発達障がいのあるアーティスト、YUMAと最初に出会ったのが、2023年秋。その後YUMAは、家族とアフリカ渡航プロジェクトメンバーと共にケニアの地へと飛び立ちました。
現在はプロジェクトで募ったクラウドファンディングのリターン制作の真っただ中です。
そんなYUMAとご家族にアフリカでの体験や様子、そして本人にどんな変化があったのか、帰国後どんなアートを描いているのかを取材しました。
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アフリカで野生動物が見たいという長年の夢が現実に
YUMAは、アクリル絵の具を使用した明るくポップなアートを出がけるアーティストです。彼の絵の中では、多様な動物が優しく、ときに力強く生きる様子が描かれています。YUMAは、動物をこよなく愛する平和な気持ちが強く、それが絵となって表れているのです。
これまでYUMAは、国内の動物園や水族館に足しげく通い、彼らの生態を観察し、アートに残してきました。
そんな彼にとって、野生動物がのびのびと自由に生きるアフリカは長年憧れだった場所。
しかし、発達障がいがあり、長距離の移動や環境の変化への対応が難しく、いつか行ってみたいという思いは、半分夢のような願いでした。
その夢が実現することになったのは、2023年。野生の動物と出会うことで、動物のことをさらに深く知り、表現したいという彼と彼の家族の希望を叶えるため、アフリカに詳しいメンバーを迎えて、今回のアフリカ渡航のプロジェクトがスタートしたのです。
プロジェクトに賛同する応援者は多数集まり、渡航費を募るクラウドファンディングでは達成率600%に。
本当に行けるのか到着するまで不安だった、というYUMAの母、裕子さんが、アフリカでの経験を語ってくださいました。
「なによりも長時間のフライトが心配でしたが、YUMAは思ったよりも落ち着いていたので驚きました。
私たちが最初に降り立ったのはナイロビです。自由行動の時間があったのですが、YUMAはすかさず近場のウォーキングサファリへ。徒歩で入れるサファリなので、さすがに肉食動物はいませんが、サイ、キリン、水牛など、到着早々、様々な野生動物を見ることができました。YUMAはひたすらじっくりと観察していましたね。」
多種多様な動物がありのままの姿で暮らす楽園、マサイマラへ
今回のハイライトとなったのは、なんといってもマサイマラ国立保護区。ナイロビから6時間以上移動し、車はまっさらな大地が広がるサバンナ地帯へと入っていきます。
「マサイマラでは、YUMAがずっと見たがっていたアフリカゾウと出会うことができました。しかも親子だったんです。それから、YUMAの絵に度々登場するライオンも何度も見ることができました。
サファリで人気のビッグ5(ライオン、ゾウ、サイ、ヒョウ、バッファロー)のなか、ヒョウ以外のすべての動物に出会えたので、とてもラッキーでしたね。
YUMAは、ヌーや鹿、鳥もずっと見ていました。チーターが捕食しているところも珍しいと現地の人に言われました。」
「YUMAはサファリカーの中でずっと立ちっぱなしでした。車の天井部分から顔を出して、大地を見つめ、動物を探し、観察します。YUMAは、動物に出会ったときに“~だ!”と口に出すことはありません。眼前に広がる広大なサバンナと、動物たちをただただ夢中で見つめていました。
常に頭の中がたくさんの情報や記憶で溢れているYUMAにとって、広大な土地で動物を探すことに集中し続けるという経験は、何物にも代え難い経験だったと思います。
本当にワクワクする場所、そして頭をからっぽにできる場所でしたね。」
マサイマラでは、マサイ族のいる村も訪れました。
「一緒にジャンプをしましたが、ここでもYUMAは極めて冷静でした。初めて見るマサイ族や、聞き慣れない言語にも一切動揺することなく、コミュニケーションを楽しんでいました。」
地元のアーティストとコラボレーションも予想外の展開に…!?
