使い捨てプラスチックは私たちの日常生活に欠かせない存在となっていますが、その一方で、海洋汚染やCO₂排出など深刻な環境問題の原因にもなっています。
本記事では、使い捨てプラスチックの現状と問題点、課題について解説し、私たちが今すぐ取り組めるアクションを紹介します。
使い捨てプラスチックとは?

使い捨てプラスチックとは、主に使用後に廃棄されるプラスチック製品のことです。代表的な例として、コンビニやスーパーで使われているレジ袋、ストロー、使い捨てのカトラリー、食品トレー、包装用フィルム、ペットボトルキャップなどが挙げられます。
こうした使い捨てプラスチックは、その利便性から私たちの生活を支えてきましたが、現在、地球環境に深刻な影響を与えていることが問題となっています。
使い捨てプラスチックの現状と問題点

環境省やWWFによると、世界全体で、少なくとも毎年800万トンのプラスチックごみが海に流出していると推定されており、その大半は、使い捨て目的で使用されたプラスチック製品だと考えられています。
また、環境省の「令和5年度検討結果 日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計」によると、日本では年間で11,000~27,000トンのプラスチックごみが海に流出していると見積られています。国内では、使い捨てプラスチックごみのリサイクルが推奨されていますが、その多くが海外へ輸出されたり、国内で焼却処理されたりしているのが実情です。
では、使い捨てプラスチックにはどのような問題点があるのでしょうか。主に次の5点が挙げられています。
① 生態系への悪影響
海洋に流出したプラスチックは、海中の生き物が誤って飲み込んでしまうリスクがあり、最悪の場合、窒息による死亡の原因になることもあります。さらに、食物連鎖を通じて、私たち人間の健康にも影響を及ぼす可能性があるとされています。
② 自然に分解されにくい
一般的なプラスチックは、自然環境のもとで分解されるまでに400年から1000年以上かかるといわれています。そのため、一度廃棄されたプラスチックは、長期間にわたって海や土壌に残り続け、地球環境に大きな負荷を与えるとされています。
③ リサイクルの限界
一般社団法人 プラスチック循環利用協会の調査によると、2023年度の国内のプラスチックのリサイクル率(有効利用率)は89%に達しました。しかし、その多くが「サーマルリサイクル」と呼ばれる焼却による熱回収であり、素材として再利用される割合は限られています。つまり、リサイクルといっても、環境への負荷軽減には限界があるのが実情です。
④ CO₂排出への影響
廃プラスチックの焼却時には化石燃料が使われ、1トンあたり2,765kgのCO₂が排出されるとされています。特に大量の焼却処理が行われる場合、CO₂の排出量が増え、地球温暖化を加速させる要因の一つとなっています。そのため、プラスチックの大量生産・大量消費の見直しが求められています。
⑤自治体の 廃棄処理コストと社会的負担
使い捨てプラスチックごみは、「回収→分別→焼却→最終処分」といった全ての工程において多くのコストと労力を要します。特に自治体のごみ処理費用を圧迫することで、他の行政サービスに支障をきたす恐れもあります。
さらに、ごみ処理施設の稼働負担や老朽化などの課題もあり、環境インフラに対する社会的負担は今後さらに増していくと考えられています。
使い捨てプラスチックの規制は?

日本では2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(略称:プラスチック資源循環促進法)」が施行され、対象となる12品目のプラスチック製品に対し、削減や代替素材の導入が求められるようになりました。
対象となるのは、コンビニや飲食店などで提供されるスプーンやフォーク、ホテルのアメニティ(くしや歯ブラシ)などです。これらを提供する事業者には、使用量の報告義務や再使用の促進などの対応が求められています。
海外でも同様の規制が進んでおり、EUでは2021年7月から特定の使い捨てプラスチック(ストロー、カトラリー、皿など)の販売を禁止する「使い捨てプラスチック指令(SUP:Single-use plastics)」が施行されています。
また、香港では2024年4月に条例が施行され、段階的に使い捨てプラスチック製品の提供が禁止され始めるなど、世界中でサステナブルな社会へ向けた動きが加速しています。
私たちにできること

日常生活の中で私たち一人ひとりが意識を変えることで、プラスチックごみの削減に貢献できます。例えば、以下のような行動がプラスチックごみの削減に繋がります。
・マイバッグ、マイボトル、マイカトラリーを常に携帯する
・テイクアウトの際に「カトラリーは不要です」と伝える
・過剰な包装を控え、簡易包装の商品を選ぶ
・詰め替え可能な商品や量り売りを活用する
日々の買い物や外出時のちょっとした選択が、持続可能な社会を築くための第一歩になります。
使い捨てプラスチックを極力減らすサステナブルな選択を

使い捨てプラスチックを完全に無くすことは極めて難しく、現実的ではないかもしれません。しかし、日常生活で「極力減らす」という意識と行動は、私たちにもできる大切な取り組みです。
「便利さ」だけを求めるのではなく、その背景にある環境負荷にも目を向け、自分の行動を見直すことが重要です。今日からできる小さなアクションの積み重ねが、やがて持続可能な未来に繋がっていくことでしょう。
参考:
環境省_令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第3章第1節 プラスチックを取り巻く国内外の状況と国際動向
WWFジャパン|海洋プラスチック問題について
環境省|令和5年度検討結果 日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計