近年、制度の改訂や名称の変更など、ジェンダーに関する話題を耳にすることが多くなってきました。ジェンダーに関するワードはいくつかありますが、今回は「ジェンダーフリー」について、現在の状況や事例を交えながら解説します。
ジェンダーフリーとは
「ジェンダーフリー」とは、「男だから家事しなくても良い」「女だから仕事ではヒールつきの靴を履くべき」などといった、従来の社会的および文化的な性別の固定概念に捉われず、誰もが平等に自分の意思で行動したり、発言したりすることを指します。
ジェンダーフリーが広まった社会は、性別による「こうするべき」という固定概念がなくなります。プライベートでも仕事でも男女の性別に関係なく、個人の好みや考え方、行動や決断が尊重されるのです。
なぜジェンダーフリーが注目されるのか
近年の日本は、働く女性の割合が高くなり、社会において女性が活躍する機会も増えています。一方で、内閣府男女共同参画局が2021年に発表した「ジェンダーギャップ指数」では、先進国の中では最低レベル、アジアの中では韓国や中国、ASEAN諸国よりも低く、156ヵ国中120位という結果でした[1]。
このようなデータからもわかるとおり、日本はまだまだ女性の地位向上の実現には至っていないことが把握できます。例えば、家庭を持つ女性は性別による役割分担が根強くあり、仕事の有無に関わらず、基本家事を切り盛りするなど、負担が多いのが現状です。
また、男性に対してもたくさんの思い込みが存在します。
例えば、「男は家庭には入らず仕事をするべき」など、男性は外で仕事をしなければならないという風潮は昔からあります。
そのような社会では、専業主夫や様々な理由から働くのが難しい男性は生きづらさを感じるでしょう。
他にも職種やスポーツの種類、服装、趣味、社会における役割など、様々なところで性別に関わるバイアスがかかっているのです。
性別にまつわる「こうあるべき」という概念が残っている以上、社会にいづらさを感じる人もたくさんいます。そこでジェンダーフリーという考え方が、注目されているのです。
ジェンダーレスとの違い
ジェンダーフリーと似たようなワードとして、ジェンダーレスという言葉があります。
ジェンダーフリーとジェンダーレスとの違いは、性別格差をなくすか、性別の境界線をなくすかです。
もう少しかみ砕いて表現すると、前者は「従来の固定概念を払拭し、誰もが平等に発言や行動ができる」というのに対し、後者は「男女の性差や区分を取り払う」という意味です。
例えば、男性、あるいは女性はこういう格好をするべきだという固定概念を取り払うのがジェンダーフリーであるのに対し、性別に関係なく好きな服装を楽しむことがジェンダーレスとなります。
ジェンダーフリーの事例
日本でもジェンダーフリー実現に向けた取り組みが進んでいます。その事例を紹介しましょう。
男性の育休制度
女性が働きやすい社会づくりが重要視される一方で、男性の家庭での役割も変化しつつあります。「女性はうちを守り、男性は外で働く」という概念がなくなりつつあるのです。
日本では、2022年10月から「産後パパ育休」という新しい制度が施行されました。男性の育休取得を促進する狙いです。この制度では、子どもが生まれてから8週以内に28日間まで育休を取得できます。事業主は、男性社員から出産の報告を受けると、育児制度があることを伝え、取得するかどうかの確認を取るなどの義務が発生。女性と同じように、育児休業中は育児休業給付金が支給されます。
男性も育児に参加し、こどもとの時間を作れる流れになってきています。
学校および企業の制服選択制
従来の日本の学校や企業の制服は、「男子がスラックス、女子がスカート」というのが主流でした。しかし、最近は多様性に配慮し、制服も選べるようになってきています。
「制服選択制」では、例えばスラックスかスカート、ネクタイかリボンからそれぞれ自由に選んで組み合わせて着ることができます。
企業の制服にも変化が起こっています。2020年4月に制服を一新した日本航空では、女性客室乗務員の制服にパンツスタイルが加わりました。多様性を意識したデザインで、生き生きと活躍してほしいとの思いから作られています。
ジェンダーフリーが広まり、みんなが住みやすい社会に
今回は「ジェンダーフリー」を、昨今の社会的背景や事例を交えながら解説しました。職業や立場などによって、ジェンダーフリーの動きが盛んなところもあれば、まだ進んでないところもあるかもしれません。
しかし、ジェンダーフリーの普及によって、男女で「こうあるべき」という固定概念が根強く残る日本でも、多様性を尊重する方向に向かっています。これからのジェンダーフリーの動向に注目していきましょう。
【参考】
[1] 内閣府男女共同参画局「共同参画」2021年5月号
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html