サファリの他にも、今回のプロジェクトでは大きなイベントが用意されていました。
ムクルアートコレクティブという、アートセンターは、現地のアーティストであるマサバ氏が運営し、地元のアーティストが所属する施設です。YUMAはここで地元のアーティストと一緒に、大きなキャンバスに絵を描くというコラボレーションを行う予定でした。
しかし、当日思いもしないトラブルが発生します。
「YUMAがお腹を壊してしまったんです。嘔吐や下痢だけでなく、熱も高かったと思います。それでアートセンターに向かうのが遅れてしまって…。何とかたどり着きましたが、YUMAはずっと横になっていました。やっと起き上がれたのは予定の開始時間を大幅に過ぎてからでした。
結局、アーティストの方たちが気を利かせてくれて、キャンバスにサバンナ風景の絵を描いてくれ、YUMAはその中心の丸く残された場所に、レンズを通して見た動物たちというテーマで絵を描くことになりました。」
思わしくない体調のなかで、なんとかやり遂げたYUMA。そのあとは疲れが出てしまって、大声を出し、気持ちが落ち着かない状況が続きましたが、旅の終盤には体調も戻り、アフリカでの日々を楽しみました。
YUMAが一番印象に残った動物は?
旅中は他にも、ナイバシャ湖やアフリカローズの農家を訪ねました。他のサファリとは違った雰囲気のナイバシャ湖は、リゾート地のような雰囲気。ボートサファリも経験し、カバや鷹、ダチョウなどを見ることが出来たそう。特にYUMAが見たがっていたペリカンにも出会えました。
アフリカローズの農園でも、YUMAは花を楽しんで見ていました。
取材の終盤、YUMA本人にすべての動物を通して何が一番印象的だったかを聞くと、やはり、「アフリカゾウの親子」だと答えてくれました。
帰国後、家族が感じたYUMAの変化
帰国後のYUMAは、いきなり何かが大きく変わった、というわけではありません。帰国したその日から、またいつも通りの日常に戻り、途中だったアート制作の続きを始めました。
ただ、少しずつアフリカ渡航による変化も見られています。
ひとつめは、動物しか描かなかったYUMAが建物を描くようになったこと。将太郎さんはこう話します。
「アフリカでは街の風景をとにかく良く観察していて、帰国してからは、アフリカの街並みを表現したであろう絵も登場しています。」
その作品には、建物の他にも、現地で咲き誇っていたブーゲンビリア、ジャガランダなどの季節の花々が、色鮮やかに生き生きと描かれています。
さらに、裕子さんが感じる変化として、色遣いが優しくなった、ということがあります。以前よりも柔らかい色調のパステルカラーを選択することが増えたようで、これもアフリカで触れた色彩の影響かも知れません。
少しずつではあるものの、確実にアフリカ渡航の経験がYUMAのアートの幅を広げているのです。
今YUMAはクラウドファンディングのリターンとなるアートの制作を行っています。内容はアフリカで出会った動物にインスピレーションを受けたものばかり。彼ならではのタッチや色遣いは残しつつも、どこかアフリカの風を感じる作品に仕上がっています。
今年は、展示会や個展などにも挑む予定のYUMA。アフリカの豊かな自然やありのままに生きる野生動物たちに感化され、着実に進化している彼のアートにこれからも注目です。
プロフィール
SUDAYUMA
1998年、東京都生まれ。発達障がいがあり、夢中になって動物の絵を描く子ども時代を過ごす。現在はアクリル絵の具を使用し、ポップなカラーで彩られた多様な動物が登場する作品の数々を発表。彼の目線で描かれたユニークな生き物の世界観に、アパレルメーカーやクリエイター、芸能人などからの熱い視線が送られている。2023年10月には長年の夢であったアフリカ渡航を実現し、これからの活躍にますます期待が寄せられている。
公式HP:https://www.sudayuma.com/
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/sudayuma/
クラウドファンディングサイトページ:https://rescuex.jp/project/76450