夏至は一年のうちで最も昼が長い日であり、季節の節目として昔から意識されてきました。
2025年は6月21日が夏至です。冬至にはかぼちゃを食べるなどの食習慣が知られていますが、夏至にも地域ごとに伝統的な食べ物を食べる風習があります。
本記事では、全国的に見られる夏至の食べ物に加え、各地ごとの風習とその意味について紹介します。
夏至とは

夏至(げし)は二十四節気の一つで、太陽が最も高い位置を通過する日です。一年で最も昼が長く、夜が短くなる日を指します。しかし、日本では梅雨と重なる時期ということもあり、日照時間が長いことを実感しにくいかもしれません。
夏至は田植えや畑仕事が忙しい時期とされており、古来から生活の指標でもありました。
2025年の夏至はいつ?
2025年の夏至は、6月21日(土)です。この日は太陽が北半球で最も長く空にとどまるため、一年の中で昼が一番長くなります。
一方で、夏至を境に昼の時間は短くなるため、夏至は季節の移り変わりを感じる節目としても意識される日です。
夏至に食べる食材には何がある?
冬至はかぼちゃを食べるという習慣が知られていますが、それに対して、夏至に食べられる食材はあまり知られていません。
実は、夏至にも全国各地でさまざまなものが食されており、それぞれ異なった意味合いが込められています。
また、夏至が農作業の繁忙期と重なっているため、日常の食事に気を配る余裕がないことや、梅雨時期で食材の確保が難しかったことなども夏至に特定の食べ物が食べられるようになった所以とも考えられます。
全国共通の夏至の食べ物
ここでは、全国的に食べられる夏至の食べ物とその意味について、見ていきましょう。
冬瓜
冬という字が入っている冬瓜ですが、夏が旬の野菜です。90%以上が水分のため、初夏の水分補給に適した食材で、夏至には全国で食べられてきました。
カリウムとビタミンCが豊富に含まれていて、疲労回復や夏バテ防止にも効果的。煮物やスープなどのメニューによく使われます。
地域別ごとの夏至の食べ物と意味合いについて
ここでは地域別の夏至の食べ物と意味合いについて、解説しましょう。
関西地方|タコ
関西地方を中心に、夏至の頃にタコを食べる習慣があります。特に大阪では「タコを食べて稲の根がしっかり張るように」と願いを込めて食べられています。これは、タコの足が地に吸いつく様子と、稲の根張りを重ね合わせているのでしょう。
関東地方|小麦
関東地方では、夏至から数えて11日目の「半夏生(はんげしょう)」という日に、小麦を使ったものを食べる風習があります。小麦ともち米を使った焼き餅が代表的です。
夏至時期は麦の収穫期にあたり、新麦を使った料理を食べ、その年の恵みに感謝する意味が込められています。
大阪府・奈良県|あかねこ餅・半夏生餅(はげっしょうもち・はげっしょもち)
大阪府の南河内地方、奈良県、和歌山県北部では、夏至から半夏生の時期にかけてあかねこ餅(半夏生餅)を供える風習があります。これは、餅米と小麦を混ぜた餅で、きな粉がまぶしてあります。
その意味合いは、田植えを終えたあとの神様への感謝と、農作業の無事を祈るためです。「焼き締め」の意味合いもあり、一仕事終えた節目(サイン)を示しています。
福井県|焼きさば
福井県の大野市辺りでは、古くから半夏生に串焼きの焼きさばを食べます。江戸時代に田植えを終えた人々への労いの証として、焼きさばをふるまったのが事の始まりだそうです。
栄養価が豊富なさばは、体力を回復する力があるといわれている食材です。農作業の疲れを緩和する食べ物としても、この時期に好まれるのでしょう。
香川県|うどん
うどん県として知られている香川県では、半夏生にうどんを食べる風習があります。新麦で作ったうどんを食べることで、麦の恵みを祝う意味もあります。
三重県|ミョウガの味噌汁
三重県では、夏至にミョウガの味噌汁を飲む風習があります。ミョウガは夏バテ予防にも効果があるとされており、暑い夏を健やかに乗り切ることを願う意味が込められています。
長野県|芋汁
長野県の一部地域における夏至の風習は、山芋をすりおろした芋汁を食べることです。農作業をねぎらう意味で振る舞われています。山芋には、胃の粘膜を保護し消化機能を高める効果があるとされており、暑い夏を乗り切るための滋養食として重宝されています。
自然の恩恵を感じる夏至を過ごそう

夏至は他の行事と比べると、全国的な盛り上がりに欠ける印象があるかもしれませんが、地域ごとに夏至や半夏生にちなんだ行事食が令和の今でも伝えられています。
タコやうどん、焼きさばなどそれぞれの食べ物には、自然の恵みへの感謝や農作業への労いの意味が込められてきました。
2025年の夏至である6月21日には、自然の恩恵を感じながら、地域の伝統に触れるきっかけをつくってみてはいかがでしょうか。