企業や組織、地域単位で、ここ数年で急速に広がっているSDGsの取り組み。しかし、残念ながら実態を伴っていないケースも多く見られます。今回は「SDGsウォッシュ」の概要と問題点など、SDGsに取り組むにあたって、基本知識として知っておきたいことを解説します。
SDGsウォッシュとは
SDGsウォッシュとは、実態が伴っていない状況で、第三者に向けていかにもSDGsに取り組んでいるように見せかけることです。なお、SDGsウォッシュは、「ごまかし」や「粉飾」を意味する「ホワイトウォッシュ(whitewash)」とSDGsを掛け合わせた造語です。
このワードが存在しているということは、SDGsに取り組んでいると宣言をしている企業や組織のなかにも、何らかの理由で実際には取り組んでいないケースもあるようです。
なぜSDGsをうたうのか
日本でもSDGsをうたい、それぞれのホームページでSDGsに関する宣言や取り組みについて掲載している企業や組織も増えています。なぜそのようなことをする必要があるのでしょう。
理由の一つとして挙げられるのが、SDGsをアピールすることで、取引先や就活中の学生を中心とした多くの層に向けて、好印象を与えることができるからです。なお、求人に関しては、人材募集がしやすくなります。
また、大手企業がSDGsを推し進める理由として挙げられるのが、新しいビジネスチャンスにつながる可能性が高いことです。SDGsが課題としているのは、いままさに世界が直面している問題です。これを解決することは、新たなビジネス開発の可能性を内包しているのです。そのほかに、課題解決に積極的な企業であるという認識を獲得することで、ステークホルダーとの関係性の向上も期待できます。
SDGsウォッシュを指摘されないために
例えば、企業や組織がSDGs目標の5番「ジェンダー平等を実現しよう」を掲げても、実際には女性社員だけがお茶出しや掃除を任されるなど、社員に対して男女平等とは程遠い対応をしていたことが発覚した場合、各方面から信頼を失います。企業においては、業績が悪化するという現象も起きるかもしれません。
ここ数年の事例としては、かつてユニクロを運営するファーストリテイリングがウイグル自治区に住むウイグル人を強制労働させていると取り上げられたことがありました。ユニクロはホームページなどで生産過程における人権や労働環境への配慮を明言していたことから、SDGsウォッシュを指摘される事態となりました。
このようなことが発覚すると、消費者を含めた各方面から信頼を失い、場合によっては業績が悪化する可能性すらあります。
ほかにも広告などで根拠を調べずに「環境に優しい」「女性に優しい」などの表現を使った場合も問題に発展することでしょう。
SDGsへの知識不足や、社内や組織内で起きているSDGsに相反する事柄を隠ぺいしてしまう体質も、SDGsウォッシュを引き起こす原因となりかねません。
企業や組織で腰を据えてSDGsに取り組む場合、他者から問題点が指摘されないよう、SDGsウォッシュに相当する事例がどのようなものなのかリサーチが必要になるでしょう。
企業と私たちができること
「SDGsを宣言すれば、消費者の共感を得られるだろうという軽い気持ちではじめても、何をどのように取り組むかが具体化されていないと達成への道は遠ざかります。それを回避するためには「SDGsの○○に取り組む」ということを明確化し、どのようなアクションを取るかという話し合いが必要です。入念な計画があってこそ、本当の意味でのSDGsが実現できるのです。
そして、SDGsを目標とするなかで、取り残されている人がいないかどうか確認することも必要不可欠です。取り残されてしまう人を生み出さないこともSDGsの取り組みの一つとなります。
社会情勢は刻々と変化していきます。昨日までSDGsのために行っていたことが、明日には不正解になってしまう場面もあるかもしれません。「これをやっていればいい」というだけではなく、何のための行動なのか、そしてそれが課題解決につながっているのかを常に意識し、柔軟に対応できる姿勢も心がけることが大切です。