「挑戦することに価値がある」Yahoo!ニュース・ベスト エキスパート 2025受賞の監督が社会に伝えたいメッセージ

Yahoo!ニュースでは毎年「ベスト エキスパート」授賞式を開催し、様々な部門ごとに、気づきや思考のヒント、行動の変化を促す発信を行ったエキスパートを選出。

ドキュメンタリークリエイター部門では、視聴者に新たな発見や考えるきっかけを与えた作品や監督をノミネート・表彰しています。

今年行われた「ベスト エキスパート 2025」ドキュメンタリークリエイター部門のグランプリには、山田裕一郎さんの作品『「消滅」が危ぶまれる町で生活できるか――地方移住したシングルマザーが目指す自立 #令和に働く』が選出。

特別賞(Filmmaker of the year)には、2019年の初作品以来コンスタントに作品を発表し、幅広いテーマに取り組む太田信吾さんが選ばれました。

「挑戦する人、生きづらさを抱える人を温かく見守る社会に」

今回「ベスト エキスパート 2025」グランプリ ドキュメンタリークリエイター部門に選ばれた『「消滅」が危ぶまれる町で生活できるか――地方移住したシングルマザーが目指す自立 #令和に働く』は、地域おこし協力隊として北海道厚真町に娘と共に移住し、林業に従事するシングルマザーが主人公の作品です。任期終了後も娘と厚真町で暮らすことを決め、収入を補うため町の特産であるハスカップ栽培に奮闘する姿を描いています。

山田裕一郎さんに、グランプリを受賞したお気持ちをお聞きしました。

「今回の作品は、主人公たちから私へ120%の信頼を頂いたからこそできたものだと思っています。
生きづらさを感じる人が多い現代社会で、様々な挑戦をする人々に対して、温かい気持ちで見守るような社会であってほしいと思っています。
本来は挑戦すること自体に価値があるはずなので、ドキュメンタリーを通して作品の主人公や挑戦する人々の生き方をサポートできたらいいなという想いでこの作品を撮りました。」

今後も、人に寄り添い、優しい気持ちになれるようなドキュメンタリーを撮ることを心がけたいと話す山田さん。

「次は、今回受賞した作品で主人公と一緒に働く『西埜馬搬(にしのばはん)※』の西埜将世(にしのまさとし)さんを追った中編を制作したいと思っています。」と、次の作品への意気込みを語ってくださいました。

※馬搬:馬の力を利用して、山中で伐採した木を運び出す仕事

グランプリ ドキュメンタリークリエイター部門 

受賞作品:「消滅」が危ぶまれる町で生活できるか――地方移住したシングルマザーが目指す自立 #令和に働く

作品概要:主人公は、北海道厚真町に娘と共に移り住んだ、シングルマザーの渡部真子さん。地域おこし協力隊として3年間林業に従事し、任期が終了した後も厚真町で生活し続けることを決意した渡部さんは、林業に加え、地元名産のハスカップ栽培にも挑戦。高齢化と産業の担い手不足が深刻な町で子どもとどう生きていくのか―。渡部さんの奮闘を追うとともに、地域社会の未来について投げかける。

選出理由:母と娘、祖母と3代にわたる心情を日常の中に浮かび上がらせた表現や、家族の物語から地方移住や働き方について考えるきっかけを視聴者へもたらしたことが高い評価を受けた。

山田裕一郎さんプロフィール:北海道出身のフィルムメーカー。NY州立大学ビンガムトン校、同大学バッファロー校大学院で映像制作を学び帰国後、北海道で映像制作を開始。札幌国際短編映画祭やTokyo Docsなどで数々の賞を授賞。

知られざる掃除の魅力に光を当てたい

「ベスト エキスパート 2025」特別賞 ドキュメンタリークリエイター部門(Filmmaker of the year)を受賞した太田信吾さん。

多様な角度から社会を映し出し、社会問題を主人公の目線から伝えてきた制作活動が高く評価されています。

2024年は、「秘境駅」として知られるJR飯田線小和田駅を毎週のように訪れ、3年以上無償で清掃している発達障がいの男性を追った『「秘境駅清掃にハマってる」_JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは』などを発表。

作品に込めた想いや反響について、太田さんは次のように語ります。

「純粋に掃除を楽しむ主人公と出会い、掃除という行為についてその価値を見直すと同時に光を当てて発信したいと感じて制作した作品です。
作品の公開後、主人公の活動を応援したいと言った声や、主人公と同じように発達障がいのあるお子さんを持つ親御さんからの温かいコメントを頂きました。
主人公のエピソードは自身の経験と重なる部分もあり、とても励みとなりました。」

今回の作品で、掃除の魅力を再認識したという太田さん。これまでの経済発展の中で、ものづくりには価値が見出されてきた一方で、掃除を含め、作ったものに対する手入れには光が当たりにくいと感じています。

今後の活動について、「今年の秋に作中で企画されていたトレイルイベントが実施されることとなり、私も運営として参画予定です。また今後はさらに掃除の可能性を探りたく、各地で『掃除』をテーマとした作品を撮りたいと思っています。」とお話しいただきました。

特別賞 ドキュメンタリークリエイター部門(Filmmaker of the year) 

太田信吾さんプロフィール:1985年長野生まれの映画監督・俳優・演出家。初の長編ドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(13)がYIDFF2013をはじめ、世界12カ国で配給。俳優としても、舞台や映像で幅広く活動。

選出理由: 「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」において2019年以来毎年コンスタントに計12本のドキュメンタリーを制作。幅広いテーマに取り組み社会の多様な側面を描く力や、社会課題を主人公の視点から見つめることで新たな見解を生み出した点などが特別賞受賞へと繋がった。

2024年の発表作品:

「秘境駅清掃にハマってる」_JRから感謝状、発達障害男性と母親の人生を変えた掃除とは
「買えなくなって困っていたの」地元住民の要望に応え継承した福島県川俣町のローカル納豆事業

その他グランプリ ドキュメンタリークリエイター部門のノミネート作品はこちらからご覧いただけます。
https://news.yahoo.co.jp/expert/award/nominees/

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この記事を書いた人

フリーライター/エシカル・コンシェルジュ。学生時代、100本以上のドキュメンタリー映画を通して、世界各国の社会問題を知る。
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