いよいよ4月13日から開催される大阪・関西万博では、SDGsの目標達成に向けた取り組みが注目されています。
本記事では、万博の概要や大阪・関西万博とSDGsの関連性、過去の万博におけるSDGsへと繋がる取り組み、現在大阪・関西万博が直面している課題などをご紹介します。
そもそも万博とは?

万博(国際博覧会)とは、世界中の国々が参加し「人類の進歩」や「未来の可能性」をテーマに掲げ、さまざまな展示が並ぶ大規模なイベントのことです。
大阪・関西万博の公式サイトには以下のように記載されています。
「万博」は世界中からたくさんの人やモノが集まるイベントで、地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場です。
また、国際博覧会条約では、万博を人類が活用できる手段や活動における進歩、またその未来の展望を示し、公衆の教育を目的とする催しと説明しています。
万博の歴史
万博は、1851年にロンドンで開催された「大博覧会」から始まりました。この博覧会は25カ国が参加し、技術や文化を世界に発信する場として成功を収めました。
日本が初めて万博に参加したのは1867年のパリ万博。この頃、世界各地では万博が次々と開催され、国々の進歩を披露する国際的な舞台として定着していきます。1928年には「国際博覧会条約」が制定され、万博開催のルールが制定されました。
改正を重ね、現在も万博はこの条約に基づいて開催されています。
日本で初めて万博が開催されたのは1970年の大阪万博です。この大阪万博は日本の高度経済成長を象徴する一大イベントとなり、その後も沖縄海洋博、つくば科学万博、愛・地球博などが開催されました。
そして2025年、大阪・関西万博が日本で開催されます。これは、2005年の愛・地球博以来、20年ぶりの日本での国際博覧会となります。
大阪・関西万博とSDGsの関連性

地球規模のさまざまな課題に取り組むために、世界各地から英知が集まる場である万博は、SDGsと深い関連があります。
SDGsは、「誰一人取り残さない」ことを掲げ、世界共通の目標として設定されました。環境問題や貧困、経済成長、教育、保健など、地球環境や社会を持続可能なものにしていくための17の目標があります。
大阪・関西万博は、SDGsの達成目標年である2030年の5年前にあたる2025年に開催されます。
このタイミングで万博を開催することもあり、世界中から人々が集まり、未来社会をつくるアイデアを交換し、新たな取り組みを加速させることが期待されているのです。
ここからは、今回の万博のテーマや現在発表されているパビリオンの内容から、SDGsとの関連性を確認していきましょう。
大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」
大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)」です。
サブテーマを「いのちを救う(Saving Lives)」「いのちに力を与える(Empowering Lives)」「いのちをつなぐ(Connecting Lives)」としています。
大阪府は、このテーマについて、「人間一人一人が、自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、こうした生き方を支える持続可能な社会を、国際社会が共創していくことを推し進めるもの」としており、今回の万博はSDGsと深い関係にあることが伺い知れます。
大阪・関西万博のコンセプト「未来社会の実験場」
大阪・関西万博のコンセプトは、「未来社会の実験場(People’s Living Lab)」です。
万博の会場は、最新の技術や革新的なアイデアを創造・発信する場として計画されています。
多様な人々が「共創」する場で、SDGsの目標達成に向けた具体的な解決策を共に考え、実践する機会が生まれるかもしれません。
SDGsに関わる主なパビリオン

大阪・関西万博では、SDGsに関連したパビリオンが多く設置され、未来社会へのアイデアや技術が発信されます。
ここでは、特に注目したいパビリオンのいくつかをご紹介します。
①シグネチャーパビリオン
シグネチャーパビリオンは、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を具体化するために設けられるエリアです。
落合陽一、河瀬直美など各界で活躍する8人のプロデューサーが中心となり、多様な参加者と共創しながら「いのち」に関わる8つの事業を通じて、テーマが実現した未来社会を会場内に描き出します。
万博会場の中心に位置するこのパビリオン。訪れる人々が「いのち」の意味や価値について考え、その捉え方を新たにする場として設けられます。
②日本館
日本館では、「いのちと、いのちの、あいだに – Between Lives -」をテーマに、私たちが自然の循環の中で生きていることに気付くきっかけが提供されます。
万博会場内で出たごみからバイオガスがつくられる過程をインスタレーションで追体験しながら、プラントで生み出されたエネルギーが日本館を動かすさまを体感することにより、循環を知ることができる仕組みに。
アテンダントユニフォームは機能性に加え、環境に配慮した素材を使用し、使用後にリサイクルされる工夫が施されています。
日本館は、持続可能な社会に向けた行動の重要性を分かりやすく伝え、意識と行動の変化を促す役割を果たします。
③フューチャーライフヴィレッジ
未来の暮らしや、未来への行動に関する多種多様な「問い」と「提案」を持ち寄り、参加者同士や来場者との対話から、未来社会について考えて「共創」を実現する場が、フーチャーライフヴィレッジです。
未来の暮らしを知るため、「未来の食」「未来の文化」「未来のヘルスケア」を中心に、日々の暮らしに近い分野の展示や発表を行う「フューチャーライフエクスペリエンス」、そして、グローバルな視点で世界が抱える問題を提起し、その解決に向けた取り組みを発信する「ベストプラクティス」などの場が展開されます。
持続可能な大阪・関西万博にするための取り組み
大阪・関西万博では、イベント運営における経済、社会、環境への影響について管理し、イベントの持続可能性をサポートするための取り組みを進めています。
具体的には「持続可能性有識者委員会」を立ち上げ、有識者から意見や提案を受け、持続可能な万博の開催に向けて議論する場を設けてきました。
そこでは大阪・関西万博の持続可能性に関する方針やビジョン等が示されています。
例を挙げると、方針・ビジョンの一つである「持続可能な大阪・関西万博開催にむけた行動計画」では、以下のように明記されています。
(1)サステナブルな万博運営
会期前の計画段階から会期中、会期後にわたり、脱炭素社会の構築や循環型社会の形成、自然との共生や快適な環境の確保に取り組み、サステナブルな万博運営を実現する。
省 CO2・省エネルギー技術の導入や再生可能エネルギー等の活用により、温室効果ガスの排出抑制に取り組むとともに、リサイクル素材やリユース・リサイクル可能な部材を積極的に活用する等 3R に取り組み、資源の有効利用を図る。(2)インクルーシブな万博運営
大阪・関西万博は世界各国、また多様な人々の協力により成立する事業である。来場者やスタッフを含む参加者において多種多様な人々が積極的に、また安心して参加できる環境を整えるとともに、本万博からテーマに基づく多様な考え方を発信できるよう、インクルーシブな万博運営を実現する。
万博運営において幅広い参加機会を提供することや、万博に携わるスタッフの就業環境の整備等、参加者一人一人を尊重した万博運営を目指す。
加えて、万博会場ではテーマに基づき、いのちや食、学び等の多様な価値が創出されるよう取り組むことで、SDGs の達成に貢献する。
大阪・関西万博では、SDGsに関するパビリオン等を展開するだけでなく、運営自体も環境や人にとって持続可能であるよう様々な工夫が行われているのです。
過去の万博におけるSDGsの取り組み

