社会や人々のありのままを切り取り、映し出すドキュメンタリー。映像というかたちでこの世界の“リアル”を知ることは、地球にも人にも優しい未来を考えるきっかけになります。
本連載では、気軽に観ることのできる約10分のドキュメンタリー作品を配信する「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」から、今観たい1本をセレクト。毎月テーマを変えて、映像という切り口から、持続可能でエシカルな社会を考えます。
2月のテーマは「ミャンマーの今を知る」です。
ミャンマーのクーデター発生から4年
ミャンマーでは2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し、人々の自由が奪われてから、今年の2月で丸4年が経過します。
半世紀近く続いた軍事政権から2011年に民政移管が行われ、民主化に向け歩みを進めていたミャンマーは、この日を境に軍の支配下に。日本国内では報道が年々少なくなっていますが、いまだ現地では混乱が続いています。
なかなか知る機会がないミャンマーのいまを映像から知り、自由や平和について考えるきっかけとしてみましょう。
『境界のフィルムメイカーたち』
境界のフィルムメイカーたち(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)
監督/撮影/編集:久保田徹
プロデューサー:高橋樹里
作品のあらすじ
クーデター以降、国軍による民主派への厳しい弾圧が続くミャンマー。
言論の自由はなく、罪のない人々が不当に拘束され、多くの市民が犠牲になるなど、民主主義とはほど遠い世界が広がっています。
そんな中、自身の国で起こっている真実を伝えるため、自らの命を顧みず、他国へ亡命、あるいは国内に潜伏しながら活動しているジャーナリストや映像作家がいます。
作品では二人の表現者に密着。「ダイレクターH」のペンネームで活動する女性ジャーナリストと、革命ビデオクリエイターを名乗るピョーダナーです。
クーデター後、市民らによるデモを配信し、国軍の取り締まりの対象となったことがきっかけで国を追われた、ダイレクターH。
鼻先まで全身水に浸かりながらも、頭の上にカメラや撮影データを乗せ、国境の川を越え命からがら隣国タイへと逃れます。
難民として保護される制度が整っていないため、家族とともに常に不安を抱える生活を送りながらも、アニメーションなどを用いて、国軍から不当な扱いを受けた人々のエピソードを発信し続けています。
他方、ピョーダナーは、国軍の非道さを伝えるため、再現映像を取り入れたミュージックビデオを制作している映像作家です。
クーデター以前はウェディングなどの撮影を行っていましたが、「革命ビデオクリエイター」へと転身。
国軍に抵抗する勢力の兵士の一員となり、戦闘で命を落とした弟が埋葬される様子を自身の作品に使用したことを涙ながらに語ります。
喪失感を抱えながらも、ありのままの真実を伝えようとしている青年の姿がそこにはありました。
報道とは違った切り口で現地を知る
2024年に国境なき記者団によって発表された報道の自由度ランキングでミャンマーは、180カ国中171位でした。
一方で、自由を奪われながらも、真実を伝え続けるために闘う方たちが大勢います。彼らの映像からは、ニュースでは知ることのできない個人の体験や生々しい感情を感じ取ることができます。
映像を通して、普段と異なった角度からミャンマーの現状を知ることは、平和について考える一歩となるのではないでしょうか。
自由や平和をあきらめない人々の声を聞こう
ミャンマーでは、クーデター以降、国軍により5350人の市民が殺害、約2万7400人が拘束されており国内避難民は350万人近くにのぼるとされています。
また国軍は徴兵制を開始するなどし、少数民族や民主化勢力と戦闘を続ける姿勢です。これからも犠牲者は増え続けることが予想されます。
自身もミャンマーで拘束された経験を持ち、本作の監督である久保田徹さんはミャンマー人クリエイターたちの映像を発信するプラットフォーム「Docu Athan (ドキュ・アッタン)」を開設。そこでは彼らの作品に簡単にアクセスすることができ、寄付をすることも可能です。
世界各地で紛争が勃発する今こそ、希望を探し続け、発信をやめることのないミャンマーの人々に目を向けてみませんか
文/kagari
※作品はこちらから視聴できます
境界のフィルムメイカーたち(Yahoo!ニュース ドキュメンタリー)
参考:
https://jp.reuters.com/economy/KDGFO732VRLARGPBALANDB7EAY-2024-09-18/
https://www.japanforunhcr.org/appeal/myanmar