夢のアフリカ渡航が目前に。アーティストSUDA YUMAと家族の知られざるストーリー

今年の9月、東京・世田谷の落ち着いた住宅街に佇むギャラリーで行われたのが、SUDA YUMAの展示会です。中に入るなり、色鮮やかに躍動する動物を描いた作品が目に飛び込んできます。
発達障がいのあるアーティスト、YUMA。彼の目を通して見える動物の世界は、優しく平和で、愛に溢れ、人々の心を魅了し続けています。

動物を描き続けてきたYUMAはこの秋、自身初となるアフリカ渡航プロジェクトを実施予定。ケニアのサファリを訪れ野生の動物を見に行くという大きな挑戦には、クラウドファンディングで多くの支援者が集まっています。

今回は新進気鋭のアーティストYUMAをマネジメントする母の須田裕子さんとご家族を取材。作品のこと、これまでの道のり、そしてアフリカへの挑戦についてお聞きしました。

各界が注目。YUMAが表現する、ポップでユニークな動物たちの世界

YUMAのアートはすべて、動物が主役です。ゾウやキリン、フラミンゴや、クマ、ペンギン、海の生き物たち…それ以外にも多種多様な動物が、ジャングルや森、湖、雪山を背景に登場します。動物たちはみな、生命力に満ち溢れ、個性豊か。ポップな色彩が、唯一無二の世界観を作り出しています。

彼の描く作品には、純粋でユニークな動物の魅力を思い出させてくれる力が宿っているのです。

YUMAはこれまで、個展や合同の展示会を開催しているほか、アパレルメーカーとのコラボレーションを実現。

今年は、富岡八幡宮から「アートパラ干支大絵馬」のアーティストとして選ばれ、2023年の年末から2024年まで、本殿にYUMAの作品が飾られます。

幼い頃からずっと続けてきた、描くということ

幼い頃からクレヨンなどを使って文字や絵を描くことに夢中だったYUMA。裕子さんはその頃のことをこう振り返ります。

「最初はずっとアルファベットを書いていました。そのうち、動物を描くようになっていくのですが、集中力があり、毎日何時間も絵を描いているということが多かったですね。中学生になるころには、小さいサイズの紙から、だんだん大きな紙に描くようになっていました。」

YUMAが現在のスタイルにたどり着いたのは、約3年前。幼い頃から動物を描き続けてきた彼は、初めは色鉛筆など細いタッチの画材を使用していましたが、知人からのすすめもあり、アクリル絵の具を使うように。大胆に色を塗ることができるこのスタイルが自身とマッチし、もともとあった才能をさらに開花させるきっかけとなりました。

自宅にあるアトリエ。100近い色の種類の絵具を全て記憶している

「絵を描き始めると彼の中で迷いはありません。色を選ぶ際も、迷っているのを見たことがないですね。最初から頭の中で色の配色が決まっているようで、バランスを見て色を決めたり、足したりするスタイルではありません。例えばピンクをとったら、先にピンクに塗りたい場所を埋めていくことがほとんどです。」

現在は、図鑑や写真集、実際に動物園に行ったときに見た動物からインスピレーションを受けて創作を行っています。中でも上野動物園には100回以上足を運んでいて、名古屋市の東山動物園もお気に入りだそう。

実物だけでなく、本からも多くの着想を得ている

作品からは見えてこない障がいの現実

才能に溢れた若きアーティスト。YUMAのことを知ろうとするとき、そのような単純な言葉では語れない歴史が、本人と家族にはあります。

裕子さんの言葉の端々からは、朗らかな家族の雰囲気や明るい作品からは想像のつかない、障がいと共に生きることの苦労が垣間見えます。

「YUMAは、思考や感情を口に出して伝えることが得意ではありません。また、記憶力が人並以上であることから、私たちが考えている以上に、これまでの思い出や情報が頭の中に残っています。それをうまく吐き出し、考えをまとめられる方法が、YUMAにとっては描くということです。絵はもちろん、文字をノートに書くことも同じです。常にフル回転している頭を休ませるために、彼にとってそれがとても大切な時間なのです。」

YUMAには欠かせないノート。絵の構想や学んだことなどが書いてある

「アーティストとして活動する前、YUMAは5年ほど働いていました。毎日一生懸命働いていましたが、同じ作業の繰り返しで成長を感じられず、本人は働く目的や目標を失っていました。
私も、彼が職場にいることでみなさんに迷惑をかけているんじゃないかと思ってしまい、いつも“すみません、すみません”と謝ってばかりいて、疲弊していたと思います。本人が家でイライラすることも増えてきて、限界だなと思うことが多くなり、じっくり話し合って卒業する決断をしたんです。
今は毎日穏やかに過ごしていますが、季節の変わり目などは、バランスを崩しやすいです。日常生活での小さな出来事がストレスになってしまうこともあります。
“才能があっていいですね”と言われることもありますが、家族にとっては毎日が戦いです。子育てはみんな大変ですが、自立がなくサポートをずっと続けていかなくてはならないというのは、精神的にも負担です。次も障がいのある子を産みたいかと聞かれたら、二つ返事で“はい”とは言えないですね。」

