近年、ますます注目が集まるウェルネスツーリズム。その理由の一つに、ツアープランのバリエーションの豊富さにあります。この記事では、ウェルネスツーリズムの事例とともに、人気の理由を紐解いていきます。
ウェルネスツーリズムとは
ウェルネスツーリズムとは、ストレスと病気のリスク軽減や、健康的なライフスタイルの維持を目的とした旅のこと。リラクゼーションやヒーリング、ヨガやトレッキングといったアクティビティや、健康的な食事を楽しむ旅のスタイルです。
お寺で禅やヨガを体験するマインドフルネスの旅、デジタルデバイスから離れ、自然のなかで過ごすデジタルデトックスの旅、スパでのリラクゼーションの旅などが挙げられます。
自然やその地特有の文化に触れる、運動するなどのアクティビティはストレス解消や免疫力向上の効果があるとされています。また、旅先での体験や出会いが、新しい視点や自己を発見するきっかけになることから、心と体を健康にし、より豊かな人生に繋がる旅とも言えるでしょう。
ウェルネスツーリズムとヘルスツーリズムの違い
ヘルスツーリズムは、自らの欲求を満たし、自らの環境や社会でよりよいパフォーマンスを発揮できる能力を高め、心身と精神の健康を維持することを動機とする旅のことを指します。
ヘルスツーリズムは、大きく二つのカテゴリーに分けられます。
- 心身の健康を高め、維持することを目的としたウェルネスツーリズム
- エビデンスに基づいた予防・治療・リハビリテーションなどを目的としたメディカルツーリズム
つまり、ウェルネスツーリズムは、ヘルスツーリズムの一種だと考えられます。
年々人気をみせるウェルネスツーリズム
健康志向の高まりと、社会のデジタル化によるストレスからの開放を求め、国内外ともに、ウェルネスツーリズムは人気の高まりを見せ、その市場規模も年々増加しています。
グローバルウェルネス研究所によると、2013年の4,941億ドルから、2019年には7,204億ドルへと成長。コロナ禍でいったん減少したものの、2022年には6,507億ドルまで回復しました。2025年には1兆1,526億ドル、2027年には1兆3,396億ドルになると予測されています。
その高まりを受けて、古来よりその地に伝わる歴史や文化、建造物といった地域資源とリラクゼーションやマインドフルネスを組み合わせるなど、ウェルネスツーリスト向けのユニークな取り組みが世界各国で行われています。
海外からの観光客の注目度も高いウェルネスツーリズム
ウェルネスツーリストに向けた取り組みは、日本にもたくさんあります。数ある取り組みのなかで、海外からの観光客の注目度が高いものの一つに、温泉があげられます。
2023年の国際ウェルネストレードショーのレポートによると、日本の伝統的な治癒方法として知られる湯治、温泉、森林浴を体験したい海外からの観光客が増えているそうです。
そして近年注目が高まっているのが、銭湯です。なかでも、トリートメントやマッサージを受けることができるスーパー銭湯が人気を集めています。
海外の旅行客からも北海道や沖縄が人気の理由は?
国内外の旅行客が多く訪れる日本の地域は、ウェルネスツーリズムと深い関わりがあると言えます。
海外からの旅行客に人気の北海道では、ウィンタースポーツをはじめとしたさまざまな自然体験ができ、ヘルシーな地元の料理が堪能できることのほか、登別などの温泉ではリラックスした時間を過ごすことができます。
また、日本随一のリゾート地、沖縄には、美しいビーチ、冬でもそれほど寒くない亜熱帯気候、本州とは異なる生態系、固有の文化や歴史、建造物、そしてヘルシーな料理があります。ウェルネスツーリズムには、最適な場所と言えるでしょう。
国内・国外のウェルネスツーリズムの具体例
世界中でユニークな取り組みが行われているウェルネスツーリズム。具体的にはどういうものがあるのか、国外と国内の例をいくつか紹介します。
【和歌山県・高野山】宿坊で過ごす非日常な体験
国内で代表的なのは、高野山や熊野など早くからユネスコ世界遺産に登録されたエリアではないでしょうか。高野山では荘厳な空気のなかで禅を組み、宿坊に泊まって精進料理をいただくという、俗世から切り離された世界を体験できます。
禅だけなら全国にある様々な寺院でも体験できますが、宿坊で宿泊できる寺院は多くはありません。マインドフルネス効果とここでしかできない経験は、人生をより豊かにしてくれることでしょう。
【三重県・大台町】豊かな自然を味わう料理やアクティビティ
和歌山に隣接する三重県奥伊勢の大台町では、町の90%を占める森林をフィールドにカヌーや登山体験ができ、山と清流が育んだ新鮮な食材を使ったヘルシーな料理を堪能できます。
江戸時代から続く五穀豊穣の祭りや、伊勢神宮との関わりの深さを感じることができる文化財などもあり、日常から切り離された空間でゆっくりした時間を過ごすことができます。
大台町観光協会
https://web-odai.info
【山梨県】立地を活かした都市型の体験
東京都に隣接する山梨県も、恵まれた自然を生かし、心と身体の元気を取り戻すことを目的とした、ウェルネスツーリズムへの取り組みが始まっています。
夏至の日の静かな茶会といった日帰りプログラム、登山やハイキング、ラフティングといった自然体験、立地を活かしたラグジュアリーホテルでのスパ体験などメニューが豊富です。名古屋発「WELLNESS NAGOYA」のように、都市公園でのヨガ体験企画といった都市型ウェルネスツーリズムにも注目が集まっています。
遠出をしたくない時は、近くの森林公園を散歩したり、酸素カプセルサロンでリフレッシュしたり、ヘルシーな食事をしたりするのもウェルネスツーリズムのスタイルかもしれません。
【インドネシア・バリ島】スピリチュアルな地でヒーリング&デトックス
海外のウェルネスツーリズムで有名なところと言えば、インドネシアのバリ島を思い浮かべる人は多いと思います。
バリ島はスパやウェルネス寺院、リトリートセンター、ヨガなど瞑想体験できる環境が整っており、特にスピリチュアルな地としても有名なウブドの人気は海外の観光客で賑わいます。
その他、ウェールズの渓谷で自然とのつながりを深め、子どものような好奇心を取り戻し、心と体のバランスを整えるリトリート。カリフォルニアのウェイトロスデトックスリトリート、先住民族に受け継がれているデトックスとヒーリング体験など様々なものがあります。
Bali.com
https://bali.com/bali/spas-wellness-yoga-spirituality
Visit Wales
https://www.visitwales.com/accommodation/hostel/dreaming-2172669
次の旅は「ウェルネスツーリズム」をキーワードに行先を選んでみよう
温泉の多い日本には、ゆっくり湯船につかり、上げ膳据え膳でその地の食事を堪能し心と体を癒すという、旅のスタイルが古くからあります。
また海外でも、ウェルネスツーリズムを進める地域に多くの人が集まっています。
人気の高まりとともに、新たなサービスや取り組みにもさらなる期待が寄せられているようです。旅行に行く際は、身体も心も癒される「ウェルネスツーリズム」を取り入れてみませんか。