ファッションに改革を。SETCHUが実現するサステナブルな未来【現地取材】

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今世界が注目するミラノ発のファッションブランド、SETCHU。最近日本での販売も開始され、その勢いは加速する一方です。生地やデザインへのこだわりだけでなく、ファッションが環境に与える多大な負荷を解決するため、サステナビリティを実現するSETCHUの魅力をイタリアからレポートします。

日本人デザイナーが手掛ける和洋折衷ブランド

東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノ。
桑田悟史さんは、世界各地のモード発信地で経験を積んだファッションデザイナーだ。ロンドンの歴史ある高級テーラー街サヴィル・ロウで働き、ジバンシィのシニアデザイナーとしてオートクチュールを手がけるなど、ファッションの真髄に携わってきた。

上質と洗練、ファッションを知り尽くした桑田さんが、ミラノで自らのブランド「SETCHU」を立ち上げた。
日本文化の面白さを世界に発信したいという思いから、ブランド名は「和洋折衷」に由来する。

ブランドのテーマは「アーティザン(クラフトマンシップ)」「タイムレス」そして「旅行」。
洋と和、性別、時代、伝統と斬新など、全てのボーダーを取り払ったデザインは、服だけでなく靴、鞄、傘、器などライフスタイル全般に及ぶ。

近年、ファッション業界が環境に与える負荷の大きさが取り沙汰されている。中でも服や生地の廃棄量は凄まじく、増加の一途を辿る。その現実を目の当たりにしてきた桑田さんが、SETCHUで実現しているサステナビリティとは。

①ブランドから出る上質な余剰在庫生地の利用

まず桑田さんが着目したのは、余剰在庫生地。
ブランドに購入されなかった、または返品された大量の生地が、生地工場の倉庫に廃棄待ち状態で眠っている。

一流ブランドの生地を手がける、北イタリアにあるコモのシルク工場。そこで廃棄の運命にあった、希少で美しい織りの生地を見つけた。それに最終加工を施し、ハンカチーフとクッションを作って製品にした。

最終加工前の生地を見定めて、工場と密にやりとりしながら理想の生地に仕上げて、製品にしていく。
大手メゾンに比べ格段に小規模なオーダーを依頼しても、相手にされないことが多い世界。しかし、多くの一流の工場や職人がSETCHU のブランドコンセプトに共感し、桑田さんの熱意に応える形で協力してくれる結果となった。

②長く着られるディテールとデザイン

年齢と時代を問わずずっと着られる、上質な服。
英国王室ご用達でもあるサヴィル・ロウで、100年以上前のスーツのお直しなどにも携わりながら、桑田さんが行き着いたコンセプトだ。

シーズン毎に発表するコレクションは、流行によって「流す」のではなく「重ねて」いくことで、ブランドという木を育てていくビジョンを持つ。エルメスやクリスチャン・ディオールなど、一握りの高級ブランドに見られる価値観だ。

例えば、ファッション関係者たちが一目惚れし、自身用に購入する人が続出したジャケット「ENRICO」。旅と釣りを愛する桑田さんにとって、折り紙のようにスーツケースに折り畳める軽量のジャケット作りは必然だった。

服は縫い目が少ないほど長持ちするため、ノーダーツなどの工夫を細部にこらしながら、縫い目を最小限に抑えている。
ウールヴィスコースの生地に刻まれた、ユニークな折り目とゆったりしたダブルボタンの美しいデザインは、私たち日本人には羽織を連想させる。
帯のようなベルトを縛ると、女性らしいシルエットが生まれるなど、様々な表情が楽しめる。
性別や年齢を選ばないENRICOジャケットは、シーズンごとに異なる生地で展開されていく。

③環境への負荷を抑えた配送方法

SETCHUの配送におけるサステナビリティのポイントは、2点ある。

一つ目は、コンパクトなパッキング。
薄く軽量な生地で作られ、折りたためるデザインの服が多いため、一箱に何着も入れて輸送できる。

もう一つは、商品の梱包袋が「リサイクル素材を使ったリサイクル可能なもの」であること。
「RECYCLED & RECYCABLE」であることが、サステナビリティのあるべき姿の一つだと桑田さんは考える。

その他、100%リサイクルペットボトル製の生地を採用したり、長持ちしにくいニット素材には強度の高いウールを混ぜるなど、一つ一つの素材にこだわり抜く。

持続可能なファッションを、実現可能へ

将来は、SETCHUの自社牧場を持ち、コットンから栽培したいと語る。
目から鱗の発想だが、気がつけばウール用の羊に囲まれた桑田さんの姿まで想像できてしまうほど、有言実行の人だ。
その世界では、更なるサステナビリティが実現しているに違いない。

SETCHU
https://www.laesetchu.com

この記事を書いた人

writer

東京で大学卒業後、映像ディレクター職を経て、ヨーロッパやアジアなどを転々と旅する20代を送る。NYへ留学し、その後ミラノに移住。 出産や料理の仕事、ヨガを通して、オーガニック食材や日用品にこだわるようになり、地球環境への意識が高まるきっかけに。

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