「ひとつの個性という人もいるけれど、障がいはそのような言葉で説明できるほどいいものではない」とYUMAの兄である将太郎さんも言います。

本人が生まれたときからずっと障がいと向き合ってきた家族からは、借りてきた言葉ではなく、リアルで率直な感情が言葉になって出てきます。

誰の目に映る動物とも違う、YUMAの描く生命力にあふれた優しい動物たち。彼にしか生み出せないアートの背景には、本人と家族しかわからない、日々の物語があるのです。

YUMAの活動が、みんなが生きやすい社会へ繋がるように

ピアノは楽譜ではなく、音と指の動きから曲を覚える。記憶している曲数は20曲以上にのぼる

「YUMAは絵を描いて生活しているので、とても恵まれていると思いますが、障がいのある子どもを育てるということは、本人と家族にたくさんの困難があります。
例えば学生時代は親の送り迎えが必要で、休まる時間はありませんでした。特別支援学校は駅から離れている場合が多く、一人で通学するのは難しいところが多いんです。周りの親御さんも自分のことは後回しで、働くこともままならない方が多かったですね。中には夜中に働いている親御さんもいました。」

ここ数年、多様性を受け入れる社会の構築は進みつつありますが、その家族まで、必要とされる理解や支援は行き届いていないのが現実です。

学校を卒業する年齢が近づくと他の課題にも直面します。障がいのある子は、社会に出ること自体を目標に設定されがちで、本人の個性や希望などは二の次になってしまうのです。

「障がい者にとって、就労というのはひとつの大きな目標になっています。就労するためにみんな同じような訓練を重ねるんですが、本当は一人ひとり個性豊かで、得意・不得意だってあります。しかし障がいがある人のほとんどは、そのように決められたコースしか選べない現状があるんです。

YUMAの活動を通して、社会に当事者とその家族の状況が伝わり、障がい者の教育や働き方の選択肢が少しでも広がってくれると嬉しいと思っています。」

まだまだ知らない人も多い、障がいを取り巻く現実。YUMAの活動が、障がいのある人と周りの人に対する理解へと繋がり、誰もが生きやすい社会になっていくことを裕子さんは願っています。

YUMAの作品は、たくさんの動物が集まり、まるで話をしているような作品が多い

「いつか行きたいね」が現実に。夢のアフリカへの挑戦

YUMAと母の裕子さん。直接アートを描いたリビングのドアの前で

今、Yumaは長年家族で話していた“アフリカで野生の動物が見たい”という夢を叶えようとしています。

アフリカ渡航プロジェクトは、兄の将太郎さんとその友人の稲川雅也さんが中心となってスタート。何度もアフリカの地に足を運んだ経験や、現地の人との繋がりもあることから、プロジェクトのアイデアが生まれました。

今回訪れるのは、豊かな大自然に多くの生き物が暮らすケニア。ライオン、アフリカゾウ、サイ、ヒョウをはじめとした多様な生物が共生するマサイマラ国立保護区でのサファリ体験をメインに、ナイバシャ湖では水辺に生息する鳥などを観察予定。さらに、現地のアートセンターを訪問し、地元のアーティストとコラボレーションを行います。

渡航に先立ち始まったクラウドファンディングでは、目標額を大きく超え、650万円を達成。リターンの選択肢の一つである、彼がアフリカ帰国後に制作するアートが人気であることから、彼の活躍に期待し、応援したいと考える支援者の多いことが伺い知れます。

アフリカの大地に立つ彼はどんな表情をしているのか。初めて出会う人や文化、自然や動物は彼の目にどのように映るのか。そして帰国したとき、彼が描くものとは・・・?

rootusでは、帰国後のYUMAも取材予定。アフリカ渡航という大きなチャレンジを成し遂げようとする若きアーティストYUMAから、今後も目が離せません。

プロフィール

SUDAYUMA

1998年、東京都生まれ。発達障がいがあり、夢中になって動物の絵を描く子ども時代を過ごす。現在はアクリル絵の具を使用し、ポップなカラーで彩られた多様な動物が登場する作品の数々を発表。彼の目線で描かれたユニークな生き物の世界観に、アパレルメーカーやクリエイター、芸能人などからの熱い視線が送られている。2023年10月には長年の夢であったアフリカ渡航を予定。クラウドファンディングを中心に、彼の挑戦を支持し、今後の活躍に期待する声が高まっている。

公式HP:https://www.sudayuma.com/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/sudayuma/?hl=ja
クラウドファンディングサイトページ:https://rescuex.jp/project/76450

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この記事を書いた人

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