Yahoo!ニュース ドキュメンタリー 今月観たい1本『AT ANY COAST』

社会や人々のありのままを切り取り、映し出すドキュメンタリー。映像というかたちでこの世界の“リアル”を知ることは、地球にも人にも優しい未来を考えるきっかけになります。

本連載では、気軽に観ることのできる約10分以内のドキュメンタリー作品を配信する「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」から、今観たい1本をセレクト。毎月テーマを変えて、映像という切り口から、持続可能でエシカルな社会を考えます。

7月のテーマは「海洋ごみ」です。

海の日に考えたい、生活に身近なプラスチックと海洋汚染

毎年7月になると、海開きなどのニュースが流れ夏の訪れを感じさせます。

マリンスポーツや海水浴など、夏のレジャーの主役である海。一方で、生物多様性の喪失やごみ問題など、環境破壊につながる問題を抱えている一面もあります。

今回ご紹介するのは、海洋ごみ問題に取り組み、海を守る活動を行う一人の男性を追った作品『AT ANY COAST』です。海岸に流れ着くごみの現状やその解決の糸口を、映像を通して学び考えることができます。

『AT ANY COAST』

AT ANY COAST(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)

監督・撮影・編集:庄 輝士
公開:2023年

作品のあらすじ

世界遺産に登録されている「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」があるなど、独自の文化や歴史を持つ、東シナ海に面する長崎市北部・外海(そとめ)地区。

自然豊かな地域にあるこの浜辺には、海から漂着するペットボトルや漁網、発泡スチロールなど多くのプラスチックごみが集まってきます。

環境省の調べによると、2021年の時点で、長崎県で回収される海洋ごみは年間約2200トン。一部は中国や韓国などのアジア諸国から流れ着いたものですが、約8割は日本国内から流れ出たものです。

写真提供:熊川泰秀さん

本作品では長崎市出身で、海岸を清掃する団体「長崎Coastal Debris Guard」を立ち上げた熊川泰秀さん(64)に密着。

かねてより「人の役に立つ人生」を送りたいと考えてきた熊川さんは、定年後、海洋ごみ問題に挑もうと故郷の長崎で活動をスタートさせました。

立ち上げた当初は、同じ思いを持った仲間を集めることに苦戦。活動を始めたばかりの2022年の夏には、知人以外で賛同してくれる人を見つけられずにいました。

熊川さんは、人が集まらないという問題を残したまま、お金の壁にもぶつかります。回収した海洋ごみを再資源化することを目指す熊川さんは、その道筋を探るべく環境NPO法人に相談したところ、海洋プラスチックの再資源化は採算が合わず簡単でないことを知らされるのです。

しかし、粘り強く活動を継続した結果、一年後の夏には自ら主催するビーチクリーンイベントに30名を超す人々が参加。他にも活動に興味を持つ人々が現れ、熊川さんが目指す再資源化にも希望の兆しが見え始めてきています。

海洋ごみの悲惨さと、志を持ち地道に活動の輪を広げる大切さを学ぶ

日本各地の海辺に海洋ごみが漂着し、問題となっていることは既に広く知られていますが、実際に現地へ足を運び現状を確かめたことのある人はそう多くはないかも知れません。作品では、冒頭より次々と映し出される長崎沿岸の海洋ごみに圧倒されることでしょう。

私たちの便利な生活の裏側で、意図せず美しい自然を傷つけてしまっているかもしれないということを感じずにはいられません。

その中、ひとりで清掃活動を行う熊川さんの背中からは多くの想いが伝わります。来る日も来る日も海辺に通い黙々と海洋ごみと向き合う日々を送る姿は、見る者の心を揺さぶるシーンのひとつです。

作中のインタビューで熊川さんは、これまで社会に貢献できる仕事を選んできたものの、実際に社会人として働いていた際には理想と現実の大きなギャップに苦しめられたと語ります。

活動では、「お金にならないと人は動かない」という支援者の意見から、現実を目の当たりにする熊川さん。
しかし、たった一人で始めた活動が、最終的には大勢が参加するビーチクリーンイベントに発展していく様子は、小さなアクションも、強い想いを持って続ければ、周囲や社会までも変容させていく大きな力になることをわたしたちに教えてくれます。

魚より海洋プラスチックが多くなるといわれる2025年。未来を変えるためには

安価で利便性の高いプラスチック。それ故に、その多くは一度使われた後に捨てられてしまい、最終的に河川などから海に流れ出てしまいます。

現在海を漂っているプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。そこへ少なくとも年間800万トンが新たに増え続けていると言われています。
増え続けた結果、2025年の海では、魚よりもプラスチックの方が多くなると予想されているのです。

海洋ごみは海に棲む様々な動物に悪影響を与えています。魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が海洋ごみによって傷つけられたり命を落としたりしているのです。このうちの92%は漁網などに絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて食べてしまったりすることが原因と考えられています。

私たちは、日常生活で使っているプラスチック製品と海洋ごみ問題を結び付けて考えているでしょうか。
世界中の国と繋がる海で起こる海洋ごみ問題はあまりにもスケールが大きく、何から取り組めば良いのか途方に暮れてしまうかもしれません。

しかし、作品を通してその現状や具体的な取り組みを知ること、そして活動している人から熱い想いを感じとることは、問題を再認識し行動に繋がるヒントになるでしょう。

今年の海の日は、次の世代へ美しい自然や海を残していくために、映像から学びを深めてみませんか。

【参考】
海洋プラスチック問題について |WWFジャパン. https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

文/かがり

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