長年、世界では地域によって貧困の格差などが生じており、社会問題として挙げられています。このような現状を見ると、誰もが平等で、穏やかな生活を送れる訳ではありません。
こちらの記事では、持続可能な社会づくりのキーポイント「グローバルサウス」「グローバルノース」についてフォーカスしていきます。
グローバルサウス、グローバルノースとは
グローバルサウス(Global South)とは、グローバル化によってその被害を受ける地域や住民のことです。地理的に南にある地域を指すわけではありません。
以前は、南北問題と言われており、地理的に地球の北側と南側の格差が問題視されていましたが、新興国が出てきたり、移民が南から北側に流れていることもあり、今では地理的な意味は含まれていません。
グローバルサウスの国々は、グローバル化に伴い環境問題や人権問題などが浮き彫りとなっています。
一方、グローバルノース(Global North)は、グローバル化の恩恵を受け経済的な発展を遂げている先進国を指します。アメリカやヨーロッパ、日本はグローバルノースに含まれます。
グローバルサウス、グローバルノースの国
グローバルサウスやグローバルノースには明確な基準がありません。
イメージがしやすいように、ここではG77[1]をグローバルサウスとして考えます。G77は1964年に国連において、発言力強化のために形成された開発途上国のグループです。発足時は参加国数が77か国であったことから「G77」と名付けられましたが、現在では134か国にのぼります。
また、グローバルノースは国際通貨基金(IMF)による先進国(Advanced Economies)[2]とします。
ただし、現在ではG77の参加国であっても中国はグローバルサウスと見なさない場合も多く、どの国をグローバルサウス、グローバルノースとするかは解釈によって様々です。
グローバル化がもたらす光と闇
20世紀は経済発展が著しい時代でした。
運輸交通と通信技術の発展によって、人・モノ・金・情報が、国境を超えてハイスピードで流れる仕組みができ、グローバル化時代へと突入。そして21世紀はインターネットの発展で、グローバル化がさらに加速しています。
海外製の商品が安く手に入るなど、グローバルノースに住んでいる私たちは、グローバル化による「恩恵」を少なからず感じられるでしょう。
しかしながら、多くのグローバルサウスでは、劣悪な環境の中、生活をしなくてはならない人々がいるのが現状です。
例えば、地球温暖化による海面の上昇、低賃金で過酷な労働環境、天然資源の採掘による自然破壊などは、いずれも「グローバル化」がもたらした負の側面なのです。
グローバルノースの豊かさの裏には、グローバルサウスが「犠牲」になっている可能性があるということを認識しなくてはなりません。
グローバルサウスで起きている具体的な問題
グローバルサウスで実際に起きている解決すべき問題は複数ありますが、ここでは主な問題について触れていきましょう。
安価な労働力
私たちが普段使うモノのなかには、グローバルサウスの国で作られたものが多数あります。特に価格の安い雑貨や洋服などは、バングラデシュやベトナムなど、グローバルサウスの国々の安い労働力で作られている可能性があります。
安い賃金に加え、長時間、劣悪な環境下で働いていることも想定され、問題視されています。2013年にバングラデシュで起こった、「ラナ・プラザの悲劇」というビル崩壊事故は、この問題を世界に知らしめ、大きなニュースとなりました。
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資源と農産物の枯渇
グローバルノースの人々の生活は、グローバルサウスに住む人たちが掘り起こした資源や、栽培した農作物を輸入することで成り立っている側面があります。しかし、過剰な採掘や農作物の栽培は、原産国の資源が枯渇するという問題へと発展しています。
これは、現地の地球環境を傷つけると同時に、水不足や資源の不足にも繋がっています。
環境破壊
先進国に輸出するモノを大量に作るため、土地を開拓し大規模な工場を作ることは、空気汚染や水質汚染、土壌汚染など、生産する土地に大きな負担をかけます。そのような環境破壊は、地元の人々の健康被害のリスクが高くなり、ときには住処を奪われることがあるなど、生活の質の低下を引き起こします。
また、ツバルなどの島国では、地球の温暖化が進むことで海面上昇が起こり、土地が失われる事例も発生しています。
温暖化の被害を受ける国の多くがグローバルサウスであると言われているのです。
グローバルノースに住む私たちができること
コロナなどの影響で、グローバルサウスに住む人たちに向けた直接的なアクション(ボランティアやスタディーツアーに参加するなど)は、現状難しいかもしれません。
ただ、グローバルサウスに住む人たちの現状を理解するということは、ネット環境が整っていればできます。普段からニュースや新聞で「現状を知る」ことにフォーカスしましょう。
日本国内でもオンラインやオフラインで支援イベントやセミナーが開催されていますので、参加してみると何らかの発見があるかもしれません。例えば、国際協力NGOセンターJANICでは、発展途上国に関連したイベントやセミナーが定期的に実施されているので、チェックしてみても良いでしょう。
また、他にも、購入するものがどのように作られているか確認することも大切です。エシカルな商品は、労働搾取が行われていないものや、環境への負荷が小さいものが多いので、そのようなものを積極的に選ぶのもひとつの方法です。
グローバルサウスで起きている問題の解決への近道は、私たちの生活が現地の人々に影響を与えているかもしれないということを知り、問題を「他人事」ではなく、「自分事」として捉えることです。
このような意識が、問題解決への第一歩につながっていくことでしょう。
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【参考】
[1] G77HP – Member States http://www.g77.org/doc/members.html
[2] 国際通貨基金HP – World Economic Outlook (April 2023) https://www.imf.org/external/datamapper/datasets/WEO