセンター「ルフラン」
2018年から稼働している資源循環のための施設。
生ごみ、し尿、汚泥をメタン発酵させて電力と液体肥料を生み出すことでゼロウェイストに貢献しています。
・電力の地産地消
みやま市内の公共施設に設置された太陽光パネルから発電した電気を、市内で消費するエネルギーの地産地消の取り組みを行っています。
電力は災害時の非常用電源としても活用が期待されています。
6. 鹿児島県 大崎町
大崎町はゼロウェイストに関する宣言を行った自治体ではないのですが、2022年に「ゼロカーボン推進宣言」を行った町です。
町のリサイクル率は、令和元年度でなんと82.6%を達成し、日本一のリサイクル率を誇ります。
20年前に「ごみを燃やさない」と決めてから、町民をあげてリサイクルを徹底。過去通算14回も日本一のリサイクル率を実現してきました。2022年になってからは、国連本部のウェブサイトで大崎町の取り組みが紹介され、世界でも高い評価を受けています。
私たちが個人でできるおすすめゼロウェイストアクション3選
具体的に個人で取り組めるゼロウェイストアクションにはどのようなものがあるでしょうか。
3つのアイデアをご紹介します。
<初級編>
・大袋やトレーなしの食品パッケージを選ぶ
スーパーで食材を購入するとき、完全なパッケージフリーの商品を見つけることは難しい場合も多いですね。
でも、例えばお肉や魚はトレーなしのものを、お菓子は小分け包装ではなく大袋のものを選べば、プラスチック削減につながります。
・処分するときのことを考えて購入する
必要な物かどうかよく考えて購入する、処分するときはどうするかを考えて購入する、ということだけですが、一人ひとりがこのことを意識すればごみの量は変わります。
責任を持って購入することが大切です。
<中級編>
・もったいない、を大切に
捨ててしまうはずだった身の回りの品を有効活用してみましょう。
まだ使えるものはメルカリなどに出品する(手間が億劫な方は自宅まで引き取りに来てもらえるサービスの活用もおすすめ)、人に譲ることが難しい肌着などの衣服は裁断し、ティッシュや雑巾として使えるクロスにする、などひと手間でごみになるはずだったものが有効に使われます。
・量り売りショップに行ってみる
ゼロウェイストの取り組みとして注目されている量り売りショップ。いまや量り売りは、野菜や果物などの食品だけでなく、洗剤や香水など多岐にわたります。
自宅から容器を持参して、お気に入りのお店を見つけてみてはいかがでしょうか。
<上級編>
・究極のゼロウェイスト!コンポストで生ごみを資源に
家庭から出るごみの内、一番多いごみである生ごみ。コンポスト(生ごみ処理機)を活用することで、大幅に生ごみを減らすことが可能です。
お庭がないマンションやアパート暮らしの方には、ベランダ設置型のコンポストもおすすめです。
ゼロウェイストは身近!
ゼロウェイストに積極的に取り組む自治体の活動から、今日から取り組めるおすすめのアクションまでご紹介しました。
ゼロウェイストは、日本人が古くから持つ「もったいない」と思う心ととても親和性があるもの。私たちにとって真新しいものではなく、決して難しい概念でもありません。 あなたなりのゼロウェイストアクション、何からはじめますか?