過去に開催された万博でも、環境や水、食をテーマにした取り組みが行われ、SDGsに通じる先駆的な活動が展開されてきました。
特に注目したい3つの万博についてご紹介します。
①アメリカ・スポーケン国際環境博覧会(1974年)
1974年にアメリカ・スポーケンで開催されたスポーケン万博は、「汚染なき進歩」をテーマに、環境問題への取り組みを掲げた万博です。
人口過密や工場廃水などの課題を抱えていたスポーケン市は、この万博を契機に川の再生や自然環境の改善を実行。清らかな水と緑を取り戻すための具体的な行動を示しました。
この万博では、環境問題を啓発する映画上映や粗大ごみを利用した展示が行われ、公害の深刻さや解決の必要性を訴えました。
②スペイン・サラゴサ万博(2008年)
2008年にスペインのサラゴサ市で行われたサラゴサ万博は、「水と持続可能な開発」をテーマに開催されました。
人と水との新しい関係を持続可能な形で構築するために、地球的規模の枠組みを創造することなどを目的に開催されたこの万博。
日本館は「水と共生する日本人-智慧と技-」をテーマに、日本人と水の共生の歴史や、日本人の生活の知恵などが紹介され、人気を博しました。
③イタリア・ミラノ万博(2015年)
2015年にイタリア・ミラノで開催されたミラノ万博は、「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、食を中心とした史上初の万博として注目を集めました。
この万博では、「世界中の人々に十分で安全かつ健康的で、適切かつ持続可能な食料を提供することは可能か?」という地球規模の課題に取り組み、参加国が具体的な貢献策や解決策を提示しました。
また、食文化や技術革新、持続可能な農業の未来に関する展示を通じて、訪れる人々に食と地球のつながりについて深く考えさせる場を提供しました。そして2005年の愛・地球博、2010年の上海万博に続く、今世紀3度目の大規模万博として、国際社会における重要なイベントとなったのです。
大阪・関西万博には課題も

SDGsの内容を反映して開催される大阪・関西万博ですが、会場建設に関して問題視されている点があることも知っておきましょう。SDGsの観点からみても、見過ごすことのできない問題が指摘されています。
①建設の遅れと費用の増大
大阪・関西万博では、建設の遅れと費用の増大が大きな課題となっています。
新型コロナの影響や人材・資材不足により、工事が計画通り進んでおらず、開幕に間に合わない可能性が出てきているのです。
また、資材費やエネルギーコストの高騰で予算が大幅に膨らみ、追加資金の確保が急務となっています。
②生物多様性の喪失
会場予定地である夢洲(ゆめしま)は、大阪湾に位置する人工島ですが、多様な野鳥が生息する貴重な自然環境となっています。
特に絶滅危惧種を含む112種の鳥類が確認されており、その中にはコアジサシやシギ・チドリ類などの水鳥も含まれます。
しかし万博の建設に伴う埋め立てや開発によりこれらの生息地が失われ、生物多様性の減少が懸念されているのです。
大阪・関西万博は「SDGs達成への貢献」を掲げていますが、会場建設に伴う自然環境の破壊は、この理念と矛盾するとの指摘もあります。
持続可能な社会の実現に向けて、環境保全と開発のバランスをどのようにとるかが問われています。
大阪・関西万博に期待されていることとは

大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、人々が未来への希望を共有する場を目指しています。
しかし、単に万博の成功という目的に留まらず、未来にわたって地域と地球に貢献する万博として、周辺環境への配慮や開催後の持続可能な活用も期待されているのです。
参考:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hakurankai/banpaku.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/banpaku/page4.html
https://www.pref.osaka.lg.jp/o030010020/bampaku_suishin/2025expo/index.html
https://www.meti.go.jp/policy/exhibition/pdf/milano_gaiyou.pdf
https://www.nature.or.jp/assets/files/ACTION/yumeshima/2024/20241223present_page.pdf
https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/themes/expo2025orjp_2022/assets/pdf/sustainability/20240426_jizoku_actionplan_ver2.pdf