行き場のないコスメの救世主。プラスコスメプロジェクトが描く「クリエイティブな循環」

洋服の大量廃棄問題は耳にすることも多くなりましたが、実は同じく深刻なのがコスメの廃棄です。洋服と同じく、流行などに左右されやすいコスメは、使いきれずに捨てられてしまうケースも珍しくありません。

今回は、“コスメを通じてクリエイティブな循環を実現させたい”そんな想いのもと、不要になった化粧品を回収し画材として新たに生まれ変わらせる取り組みを行う、PLUS COSME PROJECT(プラスコスメプロジェクト)を取材しました。

コスメのアップサイクルとは?

子どもたちによる自由で想像力豊かなアート。
これは、コスメから作られた画材を使って描かれた作品です。
コスメが元から持っている色味や質感を生かすことで、画材として魅力あるものに生まれ変わります。
捨てられるはずだったものが新たな価値を持ち、生まれ変わるというコスメのアップサイクルは、まだ使えるものを再利用することで廃棄を減らすことはもちろん、コスメの廃棄問題を広く知ってもらうという大きな役割を担っています。

プラスコスメプロジェクトのアンケート調査によると、女性80名のうち6割が化粧品を使いきれずに捨てた経験があると回答。コスメの廃棄問題は、私たちにとって身近な問題なのです。

始まりは化粧品の大量廃棄に疑問を持ったこと

「化粧品の廃棄問題を知ったのは、以前化粧品会社に勤務していた時でした。中身が残ったままの化粧品が大量に廃棄されていくのを見て、化粧品業界のサステナビリティを考えるようになりました。自分自身もコスメのテスターやサンプルをどのように処分したらよいか困っていたんです。」そう話すのは、プラスコスメプロジェクト代表の坂口翠さん。当時、スキンケア化粧品のボトルをリサイクルする動きはあったものの、コスメそのものをリサイクルするという選択肢はなく、不要になったたくさんのコスメが行き場を失い、廃棄になっていたのです。

坂口さんは、化粧品業界の環境問題やサステナビリティを学ぶために、大学院へ入学。化粧品リサイクルなどの研究をスタート。2012年には、メイクアップコスメを画材へアップサイクルするプラスコスメプロジェクトの活動を開始しました。

プラスコスメプロジェクト代表の坂口翠さん

活動を行っていてよく聞くようになったのが「余ったコスメを廃棄することができず、とても困っていた。このように再活用してもらえると嬉しい」という人々の声です。
協力企業からも「廃棄するものなので是非とも活用してもらいたい」と賛同の声が上がっています。

コスメならではのカラー。アップサイクルクレヨンができるまで

プラスコスメプロジェクトのアップサイクルはメイクアップコスメを集めることから始まります。個人で不要になったコスメの他に、化粧品メーカーや商業施設、団体からも不要コスメを回収。
回収したコスメはまず、容器から残っている化粧品を取り出します。それを色ごとに分別し、蜜蝋などの材料と混ぜ合わせ、クレヨンが出来上がります。
メイクアップコスメが持っているラメなどの質感もそのままクレヨンに引き継がれるので、これまでのクレヨンとは違った色味を楽しむことができるのが特徴です。
また、アップサイクルクレヨンは安全認証機関でも安全テストを受けているので、安心して使用することができます。

アートを楽しむことがコスメの廃棄問題を知ることに繋がる

プロジェクトでは、アートイベントやアーティストへの画材提供を行い、アート活動をサポートする取り組みも行っています。他にも地域密着型の化粧品店で、不要コスメから絵具を作るワークショップなども開催。
クリエイティブな時間を楽しんでもらいながら、コスメの廃棄問題についても知ってもらいたいという思いがあります。
プラスコスメプロジェクトは、不要になってしまったコスメとアートを楽しむ人々をつなぎ、コスメのサステナビリティ意識を広める役割も果たしているのです。

プラスコスメプロジェクトの見つめる未来

これまで受注制作がメインでしたが、今プラスコスメプロジェクトでは、クレヨンを販売する計画が進んでいます。
坂口さんが2012年にプロジェクトを開始したときに思い描いていたものが現実のものになっているそうです。
コスメを回収してからクレヨンが完成するまで全てを手作業で行っているため、回収量が多いときは製作が追い付かないという苦労もありながら、坂口さんは活動に確かな手ごたえを感じています。
「コスメを廃棄することに悩んだり、罪悪感を抱く人も少なくありません。そんな中でプロジェクトに取り組んでいると、行き場のないコスメを再活用してもらえることに感謝され、想いに賛同してくれる方も多くいらっしゃいます。国内外のアートイベントで活用されている報告や、応援の声が大きな原動力となっています。」
また、コスメを捨てるのに罪悪感を持っている人のためにもなりたいと話します。

「ご縁があって手元にはやってきたものの、どうしても使うことができず、不要になってしまった残ったままの化粧品。その化粧品が新たな形で再利用されれば、手放す際の“小さなわだかまり(ストレス)”も少し軽くなるのではないでしょうか。それは心の中の健やかさや美しさにもつながっていくのではないかと思っています。」

プラスコスメプロジェクトは、誰でも簡単に参加することができます。
「現在は郵送でも不要コスメ回収を受け付けておりますので、是非ともご一報ください! 皆様の代わりにアップサイクルさせて頂きます。また画材提供先として不要コスメで作品を描いてくださるアーティストさんも随時募集しております。今後この活動が必要なくなった時は、本当の意味で化粧品のサステナブルな仕組みが実現したときだと思っております。」

ポップアートアーティストへ画材を提供した際、廃棄されるはずだったコスメが画材として絵画に変化していく様子を見て、感動を覚えたという坂口さん。
アーティストへの提供を通じて日本のサスティナブルアート文化を盛り上げていきたいこと、絵本作家と協力し子どもたちと一緒に地球環境を考える絵本を製作したいことなど、坂口さんは色彩豊かな未来を描いています。

<編集後記>

コスメを使いきることができず廃棄した経験や、ポーチで眠ったままにしている方は多いのではないでしょうか。
筆者にもそんな経験があり、不要になったコスメの活用方法があることを多くの方に知ってもらいたいという思いから今回プラスコスメプロジェクトさんを取材させて頂きました。
コスメを使う人々や企業、アーティスト、子どもたちを巻き込みながら、不要コスメから始まる循環の輪はますます広がりを見せてゆくでしょう。
10年目を迎えたプラスコスメプロジェクト。今後の活動にも期待したいと思います!

PLUS COSME PROJECT
公式サイト https://www.pluscosmeproject.com/
Instagram公式アカウント https://www.instagram.com/pluscosmeproject/

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この記事を書いた人

フリーライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通して、世界各国の社会問題を知る。
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