これまでドキュメンタリー映画を100本以上観てきた映画好きのライターがお届けする本企画。離れている国や地域からでも、人々や社会のリアルを知ることができるドキュメンタリーは、今世界で起きていることを身近に感じることができます。今回はサステナブルの本質を考える、おすすめ映画をご紹介します。
その「サステナブル」は本物?
2030年までの達成を目標とする「SDGs」や2050年にCO2排出をゼロにすることを目指す「カーボンニュートラル」など、世界各国で気候変動に立ち向かう機運が高まっています。
特にグローバル企業などは環境投資「グリーンボンド」など大量の資本を投入し、環境問題は解決に向かっているようにも見えます。
しかしその一方で、企業イメージ向上や売上を伸ばすために、環境に優しい商品やサービスであるかのように装う「グリーンウォッシュ」が問題となっています。
世界の生産現場では何が起こっているのか?わたしたちは何を信じたら良いのか?疑問は尽きませんが、実情を伝えてくれるドキュメンタリー作品から、リアルをのぞいてみませんか。
“環境に優しい”うたい文句の裏側を探る「グリーンライ・エコの嘘」
エコに関心のある人ならば、「環境に優しい」「サステナブル」と記載されている商品とそうでないものが並んでいたら、前者を選んで購入しているでしょう。
しかし、もしかるすと、わたしたちが道しるべとしている「環境に配慮している」と記載している製品にはウラがあるかも知れません。
監督は実際に自らの目で「環境に優しい製品」の生産現場を確かめるべく、専門家とともに真実を探る旅へ出発。
映画の中で企業は口を揃えて「自社の商品は環境に配慮しており、トレーサビリティが取れている」と言いますが、ストーリーが進むにつれて企業の信じがたい「嘘」が次々と暴かれていきます。
例えば「持続可能なパーム油」を主張する企業のパーム油農園で、農園拡大のために熱帯雨林が焼き払われていたシーンは映像越しにも忘れることのできないものです。
残念ながら、エコを謳ったたくみなマーケティングで売上を伸ばそうとする企業も少なくありません。
私たちが選んでいるものは本当に環境に優しいのか…。「サステナブル」表記との向き合い方を考えさせられる作品です。
2048年、海の魚は消える!?「Seaspiracy 偽りのサステイナブル漁業」
「持続可能な漁業なんてない」「漁業システムを転換しないと2048年、海の魚は消える」などと衝撃的な主張が物議をかもした問題作です。
幼い頃から海を愛し、ビーチクリーンを行う本作の監督アリは、「海洋汚染の本当の問題はどこにあるのだろう」と疑問を持ったことをきっかけに、ドキュメンタリーを制作し始めます。
作中では、海を守るためのヒント求め、世界各地の漁場や漁業関係者の元を訪れていくアリ。
サステナブルなシーフードに関する認証ラベルをめぐる「認証ビジネス」や、乱獲・密猟、日本でも行われている捕鯨やイルカの追い込み漁、海洋プラスチックとなってしまう漁網の問題、人権を無視した奴隷漁業の実態など、身の危険を顧みず世界の漁業が抱える問題を追求していきます。
彼のカメラを通して世界の海を見ることで、今までは気がつくことのなかった漁業の問題を発見することができるでしょう。
映画から見る本当のサステナブルとは?
一刻も早い気候変動対策が求められる中で、個人のアクションだけでなく企業の環境配慮の意識は大変重要です。しかし、自社のイメージアップなど商業的な利益のために見せかけのSDGsやサステナビリティをうたう事例が増えてきており、今回ご紹介したようなドキュメンタリーも発表され始めています。
映画を通して、本当の「サステナブル」とはどこにあるのか、考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。